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固有名詞は可能な限りWikipediaに準ず

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フェアリーの乳母
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 188-189p

 異界の住人が産婆を求める場合(求産婆)とほぼ同じ話。
 「目の膏薬」に関するエピソードがある点も同じ。
 類話は「ピクシーのお産」、「トロルのお産」。

#民話 #スコットランド #妖精 #求乳母
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おとっとこよし
「長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 189-191p

 イェンゼンのことは個人的には好きではないのだが、「芋といえばハイヌウェレ」というくらい(?)ハイヌウェレ型神話は有名な話である。この物語は一般的なハイヌウェレ型神話よりも更に古い時代の「ハイヌウェレ型神話」といえると考える。

 西欧では「末子成功譚」が多いが、東アジアから環太平洋周辺地域のオーストロネシア語族の文化圏の中には「兄と弟」の組み合わせで、原因は様々だが、弟が唐突に死ぬ、というパターンの物語がままある。本物語もそのような国際的な物語の1つであって、台湾やポリネシア等に類話がみられる。

 本物語に限っていえば、これはホトトギスというの由来譚と、5月の端午の節句に芋汁を食べることの由来譚でもある。芋名月は日本では中秋の行事とされることが多いが、鬼無里では5月の節句の行事であったことが分かる。そして、兄が鳥の化身であり、弟が山芋の化身であることが分かる。これを動物神や植物神の擬人化、とみるのか、人を動物や植物になぞらえている、とみるのか、ということになるが、管理人は後者であると思う。

 なぜ、人間を動物や植物になぞらえるのか、といえば、その理由は「階級」や「身分」というものを示し、誰が「上の身分」で、誰が「下の身分」であるかを示しているし、それぞれの社会的役割を示しているものとも考える。兄は「鳥」であって、木の枝の高いところに住み、弟たちを支配する。山芋は、地面の下に存在し、一番低いところに生息するものなので、それが「身分の低さ」を示すし、支配しかされない。そのような観点から見れば、本物語は「身分の低い者は上位の者の食べ物である」とか「上位の者は身分の低い者の生殺与奪件を握る」という階級社会の理論や思想を示す、社会学的な物語あるいは「説話」とすらいえると考える。

 階級社会の発生は、父系文化の発生と一致し、良渚文化にまで遡る。本物語に暗喩される「身分的に上位の者は下位の者を食い物にして当然である」という思想が、父系文化と階級社会を支えてきた思想だと理解すれば、大国が小国を一方的に「悪者」と決めつけて理不尽に攻撃するようなことを正当化する根本的な思想が、5500年ほど前に長江下流域の水稲耕作民から発生したものであって、人類はそこから5000年以上たっても、「父系文化の根本的思想」から抜け出すことができないでいることが分かる。この思想の問題の根は山芋の根よりも更に深いところまで潜り込んでいるように思える。そして、鬼無里・長野市信州新町あたりには、古い時代のハイヌウェレ型神話に関係する民話・伝承が多く残され、独特な地域であるなあ、と思う。(今のところ信州新町はなんだか「泥棒村」みたいなノリになっちゃっていて、呆れかえるばかりである。まあ、ここのところ1600年くらいはそういうノリだったのかもしれませんがー;。)

参照:序列殺人

#昔話 #長野県 #北信 #鬼無里 #ほととぎす #鳥 #山芋 #植物 #ハイヌウェレ #序列殺人
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みなし子の若者 ATU950
「シルクロードの民話 パミール高原」 259-268p

 「どろぼうの名人」の類話。
 父親がはっきりしない子が、自らの父親を当てる、というモチーフを含む。
 戸口に印をつけたりする点は「アリババ」を思わせる。
 話型としては、ATU950とATU1525の中間的な物語であって、この2つには連続性がある、と個人的には思う。

#民話 #タジキスタン #叡智 #泥棒 #らくだ #父なし子 #賀茂別雷命 #ランプシニトス
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三人まま子
「長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 183-188p

 これは継母が継子を虐め殺してしまう、という非常に残酷で陰惨な話。少なくとも子供に聞かせるような話ではないと思う。
 民話や神話における「釜」というのは、尽きせぬ食料を出す「豊穣の大釜」と、地獄などで罰を与える「罰のための大釜」に分かれる、と個人的には思う。本物語の「釜」は後者である。また、幼い子供を人身御供に捧げた習慣、おそらく太古にはそれを食したであろう習慣が、かすかに垣間見える物語といえる。これは環太平洋周辺地域の海洋民族の食人文化に通じる思想が古代の日本にもあったのではないか、と思わせる。
 このような物語はコンプライアンス的には、そのまま子供に聞かせるには向かないが、さりとて、古代の先祖の文化の痕跡を消し去って良いものとも思わない。民話や伝説は残酷な話が多いので、どうやって後世に伝え残していくのかを熟慮する必要がある典型的な物語といえる。
 歌が秘密を暴露するところは、「王様の耳はロバの耳」的でもある。

 この手の残酷な物語の取扱に気を遣うべきと考えたのは何も現代人だけではなく、「源氏物語」の中にも、光源氏が娘の明石の中宮を育てる際に、実母ではない紫の上に養育を任せたので、子供の目に「継子虐め」の物語が触れないように気を配った、というエピソードが出てくる。

#昔話 #長野県 #北信 #継子虐め #魔法の大釜 #歌 #秘密の暴露 #人身御供
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早太郎
「長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 172-180p

 「怪物退治」の一種。「猿神退治」といったら「早太郎」というくら有名な話。
 光善寺は長野県駒ヶ根市赤穂にある天台宗の別格本山の古刹である。天台宗信濃五山のひとつに数えられた。
 一方、静岡県磐田市見付には矢奈比賣神社(見付天神)がある。
 早太郎は光善寺での名前で、見付では悉平太郎(しっぺいたろう)と呼ばれる。

 光善寺には今でも早太郎のお墓があります。見付天神には悉平太郎を祀った霊犬神社があるとのこと。
 駒ヶ根から見付まではおおよそ90~100kmの距離がある。古くからの南信と静岡との交流を忍ばせると共に、
傷つきながらも遠い道のりを故郷まで戻ってきた早太郎のことを思うと、感慨深いものがあります。
 早太郎が通ったと思われる道は現在の国道152線号であり、「秋葉街道」という名があって、
南信から秋葉山に通じる道でもあります。かつての修験道の道でもあるので、やはり物語の発生と伝播には
修験道が大きく関わっているのではないか、と思います。

参照:猿神退治


#伝説 #長野県 #南信 #犬 #仏教 #修験道
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王さまと息子
「シルクロードの民話 パミール高原」 235-258p

 導入部(起)は「見るな」の禁忌と「絵姿女房」。
 承は「略奪婚」と「力くらべ」であって、「略奪婚」はやや呪的逃走的である。
 転は「夢解き」、転落(父親と大臣の裏切り)、体の一部の喪失(目玉)、瑞鳥(オウムとムクドリ)による復活
 結は復讐

 という構成である。罪なく体の一部を失ったもの(「死」の暗喩)が瑞鳥によって復活し、妻達(女神達)の加護により復讐を果たす、という物語。
様々な民話のモチーフが含まれているが、罪のないイエスの死と、復活、そして復讐という俗にみられるような、キリスト教神話的な物語とは言えないだろうか。
そういう点では「モンテ・クリスト伯」的な物語だと思う。

#民話 #禁忌 #見るな #絵姿女房 #ホレのおばさん #おばあさん #略奪婚 #力くらべ #夢解き #犬 #水 #目玉 #体の一部喪失 #オウム #ムクドリ #瑞鳥 #病気平癒 #変身 #復讐 #カトリック #妻
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フェアリーのどろぼう
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 176-177p

 エルフが納屋に入りこんで穀物を盗む話。

#民話 #ハンプシャー #妖精 #泥棒 #穀物 #いたずら
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ピクシーのお産
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 173-176p

 「トロルのお産」とほぼ同じ話。類話は「フェアリーの乳母」。

 参照:求産婆

#民話 #コーンウォール #妖精 #ピクシー #求産婆
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法蔵寺のネコ
「長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 168-171p

 お寺で飼われていた猫に、霊力(法力?)が宿って奇跡や恩返しをした、という話。長野県には唐猫に対する信仰もあるし、猫に若干稲荷的な性質をもたせて語られることが多い気がする。
 また、小川村、鬼無里(長野市)、美麻村(現白馬村)は、かつては修験道の道で行者の行き来があった地域なので、「仏教説話」的な物語の成立には、修験道が関わったかもしれない、と思う。
 内容よりも、昔(江戸時代くらい)の日本の葬式に関する風俗がうかがい知れて、楽しい物語である。

 小川村瀬戸川にある霊験山法蔵寺に伝わる伝説である。宝蔵寺には猫塚があったり、猫供養を行ったりしているそうです。

#伝説 #長野県 #北信 #鬼無里 #猫 #報恩譚 #仏教 #修験道
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ヘビの恩返し
「長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 162-167p
「読んで 遊んで とっぴんぱらり 新長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 56-61p、タイトルは「へびのシガ」に変更された。内容にもかなりの改変がある。理由は不明。

 蛇というのは水神の象徴でもあると思う。水に関する神に恩があって、そのお返しに祟りを受けない、のみならず命まで貰ってしまう、というのは、「伏羲と雷公」の物語、いわゆる「洪水神話」の話の骨組みであると思う。ただし、本物語は、「人間が神を助けた」という性質が強いので、西欧的な「ノアの箱船」が起源というよりは、「伏羲と雷公」の物語の方が近くて起源に相応しいと思う。
 外国では神は「絶対的な存在」とされることが多い、と思うのだが、本物語は図々しく人間が神に恩返しを求める話である。日本人の宗教観を探る上でも興味深い物語といえる。

#昔話 #長野県 #中信 #怪物退治 #報恩譚 #求恩返し譚 #蛇
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ポーチュン
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 167-168p

 ポーチュンの性質についての13世紀の概念。
 馬に関しては「天竜川のカワランベ」と類似性がある。

 参照:ポーチュン

#民話 #イングランド #妖精 #家付精霊 #馬 #水神
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フェアリーの宴会
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 165-166p

 フェアリーの宴会から杯を盗んできた話。
 「オーゲルブの教会に奉納された杯」、「スヴェンド・フェリングと女エルフ」が類話である。

 参照:妖精椀貸伝説

#民話 #イングランド #妖精 #椀貸伝説
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荻野池の機織り姫
峰街道(天空の道、大町峰街道、善光寺峰街道)、伝説 萩野池の機織り姫
「信州新町歴史蹟研究者 長野郷土史研究会員竹内、平成8年」

 池に身投げした織女が、池の主となって椀貸をした、という物語。
 死者がそのまま神的な存在となる、という考え方は「御霊信仰」に通じるのではないだろうか。
 
参照:荻野池
 
#昔話 #長野県 #北信 #織女 #椀貸伝説 #水神
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弥太郎ごんげん
「長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 159-161p
「読んで 遊んで とっぴんぱらり 新長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 48-51p、タイトルは「虚空蔵山の大蛇」に変更された。

 山の主の大蛇を助けて、報恩を受ける話。大蛇が雨乞いの神であるので、水神といえるが、報恩で行う奇跡の内容が、「願いをかなえること」だったり、「死者を蘇生させること」だったりして、「蘇民将来」の物語群に近い内容と考える。「死者の蘇生」は、世界的に見れば、いわゆる「キリスト教神話」で大きく取り上げられるテーマであり、「善行の報い」のようにアジアの民話にもその影響が認められるものである。「死者の来世での再生が良いものであるように」と願って修行や供養を行うのが仏教の思想であるので、仏教的ではない、やや異質な物語と感じる。畝尾都多本神社の泣沢女神のように、一部の水神が蘇生に関係するという思想は古くからあったのかもしれないが、純粋な仏教というよりは、「祇園信仰」的な思想が強い物語と感じるので、物語の成立時期はそれほど古くなく、修験道が盛んになってから以降のものではないか、と思う。
 
参照:蘇民将来水神
 
#昔話 #長野県 #中信 #蛇 #報恩譚 #蘇民将来 #願い型 #蘇生型 #祇園信仰 #竜 #龍 #水神
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百姓とニクス
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 158-159p

 ニクスの性質を示した物語。ニクスに捕らえられた魂を解放する点は「怪物退治」の変形版といえるか。

 参照:ニクス

#民話 #ドイツ #ニクス #河伯 #水神
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山鳥の征矢(そや)
「長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 151-158p
「読んで 遊んで とっぴんぱらり 新長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 62-68p、タイトルは「山鳥の恩返し」に変更された。

 安曇野の八面大王に関する伝承のうち、「ヤマドリ女房の尾羽」が中心となる物語。
 長野県には、あちこちに坂上田村麻呂が立ち寄った、というような伝承が見られる気がする。

参照:魏石鬼八面大王
 
#昔話 #長野県 #中信 #怪物退治 #坂上田村麻呂
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忘れてしまった夢
「シルクロードの民話 パミール高原」 224-235p

 2つの物語が組み合わさった物語であると思う。
 一つは旧約聖書、創世記のいわゆる「ヨセフ物語」である。主人公が夢解きをする能力を有していたり、そのために出世したりする点である。
 もう一つは、「悪しき大臣」に対する「復讐譚」で、「怪物退治」の一種のパターンである、と考える。「身代わり動物」のモチーフを伴う。
 類話は「ユシィフとズライカ」である。

#民話 #中国 #ヨセフ物語 #夢解き #復讐 #身代わり動物 #子羊 #心臓
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ヒンツェルマン
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 152-157p

 いわゆる「家付き」の精霊である。北欧のニッセ等にその性質が似る。姿は見えないことが多い。その点は「ドワーフ」の性質と関連する。

 参照:コボルト

#民話 #ドイツ #コボルト #家付精霊
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ツルの恩返し
「長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 145-150p
「読んで 遊んで とっぴんぱらり 新長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 69p、コラム。タイトルは「つるの恩返し」に変更された。

 いわゆる「鶴の恩返し」譚。「見るな」の禁忌はあるが、意味はなくなっている。
 結婚のないパターンである。

参照:鶴の恩返し
 
#昔話 #長野県 #南信 #報恩 #機織り #織女
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小人の夫
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 147-148p

 いわゆる「人身御供」の習慣が物語として大きく変節したものではないだろうか。

 参照:ドワーフ

#民話 #ドイツ #結婚 #ドワーフ #小人
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ユシィフとズライカ ATU870
「シルクロードの民話 パミール高原」 201-224p

 2つの物語が組み合わさった物語と思う。
 一つは旧約聖書、創世記のいわゆる「ヨセフ物語」である。主人公が兄達に疎まれたり、エジプトに売られたりする点など、粗筋の大筋が非常に良く似ている。「主人公が兄達に疎まれている点」は「ヨセフ物語」と併せて、「ゲイ流譚」的といえると考える。
 もう一つは、おそらく、女神的な女性に助けられて、かつ、その女性と結婚して豊穣を得る、というモチーフ、しかも、女主人公が古い夫(老人)から若い夫に乗り換える、という「グィネヴィアとアーサー王」のような「ネミの森」的神話が元はあったのではないか、と思われる。
 ただ、「ヨセフ物語」の要素の方が非常に強いので、後者の要素はとても弱くなり、「古い夫」も妻に裏切られるのではなく自然死となっている。そして、2つめの物語の要素が多少入り交じっているので、その点が「ヨセフ物語」との違いを生み出しているように思える。
 ユシィフは鷹に選ばれて王となっており、フマ的な要素が加わる。その点は「動物のことばがわかる男」が類話である。
 全体として、類話は「忘れてしまった夢」である。

#民話 #中国 #ヨセフ物語 #旧約聖書 #鷹 #フマ #鳥 #夢解き #ゲイ流譚 #ネミの森 #地下の洞窟に閉じ込められた姫
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六地蔵
「長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 141-144p
「読んで 遊んで とっぴんぱらり 新長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 69p、ミニコラムで紹介されている。

 いわゆる「笠地蔵」の話。被せるのは笠ではなくてござになっている。報恩譚である。

参照:笠地蔵
 
#昔話 #長野県 #北信 #仏教 #祇園信仰
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とりかえ子
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 146-147p

 「とりかえ子」への対応を「旅の学生」が教えてくれる、という点で、「蘇民将来」的な要素が多少混じる。
 なんでもがつがつとよく食べるのに、成長しない、というとりかえ子の性質は維持されている。
 類話は「とりかえ子(スカンジナビア)」、「とりかえ子(スコットランド)」

 参照:取り替え子

#民話 #ドイツ #学生 #オーディン #ドワーフ #小人 #蘇民将来 #取り替え子 #饕餮
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ムギを盗む小人
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 145-146p

 小人に対する「見るな」の禁忌に関する話。おそらく、古代においては、収穫のいくばくかを小人(神)に捧げる、という習慣があったのかもしれない、と思う。
しかし、彼らの神としての地位が低下するにつれて、彼らに対する「捧げ物」は、むしろ「盗まれていく物」と考えられるようになったのだろう。禁忌に関する「呪い」の意味も薄れて、「禁忌を破ること」、「正体を見破ること」がむしろ現実的な「豊穣をもたらす行為」へと変化するようになった。これも「神」としての地位の低下に伴った、仕方のないこと、といえよう。

 神的存在の宗教的地位が低下したために、むしろ「厭われる存在」となってしまった物語には、「怪物の出る水車場」がある。

 参照:ドワーフ

#民話 #ドイツ #禁忌 #見るな #ドワーフ #小人
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小人の結婚式
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 144-145p

 小人に対する禁忌を破ったために、呪いをかけられる、という話。
 ゲルマン系の神話に登場する「小人(ドワーフ )」に類する存在は、人に恩恵をもたらすものでもあるけれども、強力な呪いをかける存在でもある、という要素が強い気がする。

 参照:ドワーフ

#伝説 #ドイツ #禁忌 #見るな #呪い #ドワーフ #小人 #家付精霊
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デーランボー
「長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 136-138p
「読んで 遊んで とっぴんぱらり 新長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 11-15p

 いわゆる「ダイダラボッチ」という巨人の話。長野県には比較的多いと思う。
 盤古型の巨人であると思う。

参照:ダイダラボッチ
 
#昔話 #長野県 #東信 #巨人 #盤古
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あとかくしの雪
「長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 132-135p
「読んで 遊んで とっぴんぱらり 新長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 96-100p

 いわゆる「冬至粥(小豆粥)」の起源譚。冬至粥は「無病息災」を祈るためのものであり、弘法大師に親切にした老婆が、弘法大師から「無病息災」の粥を授けられた、という意味を含んだ物語である。また、木曽では冬至を境にして菜っ葉の漬物を食べる種類が切り替わる、という伝統があるらしい。節に、神に無病息災を祈って菜っ葉を捧げるのは、柳田的にはむしろ夏祭(旧6月、本来は水の神の祭)の習慣と考えられるような気がする。冬至には南瓜(瓜類である)を食べる習慣があるし、菜っ葉を捧げる習慣(ただし冬だから漬物となる)もあったとすれば、水神信仰(祇園信仰)に関連する習慣であったことが分かる。人々の一人一人が水神(疫神)と一体化して(現人神となって)、供物を食している。

 「無病息災」を願うものとしては、蘇民将来説話の崩れで、弘法大師が牛頭天王に相当する存在なのだと思う。ただし、「不親切な者」は登場しない。弘法大師そのものは、実際には修験道の行者のような旅はしなかったかもしれないが、弘法大師が旅をして奇跡を起こした、という伝説はあちこちにあるのではないだろうか。

 ただ、現代的な感覚から見ると、大師様が直接利益や恩恵を分かりやすくもたらしてくれる物語ではないので、「弘法大師が泥棒を推奨した」という話にも見えてしまい、「冬至粥」とか、冬至の祭りの意味を知っていないと、意味するところは理解しにくいかもしれない。

参照:蘇民将来
 
#昔話 #長野県 #中信 #蘇民将来 #漬物 #菜っ葉 #小豆粥 #小豆 #冬至 #由来 #弘法大師 #冬至粥 #祇園信仰 #修験道
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うりひめ
「長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 128-131p
「読んで 遊んで とっぴんぱらり 新長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 102-105p、内容に改変が見られる。理由は不明。

 二人の女性が、結婚を軸にして入れ替わる。典型的な「瓜子姫」の物語である。
 瓜子姫は最期には助かる。天邪鬼は茅に化生する。
 瓜子姫は川から流れてくる。「桃太郎」と似ている。

 類話は「たまご姫」、「とくさむすめ」、「のろいをかけられた花嫁」、「白檀の木」、「悪魔の難題」など
 参照:うりこひめとあまのじゃく
 
#昔話 #長野県 #東信 #瓜子姫 #柿 #茅 #川誕 #瓜
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エルベリヒ(Elberich)とオトニト(Otnit、あるいはオルトニト(Ortnit))
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 135-139p

 「怪物退治」譚の変形であり、倒す相手は舅である。
 助け手は、主人公の母と父親(エルベリヒ)である。エルベリヒが樹木(菩提樹)の化身であることが示唆されている。
 呪的逃走はない。

 エルベリヒからは甲冑、盾、名剣ロッセを貰う。

 主人公は一応キリスト教徒になっているが、あまりキリスト教的な匂いは感じない、単純な物語である。

 参照:ユオン・ド・ボルドー(Huon de Bordeaux)とオーベロン(オベロン、Oberon)

#伝説 #ドイツ #指輪 #魔法のアイテム #菩提樹 #母親 #ホレのおばさん #力くらべ #ドワーフ #オーディン #怪物退治 #こびと #樹木信仰
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絵ネコとネズミ
「長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 123-127p
「読んで 遊んで とっぴんぱらり 新長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 120-124p、タイトルは「絵ねことねずみ」に変更された。

 怪物退治の一型。職能タイプ。
 父親と対立して旅に出るところは「ゲイ流譚」型である。
 
#昔話 #長野県 #南信 #猫 #鼠 #絵師 #ゲイ流譚
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ほらがいの子
「長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 119-122p
「読んで 遊んで とっぴんぱらり 新長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 126-129p、タイトルは「ほらがいの川くだり」に変更された。

 ほらがいの子をさらおうとして、天変地異が起き、祟られる話。
 ほらがいは修験道に関係のあるアイテムである。
 また、古代の日本では、貝には「再生させる力」というか「医薬の力」があるとされて、死んだ大国主命を貝の女神が蘇生させる、という神話もある。
 地下のなまずが暴れると、地震が起きる、という古来寄りの俗信の「なまず」が修験道の普及に従って「ほらがい」に変更されたものか。

 参照:ホラガイ
 
#昔話 #長野県 #東信 #祟り #貝 #修験道 #天変地異 #水神
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マリク・ハッサン cf. ATU550+ATU301+ATU573
「シルクロードの民話 パミール高原」 184-201p
 マリク・ハッサンという末子王子が、二人の兄と三人で父王の願いを叶えるために旅に出る。マリクは異界で若い女性と結婚し、助力を得る。また、母なるシームルグを助けて助力を得る。眠っていた女王と交流し目的を達成する。マリクの最終的な目的は父王のために余所の宝を略奪することだから、主人公は祝融型神 のうち、末子型神であり、窃盗型神といえる。

生命の水、美の水、青春の本」と非常に似た話。鳥に肉を食べさせて飛ばすところは「ラ・ラメー」と似ている。3人兄弟の末子と上の二人との関係は「蛙の恩返し」に似る。鳥を盗むところも「蛙の恩返し」と同様である。

 末子王子の異界流譚、英雄がシームルグに助力を得る話、英雄が眠っていた女性と交流して目的を達成する話、の3つが複合的に混ざり合って構成されている。中央アジアではシームルグが住む「世界樹」はプラタナスと考えられているようであり、「英雄ディックベール」と同じ設定である。「英雄がシームルグに助力を得る」というだけなら主人公のマリクは黄帝型神 といえたのだろうが、話が複合的になった結果、主人公は祝融型神 となってしまっている。そしてやはりいくつかの物語が複合した結果だと思われるが、最終的に二人の妻を持つことになる。それが許されるのは語られている地の結婚制度が一夫一妻制ではないからだろう。

 神話の上ではペリとデーヴは「善と悪」で対立的な存在だが、この物語の中では、「共に異界に住む妖精」的な存在で、一つの町に仲良く暮らしているようである。
#民話 #中国 #パミール #祝融型神 #末子型神 #窃盗型神 #良渚型
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食わずにょうぼう
「長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 109-116p

 吝嗇が元で、怪物に祟られる話。
 後半に「呪的逃走」が入る。
 「瓜子姫」が欠落した「瓜子姫と天邪鬼」といえると思う。要は、魔女との婚姻と、その逃走譚(この場合は「追い出し」型)である。
 「瓜子姫」は登場しないが、その名残で、逃走の手助けを植物が行ってくれる。それが「端午の節句」の由来譚となっている。

#昔話 #長野県 #中信 #鬼 #祟り #吝嗇 #呪的逃走 #由来 #樹木信仰 #蓬 #菖蒲 #追い出し #匿い
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ほうえんさんとキツネ
「長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 105-108p

 「ほうえんさん」とは「法印」とのこと。
 僧侶が狐にいたずらをして化かされる話である。修験道に関連のある話。

#昔話 #長野県 #北信 #狐 #化かす #動物 #祟り #修験道 #報復
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ニスの後悔
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 114p

 ニスの贖罪の物語。全体としては、神の怒りを静めるためには、正しい祭祀が必要である、という物語である。
 おそらく、本来は牛を生贄に捧げて、豊穣を得る、という話だったのではないか。
 牛が金に化生する、という点は「牛買い聖者」に似ている。
 動物があり得ないものに化生する物語には「ろばの裁判官」がある。

#伝説 #スカンジナビア #北欧 #トムテ #牛 #豊穣 #家付精霊 #金
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くもが淵
「長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 101-104p

 「怪物退治」の失敗譚。聖ゲオルギス型である。
 前半は、蜘蛛と蛇の戦いで、蜘蛛に加勢を頼まれた主人公が失敗する話。
 後半は、蜘蛛の仲間に復讐されそうになる話。

 中国の乞巧奠(きこうでん、七夕)では女性達が蜘蛛に占ってもらうという習慣がかつてあり、蜘蛛というのは女性(織り姫)の象徴であると思う。蜘蛛が蛇に飲まれる、とは女性が河伯に人身御供に捧げられる、ということを言い換えたものではないだろうか。人身御供の救出が失敗する、とは羿のような英雄神話を是とするのではなく、暗に否定する意味が込められていると感じる。「黒姫物語」といい、北信には羿に批判的な勢力でもいるのか、と思えるほどである。蜘蛛が川の主のようにふるまうのも、「川に生贄にされた女性」という暗喩があるのだと思う。

 「木曽殿アブキ」とは、「裾花渓谷の清水川に面したところにある間口60m、奥行き20mの大岩くつで、その昔、木曽義仲が越後の四郎追撃の途路この洞くつに兵馬三百を休めたといわれ、また義仲が討死にした後、次男の義重が再挙を企てた跡として知られます。アブキ橋から見おろす景観は奥裾花景勝地の一つに数えられます。※アブキ橋欠壊により現在行けません。(アブキとはアイヌ語で「洞穴」のことだそう。)(長野市商工会 のHPより)鬼無里には木曽義仲に関する伝説がある場所がいくつかある。長野市鬼無里には木曽義仲の家臣が隠れ住んだ、という事情があるのではないか。

 また、物語は鬼無里で採取されているが、「四か庄の青鬼」とは、現在の白馬村青鬼のことと思われる。古い家屋が建ち並び、全体が重要伝統的建造物群保存地区に指定されている山間の集落である。鬼無里には鬼女伝説があるが、青鬼にも鬼が住んでいたという伝説が残っている。白馬村から鬼無里へは鬼無里街道(現在の国道406号線)が続いており、現在でも沿線の小神社には修験道の伝統が続いている痕跡を見ることができる。

 羿神話に否定的、という点で、類話は「黒姫物語」である。
 乞巧奠について、参照:太陽と木と鳥1

#伝説 #長野県 #北信 #鬼無里 #蜘蛛 #蛇 #動物 #祟り #復讐 #聖ゲオルギウス #失敗 #川 #水神
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ニスの引越し
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 113-114p

 ニスから逃げようとして失敗する話。
 家に取り憑く小精霊は、世界を滅ぼすような大きな騒ぎは起こさないが、縁を切ろうとするとなかなか退治するのが難しいもののようである。

#伝説 #スカンジナビア #北欧 #トムテ #呪的逃走 #失敗 #家付精霊
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大王の三人の妻 ATU707+ATU313
「シルクロードの民話 パミール高原」 171-184p
 複数のモチーフが組み合わさった物語。以下のようなモチーフから成り立っている。
1.とある大王が予言を行う三人姉妹を妻とする。末娘が男と女の双子を産むと邪悪な姉二人が子供を誘拐して動物と入れ替えてしまう。そのため末娘は罰せられる。しかし、捨てられた子供達はシームルグに育てられ、成長すると母親を助ける。大王は邪悪な姉二人を罰して殺す。
2.成長する過程で姉と弟(捨てられた子供達)のうち姉は叔母達が派遣した悪しき老婆に騙されて、手に入れるにの危険を伴う宝を欲するようになる。弟は姉のために旅に出かけ、2度までは宝を手に入れることに成功するが3回目は失敗して死んでしまう。
3.姉は弟を助けるために旅に出て、自らも死にそうになるが助けることに成功する。(その後子供達は母親を助ける。)

全体的には1が中心となるリアンノン的な物語で、ともかく子供達は親元ではなく他人の元で育つ。その成長過程で子供達の冒険のエピソードが挿入されている。
1の場合、大王は妻二人を惨殺するので祝融型神、意地悪な姉二人は惨殺されるので吊された女神、末娘は前半では、いじめられる吊された女神だが、最終的には生き残って養母としての女神、へ変化する。
2の場合、悪役の老婆は惨殺されるので吊された女神、騙される姉もまた吊された女神、姉に振り回されて非業の死を遂げる弟は黄帝型神といえる。神話的には姉は弟を助ける女神であることが妥当なのだが、本物語では騙されて弟を振り回す姉として描かれる。どことなく蛇神に騙されてアダムを振り回したエバの姿が姉に重なる気がする。女性の一方が邪悪な女性に騙される点は、ガルーダの母親のエピソードを思い出させる。悪役の老婆、意地悪な二人の姉は祝融型神のうち性転換型と考える。
3の場合、姉は死した弟を救う女神的存在となるので、姉は養母としての女神に切り替わる。弟は姉を支え、母親を助けるのだから黄帝型神といえる。黄帝型神の弟とその守護者が駄目な父親の目を覚まさせるのだから、この下りでの大王は黄帝型神に負ける炎帝型神である。
モチーフによって登場人物の型が変化し、脇役の悪人や保護者が複数登場するので複雑な話になっている。子供達が手に入れた宝物は馬やおうむである。子供達の死は「石化」として現される。娘が流転の末に両親や弟を助ける点は、鉢里公主の神話に類するように感じる。本作ではシームルグは子供達を育てる役としてわずかしか登場しない。しかもいろいろな話が組み合わさっているせいか、騙される子供達に対して保護者としても役割も充分に果たせてはいないように感じる。名前だけを物語のために借りている感がある。
#民話 #ウラテューベ #養母としての女神 #吊された女神 #祝融型神 #黄帝型神 #炎帝型神 #石化 #シームルグ
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おばけ退治
「長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 95-100p

 いわゆる「怪物退治」譚。僧侶が退治する「聖ゲオルギス型」である。
 閑貞坊とは、昔信濃町に住んでいた僧侶のことのようである。
 ただし、知的な感じではなく、修験道の僧侶らしく、逞しく武力に優れていたと思われる。

#伝説 #長野県 #北信 #狢 #化かす #動物 #祟り #追い払い #聖ゲオルギウス #修験道
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とりかえ子
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 110-112p
「フェアリーのおくりもの トマス・カイトリー」 36-38p

 「とりかえ子」について2篇。
 「とりかえ子」とは、精霊が赤ん坊をさらう代わりに、自分の子供を置いていってしまった、その子供のこと。
 普通の赤ん坊と違って、異様な行動をしたり、成長が普通でなかったりする。
 人々は知恵を使って、とりかえ子を追い出し、本物の赤ん坊を取り戻そうとする。

 「とりかえ子」は大声で叫んだり、異常な大食いであったりして、まるで古代中国の饕餮のようである。
 類話は「とりかえ子(スコットランド)」、「とりかえ子(ドイツ)」

#伝説 #スカンジナビア #デンマーク #北欧 #トロール #取り替え子 #饕餮
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トロルと踊った少女
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 109-110p

 少女が冥界へ行って戻ってくる話。
 踊りが「禁忌」となっていて、少女は時間と正気を失う。

 浦島的な部分については「あの世で過ごした一夜」が類話。
 正気を失う点については「底革のハンス」が類話である。
 ダンスと関連する点については「フェアリーの住居にはいった若者」が類話である。

#民話 #スカンジナビア #デンマーク #北欧 #トロール #踊り #狂気 #浦島太郎
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トロルのお産
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 108-109p

 冥界(異界)へ行って戻ってくる物語だが、出産を手伝って謝礼を貰うという話。
 請われて出向くくらいだから、「逃走」はない。
 「ピクシーのお産」、「フェアリーの乳母」が類話である。

#伝説 #スカンジナビア #デンマーク #北欧 #トロール #報恩 #求産婆 #職能
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じゅうにのかみのおたのすけ
「長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 91-94p

 「狐に化かされる」小編が4つ語られる。
 狐神に対する信仰は、日本では「稲荷信仰」に集約されるが、その起源は古代中国の西王母の随獣である「九尾の狐」にまで遡ると思う。
 狐神は人に恩恵を与えてくれるだけでなく、道に迷わせたり、幻を見せたりする神であり、その結果、狐の好物とされている食べ物を人間から取り上げたりする。
 化かされると、道に迷ったりする結果、人が命を落とすことも少なくないように思う。
 「化かす」とは、神の所業としては「祟り」に似たものだと思うが、動機は餌のためであったりして、姿だけでなく性質も獣的な面を強く残しているのが狐神の特徴であるような気がする。

 筑北村(旧坂北村)の里坊稲荷には7年に一度「狐の嫁入り」行列が披露される、珍しいお祭りがある。

#昔話 #長野県 #中信 #稲荷 #狐 #動物 #化かす #祟り
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ボデディスの伝説
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 107-108p

 トロールが「助け手」となって、行方不明の息子が牢から「呪的逃走」するという趣旨の物語。
 冥界から持ち帰ったもの(鎖の一部)が境界に奉納されて、まるでトロールが教会の下部組織ででもあるような扱いである。

#伝説 #スカンジナビア #デンマーク #北欧 #トロール #報恩 #教会 #カトリック
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スカンジナビア半島のトロール

トロールは丘陵地、長塚、土墳などの下に共同体を作り暮らすためスウェーデンではベルグフォルク(丘の人々)と呼ばれた。彼等の住処は財宝でいっぱいで夜になると光り輝くと言われた。彼らは騒音を嫌い鐘や教会からは離れて暮らした。気に入った人間には富と幸運をもたらし、気に入らないものには不運と破壊をもたらした。また女子供をさらい財宝を盗む。金属工芸にも秀で、薬草や魔法を使った治療にも秀でていると言う。日の光に当たると石に変わるため、夕暮れ時から明け方までしか姿を見せない。
参照:トロール

#神話 #スカンジナビア #デンマーク #北欧 #トロール
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オーゲルブの教会に奉納された杯
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 105-106p

 教会に奉納された杯の由来譚である。
 物語の骨格は「怪物退治」の省略された「呪的逃走」のみの話。
 教会が絡む物語なので、教会そのものが逃走の「助け手」となる。日本でもお堂等に逃げ込んで鬼をやり過ごすような話があったと思う。
 古代の神々の役目であった「呪的逃走」の助け手を、確立された世界宗教も引き継いだ一例といえる。
 トロールの酒を捨てるところは、メソポタミア神話の「アダパの物語」を思わせる。
 もちろんアダパよりもずっと現代に近い時代の物語であるので、他人が差し出した怪しい飲み物などは飲まないのが常識ではあるが。
 物語的には「杯」は、「魔法の大釜」が著しく変形したものであろうか。
 類話は「スヴェンド・フェリングと女エルフ」、「フェアリーの宴会」である。

 参照:アダパトロール
 
#伝説 #スカンジナビア #デンマーク #北欧 #トロール #踊り #魔法のアイテム #酒 #魔法の大釜 #不死の霊薬 #呪的逃走 #馬 #教会 #カトリック #椀貸伝説
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英雄ディックベール ATU513A+AT530+AT313
「シルクロードの民話 パミール高原」 157-171p
 2つのモチーフが組み合わさった物語。
 1つ目はいわゆる「難題婿」で、おじいさんとシームルグの助けを得て、若者が妻を得る物語である。「ディックベール」とは「力持ち」とのことなので、日本神話でいうところの「タヂカラオ」のようなものかと思う。
 中間部として、二人の若者の出会いと、「力くらべ」の末の和解と友情が挿入される。インド神話のガルダとインドラの関係に似る。
 2つ目は、もう一人の若者の冒険を、シームルグと主人公が助ける物語である。
 友愛で結ばれた二人の若者はディックベールは黄帝型神、友人は炎帝型神である。意地悪な舅は彼らに負かされるのだから炎帝型神の舅型といえる。

 シームルグは本物語では「母なる鳥」とされ、女神である。「呪的逃走」の場面では「川と石」と「櫛」という有名な2つのモチーフが登場する。

「川と石」のモチーフ:「サルのよめ」、「スルタンのぶち犬」、「山男
「櫛」のモチーフ:「スルタンのぶち犬」、「紡錘むすめ

参照:木と鳥
#民話 #ウラテューベ #シームルグ #力くらべ #櫛 #川と石 #黄帝型神 #河姆渡型
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底革のハンス
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 101-102p

 妖精の「踊りの丘」でエルフの踊りを見て、エルフの乙女の誘惑(キス)に負けた若者が狂気に陥った、という物語。

 超常的な者にキスされて正気を失ったり、記憶を喪失するという物語はときに見られる。相手が「美しい乙女」だからそうなる、というものでは必ずしもないらしい。
 参照:悪魔の難題

 正気を失う点は「トロルと踊った少女」が類話である。
 
#民話 #スカンジナビア #北欧 #エルフ #踊り #キス #禁忌 #狂気
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りこうな末っ子 ATU921
「世界の民話1 ドイツ・スイス ぎょうせい」 319-321p

 怪物を退治するのではなく、知恵で相手を関心させて豊穣(借金帳消し)を得るタイプの物語。

#民話 #レートロマン #叡智 #怪物納得 #末子成功譚 #農夫の息子と王
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小人の剣ティルフィング(ティルヴィング(Tyrfing))
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 90-92p

 小人の剣は、作り手を脅したりして無理矢理作らせると、持ち主に不幸をもたらす、という例の物語。
 「ヘルヴォルとヘイズレク王のサガ(古ノルド語: Hervarar saga ok Heiðreks)」の中心となる呪われた剣である。

 サガの筋は「『北欧神話と伝説』、V.グレンベック著、山室静 訳、講談社、278-302p」に詳しい。
 
#伝説 #北欧 #ドワーフ #魔法のアイテム #文献  #小人

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2025年12月21日(日) 22時57分59秒〔1時間前〕