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おとっとこよし
「長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 189-191p

 イェンゼンのことは個人的には好きではないのだが、「芋といえばハイヌウェレ」というくらい(?)ハイヌウェレ型神話は有名な話である。この物語は一般的なハイヌウェレ型神話よりも更に古い時代の「ハイヌウェレ型神話」といえると考える。

 西欧では「末子成功譚」が多いが、東アジアから環太平洋周辺地域のオーストロネシア語族の文化圏の中には「兄と弟」の組み合わせで、原因は様々だが、弟が唐突に死ぬ、というパターンの物語がままある。本物語もそのような国際的な物語の1つであって、台湾やポリネシア等に類話がみられる。

 本物語に限っていえば、これはホトトギスというの由来譚と、5月の端午の節句に芋汁を食べることの由来譚でもある。芋名月は日本では中秋の行事とされることが多いが、鬼無里では5月の節句の行事であったことが分かる。そして、兄が鳥の化身であり、弟が山芋の化身であることが分かる。これを動物神や植物神の擬人化、とみるのか、人を動物や植物になぞらえている、とみるのか、ということになるが、管理人は後者であると思う。

 なぜ、人間を動物や植物になぞらえるのか、といえば、その理由は「階級」や「身分」というものを示し、誰が「上の身分」で、誰が「下の身分」であるかを示しているし、それぞれの社会的役割を示しているものとも考える。兄は「鳥」であって、木の枝の高いところに住み、弟たちを支配する。山芋は、地面の下に存在し、一番低いところに生息するものなので、それが「身分の低さ」を示すし、支配しかされない。そのような観点から見れば、本物語は「身分の低い者は上位の者の食べ物である」とか「上位の者は身分の低い者の生殺与奪件を握る」という階級社会の理論や思想を示す、社会学的な物語あるいは「説話」とすらいえると考える。

 階級社会の発生は、父系文化の発生と一致し、良渚文化にまで遡る。本物語に暗喩される「身分的に上位の者は下位の者を食い物にして当然である」という思想が、父系文化と階級社会を支えてきた思想だと理解すれば、大国が小国を一方的に「悪者」と決めつけて理不尽に攻撃するようなことを正当化する根本的な思想が、5500年ほど前に長江下流域の水稲耕作民から発生したものであって、人類はそこから5000年以上たっても、「父系文化の根本的思想」から抜け出すことができないでいることが分かる。この思想の問題の根は山芋の根よりも更に深いところまで潜り込んでいるように思える。そして、鬼無里・長野市信州新町あたりには、古い時代のハイヌウェレ型神話に関係する民話・伝承が多く残され、独特な地域であるなあ、と思う。(今のところ信州新町はなんだか「泥棒村」みたいなノリになっちゃっていて、呆れかえるばかりである。まあ、ここのところ1600年くらいはそういうノリだったのかもしれませんがー;。)

参照:序列殺人

#昔話 #長野県 #北信 #鬼無里 #ほととぎす #鳥 #山芋 #植物 #ハイヌウェレ #序列殺人

by admin. 昔話,起源・由来 <1281文字> 編集

法蔵寺のネコ
「長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 168-171p

 お寺で飼われていた猫に、霊力(法力?)が宿って奇跡や恩返しをした、という話。長野県には唐猫に対する信仰もあるし、猫に若干稲荷的な性質をもたせて語られることが多い気がする。
 また、小川村、鬼無里(長野市)、美麻村(現白馬村)は、かつては修験道の道で行者の行き来があった地域なので、「仏教説話」的な物語の成立には、修験道が関わったかもしれない、と思う。
 内容よりも、昔(江戸時代くらい)の日本の葬式に関する風俗がうかがい知れて、楽しい物語である。

 小川村瀬戸川にある霊験山法蔵寺に伝わる伝説である。宝蔵寺には猫塚があったり、猫供養を行ったりしているそうです。

#伝説 #長野県 #北信 #鬼無里 #猫 #報恩譚 #仏教 #修験道

by admin. 伝説,固有神獣,固有地名 <356文字> 編集

くもが淵
「長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 101-104p

 「怪物退治」の失敗譚。聖ゲオルギス型である。
 前半は、蜘蛛と蛇の戦いで、蜘蛛に加勢を頼まれた主人公が失敗する話。
 後半は、蜘蛛の仲間に復讐されそうになる話。

 中国の乞巧奠(きこうでん、七夕)では女性達が蜘蛛に占ってもらうという習慣がかつてあり、蜘蛛というのは女性(織り姫)の象徴であると思う。蜘蛛が蛇に飲まれる、とは女性が河伯に人身御供に捧げられる、ということを言い換えたものではないだろうか。人身御供の救出が失敗する、とは羿のような英雄神話を是とするのではなく、暗に否定する意味が込められていると感じる。「黒姫物語」といい、北信には羿に批判的な勢力でもいるのか、と思えるほどである。蜘蛛が川の主のようにふるまうのも、「川に生贄にされた女性」という暗喩があるのだと思う。

 「木曽殿アブキ」とは、「裾花渓谷の清水川に面したところにある間口60m、奥行き20mの大岩くつで、その昔、木曽義仲が越後の四郎追撃の途路この洞くつに兵馬三百を休めたといわれ、また義仲が討死にした後、次男の義重が再挙を企てた跡として知られます。アブキ橋から見おろす景観は奥裾花景勝地の一つに数えられます。※アブキ橋欠壊により現在行けません。(アブキとはアイヌ語で「洞穴」のことだそう。)(長野市商工会 のHPより)鬼無里には木曽義仲に関する伝説がある場所がいくつかある。長野市鬼無里には木曽義仲の家臣が隠れ住んだ、という事情があるのではないか。

 また、物語は鬼無里で採取されているが、「四か庄の青鬼」とは、現在の白馬村青鬼のことと思われる。古い家屋が建ち並び、全体が重要伝統的建造物群保存地区に指定されている山間の集落である。鬼無里には鬼女伝説があるが、青鬼にも鬼が住んでいたという伝説が残っている。白馬村から鬼無里へは鬼無里街道(現在の国道406号線)が続いており、現在でも沿線の小神社には修験道の伝統が続いている痕跡を見ることができる。

 羿神話に否定的、という点で、類話は「黒姫物語」である。
 乞巧奠について、参照:太陽と木と鳥1

#伝説 #長野県 #北信 #鬼無里 #蜘蛛 #蛇 #動物 #祟り #復讐 #聖ゲオルギウス #失敗 #川 #水神

by admin. 伝説,固有地名 <1232文字> 編集

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