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タグ「ウラテューベ」を含む投稿3件]

英雄ディックベール ATU513A+AT530+AT313
「シルクロードの民話 パミール高原」 157-171p

 2つのモチーフが組み合わさった物語。
 1つ目はいわゆる「難題婿」で、おじいさんと霊鳥シームルグの助けを得て、女主人公を手に入れる物語である。
 中間部として、二人の若者の出会いと、「力くらべ」の末の和解と友情が挿入される。インド神話のガルダとインドラの関係に似る。
 2つ目は、もう一人の若者の冒険を、霊鳥シームルグと主人公が助ける物語で「呪的逃走」を伴う。

 シームルグは本物語では「母なる鳥」とされているため、女神的存在ということで、「ホレのおばさん」型とする。「呪的逃走」の場面では「川と石」と「櫛」という有名な2つのモチーフが登場する。

 霊鳥シームルグはイラン神話に登場する古い時代からの神的存在で、伝承はイランのみならずパミール高原にまで広がっているようである。シームルグが木に住んでいて、その根元に蛇が住んでいるというところは、イラン神話の「ハオマの木」を思わせるが、「鳥と蛇の対立」はインド神話のガルダとナーガを思わせる。(イラン神話では蛇(トカゲ)から木を守るのは魚やロバとされている。)
 神話では、シームルグの羽には病気や傷を治す霊力がある、とされているが、民間伝承では、その能力は拡張されて、西欧の民話に出てくるような「助け手のおばあさん」「助け手のおじいさん」(彼らの本来の姿は異教の神々だったのだろうと思うが)のような全能的な役割をシームルグが負っている。シームルグは助言をしたり、魔法のアイテムをプレゼントしたりしてくれる。
 また、神話では英雄ロスタムとイスファンディヤール王子との争いの際にシームルグが和解するよう助言する場面があり、神話と本物語を併せると、シームルグは広く「友愛を取り持つ霊鳥」とみなされる傾向があるのかもしれない、と思う。「霊鳥」に関して、イラン神話とインド神話の両方の要素がみられ、中間地点のパミール高原の物語として興味深く感じる。

「川と石」のモチーフ:「サルのよめ」、「スルタンのぶち犬」、「山男
「櫛」のモチーフ:「スルタンのぶち犬」、「紡錘むすめ

参照:木と鳥

#民話 #ウラテューベ #難題聟 #シームルグ #ホレのおばさん #力くらべ #おじいさん #オーディン #プラタナス #蛇 #魔法のアイテム #舌の下 #ボロルドーイ #砥石 #櫛 #鏡 #魔人 #川と石 #6人が世界じゅうを旅する #ガラス山の姫 #呪的逃走 #炎黄闘争

by admin. 民話,固有神獣 <1163文字> 編集

白檀の木 ATU450
「シルクロードの民話 パミール高原」 139-146p

 女主人公は兄と結婚させられそうになって家を出る。「セクメトの失踪」の前半的だが、民話では神話とは違い兄妹の結婚は忌避されるので、兄が連れ戻しに旅に出ることはない。その名残が女主人公を引き留めようとする家族との歌のやり取りであると思う。烏に運んで貰う点は「怪鳥」型である。兄と女主人公との仲は当然破綻するので「ゲイと嫦娥」型である。
 女主人公姉妹と白檀の木が一体のものとして語られる点、二人が空を飛んで移動する点、特に姉が池の女神的でもある点は「天人女房」的であり、「たまご姫」、「スルタンのぶち犬」と共通している。姉妹のうち、妹は鹿の化身でもある。姉妹併せると、アルテミスとその聖獣の鹿を彷彿とさせる。姉が妹の人身御供的死を阻止するのは、「アルテミスとイーピゲネイア」型である。
 女主人公が冥界で子供を生む点は、どちらかといえば「エンリルとニンリル」的だと思う。ただし、この物語では夫の再生というよりは、女主人公自身の地位の確立に役立つエピソードとなっている。
 王の最初の3人の妻が殺されるところは、女主人公が植物の化身であることからも「瓜子姫」型といえる。女主人公が植物的であるという点は「とくさむすめ」が類話といえる。「瓜子姫」型としては「のろいをかけられた花嫁」、「悪魔の難題」の後半部分も類話といえる。

 全体は「うりひめ」、「たまご姫」のように、天人(あるいは鳥)を思わせる女主人公が、瓜子姫的な変遷を経て結婚による幸せを手に入れる、という物語である。物語の導入部分は「ゲイと嫦娥」型の物語と「セクメトの失踪」型の物語が組み合わさって崩れたもの。(最も嫦娥も夫の元から月へと失踪するのであるが。)女主人公と妹との関わりは、まさに「アルテミスとイーピゲネイア」であると思う。キリスト教以前に、広範囲にわたる「月の女神信仰」があったことを伺わせる。嫦娥は中国の月の女神であるので、洋の東西の「月の女神」の要素が融合して含まれている物語といえ、シルクロードの物語的だと思うし、興味深く感じる。

#民話 #ウラテューベ #セクメトの失踪 #小鳥 #鳩 #烏 #怪鳥 #白檀 #樹木信仰 #ゲイと嫦娥 #水 #池 #鹿 #変身 #アルテミスとイーピゲネイア #出産 #すり替え人 #エンリルとニンリル #瓜子姫 #小さい兄と妹

by admin. 民話 <1050文字> 編集

スルタンのぶち犬 ATU425B+ATU313
「シルクロードの民話 パミール高原」 106-126p

 予言によって定まった夫に親が不満を持つ点は「牧童と商人の娘」的である。聟が犬である点は東アジア的か。
 瓜子姫的な入れ替わりの要素はあるが、中途半端に完結し、二人の女性のうち、どちらかが死ぬような残酷な結末はない。人には言えないことを石に向かって述べる、という独特のエピソードがある。
 主人公は眠っているが、女主人公が頭を洗うと目覚める。(女主人公によって蘇生する。)
 主人公には、夜になると犬になるという秘密がある。女主人公が皮を処分すると、夫との仲は破綻して、夫は失踪する。(再度の死を意味する。)
 女主人公は失踪した夫を探し出す旅に出る。女主人公の立場が変化する(夫を得るきっかけとなる)場面で池や水が登場する点は「たまご姫」、「白檀の木」に通じる。原型となった物語では女主人公は鳥女房的な女神だったのではないだろうか。
 女主人公は姑の試練を夫の助けによって乗り越える。この点はクピードーとプシュケー的である。
 最後は魔法のアイテムを使用した呪的逃走である。櫛が植物に変化して女主人公と主人公を助ける点は「英雄ディックベール」、「紡錘むすめ」と共通している。
 逃走の際、姑と妹が石を抱いて川に沈んでいくエピソードは「英雄ディックベール」、「サルのよめ」「山男」と共通している。
 
 女主人公は2回主人公の蘇生(呪いを解く)を助け、主人公は1回女主人公の蘇生を助けている物語といえる。導入部分は瓜子姫的物語、「兄その他を探す乙女」のうち、前半は「ハンナハンナとテリピヌの神話」的な物語、後半は「クピードーとプシュケー的」物語で、主に三つのエピソードが組み合わさった物語と言える。個々のモチーフの類話も多岐にわたる。様々な文明の十字路であるシルクロード的な物語といえる。

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by admin. 民話 <977文字> 編集

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