No.173, No.172, No.171, No.170, No.169, No.168, No.167[7件]
ロキと小人
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 86-88p
ドゥエルガル(dvergr)の性質を示すものとして、カイトリーが紹介した物語。「妖精の誕生」の目次では民話とされているが、神話である。神々の武器をロキがどのようにして手に入れたのか、という由来譚になっている。 参照:シフの髪を切った話
小人とは、この物語のように魔法のアイテムを作る、主に地下に住む鍛治師とされている。
この物語についての「妖精の誕生」でのカイトリーの解説には、個人的には何も言えない。(というか、何が言いたいのかよく分からない。)
シフの髪を切った話は、「怪物退治譚」の変形で、宝物探報が主な目的となった「イアーソーン型」である。物語の導入部分は、上位の神トールとの対立であるので、「ゲイ流譚型」といえる。
物語としては、流れに疑問を感じる不自然な場面がいくつかあり、欠損を思わせる。それは、
1.何故ロキがシヴの髪を刈ってしまうのか。なぜ、自然に髪が伸びるまで待てないのか。という点
2.手に入れた魔法のアイテムはいわば「賠償品」であって、最初からロキのものではないのだが、なぜロキは品物を自慢したりしたのか。そして、なぜ命を賭けた賭けをしたのか。という点
の2点である。
「シヴの髪を刈る行為」は、「長く豊かな髪」は女性らしさの象徴でもあり、夫の自慢でもあるので、それは「女性の死」の暗喩であると思う。つまり、ロキはシヴを殺してしまったので、その再生のために冥界を流転する旅に出ることになる。旅には、シヴの再生の目的と、もっと人の現実世界に近い「賠償」のため、という2つの側面がある。ロキの旅に2段階あるのは、最初の旅のみでは、再生に足りない、あるいは賠償が足りない、とされる理由が本来あったのではないだろうか。そのため、さらなる目的物を得るためにロキは命を賭けなければならないのである。一つの命を再生させるために、新たな命が必要とされる、というのはよくある神話のパターンである。
そして、旅の目的を果たしてロキは帰還するが、結局は成功と認められないことになる。従ってロキは殺されねばならない。この展開にも2面性があり、ロキはシヴの再生のために最初から命を差し出さねばならない、という神話的目的と、「賠償に失敗したから」という現実的な目的が入り交じっているように思う。「口をきけないようにする」という展開は、「ロキの死」を暗喩している。
民話では、物語の最後は「めでたし めでたし」で終わることが多いが、西欧の神話では特に悲劇で終わることが多い。登場人物のほとんどが死んでしまう「ニーベルンゲン」のような物語もある。ただし、本物語は、「北欧神話」という大きな物語群の中で、「神々の武器の由来譚」としての位置を与えられたこと、ロキの最期がラグナロクに位置づけられたことなどから、ロキの死は暗示されるだけで、物語の上では死なない、ということに変更されたのではないか、と思われる。男神が女神を再生させる、という点ではイナンナとタンムーズ的ともいえる。タンムーズも冥界のイナンナの怒りを買ったことが、彼の死の原因とされている。
類話はケルト神話の「トゥレンの息子達 」である。主人公達は、人の命を奪い、上位の神に賠償するために財宝を探索する「イアーソン型」かつ「ゲイ流譚型」の旅をする。試練が2部制になっている点、最期に主人公達が亡くなる点等が共通である。
#神話 #北欧 #イアーソーン #ゲイ流譚 #魔法のアイテム #イナンナとタンムーズ #損害賠償 #小人 #ドワーフ
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 86-88p
ドゥエルガル(dvergr)の性質を示すものとして、カイトリーが紹介した物語。「妖精の誕生」の目次では民話とされているが、神話である。神々の武器をロキがどのようにして手に入れたのか、という由来譚になっている。 参照:シフの髪を切った話
小人とは、この物語のように魔法のアイテムを作る、主に地下に住む鍛治師とされている。
この物語についての「妖精の誕生」でのカイトリーの解説には、個人的には何も言えない。(というか、何が言いたいのかよく分からない。)
シフの髪を切った話は、「怪物退治譚」の変形で、宝物探報が主な目的となった「イアーソーン型」である。物語の導入部分は、上位の神トールとの対立であるので、「ゲイ流譚型」といえる。
物語としては、流れに疑問を感じる不自然な場面がいくつかあり、欠損を思わせる。それは、
1.何故ロキがシヴの髪を刈ってしまうのか。なぜ、自然に髪が伸びるまで待てないのか。という点
2.手に入れた魔法のアイテムはいわば「賠償品」であって、最初からロキのものではないのだが、なぜロキは品物を自慢したりしたのか。そして、なぜ命を賭けた賭けをしたのか。という点
の2点である。
「シヴの髪を刈る行為」は、「長く豊かな髪」は女性らしさの象徴でもあり、夫の自慢でもあるので、それは「女性の死」の暗喩であると思う。つまり、ロキはシヴを殺してしまったので、その再生のために冥界を流転する旅に出ることになる。旅には、シヴの再生の目的と、もっと人の現実世界に近い「賠償」のため、という2つの側面がある。ロキの旅に2段階あるのは、最初の旅のみでは、再生に足りない、あるいは賠償が足りない、とされる理由が本来あったのではないだろうか。そのため、さらなる目的物を得るためにロキは命を賭けなければならないのである。一つの命を再生させるために、新たな命が必要とされる、というのはよくある神話のパターンである。
そして、旅の目的を果たしてロキは帰還するが、結局は成功と認められないことになる。従ってロキは殺されねばならない。この展開にも2面性があり、ロキはシヴの再生のために最初から命を差し出さねばならない、という神話的目的と、「賠償に失敗したから」という現実的な目的が入り交じっているように思う。「口をきけないようにする」という展開は、「ロキの死」を暗喩している。
民話では、物語の最後は「めでたし めでたし」で終わることが多いが、西欧の神話では特に悲劇で終わることが多い。登場人物のほとんどが死んでしまう「ニーベルンゲン」のような物語もある。ただし、本物語は、「北欧神話」という大きな物語群の中で、「神々の武器の由来譚」としての位置を与えられたこと、ロキの最期がラグナロクに位置づけられたことなどから、ロキの死は暗示されるだけで、物語の上では死なない、ということに変更されたのではないか、と思われる。男神が女神を再生させる、という点ではイナンナとタンムーズ的ともいえる。タンムーズも冥界のイナンナの怒りを買ったことが、彼の死の原因とされている。
類話はケルト神話の「トゥレンの息子達 」である。主人公達は、人の命を奪い、上位の神に賠償するために財宝を探索する「イアーソン型」かつ「ゲイ流譚型」の旅をする。試練が2部制になっている点、最期に主人公達が亡くなる点等が共通である。
#神話 #北欧 #イアーソーン #ゲイ流譚 #魔法のアイテム #イナンナとタンムーズ #損害賠償 #小人 #ドワーフ
by admin. ⌚ 2022年02月16日(水) 18:29:28 民話,神話,起源・由来,多エピソード保有人名 <1491文字> 編集
ドゥエルガル(dvergr)
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 85-86p
「ドゥエルガルははじめユミルの肉の中に創造され、生活をはじめ、その中のウジとなっていたが、神々の意志によって人間の知識を分け与えられ、人の姿をとるようになった。しかしなお大地の中と石の中に住んだ。(エッダ)」
とのことで、彼らは冶金術に優れている。
ドゥエルガル(dvergr)は英語のドワーフ(dwarf)の起源である。
個人的には、地下世界の宝を形にする存在なので、冥界神が崩れて精霊化したものではないか、と思う。
#神話 #北欧 #ドワーフ
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 85-86p
「ドゥエルガルははじめユミルの肉の中に創造され、生活をはじめ、その中のウジとなっていたが、神々の意志によって人間の知識を分け与えられ、人の姿をとるようになった。しかしなお大地の中と石の中に住んだ。(エッダ)」
とのことで、彼らは冶金術に優れている。
ドゥエルガル(dvergr)は英語のドワーフ(dwarf)の起源である。
個人的には、地下世界の宝を形にする存在なので、冥界神が崩れて精霊化したものではないか、と思う。
#神話 #北欧 #ドワーフ
by admin. ⌚ 2022年02月16日(水) 00:46:45 神話,定義 <271文字> 編集
アルファル(alfer他)
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 82-84p
明るいアルファル
「ユグドラシルの下、アルフ・ヘイムと呼ばれる町があり、明るいアルファルとよばれる人々が住んでいる。明るいアルファルの姿は太陽より白い。」とされた。(「散文のエッダ」より)
ノルニル(ノルンの複数形)はアルファルの種族だとされている。
暗いアルファル
「地下世界に住んでいる。暗いアルファルの姿は歴青(ピッチ)より黒い。」とされた。(「散文のエッダ」より)
ノルン
神の種族とされるもの:人間の人生を形作るもの。ウルズ(ウドル)、ヴェルザンディ(ヴェルタンディ)、スクルド(過去、現在、未来)の3姉妹である。
アルファルに属するもの:神以外のもの
ドゥエルガルに属するもの:上記以外
とされた。
アルファル(alfer)は英語のエルフ(elf)の起源である。
参照:エルフ
#神話 #北欧 #エルフ
「妖精の誕生 トマス・カイトリー」 82-84p
明るいアルファル
「ユグドラシルの下、アルフ・ヘイムと呼ばれる町があり、明るいアルファルとよばれる人々が住んでいる。明るいアルファルの姿は太陽より白い。」とされた。(「散文のエッダ」より)
ノルニル(ノルンの複数形)はアルファルの種族だとされている。
暗いアルファル
「地下世界に住んでいる。暗いアルファルの姿は歴青(ピッチ)より黒い。」とされた。(「散文のエッダ」より)
ノルン
神の種族とされるもの:人間の人生を形作るもの。ウルズ(ウドル)、ヴェルザンディ(ヴェルタンディ)、スクルド(過去、現在、未来)の3姉妹である。
アルファルに属するもの:神以外のもの
ドゥエルガルに属するもの:上記以外
とされた。
アルファル(alfer)は英語のエルフ(elf)の起源である。
参照:エルフ
#神話 #北欧 #エルフ
by admin. ⌚ 2022年02月15日(火) 11:17:15 神話,定義 <484文字> 編集
「シルクロードの民話 パミール高原」 147-156p
2つのモチーフが組み合わさった物語。
導入部分は主人公が結婚のために宝物を求める、という内容。「難題聟」であり「イアーソーン型」である。難題を課すのは舅である。おばあさんが間接的な助け手となるが、一般的に人でもできる範囲の助けに留まって、ナンの役割などははっきりしない。
主人公は人でなしの青ひげ的魔法使いに弟子入りする形式だが、魔法を教えてくれるのは魔法使いの娘である。冥界(魔法使いの住処)からの呪的逃走はあるのだけれども、魔法使いが町中に住んでいる、という設定になっているので「異界からの逃走」という要素がやや曖昧と感じる。本来、逃走のためのものであった主人公の「変身」も金儲けのためともなっている。「魔法使いの弟子」的な変身による逃走を繰り返して、主人公は魔法使いを退治すると、王女を得て結婚となる。
「財宝探索」の物語の中に、入れ子のように「魔法使いの弟子」的な、冥界を経て変身しながら逃走する物語が組み込まれている。そのため、冥界の娘との婚姻譚は削除されている。一番の類話は「魔法使いの弟子」である。
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