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「シルクロードの民話 パミール高原」 235-258p
導入部(起)は「見るな」の禁忌と「絵姿女房」。
承は「略奪婚」と「力くらべ」であって、「略奪婚」はやや呪的逃走的である。
転は「夢解き」、転落(父親と大臣の裏切り)、体の一部の喪失(目玉)、瑞鳥(オウムとムクドリ)による復活
結は復讐
という構成である。罪なく体の一部を失ったもの(「死」の暗喩)が瑞鳥によって復活し、妻達(女神達)の加護により復讐を果たす、という物語。
様々な民話のモチーフが含まれているが、罪のないイエスの死と、復活、そして復讐という俗にみられるような、キリスト教神話的な物語とは言えないだろうか。
そういう点では「モンテ・クリスト伯」的な物語だと思う。
#民話 #禁忌 #見るな #絵姿女房 #ホレのおばさん #おばあさん #略奪婚 #力くらべ #夢解き #犬 #水 #目玉 #体の一部喪失 #オウム #ムクドリ #瑞鳥 #病気平癒 #変身 #復讐 #カトリック #妻
by admin. ⌚ 2022年04月14日(木) 06:00:40 民話 <438文字> 編集
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 165-166p
フェアリーの宴会から杯を盗んできた話。
「オーゲルブの教会に奉納された杯」、「スヴェンド・フェリングと女エルフ」が類話である。
参照:妖精、椀貸伝説
#民話 #イングランド #妖精 #椀貸伝説
by admin. ⌚ 2022年04月05日(火) 05:43:19 民話 <222文字> 編集
「シルクロードの民話 パミール高原」 201-224p
2つの物語が組み合わさった物語と思う。
一つは旧約聖書、創世記のいわゆる「ヨセフ物語」である。主人公が兄達に疎まれたり、エジプトに売られたりする点など、粗筋の大筋が非常に良く似ている。「主人公が兄達に疎まれている点」は「ヨセフ物語」と併せて、「ゲイ流譚」的といえると考える。
もう一つは、おそらく、女神的な女性に助けられて、かつ、その女性と結婚して豊穣を得る、というモチーフ、しかも、女主人公が古い夫(老人)から若い夫に乗り換える、という「グィネヴィアとアーサー王」のような「ネミの森」的神話が元はあったのではないか、と思われる。
ただ、「ヨセフ物語」の要素の方が非常に強いので、後者の要素はとても弱くなり、「古い夫」も妻に裏切られるのではなく自然死となっている。そして、2つめの物語の要素が多少入り交じっているので、その点が「ヨセフ物語」との違いを生み出しているように思える。
ユシィフは鷹に選ばれて王となっており、フマ的な要素が加わる。その点は「動物のことばがわかる男」が類話である。
全体として、類話は「忘れてしまった夢」である。
#民話 #中国 #ヨセフ物語 #旧約聖書 #鷹 #フマ #鳥 #夢解き #ゲイ流譚 #ネミの森 #地下の洞窟に閉じ込められた姫
by admin. ⌚ 2022年03月23日(水) 20:00:35 民話 <592文字> 編集
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 145-146p
小人に対する「見るな」の禁忌に関する話。おそらく、古代においては、収穫のいくばくかを小人(神)に捧げる、という習慣があったのかもしれない、と思う。
しかし、彼らの神としての地位が低下するにつれて、彼らに対する「捧げ物」は、むしろ「盗まれていく物」と考えられるようになったのだろう。禁忌に関する「呪い」の意味も薄れて、「禁忌を破ること」、「正体を見破ること」がむしろ現実的な「豊穣をもたらす行為」へと変化するようになった。これも「神」としての地位の低下に伴った、仕方のないこと、といえよう。
神的存在の宗教的地位が低下したために、むしろ「厭われる存在」となってしまった物語には、「怪物の出る水車場」がある。
参照:ドワーフ
#民話 #ドイツ #禁忌 #見るな #ドワーフ #小人
by admin. ⌚ 2022年03月22日(火) 01:40:30 民話 <456文字> 編集
「シルクロードの民話 パミール高原」 184-201p
「生命の水、美の水、青春の本」と非常に似た話。
鳥に肉を食べさせて飛ばすところは「ラ・ラメー」と似ている。
3人兄弟の末子と上の二人との関係は「蛙の恩返し」に似る。鳥を盗むところも「蛙の恩返し」と同様である。
神話の上ではペリとデーヴは「善と悪」で対立的な存在だが、この物語の中では、「共に異界に住む妖精」的な存在で、一つの町に仲良く暮らしているようである。
#民話 #中国 #異類嫁 #鳥 #魔法のアイテム #3人兄弟 #かもしか #動物 #ホレのおばさん #シームルグ #ワニ #眠り姫 #禁忌 #死刑囚 #買うな #オシリスとセト #ディヴ #ペリ #イアーソーン
by admin. ⌚ 2022年03月11日(金) 18:28:29 <372文字> 編集
「シルクロードの民話 パミール高原」 171-184p
複数のモチーフが組み合わさった物語。
前半と結末は、予言をする異界の乙女達との婚姻譚。最終的に一人とはうまくいくけれども、残りの二人とは破綻する物語。
そこに「兄その他を探す乙女」の後半部分(結婚、出産、子供の失踪)が加わり、
更に、姉弟の冒険譚、前半は弟の宝物入手譚、一部怪物退治+呪的逃走あり、後半は姉の「兄その他を探す乙女」+宝物入手譚となっている。
姉は弟やその他の人々の助け手ともなっているし、「おうむの真の主人」であることが暗示されている。
助け手にデヴィンと聖者ヒジールが登場する。「聖者ヒジール」がどのような聖者であったのかは調べられなかった。
2世代に渡る物語といえ、前半と結末は、精霊と王の婚姻譚、中間は姉と弟が、それぞれ女主人公と主人公になっている。
出産に関連して女主人公を虐めるエレシュキガル的存在が、姑ではなくて、姉二人、となっているところが、シンデレラとの共通点で興味深く感じる。
母親が土に埋められるところは、植物の化身であることを暗示させる。「たまご姫」的でもあると思う。
前半部分の類話は「妖精のおはなし」。
「兄その他を探す乙女」のモチーフがあちこちに散りばめられている。
母親の方が「罰を受ける女神」であり、娘の方が再生を司る女神である点は、岩見の伝承である「オオゲツヒメと狭姫」の関係も彷彿とさせ、興味深く思う。(「太陽と木と鳥2 」参照)
呪いを受けて石に変えられてしまうところは、個人的には「ライオンと魔女」を思い出しました。
#民話 #異類嫁 #イナンナとエレシュキガル #兄その他を探す乙女 #デヴィン #おばあさん #ホレのおばさん #聖者ヒジール #オーディン #シームルグ #おうむ #鳥 #鏡 #塩 #川と石 #馬 #動物 #石 #変身 #怪物退治 #呪い #禁忌 #すり替え人 #3人の金の子ども #呪的逃走
by admin. ⌚ 2022年03月02日(水) 14:12:24 民話,固有神獣 <1033文字> 編集
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 109-110p
少女が冥界へ行って戻ってくる話。
踊りが「禁忌」となっていて、少女は時間と正気を失う。
浦島的な部分については「あの世で過ごした一夜」が類話。
正気を失う点については「底革のハンス」が類話である。
ダンスと関連する点については「フェアリーの住居にはいった若者」が類話である。
#民話 #スカンジナビア #デンマーク #北欧 #トロール #踊り #狂気 #浦島太郎
by admin. ⌚ 2022年02月27日(日) 10:05:03 民話 <240文字> 編集
「シルクロードの民話 パミール高原」 157-171p
2つのモチーフが組み合わさった物語。
1つ目はいわゆる「難題婿」で、おじいさんと霊鳥シームルグの助けを得て、女主人公を手に入れる物語である。
中間部として、二人の若者の出会いと、「力くらべ」の末の和解と友情が挿入される。インド神話のガルダとインドラの関係に似る。
2つ目は、もう一人の若者の冒険を、霊鳥シームルグと主人公が助ける物語で「呪的逃走」を伴う。
シームルグは本物語では「母なる鳥」とされているため、女神的存在ということで、「ホレのおばさん」型とする。「呪的逃走」の場面では「川と石」と「櫛」という有名な2つのモチーフが登場する。
霊鳥シームルグはイラン神話に登場する古い時代からの神的存在で、伝承はイランのみならずパミール高原にまで広がっているようである。シームルグが木に住んでいて、その根元に蛇が住んでいるというところは、イラン神話の「ハオマの木」を思わせるが、「鳥と蛇の対立」はインド神話のガルダとナーガを思わせる。(イラン神話では蛇(トカゲ)から木を守るのは魚やロバとされている。)
神話では、シームルグの羽には病気や傷を治す霊力がある、とされているが、民間伝承では、その能力は拡張されて、西欧の民話に出てくるような「助け手のおばあさん」「助け手のおじいさん」(彼らの本来の姿は異教の神々だったのだろうと思うが)のような全能的な役割をシームルグが負っている。シームルグは助言をしたり、魔法のアイテムをプレゼントしたりしてくれる。
また、神話では英雄ロスタムとイスファンディヤール王子との争いの際にシームルグが和解するよう助言する場面があり、神話と本物語を併せると、シームルグは広く「友愛を取り持つ霊鳥」とみなされる傾向があるのかもしれない、と思う。「霊鳥」に関して、イラン神話とインド神話の両方の要素がみられ、中間地点のパミール高原の物語として興味深く感じる。
「川と石」のモチーフ:「サルのよめ」、「スルタンのぶち犬」、「山男」
「櫛」のモチーフ:「スルタンのぶち犬」、「紡錘むすめ」
参照:木と鳥
#民話 #ウラテューベ #難題聟 #シームルグ #ホレのおばさん #力くらべ #おじいさん #オーディン #プラタナス #蛇 #魔法のアイテム #舌の下 #ボロルドーイ #砥石 #櫛 #鏡 #魔人 #川と石 #6人が世界じゅうを旅する #ガラス山の姫 #呪的逃走 #炎黄闘争
by admin. ⌚ 2022年02月22日(火) 11:16:46 民話,固有神獣 <1163文字> 編集
「シルクロードの民話 パミール高原」 147-156p
2つのモチーフが組み合わさった物語。
導入部分は主人公が結婚のために宝物を求める、という内容。「難題聟」であり「イアーソーン型」である。難題を課すのは舅である。おばあさんが間接的な助け手となるが、一般的に人でもできる範囲の助けに留まって、ナンの役割などははっきりしない。
主人公は人でなしの青ひげ的魔法使いに弟子入りする形式だが、魔法を教えてくれるのは魔法使いの娘である。冥界(魔法使いの住処)からの呪的逃走はあるのだけれども、魔法使いが町中に住んでいる、という設定になっているので「異界からの逃走」という要素がやや曖昧と感じる。本来、逃走のためのものであった主人公の「変身」も金儲けのためともなっている。「魔法使いの弟子」的な変身による逃走を繰り返して、主人公は魔法使いを退治すると、王女を得て結婚となる。
「財宝探索」の物語の中に、入れ子のように「魔法使いの弟子」的な、冥界を経て変身しながら逃走する物語が組み込まれている。そのため、冥界の娘との婚姻譚は削除されている。一番の類話は「魔法使いの弟子」である。
#民話 #タジキスタン #難題聟 #イアーソーン型 #おばあさん #ホレのおばさん #娘 #山羊 #羊 #牛 #馬 #駱駝 #鳩 #花 #イスラム教の僧 #大麦 #鶏 #狐 #変身 #呪的逃走 #怪物退治
by admin. ⌚ 2022年02月17日(木) 10:13:45 民話 <615文字> 編集
「シルクロードの民話 パミール高原」 139-146p
女主人公は兄と結婚させられそうになって家を出る。「セクメトの失踪」の前半的だが、民話では神話とは違い兄妹の結婚は忌避されるので、兄が連れ戻しに旅に出ることはない。その名残が女主人公を引き留めようとする家族との歌のやり取りであると思う。烏に運んで貰う点は「怪鳥」型である。兄と女主人公との仲は当然破綻するので「ゲイと嫦娥」型である。
女主人公姉妹と白檀の木が一体のものとして語られる点、二人が空を飛んで移動する点、特に姉が池の女神的でもある点は「天人女房」的であり、「たまご姫」、「スルタンのぶち犬」と共通している。姉妹のうち、妹は鹿の化身でもある。姉妹併せると、アルテミスとその聖獣の鹿を彷彿とさせる。姉が妹の人身御供的死を阻止するのは、「アルテミスとイーピゲネイア」型である。
女主人公が冥界で子供を生む点は、どちらかといえば「エンリルとニンリル」的だと思う。ただし、この物語では夫の再生というよりは、女主人公自身の地位の確立に役立つエピソードとなっている。
王の最初の3人の妻が殺されるところは、女主人公が植物の化身であることからも「瓜子姫」型といえる。女主人公が植物的であるという点は「とくさむすめ」が類話といえる。「瓜子姫」型としては「のろいをかけられた花嫁」、「悪魔の難題」の後半部分も類話といえる。
全体は「うりひめ」、「たまご姫」のように、天人(あるいは鳥)を思わせる女主人公が、瓜子姫的な変遷を経て結婚による幸せを手に入れる、という物語である。物語の導入部分は「ゲイと嫦娥」型の物語と「セクメトの失踪」型の物語が組み合わさって崩れたもの。(最も嫦娥も夫の元から月へと失踪するのであるが。)女主人公と妹との関わりは、まさに「アルテミスとイーピゲネイア」であると思う。キリスト教以前に、広範囲にわたる「月の女神信仰」があったことを伺わせる。嫦娥は中国の月の女神であるので、洋の東西の「月の女神」の要素が融合して含まれている物語といえ、シルクロードの物語的だと思うし、興味深く感じる。
#民話 #ウラテューベ #セクメトの失踪 #小鳥 #鳩 #烏 #怪鳥 #白檀 #樹木信仰 #ゲイと嫦娥 #水 #池 #鹿 #変身 #アルテミスとイーピゲネイア #出産 #すり替え人 #エンリルとニンリル #瓜子姫 #小さい兄と妹
by admin. ⌚ 2022年02月15日(火) 06:09:34 民話 <1050文字> 編集
「シルクロードの民話 パミール高原」 106-126p
予言によって定まった夫に親が不満を持つ点は「牧童と商人の娘」的である。聟が犬である点は東アジア的か。
瓜子姫的な入れ替わりの要素はあるが、中途半端に完結し、二人の女性のうち、どちらかが死ぬような残酷な結末はない。人には言えないことを石に向かって述べる、という独特のエピソードがある。
主人公は眠っているが、女主人公が頭を洗うと目覚める。(女主人公によって蘇生する。)
主人公には、夜になると犬になるという秘密がある。女主人公が皮を処分すると、夫との仲は破綻して、夫は失踪する。(再度の死を意味する。)
女主人公は失踪した夫を探し出す旅に出る。女主人公の立場が変化する(夫を得るきっかけとなる)場面で池や水が登場する点は「たまご姫」、「白檀の木」に通じる。原型となった物語では女主人公は鳥女房的な女神だったのではないだろうか。
女主人公は姑の試練を夫の助けによって乗り越える。この点はクピードーとプシュケー的である。
最後は魔法のアイテムを使用した呪的逃走である。櫛が植物に変化して女主人公と主人公を助ける点は「英雄ディックベール」、「紡錘むすめ」と共通している。
逃走の際、姑と妹が石を抱いて川に沈んでいくエピソードは「英雄ディックベール」、「サルのよめ」「山男」と共通している。
女主人公は2回主人公の蘇生(呪いを解く)を助け、主人公は1回女主人公の蘇生を助けている物語といえる。導入部分は瓜子姫的物語、「兄その他を探す乙女」のうち、前半は「ハンナハンナとテリピヌの神話」的な物語、後半は「クピードーとプシュケー的」物語で、主に三つのエピソードが組み合わさった物語と言える。個々のモチーフの類話も多岐にわたる。様々な文明の十字路であるシルクロード的な物語といえる。
#民話 #ウラテューベ #予言 #槃瓠 #瓜子姫 #皮処分 #大理石 #ゲイと嫦娥 #兄その他を探す乙女 #テーセウスとアリアドネー #池 #水 #指輪 #姑 #クピードーとプシュケー #櫛 #鏡 #砥石 #魔法のアイテム #川 #川と石 #魔女の息子 #呪的逃走
by admin. ⌚ 2022年02月14日(月) 22:05:11 民話 <977文字> 編集
「世界の民話1 ドイツ・スイス ぎょうせい」 309-318p
「山のこびと」とは青ひげのような存在である。大金持ちであり、「見るな」の禁忌を持つ。
逆にこびとが荷物を運ぶ際は、こびとに「見ている」と労働を促すようになっている。
女主人公は老人と叡智と複数の助け手によりこびとを倒し、とらわれている人々を解放する。
池におちるフリをするモチーフは「ガマとサル」にもみられる。「石と川」の変形であろうか。
女主人公が自ら問題を解決する点は「サルのよめ」が類話である。
類話は「青ひげ」である。
#民話 #レートロマン #こびと #シヴァとサティー #見るな #禁忌 #金の飾りピン #見ている #怪物退治 #蜂起 #おじいさん #オーディン #池に落ちるふり #川と石 #人身御供 #罰を受ける女神 #炎黄闘争 #妹による救出
by admin. ⌚ 2022年02月14日(月) 21:07:00 民話 <398文字> 編集
「シルクロードの民話 パミール高原」 106-126p
頭蓋骨の粉をなめて懐胎する、という不思議な導入部分である。頭蓋骨の正体は物語中では明らかにされない。冥界神が変化したもの、といえようか。破られてしまうが「見るな」の禁忌がかかっている。頭蓋骨の息子である主人公は半神半人的であって、あっという間に成長する。
主人公と女主人公が歌を交わすところは、アジア的な「歌垣」の文化を思わせる。
一方、女主人公はとびらの中に住んでいることが強調されたり、人をしびれさせる薬を持っていたりする点から、「冥界の女神」が変化したものであることが窺える。主人公は難題(労働、謎解き)を課せられるが、切り抜ける。
主人公は女主人公と結ばれる前に別の女性を押しつけられそうになるが、丁重にお断りする。この点は、最初の2人が殺されているわけではないが、シヴァとサティー的神話が変化したものであろう。男性の側にも女性に対して強い誠実さを求めるところがイスラム的な文化の良いところだと思う。
#民話 #アフガニスタン #禁忌 #見るな #頭蓋骨 #処女懐胎 #歌 #テーセウスとアリアドネー #シヴァとサティー #難題聟 #謎解き
by admin. ⌚ 2022年02月14日(月) 01:59:59 民話 <515文字> 編集
「世界の民話1 ドイツ・スイス ぎょうせい」 297-305p
女主人公は上位の女神(貧しいおばあさん)を侮辱して呪いをかけられる。その結果、風に乗って空を飛べるほど痩せ細ってしまう。「変身」的な要素であるが、全く別の存在に変わってしまうわけではない。イメージとしては蝶を暗喩しているのかもしれない。アテーナーとアラクネー的な展開である。
女主人公が風にさらわれる点は、「風の神のおよめさん」を連想させる。明確に「風の神にさらわれた」とはされていないが、そのようなクピードとプシューケー的な要素の片鱗が認められる。
女主人公は、海の向こうに飛ばされる「竜宮」型の失踪を遂げる。女主人公が失踪するまでが、一つのドラマティックな物語として成立している。女主人公が嵐の中、戻ってくるという展開は「季節の変わり目」を連想させ、季節の変化による植物(でなければ植物の化身である女神)の変化の神話が根底にあるのではないか、と思う。ただし、植物信仰の要素はほとんど残されていない。
主人公は女主人公を求めて探索を始めるが、老人の助力を得て、かつ「小さいパイプ」の魔力で問題を解決する。物質の精霊のおかげで問題が解決できるのは「魔法のランプ」型である。
全体としては「失踪した女神を連れ戻す話」が元にあり、それが崩れたのみならず、独自に文芸的な展開をしている物語だと感じる。アテーナーとアラクネー的な展開だったり、逃走に馬が重要な役割を果たすなど、南欧の神話の影響が強い物語といえるか?
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by admin. ⌚ 2022年02月14日(月) 00:54:26 民話 <762文字> 編集
「世界の民話1 ドイツ・スイス ぎょうせい」 274-297p
「怪物退治」譚の2つのパターンが組み合わさった物語。
一つは、魚の怪物と対峙する物語、もう一つは竜と対峙する物語である。魚の怪物は倒すわけではない。どちらの対決も、動物神と女主人公双方の助けを得ている。
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by admin. ⌚ 2022年02月14日(月) 00:08:10 民話 <269文字> 編集
「世界の民話1 ドイツ・スイス ぎょうせい」 279-294p
主人公が旅に出る動機が自らの浪費と借金の取り立て目的である点は近現代的な設定といえる。
全体としては「怪物退治」の変形版だが、「結婚」を手に入れるためには、怪物退治ではなく、呪いのかけられた幽霊の魂の救済が必要とされる。神父を冒涜すると呪われる、とか、神に仕える者がそんなことをして良いのか、とも思うがキリスト教に対する畏怖の念を植え付けるには充分であろう。
最後に宝を手に入れたのみならず、借金の取り立て問題まで解決できたところは、キリスト教に対する信仰のおかげ、という分かりやすい説話譚といえるか。
#民話 #レートロマン #正体不明の助け手 #林檎の木 #こびと #幽霊 #義足の男 #オーディン #謎解き #叡智 #呪い #橋 #カトリック #怖さとは何かを知りたがった若者 #宝は自分の家にあり
by admin. ⌚ 2022年02月13日(日) 14:53:44 民話 <409文字> 編集
「シルクロードの民話 パミール高原」 86-106p
主人公と女主人公が上位の者と対立して町を追い出されるところは「ゲイ流譚」型といえる。
女主人公が魔人の側について、兄を殺そうとする。「怪物退治」のうち、ティアマト型といえる。自ら生んだ息子に殺される点も、マルドゥクとティアマトの関係を連想させる。魔人が穴の中に封印されていた点は、元は「冥界神」だったことの暗喩といえる。
甥が叔父に代わって戦い、魔人を倒したり、花嫁を得る点はまさに「ジークフリート型」といえる。
本来的な物語が「テーセウスとミーノータウロスとアリアドネー」だったとすれば、本来は女主人公と魔人が兄妹(あるいは姉弟)という関係であって、外からやってきた主人公(本物語では「兄」)の方が略奪婚の当事者だったといえるのではないか、と思います。私は、民話を考察する際に女主人公から見て「兄弟」と「夫」の区別はあまりつけません。なぜなら、古代の特に母系社会ではイシスとオシリスのように、兄妹であって夫婦である、ということは珍しいことではなく、むしろ家の財産を守るためにはその方が妥当であった、という文化があるからです。日本の古代の天皇家も、異母兄弟で結婚して天皇、皇后となり、皇族でなければ皇后として認められなかった、という時代がありました。そこには現代的に「兄弟」と「夫」を区別する文化はありませんでした。古代日本の「妹」という言葉は、妻を指す言葉でもあり、妹を指す言葉でもあったのです。また、通い婚である母系社会では、夫は複数いて当然ですので、女性の不貞という概念がなく、その点も現代と異なります。そのように考えると本物語の「甥」は、本当は魔人の子供なのか、兄の子供なのかも分からない、ということになります。子供が主人公のことを愛して、父親だと感じていたのであれば、血のつながりに関係なく主人公の側につくことは母系社会的にはあり得ること、と思います。ただし、本物語では「甥」は魔人の血を引いた半人半神のような英雄であり、正義に味方する若き神のような存在ですので、そういう点も「正義の神」であるマルドゥクを連想させます。そして、当然イスラム文化の影響を受けている物語ですから、イスラム的には女主人公の死は「名誉殺人」的な概念となるのかなあ、と思います。(身内を裏切って、身内の賛成しない男と仲良くなって正式な結婚もせずに、事実上の夫婦となっているわけだから。ただし、民話としてはそのような女主人公の行動も古代の女神の名残のように思われます。)
ジャムシード王は伝説的な古代ペルシアの王と言われていますが、インド神話のヤマ(閻魔)、北欧神話のユミルと同語源であると言われています。ジャムシード王の尽きせぬ宝がどこかの洞窟に隠されている、との考え方は、「さまざまな鉱物資源(尽きせぬ宝)を体内にため込んでいるプタハのような大地(冥界)の神」を連想させ、少なくとも民間的にはジャムシード王のことを、「宝物をため込んでいる冥界の王」と見なし得るような口頭伝承があったのかもしれない、と思うと、ジャムシード王からヤマへの変遷が感じられて興味深く思います。
#民話 #タジキスタン #ゲイ流譚 #怪物退治 #ティアマト #怪物尊重 #ジークフリート
by admin. ⌚ 2022年02月13日(日) 00:58:12 民話,神話 <1383文字> 編集
「シルクロードの民話 パミール高原」 81-86p
主人公である王が妻の不実(事実上の不貞)に気がついて行動を起こす点は「アラビアンナイト」の導入部分と良く似ている。「アラビアンナイト」では、主人公は不貞を働いた女主人公を殺し、それだけに飽き足らず次々と女性を娶っては殺す、という「復讐婚」的な暴君へと変化するが、本物語では、妻を檻に閉じ込めたところで物語は終わる。
「閉じ込められた妻」は「冥界に閉じ込められた(=死)」を暗示させるが、直接的な死としては語られない。直接的な死の表現がないところは、ペルセポネーのような「冥界の女神」への変化をも暗示させるか。
不倫妻が愛人に入れ込んで夫を殺そうとする(夫に不幸をもたらそうとする)点は、「アーサー王とグィネヴィア」を連想させる。神話としては「ネミの森」的といえよう。古代の冷酷な豊穣の女神にとっては、夫は「年老いている」というだけで、捨て去る正当性が生じるからである。
妻を閉じ込めた後、主人公が「聞くな」の禁忌を持つ存在へと変化するのは「王様の耳はロバの耳」を連想させる。蛇王ザッハークとの関連が示唆される。「女主人公が交替しない」という点では、シヴァとサティーの不完全な形と言える。
全体としては「ネミの森」的な人身御供を求める女神信仰と、シヴァ的な「妻の人身御供」を求める男神信仰が混在している物語で、不貞を嫌うイスラム的な思想が二つを纏めている物語といえると思う。「怪物退治」譚として見た場合には、退治されるのは女性であり、えん罪ではないので、神々を殺そうとしたティアマト的といえる。
#民話 #タジキスタン #馬 #聞くな #禁忌 #怪物退治 #馬 #ティアマト #閉じ込められている乙女 #不倫 #アルテミス #ザッハーク #鉄の棒
by admin. ⌚ 2022年02月10日(木) 09:28:01 民話 <761文字> 編集
「シルクロードの民話 パミール高原」 68-81p
主人公が家を出る下りは「ゲイ流譚」的である。
女主人公に「見るな」の禁忌があり、閉じこもった暮らしを送り、彼女の怒りを買ったものは死に至る、という点は「王女のハンカチ」と共通する。
略奪婚を試みる悪しき王の結末は、「怪物退治」の一型といえる。女主人公の助力がある点で、「テーセウスとアリアドネー」型の物語といえる。この物語では女主人公ではなく、主人公の方が鳥に化生する。馬との関連もわずかであるが示唆される。女主人公は杏と関連づけられる。
当人の姿以外のものが異性の心を捉えるという点は、日本の「髪長姫」を連想させる。
参照:絵姿女房
#民話 #中国 #絵姿女房 #見るな #禁忌 #怪物退治 #鳥 #馬 #杏 #植物 #テーセウスとアリアドネー #ゲイ流譚 #閉じ込められている乙女 #略奪婚
by admin. ⌚ 2022年02月08日(火) 23:56:50 民話 <463文字> 編集
「シルクロードの民話 パミール高原」 52-67p
女主人公が「7つの扉のついた地下室」に住んでいる点は、明らかに「イナンナの冥界下り」と共通したモチーフと思われる。イナンナが下る冥界にも7つの扉がある、とされる。この点の類話は「山のなかに閉じこめられた王女」である。
神話では、イナンナは姉エレシュキガルの支配する冥界を「自分のもの」と考えて下り、そこで冥界の女王である姉の怒りを得て殺された、とされるが、それはイナンナとエレシュキガルが「一体となったことを示している、とも解釈できる。少なくとも、本作の女主人公はイナンナ的ではあるが、冥界を住処としており、エレシュキガルともいえる性質を併せ持つ。彼女の住処に許しなく踏み込む者は、そこは「冥界」であるので、当然のように死ぬ。
一方、女主人公の夫は、父王の怒りを受けて旅に出る。これは「人身御供」の象徴ともいえるが、物語的には、「上位の者の怒りを得て、主人公が流転する」という点で、中国のゲイ神話、日本の日本武尊を思わせる。なにがしかの禁忌を破って、異界を流転する夫とそれを再生させようとする妻、という点ではエンリルとニンリル的でもある。
えん罪であるけれども、女主人公が夫を裏切った(ように見え)る、という点は、テーセウスとアリアドネーの神話が根底にあり、「二人が何故決裂したのか」という点について、アリアドネーの側にえん罪といえる理由があったのではないか、という理由付けの物語のようにも思える。
夫以外の男が妻にちょっかいを出しており、それが原因で争いが起きる、という点は、ラーマヤーナ的な「略奪婚」の要素であると思う。従って妻を略奪した「怪物」は最終的には退治されるが、この物語では怪物を倒すのは、妻自身となっており、とても強いヒロインの物語といえる。妻の貞節を賭けて騙される話。
妻が夫を男装して捜し求める点は、「兄たちを探す乙女」の変形版といえる。
全体としては、テーセウスとアリアドネーの物語のモチーフが一番強く、そこに「妻のえん罪」という要素が大きく関わる物語といえます。でも、本作の「妻」はイスラム圏の物語なのに、こんなに女性が強く、魔女的で、物語の主導権を握る存在であっていいのだろうか? と異教徒の私の方がむしろ思うくらい、女主人公の行動力と活躍が強く前面に出ており、夫を勝たせるのか、略奪者を勝たせるのか、それは「女神の恩寵次第で決まる」という、「ネミの森」のような太古の女神信仰の影響が強く残されている物語だと感じます。日本武尊の物語でも、日本武尊の人生を左右する存在として伯母の倭姫が大きく関わってきますし、大国主命は貝の女神に命を再生させて貰います。ゲイ神話的に主人公が流転するモチーフは、東アジア的な要素だと思う。ゲイもまた、妻の嫦娥に振り回される存在でもあります。しかも、テーセウスとアリアドネーのように、ゲイと嫦娥も決裂します。ゲイと嫦娥の神話が西に広がって、テーセウスとアリアドネーの物語に変化する過程で「えん罪」という要素が独自の形で入り込んできた物語といえるのかもしれないと思います。
女主人公が「見てはならない」(当人の魔力によっても「見ることができない」)存在である点も、太古の女神の姿を彷彿とさせると感じます。これは「鶴の恩返し」とも共通のモチーフです。
類話は「美しい娘」である。
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by admin. ⌚ 2022年02月07日(月) 14:06:42 民話 <1585文字> 編集
「シルクロードの民話 パミール高原」 29-52p
全体の流れは「3人男」の変形版といえる。
3人の男性が流転する点、最後に「幸せな結婚」が一人の男だけに訪れる点である。西欧の民話によく見られる「末子成功」の型ではない。その点は東洋的といえると思う。
妻が略奪される点、最終的に救い出す点は、「ラーマヤーナ的」といえる。いわゆる「怪物退治」の変形版である。
主人公が隠者的(獣の王)な生活を経て、人としての再生を得る点は、オルフェウス的でもあるし、ギルガメシュ叙事詩のエンキドゥを思わせる。あるいはシヴァの原型と言われるインダス文明のパシュパティを彷彿とさせる。
息子の一人が川に流される、という点は「人身御供」を思わせる。これが転じて、サルゴン大王やモーセの伝説が派生しているように思われる。
優れた医者が死者を生きかえらせる能力をも持つ、という点はアスクレーピオス神話を思わせる。地中海周辺に発達したこの神話は、イエス・キリスト神話に受け継がれるように思う。人が神の領域に踏み込むような能力を持つことの是非を問うような深い考察を伴うギリシャで語られるアスクレーピオス神話とは異なり、単純に遠い異世界(ローマ)での、夢のような憧れの出来事として、アスクレーピオス神話の片鱗は登場する。元々はオルフェウス的な神話だったものが、キリスト教の影響を受けて変化したものか?
このように、洋の東西の様々な民話や神話のモチーフがちりばめられながら、最後に主要な登場人物全てが「めでたし めでたし」となるところが、神話や民話を越えて、「文芸作品」と呼ぶに相応しい物語といえると思います。
距離的に近いせいか、全体としてはインド神話との共通のモチーフ(思想)が多いように思います。
全体としてはイスラム的な文化の影響を受けている平和的な民話ですが、アスクレーピオス神話(しかもローマが出てくる)がちょこっと絡む点が、微妙にカトリックの匂いがする、と個人的には思います。
おそらく、「死者を生き返らせる」という思想は、
英雄の技 → 隠者の技(獣の王、オルフェウス等) → 医者の技(アスクレーピオス) → キリストの技(キリスト教外ではミトラスの技?)
と変遷しているのだと思われる。
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by admin. ⌚ 2022年02月04日(金) 18:39:58 民話 <1031文字> 編集
「ソヴィエト諸民族民話集」 220-231p
瓜子姫と天邪鬼的な物語。結婚に関する物語ではなく、「兄たちを探す物語」となっている。
「兄達」は柳の化身であるので、元はタンムーズやアッティスといった植物の化身の神話の男神と同じものといえる。
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by admin. ⌚ 2022年02月04日(金) 12:51:16 民話 <205文字> 編集
「シルクロードの民話 パミール高原」 26-29p
「イナンナとエレシュキガル」の変形版。
女性と麦が同一視されている。元は植物と豊穣の女神に関する神話が、イスラム的な文化の影響を受け
女神が流転したり、直接豊穣をもたらしたりするエピソードが変形して、家庭内(家庭円満)のささやかな
悪意のない呪術の物語へと変化したものと思われる。
結婚に関わる物語である点は、瓜子姫的な要素の片鱗を思わせる。
男性を軸として、妻が入れ替わる物語は、シヴァとサティーとパールヴァティーの関係を思わせる。
西欧の類和としては「青ひげ」がある。
#民話 #ウズベキスタン #難題嫁 #イナンナとエレシュキガル #小麦 #植物 #分身 #シヴァとサティー
by admin. ⌚ 2022年02月03日(木) 07:48:32 民話 <326文字> 編集
「シルクロードの民話 パミール高原」 14-26p
「難題嫁」「呪的逃走」「イナンナとエレシュキガル」の変形版。
人身御供を伺わせるのではなく、男が復讐のために結婚する、というモチーフは「アラビアンナイト」に通じる。
女性の流譚という意味では、鉢里公主的である。「兄たちを探す乙女」の変形版と思う。
女性が男性の苦難を助ける、という点ではテーセウスとアリアドネー的でもある。
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by admin. ⌚ 2022年02月03日(木) 07:35:19 民話 <301文字> 編集
「ソヴィエト諸民族民話集」 165-177p
アルダール・コセーはカザフ民話で愛される主人公、とのこと。
「難題聟」の変形。逃げ出す手段は遊牧民らしく馬である。突如として消えてしまうところが「魔法的」といえる。
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by admin. ⌚ 2022年01月16日(日) 00:04:02 民話,多エピソード保有人名 <189文字> 編集
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 188-189p
異界の住人が産婆を求める場合(求産婆)とほぼ同じ話。
「目の膏薬」に関するエピソードがある点も同じ。
類話は「ピクシーのお産」、「トロルのお産」。
#民話 #スコットランド #妖精 #求乳母