No.90
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No.90
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2023年02月14日(火) 17:51:41
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「長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 51-59p
題の「まったらこうよ」とは、長野県の方言的に使われている古語で、「まったら(放ったら)」+「こうよ(来よ)」という意味。「まる(放る)」というのは「用を足す」という意味。
導入部分は上司と対立するタイプの「ゲイ流譚」である。ただし、上司にあたる「おしょうさん」は、旅の助けとなる魔法のアイテムもプレゼントしてくれる「助け手」も兼ね、主人公の小坊主さんの師匠でもあるので、「ゲイ流譚」と「魔法使いの弟子」が融合した展開となっている。対立はあるけれども、互いに殺し合うほどではなく、どちらかといえば友好的な師匠と弟子であることが特徴である。
前半は「鬼ばばあ」からの逃走譚で、「怪物退治」は省略されて逃げるだけである。魔法のアイテムはここで使用される。
中盤は祟る「田の神」を退治するのではなく、「祀る」物語。ないがしろにされていた「田の神」に、餅、酒、大根を捧げる。いずれも植物の変化したもので「生贄の娘の身代わり」であるので、女主人公が植物の化身であることが分かる。
後半はいわゆる「難題婿」で、蜂に助けてもらう「動物神」型兼「謎解き」型。「恐れ」による禁忌も伴う。
主人公が「小坊主さん」であるので、武力で怪物を退治する、という要素は乏しくて、知恵を使って問題を解決しよう、という傾向が強い。かつ、省略が多いけれども、導入部分のおしょうさんとの別れも含めると本来の「怪物退治+呪的逃走」から発生した物語のパターンが4つも繰り返されている物語である。使用されているモチーフも多岐に渡る。よく4つの物語パターンをまとめたな、と思う。神に酒を捧げて機嫌をとり、生贄の乙女を助ける点は、まさにセクメト神話である。
また、祭祀に関して「餅、酒、大根」を捧げることが、「人身御供」の代わりだとあからさまに分かる内容である。普通に日本人だとお祭りの際に、餅、酒、大根を神前に捧げるなんて、「当たり前に普通のこと」過ぎて、その意味を深く考えたことがないような気がするが、民話の中にその本態があっさり語られていたりするようである。
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