No.159, No.158, No.157, No.156, No.155, No.154, No.153[7件]
「世界の民話1 ドイツ・スイス ぎょうせい」 297-305p
女主人公は上位の女神(貧しいおばあさん)を侮辱して呪いをかけられる。その結果、風に乗って空を飛べるほど痩せ細ってしまう。「変身」的な要素であるが、全く別の存在に変わってしまうわけではない。イメージとしては蝶を暗喩しているのかもしれない。アテーナーとアラクネー的な展開である。
女主人公が風にさらわれる点は、「風の神のおよめさん」を連想させる。明確に「風の神にさらわれた」とはされていないが、そのようなクピードとプシューケー的な要素の片鱗が認められる。
女主人公は、海の向こうに飛ばされる「竜宮」型の失踪を遂げる。女主人公が失踪するまでが、一つのドラマティックな物語として成立している。女主人公が嵐の中、戻ってくるという展開は「季節の変わり目」を連想させ、季節の変化による植物(でなければ植物の化身である女神)の変化の神話が根底にあるのではないか、と思う。ただし、植物信仰の要素はほとんど残されていない。
主人公は女主人公を求めて探索を始めるが、老人の助力を得て、かつ「小さいパイプ」の魔力で問題を解決する。物質の精霊のおかげで問題が解決できるのは「魔法のランプ」型である。
全体としては「失踪した女神を連れ戻す話」が元にあり、それが崩れたのみならず、独自に文芸的な展開をしている物語だと感じる。アテーナーとアラクネー的な展開だったり、逃走に馬が重要な役割を果たすなど、南欧の神話の影響が強い物語といえるか?
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by admin. ⌚ 2022年02月14日(月) 00:54:26 民話 <762文字> 編集
「世界の民話1 ドイツ・スイス ぎょうせい」 274-297p
「怪物退治」譚の2つのパターンが組み合わさった物語。
一つは、魚の怪物と対峙する物語、もう一つは竜と対峙する物語である。魚の怪物は倒すわけではない。どちらの対決も、動物神と女主人公双方の助けを得ている。
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by admin. ⌚ 2022年02月14日(月) 00:08:10 民話 <269文字> 編集
「世界の民話1 ドイツ・スイス ぎょうせい」 279-294p
主人公が旅に出る動機が自らの浪費と借金の取り立て目的である点は近現代的な設定といえる。
全体としては「怪物退治」の変形版だが、「結婚」を手に入れるためには、怪物退治ではなく、呪いのかけられた幽霊の魂の救済が必要とされる。神父を冒涜すると呪われる、とか、神に仕える者がそんなことをして良いのか、とも思うがキリスト教に対する畏怖の念を植え付けるには充分であろう。
最後に宝を手に入れたのみならず、借金の取り立て問題まで解決できたところは、キリスト教に対する信仰のおかげ、という分かりやすい説話譚といえるか。
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by admin. ⌚ 2022年02月13日(日) 14:53:44 民話 <409文字> 編集
「シルクロードの民話 パミール高原」 86-106p
主人公と女主人公が上位の者と対立して町を追い出されるところは「ゲイ流譚」型といえる。
女主人公が魔人の側について、兄を殺そうとする。「怪物退治」のうち、ティアマト型といえる。自ら生んだ息子に殺される点も、マルドゥクとティアマトの関係を連想させる。魔人が穴の中に封印されていた点は、元は「冥界神」だったことの暗喩といえる。
甥が叔父に代わって戦い、魔人を倒したり、花嫁を得る点はまさに「ジークフリート型」といえる。
本来的な物語が「テーセウスとミーノータウロスとアリアドネー」だったとすれば、本来は女主人公と魔人が兄妹(あるいは姉弟)という関係であって、外からやってきた主人公(本物語では「兄」)の方が略奪婚の当事者だったといえるのではないか、と思います。私は、民話を考察する際に女主人公から見て「兄弟」と「夫」の区別はあまりつけません。なぜなら、古代の特に母系社会ではイシスとオシリスのように、兄妹であって夫婦である、ということは珍しいことではなく、むしろ家の財産を守るためにはその方が妥当であった、という文化があるからです。日本の古代の天皇家も、異母兄弟で結婚して天皇、皇后となり、皇族でなければ皇后として認められなかった、という時代がありました。そこには現代的に「兄弟」と「夫」を区別する文化はありませんでした。古代日本の「妹」という言葉は、妻を指す言葉でもあり、妹を指す言葉でもあったのです。また、通い婚である母系社会では、夫は複数いて当然ですので、女性の不貞という概念がなく、その点も現代と異なります。そのように考えると本物語の「甥」は、本当は魔人の子供なのか、兄の子供なのかも分からない、ということになります。子供が主人公のことを愛して、父親だと感じていたのであれば、血のつながりに関係なく主人公の側につくことは母系社会的にはあり得ること、と思います。ただし、本物語では「甥」は魔人の血を引いた半人半神のような英雄であり、正義に味方する若き神のような存在ですので、そういう点も「正義の神」であるマルドゥクを連想させます。そして、当然イスラム文化の影響を受けている物語ですから、イスラム的には女主人公の死は「名誉殺人」的な概念となるのかなあ、と思います。(身内を裏切って、身内の賛成しない男と仲良くなって正式な結婚もせずに、事実上の夫婦となっているわけだから。ただし、民話としてはそのような女主人公の行動も古代の女神の名残のように思われます。)
ジャムシード王は伝説的な古代ペルシアの王と言われていますが、インド神話のヤマ(閻魔)、北欧神話のユミルと同語源であると言われています。ジャムシード王の尽きせぬ宝がどこかの洞窟に隠されている、との考え方は、「さまざまな鉱物資源(尽きせぬ宝)を体内にため込んでいるプタハのような大地(冥界)の神」を連想させ、少なくとも民間的にはジャムシード王のことを、「宝物をため込んでいる冥界の王」と見なし得るような口頭伝承があったのかもしれない、と思うと、ジャムシード王からヤマへの変遷が感じられて興味深く思います。
#民話 #タジキスタン #ゲイ流譚 #怪物退治 #ティアマト #怪物尊重 #ジークフリート
by admin. ⌚ 2022年02月13日(日) 00:58:12 民話,神話 <1383文字> 編集
「シルクロードの民話 パミール高原」 81-86p
主人公である王が妻の不実(事実上の不貞)に気がついて行動を起こす点は「アラビアンナイト」の導入部分と良く似ている。「アラビアンナイト」では、主人公は不貞を働いた女主人公を殺し、それだけに飽き足らず次々と女性を娶っては殺す、という「復讐婚」的な暴君へと変化するが、本物語では、妻を檻に閉じ込めたところで物語は終わる。
「閉じ込められた妻」は「冥界に閉じ込められた(=死)」を暗示させるが、直接的な死としては語られない。直接的な死の表現がないところは、ペルセポネーのような「冥界の女神」への変化をも暗示させるか。
不倫妻が愛人に入れ込んで夫を殺そうとする(夫に不幸をもたらそうとする)点は、「アーサー王とグィネヴィア」を連想させる。神話としては「ネミの森」的といえよう。古代の冷酷な豊穣の女神にとっては、夫は「年老いている」というだけで、捨て去る正当性が生じるからである。
妻を閉じ込めた後、主人公が「聞くな」の禁忌を持つ存在へと変化するのは「王様の耳はロバの耳」を連想させる。蛇王ザッハークとの関連が示唆される。「女主人公が交替しない」という点では、シヴァとサティーの不完全な形と言える。
全体としては「ネミの森」的な人身御供を求める女神信仰と、シヴァ的な「妻の人身御供」を求める男神信仰が混在している物語で、不貞を嫌うイスラム的な思想が二つを纏めている物語といえると思う。「怪物退治」譚として見た場合には、退治されるのは女性であり、えん罪ではないので、神々を殺そうとしたティアマト的といえる。
#民話 #タジキスタン #馬 #聞くな #禁忌 #怪物退治 #馬 #ティアマト #閉じ込められている乙女 #不倫 #アルテミス #ザッハーク #鉄の棒
by admin. ⌚ 2022年02月10日(木) 09:28:01 民話 <761文字> 編集
1.ミーノータウロス退治のように、「主人公が怪物を退治し、怪物の近親者(姉妹、娘など)を妻とするタイプ」とその変形の物語。
(1) 問題解決のために「妻の手助け」があるタイプ → 「テーセウスとアリアドネー」型 #テーセウスとアリアドネー
(1)-あ 問題を姑が課すタイプ → 「ポポヨラのロウヒ」型 #姑
(1)-い 問題を舅が課すタイプ → 「須佐之男」型 #舅
(2) 主人公を助けるために女主人公が犠牲になるタイプ → 「エンリルとニンリル」型 #エンリルとニンリル
(2)-あ 退治されるのが女性で有罪であるタイプ → 「ティアマト」型 #ティアマト
(2)-い 主人公を軸として死により女主人公が入れ替わるタイプ他 → 「シヴァとサティー」型 #シヴァとサティー
(3) 問題解決のために「女神的存在の手助けがある」タイプ → 「ホレのおばさん」型 #ホレのおばさん
(4) 問題解決のために「男神的存在の手助けがある」タイプ → 「オーディン」型 #オーディン
(4)-あ 問題解決のために「神や仲間との力(食欲)くらべ」があるタイプ → 「ヤコブ」型 #力くらべ
(4)-い 問題解決のために男主人公が単独で解決するタイプ → 「ポセイドーン」型 #ポセイドーンとアムピトリーテー
(4)-う 問題解決のために男主人公が単独で解決し、結婚しないタイプ → 「聖ゲオルギウス」型 #聖ゲオルギウス
(4)-え 問題解決のために異種の供がつくタイプ → 「ブレーメン」型 #ブレーメン
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by admin. ⌚ 2022年02月10日(木) 07:44:19 <6071文字> 編集
「シルクロードの民話 パミール高原」 106-126p
頭蓋骨の粉をなめて懐胎する、という不思議な導入部分である。頭蓋骨の正体は物語中では明らかにされない。冥界神が変化したもの、といえようか。破られてしまうが「見るな」の禁忌がかかっている。頭蓋骨の息子である主人公は半神半人的であって、あっという間に成長する。
主人公と女主人公が歌を交わすところは、アジア的な「歌垣」の文化を思わせる。
一方、女主人公はとびらの中に住んでいることが強調されたり、人をしびれさせる薬を持っていたりする点から、「冥界の女神」が変化したものであることが窺える。主人公は難題(労働、謎解き)を課せられるが、切り抜ける。
主人公は女主人公と結ばれる前に別の女性を押しつけられそうになるが、丁重にお断りする。この点は、最初の2人が殺されているわけではないが、シヴァとサティー的神話が変化したものであろう。男性の側にも女性に対して強い誠実さを求めるところがイスラム的な文化の良いところだと思う。
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