2022年3月の投稿[22件]
by admin. ⌚ 2022年03月29日(火) 08:24:22 <133文字> 編集
「シルクロードの民話 パミール高原」 201-224p
2つの物語が組み合わさった物語と思う。
一つは旧約聖書、創世記のいわゆる「ヨセフ物語」である。主人公が兄達に疎まれたり、エジプトに売られたりする点など、粗筋の大筋が非常に良く似ている。「主人公が兄達に疎まれている点」は「ヨセフ物語」と併せて、「ゲイ流譚」的といえると考える。
もう一つは、おそらく、女神的な女性に助けられて、かつ、その女性と結婚して豊穣を得る、というモチーフ、しかも、女主人公が古い夫(老人)から若い夫に乗り換える、という「グィネヴィアとアーサー王」のような「ネミの森」的神話が元はあったのではないか、と思われる。
ただ、「ヨセフ物語」の要素の方が非常に強いので、後者の要素はとても弱くなり、「古い夫」も妻に裏切られるのではなく自然死となっている。そして、2つめの物語の要素が多少入り交じっているので、その点が「ヨセフ物語」との違いを生み出しているように思える。
ユシィフは鷹に選ばれて王となっており、フマ的な要素が加わる。その点は「動物のことばがわかる男」が類話である。
全体として、類話は「忘れてしまった夢」である。
#民話 #中国 #ヨセフ物語 #旧約聖書 #鷹 #フマ #鳥 #夢解き #ゲイ流譚 #ネミの森 #地下の洞窟に閉じ込められた姫
by admin. ⌚ 2022年03月23日(水) 20:00:35 民話 <592文字> 編集
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 145-146p
小人に対する「見るな」の禁忌に関する話。おそらく、古代においては、収穫のいくばくかを小人(神)に捧げる、という習慣があったのかもしれない、と思う。
しかし、彼らの神としての地位が低下するにつれて、彼らに対する「捧げ物」は、むしろ「盗まれていく物」と考えられるようになったのだろう。禁忌に関する「呪い」の意味も薄れて、「禁忌を破ること」、「正体を見破ること」がむしろ現実的な「豊穣をもたらす行為」へと変化するようになった。これも「神」としての地位の低下に伴った、仕方のないこと、といえよう。
神的存在の宗教的地位が低下したために、むしろ「厭われる存在」となってしまった物語には、「怪物の出る水車場」がある。
参照:ドワーフ
#民話 #ドイツ #禁忌 #見るな #ドワーフ #小人
by admin. ⌚ 2022年03月22日(火) 01:40:30 民話 <456文字> 編集
「長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 132-135p
「読んで 遊んで とっぴんぱらり 新長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 96-100p
いわゆる「冬至粥(小豆粥)」の起源譚。冬至粥は「無病息災」を祈るためのものであり、弘法大師に親切にした老婆が、弘法大師から「無病息災」の粥を授けられた、という意味を含んだ物語である。また、木曽では冬至を境にして菜っ葉の漬物を食べる種類が切り替わる、という伝統があるらしい。節に、神に無病息災を祈って菜っ葉を捧げるのは、柳田的にはむしろ夏祭(旧6月、本来は水の神の祭)の習慣と考えられるような気がする。冬至には南瓜(瓜類である)を食べる習慣があるし、菜っ葉を捧げる習慣(ただし冬だから漬物となる)もあったとすれば、水神信仰(祇園信仰)に関連する習慣であったことが分かる。人々の一人一人が水神(疫神)と一体化して(現人神となって)、供物を食している。
「無病息災」を願うものとしては、蘇民将来説話の崩れで、弘法大師が牛頭天王に相当する存在なのだと思う。ただし、「不親切な者」は登場しない。弘法大師そのものは、実際には修験道の行者のような旅はしなかったかもしれないが、弘法大師が旅をして奇跡を起こした、という伝説はあちこちにあるのではないだろうか。
ただ、現代的な感覚から見ると、大師様が直接利益や恩恵を分かりやすくもたらしてくれる物語ではないので、「弘法大師が泥棒を推奨した」という話にも見えてしまい、「冬至粥」とか、冬至の祭りの意味を知っていないと、意味するところは理解しにくいかもしれない。
参照:蘇民将来
#昔話 #長野県 #中信 #蘇民将来 #漬物 #菜っ葉 #小豆粥 #小豆 #冬至 #由来 #弘法大師 #冬至粥 #祇園信仰 #修験道
by admin. ⌚ 2022年03月19日(土) 01:04:13 昔話,固有アイテム,多エピソード保有人名,固有地名 <764文字> 編集
「長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 128-131p
「読んで 遊んで とっぴんぱらり 新長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 102-105p、内容に改変が見られる。理由は不明。
二人の女性が、結婚を軸にして入れ替わる。典型的な「瓜子姫」の物語である。
瓜子姫は最期には助かる。天邪鬼は茅に化生する。
瓜子姫は川から流れてくる。「桃太郎」と似ている。
類話は「たまご姫」、「とくさむすめ」、「のろいをかけられた花嫁」、「白檀の木」、「悪魔の難題」など
参照:うりこひめとあまのじゃく
#昔話 #長野県 #東信 #瓜子姫 #柿 #茅 #川誕 #瓜
by admin. ⌚ 2022年03月16日(水) 01:18:34 昔話 <467文字> 編集
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 135-139p
「怪物退治」譚の変形であり、倒す相手は舅である。
助け手は、主人公の母と父親(エルベリヒ)である。エルベリヒが樹木(菩提樹)の化身であることが示唆されている。
呪的逃走はない。
エルベリヒからは甲冑、盾、名剣ロッセを貰う。
主人公は一応キリスト教徒になっているが、あまりキリスト教的な匂いは感じない、単純な物語である。
参照:ユオン・ド・ボルドー(Huon de Bordeaux)とオーベロン(オベロン、Oberon)
#伝説 #ドイツ #指輪 #魔法のアイテム #菩提樹 #母親 #ホレのおばさん #力くらべ #ドワーフ #オーディン #怪物退治 #こびと #樹木信仰
by admin. ⌚ 2022年03月15日(火) 19:35:52 伝説,固有アイテム,英雄名 <370文字> 編集
「長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 119-122p
「読んで 遊んで とっぴんぱらり 新長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 126-129p、タイトルは「ほらがいの川くだり」に変更された。
ほらがいの子をさらおうとして、天変地異が起き、祟られる話。
ほらがいは修験道に関係のあるアイテムである。
また、古代の日本では、貝には「再生させる力」というか「医薬の力」があるとされて、死んだ大国主命を貝の女神が蘇生させる、という神話もある。
地下のなまずが暴れると、地震が起きる、という古来寄りの俗信の「なまず」が修験道の普及に従って「ほらがい」に変更されたものか。
参照:ホラガイ
#昔話 #長野県 #東信 #祟り #貝 #修験道 #天変地異 #水神
by admin. ⌚ 2022年03月12日(土) 22:10:33 昔話 <345文字> 編集
「シルクロードの民話 パミール高原」 184-201p
「生命の水、美の水、青春の本」と非常に似た話。
鳥に肉を食べさせて飛ばすところは「ラ・ラメー」と似ている。
3人兄弟の末子と上の二人との関係は「蛙の恩返し」に似る。鳥を盗むところも「蛙の恩返し」と同様である。
神話の上ではペリとデーヴは「善と悪」で対立的な存在だが、この物語の中では、「共に異界に住む妖精」的な存在で、一つの町に仲良く暮らしているようである。
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by admin. ⌚ 2022年03月11日(金) 18:28:29 <372文字> 編集
「長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 101-104p
「怪物退治」の失敗譚。聖ゲオルギス型である。
前半は、蜘蛛と蛇の戦いで、蜘蛛に加勢を頼まれた主人公が失敗する話。
後半は、蜘蛛の仲間に復讐されそうになる話。
中国の乞巧奠(きこうでん、七夕)では女性達が蜘蛛に占ってもらうという習慣がかつてあり、蜘蛛というのは女性(織り姫)の象徴であると思う。蜘蛛が蛇に飲まれる、とは女性が河伯に人身御供に捧げられる、ということを言い換えたものではないだろうか。人身御供の救出が失敗する、とは羿のような英雄神話を是とするのではなく、暗に否定する意味が込められていると感じる。「黒姫物語」といい、北信には羿に批判的な勢力でもいるのか、と思えるほどである。蜘蛛が川の主のようにふるまうのも、「川に生贄にされた女性」という暗喩があるのだと思う。
「木曽殿アブキ」とは、「裾花渓谷の清水川に面したところにある間口60m、奥行き20mの大岩くつで、その昔、木曽義仲が越後の四郎追撃の途路この洞くつに兵馬三百を休めたといわれ、また義仲が討死にした後、次男の義重が再挙を企てた跡として知られます。アブキ橋から見おろす景観は奥裾花景勝地の一つに数えられます。※アブキ橋欠壊により現在行けません。(アブキとはアイヌ語で「洞穴」のことだそう。)(長野市商工会 のHPより)鬼無里には木曽義仲に関する伝説がある場所がいくつかある。長野市鬼無里には木曽義仲の家臣が隠れ住んだ、という事情があるのではないか。
また、物語は鬼無里で採取されているが、「四か庄の青鬼」とは、現在の白馬村青鬼のことと思われる。古い家屋が建ち並び、全体が重要伝統的建造物群保存地区に指定されている山間の集落である。鬼無里には鬼女伝説があるが、青鬼にも鬼が住んでいたという伝説が残っている。白馬村から鬼無里へは鬼無里街道(現在の国道406号線)が続いており、現在でも沿線の小神社には修験道の伝統が続いている痕跡を見ることができる。
羿神話に否定的、という点で、類話は「黒姫物語」である。
乞巧奠について、参照:太陽と木と鳥1
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by admin. ⌚ 2022年03月03日(木) 07:54:11 伝説,固有地名 <1232文字> 編集
「シルクロードの民話 パミール高原」 171-184p
複数のモチーフが組み合わさった物語。
前半と結末は、予言をする異界の乙女達との婚姻譚。最終的に一人とはうまくいくけれども、残りの二人とは破綻する物語。
そこに「兄その他を探す乙女」の後半部分(結婚、出産、子供の失踪)が加わり、
更に、姉弟の冒険譚、前半は弟の宝物入手譚、一部怪物退治+呪的逃走あり、後半は姉の「兄その他を探す乙女」+宝物入手譚となっている。
姉は弟やその他の人々の助け手ともなっているし、「おうむの真の主人」であることが暗示されている。
助け手にデヴィンと聖者ヒジールが登場する。「聖者ヒジール」がどのような聖者であったのかは調べられなかった。
2世代に渡る物語といえ、前半と結末は、精霊と王の婚姻譚、中間は姉と弟が、それぞれ女主人公と主人公になっている。
出産に関連して女主人公を虐めるエレシュキガル的存在が、姑ではなくて、姉二人、となっているところが、シンデレラとの共通点で興味深く感じる。
母親が土に埋められるところは、植物の化身であることを暗示させる。「たまご姫」的でもあると思う。
前半部分の類話は「妖精のおはなし」。
「兄その他を探す乙女」のモチーフがあちこちに散りばめられている。
母親の方が「罰を受ける女神」であり、娘の方が再生を司る女神である点は、岩見の伝承である「オオゲツヒメと狭姫」の関係も彷彿とさせ、興味深く思う。(「太陽と木と鳥2 」参照)
呪いを受けて石に変えられてしまうところは、個人的には「ライオンと魔女」を思い出しました。
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by admin. ⌚ 2022年03月02日(水) 14:12:24 民話,固有神獣 <1033文字> 編集
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 152-157p
いわゆる「家付き」の精霊である。北欧のニッセ等にその性質が似る。姿は見えないことが多い。その点は「ドワーフ」の性質と関連する。
参照:コボルト
#民話 #ドイツ #コボルト #家付精霊