No.187 (ランダム表示)
大王の三人の妻 ATU707+ATU313
「シルクロードの民話 パミール高原」 171-184p
複数のモチーフが組み合わさった物語。以下のようなモチーフから成り立っている。
1.とある大王が予言を行う三人姉妹を妻とする。末娘が男と女の双子を産むと邪悪な姉二人が子供を誘拐して動物と入れ替えてしまう。そのため末娘は罰せられる。しかし、捨てられた子供達はシームルグに育てられ、成長すると母親を助ける。大王は邪悪な姉二人を罰して殺す。
2.成長する過程で姉と弟(捨てられた子供達)のうち姉は叔母達が派遣した悪しき老婆に騙されて、手に入れるにの危険を伴う宝を欲するようになる。弟は姉のために旅に出かけ、2度までは宝を手に入れることに成功するが3回目は失敗して死んでしまう。
3.姉は弟を助けるために旅に出て、自らも死にそうになるが助けることに成功する。(その後子供達は母親を助ける。)
全体的には1が中心となるリアンノン的な物語で、ともかく子供達は親元ではなく他人の元で育つ。その成長過程で子供達の冒険のエピソードが挿入されている。
1の場合、大王は妻二人を惨殺するので祝融型神、意地悪な姉二人は惨殺されるので吊された女神、末娘は前半では、いじめられる吊された女神だが、最終的には生き残って養母としての女神、へ変化する。
2の場合、悪役の老婆は惨殺されるので吊された女神、騙される姉もまた吊された女神、姉に振り回されて非業の死を遂げる弟は黄帝型神といえる。神話的には姉は弟を助ける女神であることが妥当なのだが、本物語では騙されて弟を振り回す姉として描かれる。どことなく蛇神に騙されてアダムを振り回したエバの姿が姉に重なる気がする。女性の一方が邪悪な女性に騙される点は、ガルーダの母親のエピソードを思い出させる。悪役の老婆、意地悪な二人の姉は祝融型神のうち性転換型と考える。
3の場合、姉は死した弟を救う女神的存在となるので、姉は養母としての女神に切り替わる。弟は姉を支え、母親を助けるのだから黄帝型神といえる。黄帝型神の弟とその守護者が駄目な父親の目を覚まさせるのだから、この下りでの大王は黄帝型神に負ける炎帝型神である。
モチーフによって登場人物の型が変化し、脇役の悪人や保護者が複数登場するので複雑な話になっている。子供達が手に入れた宝物は馬やおうむである。子供達の死は「石化」として現される。娘が流転の末に両親や弟を助ける点は、鉢里公主の神話に類するように感じる。本作ではシームルグは子供達を育てる役としてわずかしか登場しない。しかもいろいろな話が組み合わさっているせいか、騙される子供達に対して保護者としても役割も充分に果たせてはいないように感じる。名前だけを物語のために借りている感がある。
#民話 #ウラテューベ #養母としての女神 #吊された女神 #祝融型神 #黄帝型神 #炎帝型神 #石化 #シームルグ
「シルクロードの民話 パミール高原」 171-184p
複数のモチーフが組み合わさった物語。以下のようなモチーフから成り立っている。
1.とある大王が予言を行う三人姉妹を妻とする。末娘が男と女の双子を産むと邪悪な姉二人が子供を誘拐して動物と入れ替えてしまう。そのため末娘は罰せられる。しかし、捨てられた子供達はシームルグに育てられ、成長すると母親を助ける。大王は邪悪な姉二人を罰して殺す。
2.成長する過程で姉と弟(捨てられた子供達)のうち姉は叔母達が派遣した悪しき老婆に騙されて、手に入れるにの危険を伴う宝を欲するようになる。弟は姉のために旅に出かけ、2度までは宝を手に入れることに成功するが3回目は失敗して死んでしまう。
3.姉は弟を助けるために旅に出て、自らも死にそうになるが助けることに成功する。(その後子供達は母親を助ける。)
全体的には1が中心となるリアンノン的な物語で、ともかく子供達は親元ではなく他人の元で育つ。その成長過程で子供達の冒険のエピソードが挿入されている。
1の場合、大王は妻二人を惨殺するので祝融型神、意地悪な姉二人は惨殺されるので吊された女神、末娘は前半では、いじめられる吊された女神だが、最終的には生き残って養母としての女神、へ変化する。
2の場合、悪役の老婆は惨殺されるので吊された女神、騙される姉もまた吊された女神、姉に振り回されて非業の死を遂げる弟は黄帝型神といえる。神話的には姉は弟を助ける女神であることが妥当なのだが、本物語では騙されて弟を振り回す姉として描かれる。どことなく蛇神に騙されてアダムを振り回したエバの姿が姉に重なる気がする。女性の一方が邪悪な女性に騙される点は、ガルーダの母親のエピソードを思い出させる。悪役の老婆、意地悪な二人の姉は祝融型神のうち性転換型と考える。
3の場合、姉は死した弟を救う女神的存在となるので、姉は養母としての女神に切り替わる。弟は姉を支え、母親を助けるのだから黄帝型神といえる。黄帝型神の弟とその守護者が駄目な父親の目を覚まさせるのだから、この下りでの大王は黄帝型神に負ける炎帝型神である。
モチーフによって登場人物の型が変化し、脇役の悪人や保護者が複数登場するので複雑な話になっている。子供達が手に入れた宝物は馬やおうむである。子供達の死は「石化」として現される。娘が流転の末に両親や弟を助ける点は、鉢里公主の神話に類するように感じる。本作ではシームルグは子供達を育てる役としてわずかしか登場しない。しかもいろいろな話が組み合わさっているせいか、騙される子供達に対して保護者としても役割も充分に果たせてはいないように感じる。名前だけを物語のために借りている感がある。
#民話 #ウラテューベ #養母としての女神 #吊された女神 #祝融型神 #黄帝型神 #炎帝型神 #石化 #シームルグ