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2022年2月の投稿40件]

とりかえ子
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 110-112p
「フェアリーのおくりもの トマス・カイトリー」 36-38p

 「とりかえ子」について2篇。
 「とりかえ子」とは、精霊が赤ん坊をさらう代わりに、自分の子供を置いていってしまった、その子供のこと。
 普通の赤ん坊と違って、異様な行動をしたり、成長が普通でなかったりする。
 人々は知恵を使って、とりかえ子を追い出し、本物の赤ん坊を取り戻そうとする。

 「とりかえ子」は大声で叫んだり、異常な大食いであったりして、まるで古代中国の饕餮のようである。
 類話は「とりかえ子(スコットランド)」、「とりかえ子(ドイツ)」

#伝説 #スカンジナビア #デンマーク #北欧 #トロール #取り替え子 #饕餮

by admin. 伝説 <341文字> 編集

トロルと踊った少女
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 109-110p

 少女が冥界へ行って戻ってくる話。
 踊りが「禁忌」となっていて、少女は時間と正気を失う。

 浦島的な部分については「あの世で過ごした一夜」が類話。
 正気を失う点については「底革のハンス」が類話である。
 ダンスと関連する点については「フェアリーの住居にはいった若者」が類話である。

#民話 #スカンジナビア #デンマーク #北欧 #トロール #踊り #狂気 #浦島太郎

by admin. 民話 <240文字> 編集

トロルのお産
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 108-109p

 冥界(異界)へ行って戻ってくる物語だが、出産を手伝って謝礼を貰うという話。
 請われて出向くくらいだから、「逃走」はない。
 「ピクシーのお産」、「フェアリーの乳母」が類話である。

#伝説 #スカンジナビア #デンマーク #北欧 #トロール #報恩 #求産婆 #職能

by admin. 民話 <177文字> 編集

じゅうにのかみのおたのすけ
「長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 91-94p

 「狐に化かされる」小編が4つ語られる。
 狐神に対する信仰は、日本では「稲荷信仰」に集約されるが、その起源は古代中国の西王母の随獣である「九尾の狐」にまで遡ると思う。
 狐神は人に恩恵を与えてくれるだけでなく、道に迷わせたり、幻を見せたりする神であり、その結果、狐の好物とされている食べ物を人間から取り上げたりする。
 化かされると、道に迷ったりする結果、人が命を落とすことも少なくないように思う。
 「化かす」とは、神の所業としては「祟り」に似たものだと思うが、動機は餌のためであったりして、姿だけでなく性質も獣的な面を強く残しているのが狐神の特徴であるような気がする。

 筑北村(旧坂北村)の里坊稲荷には7年に一度「狐の嫁入り」行列が披露される、珍しいお祭りがある。

#昔話 #長野県 #中信 #稲荷 #狐 #動物 #化かす #祟り

by admin. 伝説,神名,固有神獣 <414文字> 編集

ボデディスの伝説
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 107-108p

 トロールが「助け手」となって、行方不明の息子が牢から「呪的逃走」するという趣旨の物語。
 冥界から持ち帰ったもの(鎖の一部)が境界に奉納されて、まるでトロールが教会の下部組織ででもあるような扱いである。

#伝説 #スカンジナビア #デンマーク #北欧 #トロール #報恩 #教会 #カトリック

by admin. 伝説,固有地名 <185文字> 編集

スカンジナビア半島のトロール

トロールは丘陵地、長塚、土墳などの下に共同体を作り暮らすためスウェーデンではベルグフォルク(丘の人々)と呼ばれた。彼等の住処は財宝でいっぱいで夜になると光り輝くと言われた。彼らは騒音を嫌い鐘や教会からは離れて暮らした。気に入った人間には富と幸運をもたらし、気に入らないものには不運と破壊をもたらした。また女子供をさらい財宝を盗む。金属工芸にも秀で、薬草や魔法を使った治療にも秀でていると言う。日の光に当たると石に変わるため、夕暮れ時から明け方までしか姿を見せない。
参照:トロール

#神話 #スカンジナビア #デンマーク #北欧 #トロール

by admin. 神話,定義 <288文字> 編集

オーゲルブの教会に奉納された杯
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 105-106p

 教会に奉納された杯の由来譚である。
 物語の骨格は「怪物退治」の省略された「呪的逃走」のみの話。
 教会が絡む物語なので、教会そのものが逃走の「助け手」となる。日本でもお堂等に逃げ込んで鬼をやり過ごすような話があったと思う。
 古代の神々の役目であった「呪的逃走」の助け手を、確立された世界宗教も引き継いだ一例といえる。
 トロールの酒を捨てるところは、メソポタミア神話の「アダパの物語」を思わせる。
 もちろんアダパよりもずっと現代に近い時代の物語であるので、他人が差し出した怪しい飲み物などは飲まないのが常識ではあるが。
 物語的には「杯」は、「魔法の大釜」が著しく変形したものであろうか。
 類話は「スヴェンド・フェリングと女エルフ」、「フェアリーの宴会」である。

 参照:アダパトロール
 
#伝説 #スカンジナビア #デンマーク #北欧 #トロール #踊り #魔法のアイテム #酒 #魔法の大釜 #不死の霊薬 #呪的逃走 #馬 #教会 #カトリック #椀貸伝説

by admin. 伝説,起源・由来,固有地名 <497文字> 編集

英雄ディックベール ATU513A+AT530+AT313
「シルクロードの民話 パミール高原」 157-171p

 2つのモチーフが組み合わさった物語。
 1つ目はいわゆる「難題婿」で、おじいさんと霊鳥シームルグの助けを得て、女主人公を手に入れる物語である。
 中間部として、二人の若者の出会いと、「力くらべ」の末の和解と友情が挿入される。インド神話のガルダとインドラの関係に似る。
 2つ目は、もう一人の若者の冒険を、霊鳥シームルグと主人公が助ける物語で「呪的逃走」を伴う。

 シームルグは本物語では「母なる鳥」とされているため、女神的存在ということで、「ホレのおばさん」型とする。「呪的逃走」の場面では「川と石」と「櫛」という有名な2つのモチーフが登場する。

 霊鳥シームルグはイラン神話に登場する古い時代からの神的存在で、伝承はイランのみならずパミール高原にまで広がっているようである。シームルグが木に住んでいて、その根元に蛇が住んでいるというところは、イラン神話の「ハオマの木」を思わせるが、「鳥と蛇の対立」はインド神話のガルダとナーガを思わせる。(イラン神話では蛇(トカゲ)から木を守るのは魚やロバとされている。)
 神話では、シームルグの羽には病気や傷を治す霊力がある、とされているが、民間伝承では、その能力は拡張されて、西欧の民話に出てくるような「助け手のおばあさん」「助け手のおじいさん」(彼らの本来の姿は異教の神々だったのだろうと思うが)のような全能的な役割をシームルグが負っている。シームルグは助言をしたり、魔法のアイテムをプレゼントしたりしてくれる。
 また、神話では英雄ロスタムとイスファンディヤール王子との争いの際にシームルグが和解するよう助言する場面があり、神話と本物語を併せると、シームルグは広く「友愛を取り持つ霊鳥」とみなされる傾向があるのかもしれない、と思う。「霊鳥」に関して、イラン神話とインド神話の両方の要素がみられ、中間地点のパミール高原の物語として興味深く感じる。

「川と石」のモチーフ:「サルのよめ」、「スルタンのぶち犬」、「山男
「櫛」のモチーフ:「スルタンのぶち犬」、「紡錘むすめ

参照:木と鳥

#民話 #ウラテューベ #難題聟 #シームルグ #ホレのおばさん #力くらべ #おじいさん #オーディン #プラタナス #蛇 #魔法のアイテム #舌の下 #ボロルドーイ #砥石 #櫛 #鏡 #魔人 #川と石 #6人が世界じゅうを旅する #ガラス山の姫 #呪的逃走 #炎黄闘争

by admin. 民話,固有神獣 <1163文字> 編集

底革のハンス
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 101-102p

 妖精の「踊りの丘」でエルフの踊りを見て、エルフの乙女の誘惑(キス)に負けた若者が狂気に陥った、という物語。

 超常的な者にキスされて正気を失ったり、記憶を喪失するという物語はときに見られる。相手が「美しい乙女」だからそうなる、というものでは必ずしもないらしい。
 参照:悪魔の難題

 正気を失う点は「トロルと踊った少女」が類話である。
 
#民話 #スカンジナビア #北欧 #エルフ #踊り #キス #禁忌 #狂気

by admin. 伝説,起源・由来,固有地名 <252文字> 編集

りこうな末っ子 ATU921
「世界の民話1 ドイツ・スイス ぎょうせい」 319-321p

 怪物を退治するのではなく、知恵で相手を関心させて豊穣(借金帳消し)を得るタイプの物語。

#民話 #レートロマン #叡智 #怪物納得 #末子成功譚 #農夫の息子と王

by admin. <131文字> 編集

小人の剣ティルフィング(ティルヴィング(Tyrfing))
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 90-92p

 小人の剣は、作り手を脅したりして無理矢理作らせると、持ち主に不幸をもたらす、という例の物語。
 「ヘルヴォルとヘイズレク王のサガ(古ノルド語: Hervarar saga ok Heiðreks)」の中心となる呪われた剣である。

 サガの筋は「『北欧神話と伝説』、V.グレンベック著、山室静 訳、講談社、278-302p」に詳しい。
 
#伝説 #北欧 #ドワーフ #魔法のアイテム #文献  #小人

by admin. 伝説,神話,固有アイテム <258文字> 編集

主イエスと聖ペトロがフリオールに来たとき ATU750A
「世界の民話1 ドイツ・スイス ぎょうせい」 332-335p

 労働を続けることで豊穣をかなえるタイプの蘇民将来型の民話。
 「麻布とくしゃみ」が類話である。「労働を続ける」という点では「山女の贈りもの」が類話。

#民話 #レートロマン #蘇民将来 #労働継続 #イエス #亜麻布 #織女 #3つの願い

by admin. 民話,固有地名 <189文字> 編集

どこにもない花
「シルクロードの民話 パミール高原」 147-156p

 2つのモチーフが組み合わさった物語。
 導入部分は主人公が結婚のために宝物を求める、という内容。「難題聟」であり「イアーソーン型」である。難題を課すのは舅である。おばあさんが間接的な助け手となるが、一般的に人でもできる範囲の助けに留まって、ナンの役割などははっきりしない。
 主人公は人でなしの青ひげ的魔法使いに弟子入りする形式だが、魔法を教えてくれるのは魔法使いの娘である。冥界(魔法使いの住処)からの呪的逃走はあるのだけれども、魔法使いが町中に住んでいる、という設定になっているので「異界からの逃走」という要素がやや曖昧と感じる。本来、逃走のためのものであった主人公の「変身」も金儲けのためともなっている。「魔法使いの弟子」的な変身による逃走を繰り返して、主人公は魔法使いを退治すると、王女を得て結婚となる。

 「財宝探索」の物語の中に、入れ子のように「魔法使いの弟子」的な、冥界を経て変身しながら逃走する物語が組み込まれている。そのため、冥界の娘との婚姻譚は削除されている。一番の類話は「魔法使いの弟子」である。
 
#民話 #タジキスタン #難題聟 #イアーソーン型 #おばあさん #ホレのおばさん #娘 #山羊 #羊 #牛 #馬 #駱駝 #鳩 #花 #イスラム教の僧 #大麦 #鶏 #狐 #変身 #呪的逃走 #怪物退治

by admin. 民話 <615文字> 編集

トルストン(Thorstein)と小人
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 89p

 トルストンは7世紀に実在したと言われてる伝説上の人物である。
 小人を助けて、お礼に魔法のアイテムを貰った、と言われている。
 参照:トルストンのサガ
 
#伝説 #北欧 #ドワーフ #魔法のアイテム #小人

by admin. 伝説,英雄名,多エピソード保有人名 <149文字> 編集

あの世で過ごした一夜 ATU470
「世界の民話1 ドイツ・スイス ぎょうせい」 328-332p

 結婚をきっかけに主人公が冥界へ行って、戻ってくる物語。供がつく「ボロルドーイ」型の変形といえる。冥界から戻ってくると、長時間が経っているところは「浦島太郎」的である。

 浦島的な点は「トロルと踊った少女」が類話である。

#民話 #レートロマン #結婚 #ボロルドーイ #浦島太郎 #この世とあの世の友

by admin. 民話 <204文字> 編集

ロキと小人
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 86-88p

 ドゥエルガル(dvergr)の性質を示すものとして、カイトリーが紹介した物語。「妖精の誕生」の目次では民話とされているが、神話である。神々の武器をロキがどのようにして手に入れたのか、という由来譚になっている。 参照:シフの髪を切った話
 小人とは、この物語のように魔法のアイテムを作る、主に地下に住む鍛治師とされている。
 この物語についての「妖精の誕生」でのカイトリーの解説には、個人的には何も言えない。(というか、何が言いたいのかよく分からない。)

 シフの髪を切った話は、「怪物退治譚」の変形で、宝物探報が主な目的となった「イアーソーン型」である。物語の導入部分は、上位の神トールとの対立であるので、「ゲイ流譚型」といえる。
 物語としては、流れに疑問を感じる不自然な場面がいくつかあり、欠損を思わせる。それは、
 1.何故ロキがシヴの髪を刈ってしまうのか。なぜ、自然に髪が伸びるまで待てないのか。という点
 2.手に入れた魔法のアイテムはいわば「賠償品」であって、最初からロキのものではないのだが、なぜロキは品物を自慢したりしたのか。そして、なぜ命を賭けた賭けをしたのか。という点
の2点である。
 「シヴの髪を刈る行為」は、「長く豊かな髪」は女性らしさの象徴でもあり、夫の自慢でもあるので、それは「女性の死」の暗喩であると思う。つまり、ロキはシヴを殺してしまったので、その再生のために冥界を流転する旅に出ることになる。旅には、シヴの再生の目的と、もっと人の現実世界に近い「賠償」のため、という2つの側面がある。ロキの旅に2段階あるのは、最初の旅のみでは、再生に足りない、あるいは賠償が足りない、とされる理由が本来あったのではないだろうか。そのため、さらなる目的物を得るためにロキは命を賭けなければならないのである。一つの命を再生させるために、新たな命が必要とされる、というのはよくある神話のパターンである。
 そして、旅の目的を果たしてロキは帰還するが、結局は成功と認められないことになる。従ってロキは殺されねばならない。この展開にも2面性があり、ロキはシヴの再生のために最初から命を差し出さねばならない、という神話的目的と、「賠償に失敗したから」という現実的な目的が入り交じっているように思う。「口をきけないようにする」という展開は、「ロキの死」を暗喩している。

 民話では、物語の最後は「めでたし めでたし」で終わることが多いが、西欧の神話では特に悲劇で終わることが多い。登場人物のほとんどが死んでしまう「ニーベルンゲン」のような物語もある。ただし、本物語は、「北欧神話」という大きな物語群の中で、「神々の武器の由来譚」としての位置を与えられたこと、ロキの最期がラグナロクに位置づけられたことなどから、ロキの死は暗示されるだけで、物語の上では死なない、ということに変更されたのではないか、と思われる。男神が女神を再生させる、という点ではイナンナとタンムーズ的ともいえる。タンムーズも冥界のイナンナの怒りを買ったことが、彼の死の原因とされている。

 類話はケルト神話の「トゥレンの息子達 」である。主人公達は、人の命を奪い、上位の神に賠償するために財宝を探索する「イアーソン型」かつ「ゲイ流譚型」の旅をする。試練が2部制になっている点、最期に主人公達が亡くなる点等が共通である。

#神話 #北欧 #イアーソーン #ゲイ流譚 #魔法のアイテム #イナンナとタンムーズ #損害賠償 #小人 #ドワーフ

by admin. 民話,神話,起源・由来,多エピソード保有人名 <1491文字> 編集

クワッ、クワッ、くっつけ! ATU571
「世界の民話1 ドイツ・スイス ぎょうせい」 322-328p

 主人公の頭が「かさぶただらけ」というのは、「鉢かづき姫」のような「見るな」の禁忌の暗喩だと思う。「ものぐさ太郎」も同様である。
 楽しい笑話である。

#民話 #レートロマン #王女難題 #おばあさん #ホレのおばさん #鵞鳥 #かさぶた #見るな #鉢かづき姫 #「みんなくっつけ」

by admin. 民話 <197文字> 編集

ドゥエルガル(dvergr)
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 85-86p

 「ドゥエルガルははじめユミルの肉の中に創造され、生活をはじめ、その中のウジとなっていたが、神々の意志によって人間の知識を分け与えられ、人の姿をとるようになった。しかしなお大地の中と石の中に住んだ。(エッダ)」
 とのことで、彼らは冶金術に優れている。

 ドゥエルガル(dvergr)は英語のドワーフ(dwarf)の起源である。
 個人的には、地下世界の宝を形にする存在なので、冥界神が崩れて精霊化したものではないか、と思う。
 
#神話 #北欧 #ドワーフ

by admin. 神話,定義 <271文字> 編集

アルファル(alfer他)
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 82-84p

 明るいアルファル
 「ユグドラシルの下、アルフ・ヘイムと呼ばれる町があり、明るいアルファルとよばれる人々が住んでいる。明るいアルファルの姿は太陽より白い。」とされた。(「散文のエッダ」より)
 ノルニル(ノルンの複数形)はアルファルの種族だとされている。

 暗いアルファル
 「地下世界に住んでいる。暗いアルファルの姿は歴青(ピッチ)より黒い。」とされた。(「散文のエッダ」より)

 ノルン
 神の種族とされるもの:人間の人生を形作るもの。ウルズ(ウドル)、ヴェルザンディ(ヴェルタンディ)、スクルド(過去、現在、未来)の3姉妹である。
 アルファルに属するもの:神以外のもの
 ドゥエルガルに属するもの:上記以外

 とされた。

 アルファル(alfer)は英語のエルフ(elf)の起源である。

 参照:エルフ
 
#神話 #北欧 #エルフ

by admin. 神話,定義 <484文字> 編集

白檀の木 ATU450
「シルクロードの民話 パミール高原」 139-146p

 女主人公は兄と結婚させられそうになって家を出る。「セクメトの失踪」の前半的だが、民話では神話とは違い兄妹の結婚は忌避されるので、兄が連れ戻しに旅に出ることはない。その名残が女主人公を引き留めようとする家族との歌のやり取りであると思う。烏に運んで貰う点は「怪鳥」型である。兄と女主人公との仲は当然破綻するので「ゲイと嫦娥」型である。
 女主人公姉妹と白檀の木が一体のものとして語られる点、二人が空を飛んで移動する点、特に姉が池の女神的でもある点は「天人女房」的であり、「たまご姫」、「スルタンのぶち犬」と共通している。姉妹のうち、妹は鹿の化身でもある。姉妹併せると、アルテミスとその聖獣の鹿を彷彿とさせる。姉が妹の人身御供的死を阻止するのは、「アルテミスとイーピゲネイア」型である。
 女主人公が冥界で子供を生む点は、どちらかといえば「エンリルとニンリル」的だと思う。ただし、この物語では夫の再生というよりは、女主人公自身の地位の確立に役立つエピソードとなっている。
 王の最初の3人の妻が殺されるところは、女主人公が植物の化身であることからも「瓜子姫」型といえる。女主人公が植物的であるという点は「とくさむすめ」が類話といえる。「瓜子姫」型としては「のろいをかけられた花嫁」、「悪魔の難題」の後半部分も類話といえる。

 全体は「うりひめ」、「たまご姫」のように、天人(あるいは鳥)を思わせる女主人公が、瓜子姫的な変遷を経て結婚による幸せを手に入れる、という物語である。物語の導入部分は「ゲイと嫦娥」型の物語と「セクメトの失踪」型の物語が組み合わさって崩れたもの。(最も嫦娥も夫の元から月へと失踪するのであるが。)女主人公と妹との関わりは、まさに「アルテミスとイーピゲネイア」であると思う。キリスト教以前に、広範囲にわたる「月の女神信仰」があったことを伺わせる。嫦娥は中国の月の女神であるので、洋の東西の「月の女神」の要素が融合して含まれている物語といえ、シルクロードの物語的だと思うし、興味深く感じる。

#民話 #ウラテューベ #セクメトの失踪 #小鳥 #鳩 #烏 #怪鳥 #白檀 #樹木信仰 #ゲイと嫦娥 #水 #池 #鹿 #変身 #アルテミスとイーピゲネイア #出産 #すり替え人 #エンリルとニンリル #瓜子姫 #小さい兄と妹

by admin. 民話 <1050文字> 編集

フェアリー女王
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 74-77p

 「妖精の女王(The Faerie Queene)」は、16世紀イングランドの詩人エドマンド・スペンサーの代表作で、アレゴリーをふんだんに用いた長詩である。当時のイングランド女王エリザベス1世に捧げられた。
 全6巻と断篇からなる長編叙事詩で、アーサー王物語を題材にしている。本来全12巻で構成され、各巻で12の徳を描く予定であったが、最終的には神聖、節制、貞節、友情、正義、礼節の6つのみが描かれた。(Wikipedia より)

 カイトリーによると、スペンサーの「妖精の女王」により、フェアリー(faerie)という言葉は、民間信仰のエルフ(elf)を意味する名称として確立した、とのことである。

 エルフ(英: elf、複数形: elfs、elves)は、ゲルマン神話に起源を持つ、北ヨーロッパの民間伝承に登場する種族である。日本語では妖精あるいは小妖精と訳されることも多い。北欧神話における彼らは本来、自然と豊かさを司る小神族であった。エルフはしばしば、とても美しく若々しい外見を持ち、森や泉、井戸や地下などに住むとされる。また彼らは不死あるいは長命であり、魔法の力を持っている。(Wikipedia より) 参照:アルファル
 
#伝説 #イギリス #フェアリー #エルフ #ロマンス

by admin. 伝説 <585文字> 編集

スルタンのぶち犬 ATU425B+ATU313
「シルクロードの民話 パミール高原」 106-126p

 予言によって定まった夫に親が不満を持つ点は「牧童と商人の娘」的である。聟が犬である点は東アジア的か。
 瓜子姫的な入れ替わりの要素はあるが、中途半端に完結し、二人の女性のうち、どちらかが死ぬような残酷な結末はない。人には言えないことを石に向かって述べる、という独特のエピソードがある。
 主人公は眠っているが、女主人公が頭を洗うと目覚める。(女主人公によって蘇生する。)
 主人公には、夜になると犬になるという秘密がある。女主人公が皮を処分すると、夫との仲は破綻して、夫は失踪する。(再度の死を意味する。)
 女主人公は失踪した夫を探し出す旅に出る。女主人公の立場が変化する(夫を得るきっかけとなる)場面で池や水が登場する点は「たまご姫」、「白檀の木」に通じる。原型となった物語では女主人公は鳥女房的な女神だったのではないだろうか。
 女主人公は姑の試練を夫の助けによって乗り越える。この点はクピードーとプシュケー的である。
 最後は魔法のアイテムを使用した呪的逃走である。櫛が植物に変化して女主人公と主人公を助ける点は「英雄ディックベール」、「紡錘むすめ」と共通している。
 逃走の際、姑と妹が石を抱いて川に沈んでいくエピソードは「英雄ディックベール」、「サルのよめ」「山男」と共通している。
 
 女主人公は2回主人公の蘇生(呪いを解く)を助け、主人公は1回女主人公の蘇生を助けている物語といえる。導入部分は瓜子姫的物語、「兄その他を探す乙女」のうち、前半は「ハンナハンナとテリピヌの神話」的な物語、後半は「クピードーとプシュケー的」物語で、主に三つのエピソードが組み合わさった物語と言える。個々のモチーフの類話も多岐にわたる。様々な文明の十字路であるシルクロード的な物語といえる。

#民話 #ウラテューベ #予言 #槃瓠 #瓜子姫 #皮処分 #大理石 #ゲイと嫦娥 #兄その他を探す乙女 #テーセウスとアリアドネー #池 #水 #指輪 #姑 #クピードーとプシュケー #櫛 #鏡 #砥石 #魔法のアイテム #川 #川と石 #魔女の息子 #呪的逃走

by admin. 民話 <977文字> 編集

山のこびと ATU311
「世界の民話1 ドイツ・スイス ぎょうせい」 309-318p

 「山のこびと」とは青ひげのような存在である。大金持ちであり、「見るな」の禁忌を持つ。
 逆にこびとが荷物を運ぶ際は、こびとに「見ている」と労働を促すようになっている。
 女主人公は老人と叡智と複数の助け手によりこびとを倒し、とらわれている人々を解放する。
 池におちるフリをするモチーフは「ガマとサル」にもみられる。「石と川」の変形であろうか。
 女主人公が自ら問題を解決する点は「サルのよめ」が類話である。

 類話は「青ひげ」である。

#民話 #レートロマン #こびと #シヴァとサティー #見るな #禁忌 #金の飾りピン #見ている #怪物退治 #蜂起 #おじいさん #オーディン  #池に落ちるふり #川と石 #人身御供 #罰を受ける女神 #炎黄闘争 #妹による救出

by admin. 民話 <398文字> 編集

サー・トパスのロマンス
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 70-71p

 「サー・トパスの物語」、『カンタベリー物語』(The Canterbury Tales)に含まれる。作者はジェフリー・チョーサー(Geoffrey Chaucer)、14世紀に書かれた。

 高潔なサー・トパスはエルフの女王を愛すると決めてフェアリーの国を探し求めた。フェアリーの国は見つかったが、そこには人っ子一人いなかった。

というあらすじの物語で未完である。未完である。「天国の恩恵はたやすく手に入らない」という皮肉が込められた話が予定されていたのであろうか。
 
#伝説 #イギリス #いなくなった妻を探す夫 #獣の王 #ロマンス #カトリック

by admin. 伝説,英雄名 <316文字> 編集

アブラハムとアブラメッサ ATU2030
「世界の民話1 ドイツ・スイス ぎょうせい」 305-309p

 語る言葉がどんどん増えて、ドミノ式に解決する物語。言葉にして読むよりも、語り手が巧みに語ることそのものを楽しむ物語といえよう。

#民話 #レートロマン #ドミノ式 #こけもも #狼 #犬 #かかし #火 #水 #牛 #皮でできた縄 #鼠 #猫 #お婆さんと彼女の豚

by admin. 民話 <188文字> 編集

使用文献
 世界の民話 ドイツ・スイス、小沢俊夫 編・訳、ぎょうせい、1976
 シルクロードの民話 パミール高原、小沢俊夫 編、ぎょうせい、1990
 ソヴィエト諸民族民話集、エム・ブラートフ編、未来社、1955
 妖精の誕生 フェアリー神話学 トマス・カイトリー 教養文庫 社会思想社 1989

 長野のむかし話、長野県国語教育学会編、日本標準、1976
 読んで 遊んで とっぴんぱらり 新長野のむかし話、 長野県国語教育学会編、日本標準、2003
 飛騨ぶり街道物語、岐阜新聞社、2001

原典資料
 フェアリー神話学(The Fairy Mythology)、トマス・カイトリー(Thomas Keightley、1892年)著、THE FAIRY MYTHOLOGY
  デンマーク民話集、ティーレ
      アイルランド南部の妖精伝説と伝承(Fairy Legends and Traditions of the South of Ireland )、クローカー、1825
  高地人の民間迷信、スチュワート(R. Grant Stewat)、1823
  ウェールズ旅行記、ギラルドゥス・カンブレンシス(Giraldus Cambrensis)

アーサー王関連
 湖のランスロット (Lancelot of the Laik)、英語、A SCOTTISH METRICAL ROMANCE,(ABOUT 1490-1500 A.D.)、Lancelot of the Laik
アーサー王に関する書籍の一覧

#出典 #原典 #リスト畳む

by admin. <679文字> 編集

恋の試練
「シルクロードの民話 パミール高原」 106-126p

 頭蓋骨の粉をなめて懐胎する、という不思議な導入部分である。頭蓋骨の正体は物語中では明らかにされない。冥界神が変化したもの、といえようか。破られてしまうが「見るな」の禁忌がかかっている。頭蓋骨の息子である主人公は半神半人的であって、あっという間に成長する。
 主人公と女主人公が歌を交わすところは、アジア的な「歌垣」の文化を思わせる。
 一方、女主人公はとびらの中に住んでいることが強調されたり、人をしびれさせる薬を持っていたりする点から、「冥界の女神」が変化したものであることが窺える。主人公は難題(労働、謎解き)を課せられるが、切り抜ける。

 主人公は女主人公と結ばれる前に別の女性を押しつけられそうになるが、丁重にお断りする。この点は、最初の2人が殺されているわけではないが、シヴァとサティー的神話が変化したものであろう。男性の側にも女性に対して強い誠実さを求めるところがイスラム的な文化の良いところだと思う。


#民話 #アフガニスタン #禁忌 #見るな #頭蓋骨 #処女懐胎 #歌 #テーセウスとアリアドネー #シヴァとサティー #難題聟 #謎解き

by admin. 民話 <515文字> 編集

金髪の姫
「世界の民話1 ドイツ・スイス ぎょうせい」 297-305p

 女主人公は上位の女神(貧しいおばあさん)を侮辱して呪いをかけられる。その結果、風に乗って空を飛べるほど痩せ細ってしまう。「変身」的な要素であるが、全く別の存在に変わってしまうわけではない。イメージとしては蝶を暗喩しているのかもしれない。アテーナーとアラクネー的な展開である。
 女主人公が風にさらわれる点は、「風の神のおよめさん」を連想させる。明確に「風の神にさらわれた」とはされていないが、そのようなクピードとプシューケー的な要素の片鱗が認められる。
 女主人公は、海の向こうに飛ばされる「竜宮」型の失踪を遂げる。女主人公が失踪するまでが、一つのドラマティックな物語として成立している。女主人公が嵐の中、戻ってくるという展開は「季節の変わり目」を連想させ、季節の変化による植物(でなければ植物の化身である女神)の変化の神話が根底にあるのではないか、と思う。ただし、植物信仰の要素はほとんど残されていない。

 主人公は女主人公を求めて探索を始めるが、老人の助力を得て、かつ「小さいパイプ」の魔力で問題を解決する。物質の精霊のおかげで問題が解決できるのは「魔法のランプ」型である。

 全体としては「失踪した女神を連れ戻す話」が元にあり、それが崩れたのみならず、独自に文芸的な展開をしている物語だと感じる。アテーナーとアラクネー的な展開だったり、逃走に馬が重要な役割を果たすなど、南欧の神話の影響が強い物語といえるか?

#民話 #レートロマン #塩 #胡椒 #変身 #予言 #メドゥーサ #セクメトの失踪 #いなくなった妻を探す夫 #風 #竜宮 #試練 #老人 #オーディン #小さいパイプ #魔法のランプ #鷲 #怪鳥 #天馬 #白馬 #女神

by admin. 民話 <762文字> 編集

漁師と魚 AT302+AT316
「世界の民話1 ドイツ・スイス ぎょうせい」 274-297p

 「怪物退治」譚の2つのパターンが組み合わさった物語。
 一つは、魚の怪物と対峙する物語、もう一つは竜と対峙する物語である。魚の怪物は倒すわけではない。どちらの対決も、動物神と女主人公双方の助けを得ている。

#民話 #レートロマン #不知の子 #禁忌 #海 #熊 #蟻 #烏 #動物神 #変身 #竜 #龍 #怪物退治 #秘密の急所 #蛇の卵 #テーセウスとアリアドネー #歌 #卵の中に隠された鬼の(悪魔の)心臓 #水車池の女の水の精霊

by admin. 民話 <269文字> 編集

幽霊床屋 ATU326+ATU1645
「世界の民話1 ドイツ・スイス ぎょうせい」 279-294p

 主人公が旅に出る動機が自らの浪費と借金の取り立て目的である点は近現代的な設定といえる。
 全体としては「怪物退治」の変形版だが、「結婚」を手に入れるためには、怪物退治ではなく、呪いのかけられた幽霊の魂の救済が必要とされる。神父を冒涜すると呪われる、とか、神に仕える者がそんなことをして良いのか、とも思うがキリスト教に対する畏怖の念を植え付けるには充分であろう。
 最後に宝を手に入れたのみならず、借金の取り立て問題まで解決できたところは、キリスト教に対する信仰のおかげ、という分かりやすい説話譚といえるか。

#民話 #レートロマン #正体不明の助け手 #林檎の木 #こびと #幽霊 #義足の男 #オーディン #謎解き #叡智 #呪い #橋 #カトリック #怖さとは何かを知りたがった若者 #宝は自分の家にあり

by admin. 民話 <409文字> 編集

甥と叔父
「シルクロードの民話 パミール高原」 86-106p

 主人公と女主人公が上位の者と対立して町を追い出されるところは「ゲイ流譚」型といえる。
 女主人公が魔人の側について、兄を殺そうとする。「怪物退治」のうち、ティアマト型といえる。自ら生んだ息子に殺される点も、マルドゥクとティアマトの関係を連想させる。魔人が穴の中に封印されていた点は、元は「冥界神」だったことの暗喩といえる。
 甥が叔父に代わって戦い、魔人を倒したり、花嫁を得る点はまさに「ジークフリート型」といえる。
 
 本来的な物語が「テーセウスとミーノータウロスとアリアドネー」だったとすれば、本来は女主人公と魔人が兄妹(あるいは姉弟)という関係であって、外からやってきた主人公(本物語では「兄」)の方が略奪婚の当事者だったといえるのではないか、と思います。私は、民話を考察する際に女主人公から見て「兄弟」と「夫」の区別はあまりつけません。なぜなら、古代の特に母系社会ではイシスとオシリスのように、兄妹であって夫婦である、ということは珍しいことではなく、むしろ家の財産を守るためにはその方が妥当であった、という文化があるからです。日本の古代の天皇家も、異母兄弟で結婚して天皇、皇后となり、皇族でなければ皇后として認められなかった、という時代がありました。そこには現代的に「兄弟」と「夫」を区別する文化はありませんでした。古代日本の「妹」という言葉は、妻を指す言葉でもあり、妹を指す言葉でもあったのです。また、通い婚である母系社会では、夫は複数いて当然ですので、女性の不貞という概念がなく、その点も現代と異なります。そのように考えると本物語の「甥」は、本当は魔人の子供なのか、兄の子供なのかも分からない、ということになります。子供が主人公のことを愛して、父親だと感じていたのであれば、血のつながりに関係なく主人公の側につくことは母系社会的にはあり得ること、と思います。ただし、本物語では「甥」は魔人の血を引いた半人半神のような英雄であり、正義に味方する若き神のような存在ですので、そういう点も「正義の神」であるマルドゥクを連想させます。そして、当然イスラム文化の影響を受けている物語ですから、イスラム的には女主人公の死は「名誉殺人」的な概念となるのかなあ、と思います。(身内を裏切って、身内の賛成しない男と仲良くなって正式な結婚もせずに、事実上の夫婦となっているわけだから。ただし、民話としてはそのような女主人公の行動も古代の女神の名残のように思われます。)

 ジャムシード王は伝説的な古代ペルシアの王と言われていますが、インド神話のヤマ(閻魔)、北欧神話のユミルと同語源であると言われています。ジャムシード王の尽きせぬ宝がどこかの洞窟に隠されている、との考え方は、「さまざまな鉱物資源(尽きせぬ宝)を体内にため込んでいるプタハのような大地(冥界)の神」を連想させ、少なくとも民間的にはジャムシード王のことを、「宝物をため込んでいる冥界の王」と見なし得るような口頭伝承があったのかもしれない、と思うと、ジャムシード王からヤマへの変遷が感じられて興味深く思います。

#民話 #タジキスタン #ゲイ流譚 #怪物退治 #ティアマト #怪物尊重 #ジークフリート

by admin. 民話,神話 <1383文字> 編集

不実な女
「シルクロードの民話 パミール高原」 81-86p

 主人公である王が妻の不実(事実上の不貞)に気がついて行動を起こす点は「アラビアンナイト」の導入部分と良く似ている。「アラビアンナイト」では、主人公は不貞を働いた女主人公を殺し、それだけに飽き足らず次々と女性を娶っては殺す、という「復讐婚」的な暴君へと変化するが、本物語では、妻を檻に閉じ込めたところで物語は終わる。
 「閉じ込められた妻」は「冥界に閉じ込められた(=死)」を暗示させるが、直接的な死としては語られない。直接的な死の表現がないところは、ペルセポネーのような「冥界の女神」への変化をも暗示させるか。
 不倫妻が愛人に入れ込んで夫を殺そうとする(夫に不幸をもたらそうとする)点は、「アーサー王とグィネヴィア」を連想させる。神話としては「ネミの森」的といえよう。古代の冷酷な豊穣の女神にとっては、夫は「年老いている」というだけで、捨て去る正当性が生じるからである。
 妻を閉じ込めた後、主人公が「聞くな」の禁忌を持つ存在へと変化するのは「王様の耳はロバの耳」を連想させる。蛇王ザッハークとの関連が示唆される。「女主人公が交替しない」という点では、シヴァとサティーの不完全な形と言える。

 全体としては「ネミの森」的な人身御供を求める女神信仰と、シヴァ的な「妻の人身御供」を求める男神信仰が混在している物語で、不貞を嫌うイスラム的な思想が二つを纏めている物語といえると思う。「怪物退治」譚として見た場合には、退治されるのは女性であり、えん罪ではないので、神々を殺そうとしたティアマト的といえる。

#民話 #タジキスタン #馬 #聞くな #禁忌 #怪物退治 #馬 #ティアマト #閉じ込められている乙女 #不倫 #アルテミス #ザッハーク #鉄の棒

by admin. 民話 <761文字> 編集

 個人的な基準で、民話のデータベースと分類を試みているページです。ミーノータウロス退治のような「怪物退治」を特に細かく分けようと試みています。サイトマップ

1.ミーノータウロス退治のように、「主人公が怪物を退治し、怪物の近親者(姉妹、娘など)を妻とするタイプ」とその変形の物語。
(1) 問題解決のために「妻の手助け」があるタイプ → 「テーセウスとアリアドネー」型     #テーセウスとアリアドネー
(1)-あ 問題を姑が課すタイプ → 「ポポヨラのロウヒ」型                   #姑
(1)-い 問題を舅が課すタイプ → 「須佐之男」型                       #舅
(2) 主人公を助けるために女主人公が犠牲になるタイプ → 「エンリルとニンリル」型      #エンリルとニンリル
(2)-あ 退治されるのが女性で有罪であるタイプ → 「ティアマト」型             #ティアマト
(2)-い 主人公を軸として死により女主人公が入れ替わるタイプ他 → 「シヴァとサティー」型  #シヴァとサティー
(3) 問題解決のために「女神的存在の手助けがある」タイプ → 「ホレのおばさん」型      #ホレのおばさん
(4) 問題解決のために「男神的存在の手助けがある」タイプ → 「オーディン」型        #オーディン
(4)-あ 問題解決のために「神や仲間との力(食欲)くらべ」があるタイプ → 「ヤコブ」型   #力くらべ
(4)-い 問題解決のために男主人公が単独で解決するタイプ → 「ポセイドーン」型       #ポセイドーンとアムピトリーテー
(4)-う 問題解決のために男主人公が単独で解決し、結婚しないタイプ → 「聖ゲオルギウス」型 #聖ゲオルギウス
(4)-え 問題解決のために異種の供がつくタイプ → 「ブレーメン」型             #ブレーメン
(4)-お 問題解決のために若者等の供がつくタイプ → 「ボロルドーイ」型          #ボロルドーイ
(4)-か 問題解決のために「神の使いの手助け(女性等)」があるタイプ → 「ワルキューレ」型 #ワルキューレ
(4)-き 問題解決のために「動物神他の手助け」があるタイプ → 「動物神」型         #動物神
(4)-く 問題解決のために「動物神他を無理矢理こき使う」タイプ → 「酷使」型        #酷使
(4)-け 問題解決のために「物質の精霊他の手助け」があるタイプ → 「魔法のランプ」型    #魔法のランプ
(4)-こ 助け手が主人公に代わり問題を解決するタイプ → 「ジークフリート」型        #ジークフリート
(4)-さ 大勢の人が主人公と共に戦い、問題を解決するタイプ → 「蜂起」型          #蜂起
(5) 問題解決のために武力ではなく知恵を使うタイプ → 「叡智」型              #叡智
(5)-あ 問題解決のために謎を解くタイプ → 「謎解き」型                  #謎解き
(5)-い 謎を解くのに姥捨老人の知恵を得るタイプ → 「姥捨て」型              #姥捨て
(5)-う 問題解決のために詐欺的な悪知恵を使うタイプ → 「詐欺」型             #詐欺
(5)-え 問題解決のために知恵で相手を関心させるタイプ → 「怪物納得」型          #怪物納得
(5)-お 問題解決のために祭祀を行うタイプ → 「祭祀」型                  #祭祀
(5)-か 問題を女主人公が課すタイプ → 「王女出題」型                   #王女出題
(5)-き 女主人公が「怪物(主に実家)」の側につくタイプ → 「怪物尊重」型         #怪物尊重
(6) 主人公が弓の名手であるタイプ → 「射日神話」型                    #射日神話
(7) 主人公が動物番であるタイプ → 「動物番」型                      #動物番
(7)-1 主人公が草食動物であるタイプ → 「羊と狼」型                   #羊と狼 
(8) 女主人公と主人公が破綻するタイプ → 「ゲイと嫦娥」型                 #ゲイと嫦娥
(8)-あ 結婚前から女主人公と主人公が破綻しているタイプ → 「ティアマト」型         #ティアマト
(8)-い 女主人公が古い夫(主に老人)から乗り換えるタイプ → 「ネミの森」型         #ネミの森
(9) 怪物の急所が隠されているタイプ → 「秘密の急所」型                  #秘密の急所
(10) 家にやってくる怪物を退治するタイプ → 「迎え撃ち」型                #迎え撃ち
(11) 家にいる怪物を退治するタイプ → 「追い払い」型                   #追い払い
(11)-1 家にいる怪物を追い払えず逃げ出そうとするタイプ → 「追い払い失敗」型       #追い払い失敗
(12) 怪物を物に閉じ込めるタイプ → 「封印」型                      #封印

2.主人公が目上の存在(父親、上司等)と対立して旅に出るタイプ → 「射日神話」型       #ゲイ流譚
2-あ 主人公が特に海に流されるタイプ → 「淡島」型                      #淡島

3.主人公(あるいは女主人公)が怪物から逃走するタイプ
(1) 魔法や変身で逃げおおせるタイプ → 「呪的逃走」型                   #呪的逃走
(1)-あ 他人に匿われながら逃げおおせるタイプ → 「匿い」型                #匿う
(1)-い 動物と一緒に生活するタイプ → 「獣の王」型                    #獣の王
(1)-う 主人公が鳥に運んで貰うタイプ → 「怪鳥」型                    #怪鳥
(1)-え 主人公が魚に運んで貰うタイプ → 「ヨブ」型                    #ヨブ
(1)-お 鳥・魚以外の動物他に運んで貰うタイプ → 「運搬動物」型              #運搬動物

4.主人公が魔法使い等の弟子であるタイプ → 「魔法使いの弟子」型               #魔法使いの弟子
4-あ 主人公が半身であるタイプ → 「半身英雄」型                       #半身英雄

5.女主人公の所業で主人公(夫)が不幸になるタイプ → 「ネミの森」型             #アルテミス
5-あ 女主人公の所業のうち不貞以外での不幸(特に浪費)が隠されているタイプ → 「食わず女房」型          #食わず女房

6.女主人公が主に家族のために旅に出るタイプ → 「鉢里公主」型                #鉢里公主
(1) 失踪した兄弟や夫を探すタイプ → 「兄達を探す乙女」型                 #兄その他を探す乙女
(1)-あ 女主人公のえん罪等により失踪した兄弟や夫を探すタイプ → 「えん罪」型        #えん罪
(1)-い 継子虐めにより旅に出るタイプ → 「継子虐め」型                   #継子虐め
(2) 火を求めるタイプ →「火を探す乙女」型                         #火を探す乙女
(3) 問題解決のために「夫の手助け」があるタイプ → 「クピードーとプシュケー」型      #クピードーとプシュケー

7.女主人公が失踪するタイプ → 「セクメト」型                        #セクメトの失踪
(1) 失踪した妻を夫が探すタイプ → 「いなくなった妻を探す夫」型              #いなくなった妻を探す夫
(2) 主人公の所業に不満があって女主人公が失踪するタイプ → 「ラ・ラメー」型        #ラ・ラメー
(3) 「見るな」等の禁忌に触れて女主人公が失踪するタイプ → 「鶴女房」型          #鶴女房

8.主人公(達)を助けるために女主人公が身代わり的な子供を産むタイプ → 「エンリルとニンリル」型のうち「出産」型    #出産
8-あ 女主人公が性行為以外で妊娠するタイプ → 「処女懐胎」型                 #処女懐胎

9.主人公が何らかの理由で複数の人の命を求めるタイプ → 「ザッハーク」型           #ザッハーク

10.女主人公他が上位の女性から呪いをかけられるタイプ → 「メドゥーサ」型          #メドゥーサ
10-1 呪いの原因が明確な侮辱であるタイプ → 「アテーナーとアラクネー」型          #アテーナーとアラクネー

11.女主人公が眠っているタイプ → 「眠り姫」型                       #眠り姫
(1) 女主人公が扉の中に閉じ込められているタイプ → 「天岩戸」型              #閉じ込められている乙女
(2) 幼児が見知らぬ父親を言い当てるタイプ → 「賀茂別雷命」型               #賀茂別雷命

12.主人公他の命を巡って二柱の男神が対立するタイプ → 「神と悪魔」型            #オーディンとトール

13.樹木から豊穣を得るタイプ → 「樹木信仰」型                       #樹木信仰
(1) 樹木信仰のうち、鳥から豊穣を得るタイプ → 「鳥信仰」型                #鳥信仰

14.神々が旅をして死者を生き返らせるタイプ等 → 「蘇民将来」型               #蘇民将来
14-1 願いをかなえるタイプ → 「希望成就」型                       #希望成就
14-2 労働を続けるタイプ → 「労働継続」型                        #労働継続
14-3 1,2の内、神々が旅をしないタイプ → 「神固定」型                 #神固定

15.キリスト教の影響を受けた物語のタイプ → 「キリスト教」型                #カトリック
15-あ 悪魔に自ら魂を売るタイプ → 「魂売り」型                       #魂売り

16.存在を知らない子供を悪魔等に渡すタイプ → 「不知の子」型                #不知の子

17.神的アイテムとして鉄の棒やムチが出てくるタイプ → 「鉄の棒」型             #鉄の棒
17-あ 際限のない食事を出すアイテムが出てくるタイプ → 「魔法の大釜」型           #魔法の大釜
17-い 地獄の大釜が出てくるタイプ → 「地獄の大釜」型                    #地獄の大釜
17-う 触れると霊が出てくるタイプ → 「魔法のランプ」型                   #魔法のランプ
17-え その他豊穣をもたらすアイテムが出てくるタイプ → 「豊穣のアイテム」型         #豊穣のアイテム

18.二人の女性が入れ替わるタイプ → 「親切な少女と不親切な少女」型             #イナンナとエレシュキガル
18-あ 結婚を巡って二人の女性が入れ替わるタイプ → 「瓜子姫」型               #瓜子姫
18-い 18-あのうち、特に主人公の「眠り」によって女性が入れ替わるタイプ → 「ドゥムジ」型 #ドゥムジ
18-う 女主人公によって女神が再生されるタイプ → 「アルテミスとイーピゲネイア」型      #アルテミスとイーピゲネイア
18-え 女主人公(の命)によって植物が再生されるタイプ → 「ハイヌウェレ」型         #ハイヌウェレ
18-お その他、女神が何らかの代償で再生されるタイプ → 「再生される女神」型         #再生される女神

19.「瘤取り」等のように二人等の男性が入れ替わるタイプ → 「オシリスとセト」型       #オシリスとセト

20.妻が人間ではないタイプ → 「異類嫁」型                         #異類嫁
20-あ 妻が鳥や天女等であるタイプ → 「天人女房」型                    #天人女房
20-い 服(皮)を隠すタイプ、服が見つかることが禁忌となる → 「羽衣」型          #羽衣
20-う 男女を問わず服(皮)を処分するだけのタイプ → 「皮処分」型             #皮処分

21.夫が人間ではないタイプ → 「異類聟」型                         #異類聟
21-あ.夫が犬であるタイプ → 「盤瓠」型                          #盤瓠
21-い.夫が猿であるタイプ → 「猿聟」型                          #猿聟
21-う.夫が蛇や竜であるタイプ → 「蛇聟」型                        #蛇聟

22.冥界が地下世界でなく「海の向こう」にあるタイプ → 「竜宮」型              #竜宮

23.神々と交流する際に禁忌があるタイプ → 「禁忌」型                    #禁忌
23-あ 特に「見てはならない」タイプ → 「見るな」型                     #見るな
23-い 特に「恐れてはならない」タイプ → 「恐れ」型                     #恐れ
23-う 特に「馬を恐れない」タイプ → 「タフムーラス」型                   #タフムーラス

24.怪物退治ではなく宝物入手が目的となっているタイプ → 「イアーソーン」型          #イアーソーン
24-あ その他の目的で流転するタイプ → 「アイネイアース」型                  #アイネイアース

25.異界で非常に長時間が経過するタイプ → 「浦島太郎」型                   #浦島太郎

参照:「魔法のアイテム
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by admin. <6071文字> 編集

美しい娘
「シルクロードの民話 パミール高原」 68-81p

 主人公が家を出る下りは「ゲイ流譚」的である。
 女主人公に「見るな」の禁忌があり、閉じこもった暮らしを送り、彼女の怒りを買ったものは死に至る、という点は「王女のハンカチ」と共通する。
 略奪婚を試みる悪しき王の結末は、「怪物退治」の一型といえる。女主人公の助力がある点で、「テーセウスとアリアドネー」型の物語といえる。この物語では女主人公ではなく、主人公の方が鳥に化生する。馬との関連もわずかであるが示唆される。女主人公は杏と関連づけられる。
 当人の姿以外のものが異性の心を捉えるという点は、日本の「髪長姫」を連想させる。

 参照:絵姿女房

#民話 #中国 #絵姿女房 #見るな #禁忌 #怪物退治 #鳥 #馬 #杏 #植物 #テーセウスとアリアドネー #ゲイ流譚 #閉じ込められている乙女 #略奪婚

by admin. 民話 <463文字> 編集

王女のハンカチ ATU892
「シルクロードの民話 パミール高原」 52-67p

 女主人公が「7つの扉のついた地下室」に住んでいる点は、明らかに「イナンナの冥界下り」と共通したモチーフと思われる。イナンナが下る冥界にも7つの扉がある、とされる。この点の類話は「山のなかに閉じこめられた王女」である。
 神話では、イナンナは姉エレシュキガルの支配する冥界を「自分のもの」と考えて下り、そこで冥界の女王である姉の怒りを得て殺された、とされるが、それはイナンナとエレシュキガルが「一体となったことを示している、とも解釈できる。少なくとも、本作の女主人公はイナンナ的ではあるが、冥界を住処としており、エレシュキガルともいえる性質を併せ持つ。彼女の住処に許しなく踏み込む者は、そこは「冥界」であるので、当然のように死ぬ。

 一方、女主人公の夫は、父王の怒りを受けて旅に出る。これは「人身御供」の象徴ともいえるが、物語的には、「上位の者の怒りを得て、主人公が流転する」という点で、中国のゲイ神話、日本の日本武尊を思わせる。なにがしかの禁忌を破って、異界を流転する夫とそれを再生させようとする妻、という点ではエンリルとニンリル的でもある。

 えん罪であるけれども、女主人公が夫を裏切った(ように見え)る、という点は、テーセウスとアリアドネーの神話が根底にあり、「二人が何故決裂したのか」という点について、アリアドネーの側にえん罪といえる理由があったのではないか、という理由付けの物語のようにも思える。

 夫以外の男が妻にちょっかいを出しており、それが原因で争いが起きる、という点は、ラーマヤーナ的な「略奪婚」の要素であると思う。従って妻を略奪した「怪物」は最終的には退治されるが、この物語では怪物を倒すのは、妻自身となっており、とても強いヒロインの物語といえる。妻の貞節を賭けて騙される話

 妻が夫を男装して捜し求める点は、「兄たちを探す乙女」の変形版といえる。

 全体としては、テーセウスとアリアドネーの物語のモチーフが一番強く、そこに「妻のえん罪」という要素が大きく関わる物語といえます。でも、本作の「妻」はイスラム圏の物語なのに、こんなに女性が強く、魔女的で、物語の主導権を握る存在であっていいのだろうか? と異教徒の私の方がむしろ思うくらい、女主人公の行動力と活躍が強く前面に出ており、夫を勝たせるのか、略奪者を勝たせるのか、それは「女神の恩寵次第で決まる」という、「ネミの森」のような太古の女神信仰の影響が強く残されている物語だと感じます。日本武尊の物語でも、日本武尊の人生を左右する存在として伯母の倭姫が大きく関わってきますし、大国主命は貝の女神に命を再生させて貰います。ゲイ神話的に主人公が流転するモチーフは、東アジア的な要素だと思う。ゲイもまた、妻の嫦娥に振り回される存在でもあります。しかも、テーセウスとアリアドネーのように、ゲイと嫦娥も決裂します。ゲイと嫦娥の神話が西に広がって、テーセウスとアリアドネーの物語に変化する過程で「えん罪」という要素が独自の形で入り込んできた物語といえるのかもしれないと思います。
 
 女主人公が「見てはならない」(当人の魔力によっても「見ることができない」)存在である点も、太古の女神の姿を彷彿とさせると感じます。これは「鶴の恩返し」とも共通のモチーフです。

 類話は「美しい娘」である。
 

#民話 #タジキスタン #イナンナとエレシュキガル #エンリルとニンリル #ハンカチ #絵姿女房 #見るな #禁忌 #怪物退治 #男装流譚 #鳥 #天人女房 #テーセウスとアリアドネー #ゲイ流譚 #えん罪 #妻の貞節を賭けて騙される話 #兄その他を探す乙女 #閉じ込められている乙女 #王の子どもたち

by admin. 民話 <1585文字> 編集

善行の報い
「シルクロードの民話 パミール高原」 29-52p

全体の流れは「3人男」の変形版といえる。
3人の男性が流転する点、最後に「幸せな結婚」が一人の男だけに訪れる点である。西欧の民話によく見られる「末子成功」の型ではない。その点は東洋的といえると思う。
妻が略奪される点、最終的に救い出す点は、「ラーマヤーナ的」といえる。いわゆる「怪物退治」の変形版である。
主人公が隠者的(獣の王)な生活を経て、人としての再生を得る点は、オルフェウス的でもあるし、ギルガメシュ叙事詩のエンキドゥを思わせる。あるいはシヴァの原型と言われるインダス文明のパシュパティを彷彿とさせる。
息子の一人が川に流される、という点は「人身御供」を思わせる。これが転じて、サルゴン大王やモーセの伝説が派生しているように思われる。
優れた医者が死者を生きかえらせる能力をも持つ、という点はアスクレーピオス神話を思わせる。地中海周辺に発達したこの神話は、イエス・キリスト神話に受け継がれるように思う。人が神の領域に踏み込むような能力を持つことの是非を問うような深い考察を伴うギリシャで語られるアスクレーピオス神話とは異なり、単純に遠い異世界(ローマ)での、夢のような憧れの出来事として、アスクレーピオス神話の片鱗は登場する。元々はオルフェウス的な神話だったものが、キリスト教の影響を受けて変化したものか?

 このように、洋の東西の様々な民話や神話のモチーフがちりばめられながら、最後に主要な登場人物全てが「めでたし めでたし」となるところが、神話や民話を越えて、「文芸作品」と呼ぶに相応しい物語といえると思います。
距離的に近いせいか、全体としてはインド神話との共通のモチーフ(思想)が多いように思います。
全体としてはイスラム的な文化の影響を受けている平和的な民話ですが、アスクレーピオス神話(しかもローマが出てくる)がちょこっと絡む点が、微妙にカトリックの匂いがする、と個人的には思います。

 おそらく、「死者を生き返らせる」という思想は、
  英雄の技 → 隠者の技(獣の王、オルフェウス等) → 医者の技(アスクレーピオス) → キリストの技(キリスト教外ではミトラスの技?)
と変遷しているのだと思われる。

#民話 #中国 #難題聟 #3人男 #ラーマヤーナ #怪物退治 #獣の王 #鷹 #鳥 #川 #人身御供 #アスクレーピオス #蘇生型 #オルペウス教 #カトリック

by admin. 民話 <1031文字> 編集

ハンナハンナとテリピヌの神話

女神ハンナハンナが行方不明になったテリピヌを探し出して目覚めさせた、というヒッタイトの神話である。
兄たちを探す乙女」の神話的起源に一番近い物語ではあるまいか、と思う。
語源的にも、ハンナハンナはメソポタミアのイナンナ、テリピヌはドゥムジと同一であると思う。

#神話 #トルコ #ヒッタイト #イナンナとドゥムジ #兄その他を探す乙女

by admin. 神話 <186文字> 編集

魔女のスゥィーレ・ワールダ
「ソヴィエト諸民族民話集」 220-231p

 瓜子姫と天邪鬼的な物語。結婚に関する物語ではなく、「兄たちを探す物語」となっている。
「兄達」は柳の化身であるので、元はタンムーズやアッティスといった植物の化身の神話の男神と同じものといえる。

#民話 #モルドバ #イナンナとエレシュキガル #柳 #植物 #瓜子姫 #分身 #涙 #お母さん #ホレのおばさん #兄その他を探す乙女

by admin. 民話 <205文字> 編集

メリケン粉人形
「シルクロードの民話 パミール高原」 26-29p

「イナンナとエレシュキガル」の変形版。
女性と麦が同一視されている。元は植物と豊穣の女神に関する神話が、イスラム的な文化の影響を受け
女神が流転したり、直接豊穣をもたらしたりするエピソードが変形して、家庭内(家庭円満)のささやかな
悪意のない呪術の物語へと変化したものと思われる。
結婚に関わる物語である点は、瓜子姫的な要素の片鱗を思わせる。
男性を軸として、妻が入れ替わる物語は、シヴァとサティーとパールヴァティーの関係を思わせる。
西欧の類和としては「青ひげ」がある。

#民話 #ウズベキスタン #難題嫁 #イナンナとエレシュキガル #小麦 #植物 #分身 #シヴァとサティー

by admin. 民話 <326文字> 編集

かじ屋の娘 ATU875+ATU885
「シルクロードの民話 パミール高原」 14-26p

「難題嫁」「呪的逃走」「イナンナとエレシュキガル」の変形版。
人身御供を伺わせるのではなく、男が復讐のために結婚する、というモチーフは「アラビアンナイト」に通じる。
女性の流譚という意味では、鉢里公主的である。「兄たちを探す乙女」の変形版と思う。
女性が男性の苦難を助ける、という点ではテーセウスとアリアドネー的でもある。

#民話 #タジキスタン #難題嫁 #イナンナとエレシュキガル #アラビアンナイト #男装流譚 #復讐婚 #兄その他を探す乙女 #テーセウスとアリアドネー #賢い百姓娘 #冗談の結婚式

by admin. 民話 <301文字> 編集

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