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「読んで 遊んで とっぴんぱらたからぎけのり 新長野のむかし話 長野県国語教育学会編」 138-143p
「西鶴諸国咄」よりの出典。原題は「巻三 行末の宝船」である。諏訪の地元に、諏訪湖の底に竜宮城がある、という話は見たことがないが、余所ではこのような話が流布していたかもしれない、と思う。西鶴は江戸時代の人であるので、江戸時代的な発想が随所にあり、どこまでが江戸時代の脚色なのか、と思う。
粗筋は、諏訪湖の底に竜宮城があって、湖で溺れた男が「赤い船」に乗って戻ってきて、村の男衆を何人か連れて行ってしまったが、男衆は戻ってこなかった、という話。
湖で溺れた男は、要は「幽霊」であると思うので、幽霊があの世から戻ってきて、元の仲間を道連れに引き込んだ、というと「怪奇譚」のようにもなる。むしろ、中国の怪奇譚の影響を受けた和製怪奇譚なのでは? と思う。そして、諏訪湖ではなく、天竜川の河口の浜松に「赤い蛇女神」の伝承があるので、むしろ「竜宮」とか「赤い船」というのは、天竜川の「赤い蛇女神」に関連して、江戸時代的に作り替えられた話で、諏訪湖の話ではあっても、発生地は遠州(静岡)なのではないか、と思うわけですが。
基本的には、湖の'''赤い'''蛇女神に男の生贄を捧げた話だと思う。諏訪的には、これは多留姫でもあるし、ミシャグジ様で良いと思います。というか、縄文的にはミシャグジ様という名(かつ出産土器の女神)、賀茂的水神女神としては多留姫という名、日本神話的には天照大神、渡来神(かつ賀茂の祖神)としては阿加流比売神、しかし新羅に来るその前の名は? と問えば我らが「女媧娘娘」と繋がる「人身御供を求める蛇女神」であると思う。
しかも、「怠け者の男」が死んで「竜宮の王(冥王)の部下となった」という設定付きである。要するに、この「怠け者の男」こそが「饕餮」と言わざるを得ない。苗族にもこんな感じの伝承があったはず、と思う。
ということで、話の内容よりも、江戸時代に西鶴にこういう話を書かせる、その執念と信念こそに敬意を払いたい・・・けれども、人身御供は駄目ですよ。という話である。「赤い船」とは太陽神であった女媧娘娘の化身のことと思う。神紋に織物の女神である西王母の象徴の「梶の葉」、湖に女媧娘娘の化身である多留姫、と「二人の母神」を擁する上社であるが、そこに出雲の下照媛を加えて、「三位一体」の「太陽女神」を「母神」としているのだと思う。(下社はイザナミ=八坂刀売=焼き殺される母神一択といえる。)要は上社の形態は、尾張真清田と一致する。
まあ、でも、「諏訪の民話」とするには微妙な話である。ここまできっちりと神話的な整合性をとった話を作る事ができたのが西鶴その人自身であれば、素晴らしい作家であったと言うべきである。
#昔話 #長野県 #中信 #龍 #常世信仰