No.154
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2023年02月14日(火) 17:51:41
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「シルクロードの民話 パミール高原」 81-86p
主人公である王が妻の不実(事実上の不貞)に気がついて行動を起こす点は「アラビアンナイト」の導入部分と良く似ている。「アラビアンナイト」では、主人公は不貞を働いた女主人公を殺し、それだけに飽き足らず次々と女性を娶っては殺す、という「復讐婚」的な暴君へと変化するが、本物語では、妻を檻に閉じ込めたところで物語は終わる。
「閉じ込められた妻」は「冥界に閉じ込められた(=死)」を暗示させるが、直接的な死としては語られない。直接的な死の表現がないところは、ペルセポネーのような「冥界の女神」への変化をも暗示させるか。
不倫妻が愛人に入れ込んで夫を殺そうとする(夫に不幸をもたらそうとする)点は、「アーサー王とグィネヴィア」を連想させる。神話としては「ネミの森」的といえよう。古代の冷酷な豊穣の女神にとっては、夫は「年老いている」というだけで、捨て去る正当性が生じるからである。
妻を閉じ込めた後、主人公が「聞くな」の禁忌を持つ存在へと変化するのは「王様の耳はロバの耳」を連想させる。蛇王ザッハークとの関連が示唆される。「女主人公が交替しない」という点では、シヴァとサティーの不完全な形と言える。
全体としては「ネミの森」的な人身御供を求める女神信仰と、シヴァ的な「妻の人身御供」を求める男神信仰が混在している物語で、不貞を嫌うイスラム的な思想が二つを纏めている物語といえると思う。「怪物退治」譚として見た場合には、退治されるのは女性であり、えん罪ではないので、神々を殺そうとしたティアマト的といえる。
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