エトルリア神話

印欧語族の神話を語る上で、古いヨーロッパの神話を知ることは欠かせませんので、エトルリアの神様を調べていたわけです。で、調べているとなんとなく「クリスタル・ドラゴン」という漫画のことを思い出したわけです。
この漫画は古代のアイルランドが舞台で、アリアンロッドという魔法使いの見習いの女の子が、「邪眼のバラー」という族長を抱く部族に自分の部族を皆殺しにされてしまうのがとっかかりで、アリアンは村を離れていたので皆殺しにはあわずに済んだわけですが、復讐しようと思ってバラーの村に忍び込むわけです。でも、バラーの姉は強力な魔女で、魔を操って弟を不死身にしているのでバラーを殺すことができないわけです。でもって、バラーに取り憑いている「魔」はどこにいるかというと、彼の左目にいるので、普段は「邪眼」といわれるその眼を人に見せないように眼帯で隠しているわけです。で、必要があるとそれを外す、と。
このままでは復讐は無理、ということでアリアンはいったんバラーの村を逃げ出すわけですが、逃げる時に捕まっていた族長の娘ヘンルーダを助けて、女の子二人で逃げるわけです。で、これがこの漫画の冒頭部分に来るわけで、あとはずっとアリアンの旅の話、ともいえるわけで、アリアンとバラーが直接会ったのは冒頭の場面だけなわけ。で、バラーに会ったときにアリアンは思うわけです。
「彼と私はどこかで繋がっている。同族とかそういうのではなくて、もっととても古い所で。」
と、そんな感じなことを。これはちょっと謎めいた設定ですが、私が読んでいた時点では物語の中でこの謎が明かされることはありませんでした。
で、エトルリアの神話を調べていると、このシーンがどうにも浮かんで来るわけで、それに調べてみるとエトルリアとケルトというのは、けっこう文化的に近いわけです。なので、バラーに近い語源の神様って誰かいるのかしら? と思って調べてみたわけです。そうしたら
Februus
という神様が出てきたわけで、この神は、頭のBの子音がFに変化したバラーだと思われるわけです。バラーというのは正確にはバロールというわけで、元々は「BBR」という子音で構成されており、この神の「FBR」という子音と交通性があると思われるわけ。で、どういう神様かと思ってみてみると、
冥界神
とか書いてあるわけです。これでまた、
「おや」
と思うわけ。バラーもこのフェブルスという神様も、子音の中に「蛇」を意味する文字がありません。でも、彼らの性質は破壊性が高くて、あんまり良い性質ではないのです。これは何故なのかと、きっと彼らはメソポタミア由来の神であって、メソでは読む子音に「蛇」の音をつけなくても、楔形文字で読まない子音として「蛇」をつけるから、それが楔形文字を使わない文化に移行しても消えないのだと思うわけです。で、このフェブルスという神様は、
2月、すなわち英語でいうところのFebruaryの語源になっているわけ。
ということは、邪眼のバラーって2月生まれなんだ? と思うわけです。そうえいば、2月生まれの誰かさんが、ホルンの部長とか言っていたわけですが、ケルトの太陽信仰っていうと、豚のキアンしか知らない私としては、ケルトに羊信仰なんてあったっけ? と思ったわけで、これまた調べてみたわけです。そうしたら、ケルトの説話には
「白い羊の群れと黒い羊の群れの間に川がある。白い羊の一頭が啼(な)く度に、黒い羊の一頭が川を渡って白い羊になる。黒い羊の一頭が啼(な)くと、今度は白い羊の一頭が川を渡って黒い羊になる。川岸には一本の巨木が聳(そび)え立っていて、その半分は根元から頂部に至るまで焼け焦げているが、もう半分は青々と茂っている。」
という話があるのだそうです。ケルトの羊の神様って白と黒の間を自在に行ったり来たりするんだ? ということで、そういや誰か白黒写真ばっかり出していた人がいたな、と思い出したわけです。そして、ついでに「クリスタル・ドラゴン」の「邪眼のバラー」を思い出したわけで、この悪魔のような人物は、主人公のアリアンの敵ではあるのですが、時には助けてくれたりするわけで、微妙にアリアンに好意がありそう? だけれども、別にだからといってあちこちの村を襲うようなろくでもないことを止めるわけでもないわけで、要するに
良いことも悪いことも微妙に行うような人物
で何を考えているのかが良く分からないわけです。ということは、白と黒を自在に行ったり来たりして、その間に心の中に、良心とか悪心とかの境界を持たずに、あたりまえのことのようにそれができることって、
それって一種の「神がかっているような」才能なんだ?
と初めて気が付いたわけで(汗)。そういう才能を持つ者は、本気で勝とうと思えば、その才を正の側にも、悪の側にも自在に使い分けて誰に対しても勝てると思う。その能力こそが
邪眼
なんだ! って初めて思ったわけです。そうなんだ、裁判に勝つために書類に、嘘のことも本当のことも、区別がつかないくらいに巧妙に書いて平気で提出したことがあるとか、そういうことには全く心当たりが無いよ! と感じたわけですが(苦笑)。
どうやら、アリアンはローマまで旅して、魔の奥津城にたどり着いた時に、どうやら鏡の中に映っている自分の姿が「邪眼のバラー」そのものだということに初めて気が付いたのだと思うわけです。アーリアの杖、フルリの太母と同じ名を持つ者は、「2月」という言葉の中に、「月」という言葉のないその言葉の中に、「BBR」という「蛇」がついていないはずのその子音の中に、古きメソポタミア時代につけられた「魔」をみつけ、それがBel-Bellisという自分の真の名前と同じものだと初めて知ったと。それで、アリアンは
「私とバラーはとても古い時代に近い存在だった」
のだと思ったのだな、とそう思ったわけ。
だから、何だと言われても困るのですが、あまりにも頭の中に羊が飛び交うので、数を数えられなくて眠れない、というのも逆に困るんで(苦笑)。鏡の中のバラーに邪眼がついているということは、アリアンの左目も邪眼なんだ? もしかして? とそういうことなわけです。
どうりで、私は 2月に生まれた人物になんか誰一人として、何の心当たりも無いよ!
ということで、誰がどんな邪眼で挑んで来ようとも、東京で何があったかは絶対に忘れるもんですか。まずは、鏡をたたき壊して
「男たるものは小人たれば、大人に従え」
といって、狼の腹を割いて、飲み込まれた子供達を引っ張り出してお家に連れて帰るのが先決だと思うわけです。私はフロドでもなければ、アリアンロッドでもないし、まして千尋でもないんで、吐き戻し薬を飲ませるとか、そんな優しいことをする気は全くなし。
山羊のお母さんは、狼の腹を割いて、子供達を取り出したら、代わりに石を詰め込んで川に投げ込む
のが昔からのお約束な気がするのでね。ペンという剣で、やれるだけのことをやらせてもらいましょう、とそういうことなわけです。
だいたい、ソスランてのは、フルリの神じゃないのさ。どこが、エトルリア固有の神なのか、まずそこからほじくらねばなりますまい。