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、 2022年8月6日 (土) 19:48
'''サトイモ'''('''里芋'''、青芋、学名:Colocasia esculenta)は、東南アジアが原産のタロイモ類の仲間で、サトイモ科の植物。茎の地下部分(塊茎)である芋と、葉柄を食用にし、葉柄は'''芋茎'''(ズイキ)と呼ばれる。
== 名称 ==
和名'''サトイモ'''の由来は、山地に自生していたヤマイモに対し、里で栽培されることから「里芋」という名が付いたとされる<ref>講談社編, 2013, p189</ref>。
栽培の歴史が長いことから、同音異種や異名同種が多い。タロイモ<ref name="YList"/>、{{要出典範囲|date=2021年12月|イエツイモ、ツルノコモ、ハスイモ}}、タイモ(田芋){{sfn|講談社編|2013|p=189}}、ハタイモ(畑芋){{sfn|講談社編|2013|p=189}}、イエイモ(家芋){{sfn|講談社編|2013|p=189}}、ヤツガシラ(八頭)など<ref>編集:佐藤一郎、浅野通有『漢字に強くなる本―これは重宝』光文書院 1978年9月</ref>、ハイモ<ref>[http://www.weekly-ueda.co.jp/tethu/back/main7.html 胡麻を作らない話] 週刊 上田</ref>などのほか、ズイキイモとも呼ばれる<ref>『佐久市志民俗編下』([[長野県]][[佐久市]]、平成2年2月20日発行)1391頁</ref>。
英語では taro(ターロゥ:タロイモの意)、eddo(エドゥ:タロイモやサトイモの意)、dasheen(ダシン:サトイモ属 ''Colocasia'' を表わす同義語)などと呼ばれ{{sfn|講談社編|2013|p=188}}、[[フランス語]]では colocase(コロカーズ)または taro(タロ:タロイモの意)とも呼ばれている{{sfn|講談社編|2013|p=188}}。[[学名]]の ''Colocasia'' は、[[ギリシャ語]]の「食物」を表す “colon” と、「装飾」を表す “casein” を合成した言葉が語源となっている。
== 特徴 ==
[[ファイル:Excavated satoimo (1)-(5).jpg|thumb|250px|掘り出されたサトイモ(掘る前に葉と芋茎は切り落とされている);<br />(1) 種イモ(親イモ)から出た芋茎の残り<br />(2) 種イモ(親イモ;食べるに値しない)<br />(3) 子イモから出た芋茎の残り<br />(4) 子イモ(芋の子)<br /> (5) 孫イモ(芋の子)<br />1個の種イモから画像内全部が1[[株]]として[[成長]]し殖えた。]]
大きな葉がついた葉柄が地上に生え、草丈は1.2 - 1.5メートル (m) ほどになる{{sfn|藤田智監修 NHK出版編|2019|p=113}}。地中部には食用にされる塊茎(芋)があり、細長いひげ根が生える。[[日本]]のサトイモは[[花]]を咲かせないと言われるが、実際には着花することがある。着花する確率は[[品種]]間の差が大きく、毎年[[開花]]するものから、[[ホルモン]]処理をしてもほとんど開花しないものまで様々である。[[蕾|着蕾]]した[[株立ち|株]]では、その中心に[[葉]]ではなくサヤ状の[[器官]]が生じ、次いでその脇から淡黄色の細長い[[仏炎苞]]を伸長させてくる。花は仏炎苞内で[[肉穂花序]]を形成する。
サトイモは成長した茎の下部が親イモとなり、その周りを囲むように子イモが生じ、さらに子イモには孫イモがついて増えていくユニークな育ち方をする{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=108}}{{sfn|丸山亮平編|2017|p=105}}{{sfn|藤田智監修 NHK出版編|2019|p=113}}。主に子イモを食べるもの、親イモを食べるもの、親イモと子イモの両方を食べる品種がある{{sfn|藤田智監修 NHK出版編|2019|p=112}}。
サトイモの栽培[[品種]]は[[倍数性#倍数体|2倍体]] (2n=28) および、[[倍数性#倍数体|3倍体]] (2n=42) である<ref>山口裕文、島本義也編著『栽培植物の自然史 : 野生植物と人類の共進化』([[北海道大学]]図書刊行会、2001年)p.153 ISBN 9784832999312</ref><ref>「[https://ci.nii.ac.jp/naid/110001807912/ 2倍体サトイモ(CoIocasia esculenta (L.) Schott)における4酵素のアイソザイムの遺伝分析]」日本育種学会『Breeding science』48(3), pp.273-280, 1998年9月1日</ref><ref>坂本寧男「[https://doi.org/10.3759/tropics.3.19 イモと雑穀-作物と環境]」『Tropics』1994年 3巻 1号 pp.19-32, {{doi|10.3759/tropics.3.19}}</ref>。着果はほとんど見られないが、[[2倍体]]品種ではよく着果する。[[種子]]は[[ウラシマソウ]]などと比較してかなり小さい。
== 歴史 ==
原産地は[[インド]]や[[中国]]{{sfn|丸山亮平編|2017|p=104}}、または[[マレー半島]]{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=108}}などの熱帯アジアと言われているが{{sfn|藤田智監修 NHK出版編|2019|p=112}}、インド東部から[[インドシナ半島]]にかけてとの説が有力視されている{{sfn|講談社編|2013|p=189}}。少なくとも、紀元前3000年ごろにはインドで栽培されていたとみられている{{sfn|講談社編|2013|p=189}}。
日本への伝播ははっきりしていないが、[[イネ]]の渡来よりも早い[[縄文時代]]後期と考えられている{{sfn|講談社編|2013|p=189}}<ref>小西達夫:[http://www.yasaitobunka.or.jp/kenkyuu_kouenkai/20111212_satoimo_report01.html 世界のタロイモ -種の多様性と利用について-] 有名野菜品種特性研究会 「有名野菜品種特性研究会(サトイモ)」報告</ref>。なお、鳥栖自生芋([[佐賀県]][[鳥栖市]])のほかに、藪芋、ドンガラ、弘法芋([[長野県]][[青木村]])と呼ばれる野生化したサトイモが、[[本州]]各地にあることが報告されている<ref>「[http://portal.dl.saga-u.ac.jp/handle/123456789/13543 佐賀県鳥栖市に自生しているサトイモについて]」『佐賀大学農学部彙報』[[佐賀大学]]農学部 Vol.71 pp.113 -122</ref>。このうち、青木村の弘法芋群生地は県指定[[天然記念物]]となっている<ref>[[平安時代]]初期の[[仏教]][[僧侶]]・[[空海]](弘法大師)にちなむ伝説から、弘法芋と呼ばれる。別名「石芋」。[http://www.vill.aoki.nagano.jp/assoc/see/ishiimo/ishiimo.html 県指定天然記念物 沓掛の野生里芋] 青木村ホームページ(2018年12月7日閲覧)</ref>。伝播経路は不明であるが、[[黒潮]]の流れに沿って北上したと考える研究者がいる<ref>橋本征治「[https://hdl.handle.net/10112/3088 台湾蘭嶼におけるタロイモ栽培]」『[[関西大学]]東西学術研究所紀要』第40輯, 2007年4月1日, pp.55-77</ref>。
日本の食文化とサトイモの関わりは関係が深く、古い時代から[[月見]]の宴などの儀礼食に欠かさない食材で使われており、サトイモを[[餅]]の代用にした「餅なし正月」の習俗も日本各地で見られた{{sfn|講談社編|2013|p=189}}。[[戦国時代 (日本)|戦国時代]]には野戦携行食として、茎葉の皮を剥いて乾燥させた保存食「干し ずいき」「芋がら」が重宝された。
== 栽培 ==
植え付けから収穫までの栽培期間は約6か月で{{sfn|藤田智監修 NHK出版編|2019|p=112}}、種芋を一つずつ芽出しして春に植え付けて、秋に子イモを収穫する{{sfn|金子美登|2012|p=186}}。初夏までに2、3回土寄せして、[[畝]]を少しずつ高くしていくことにより、イモが大きく育ち、たくさん付けさせる{{sfn|金子美登|2012|p=186}}。土にイモを埋めて貯蔵すると、翌年の種芋に使うことが出来る{{sfn|金子美登|2012|p=186}}。天候に左右されやすく、雨の多い夏に良く育つといわれており{{sfn|丸山亮平編|2017|p=104}}、乾燥に弱く高温多湿を好む性質から、夏の生育期に雨が少ない場合は水やりをする{{sfn|金子美登|2012|p=186}}。栽培に適した土壌[[酸度]]は [[水素イオン指数|pH]] 6.0 - 6.5、発芽適温は15 - 30[[セルシウス度|℃]]、栽培適温は20 - 30℃とされる{{sfn|丸山亮平編|2017|p=104}}{{sfn|藤田智監修 NHK出版編|2019|p=112}}。[[連作障害]]があり、同じ畑での作付けは3年以上や、4 - 5年は空けるようにすると言われている{{sfn|丸山亮平編|2017|p=104}}{{sfn|藤田智監修 NHK出版編|2019|p=112}}。
=== 適地 ===
[[熱帯]]の[[アジア]]を中心として重要な[[主食]]になっている多様なタロイモ類のうち、最も北方で栽培されている。栽培は比較的容易である。[[水田]]などの湿潤な土壌で日当たり良好で温暖なところが栽培に適する。原産地のような熱帯の気候では多年生だが、冬が低温期になる日本では一年草になる<ref>{{Cite web|title=サトイモ(里芋)|基本の育て方と本格的な栽培のコツ {{!}} AGRI PICK|url=https://agripick.com/2267|website=農業・ガーデニング・園芸・家庭菜園マガジン[AGRI PICK]|accessdate=2021-03-16}}</ref>。日本では、一般的に[[畑]]で育てるが、[[奄美諸島]]以南では[[水田]]のように水を張った[[湛水]]で育てている。湛水状態で育てた場合、畑で育てるよりも収穫量が2.5倍になるとの調査がある<ref>{{cite news |title=新しいサトイモの栽培方法を開発、収量が2倍に。農学部の岩井純夫教授らの研究グループ。|date=2015-11-14|url=http://www.kagoshima-u.ac.jp/topics/2014/01/post-614.html|publisher=[[鹿児島大学]]|accessdate=2015-11-14}}{{リンク切れ|date=2021年10月}}</ref><ref>{{cite news |title=水田で育てたサトイモ、収穫量が畑作の2・5倍|date=|url=https://web.archive.org/web/20140309125154/http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20140308-OYT1T00504.htm |newspaper=[[読売新聞]](2014年3月9日14時5分配信)の[[インターネットアーカイブ]]|accessdate=2021-10-21}}</ref>。水田でのサトイモ湛水栽培は病虫害予防や[[米]]余りに対応した[[転作]]で有効であるため、[[九州]]本土や本州でも広がりつつある<ref>「転作サトイモ■たん水栽培に注目」『[[日本農業新聞]]』2021年10月5日3面</ref>。
[[昭和]]30年代ごろまでは、[[高知県]]や[[熊本県]]([[五家庄|五家荘]])などでは山間地での[[焼畑農業|焼き畑]][[輪作]]農業により栽培されていた<ref>横川末吉「[https://doi.org/10.4200/jjhg1948.7.41 高知縣の燒畑耕作]」『人文地理』1955年 7巻 1号 pp.41-48, {{doi|10.4200/jjhg1948.7.41}}</ref><ref>上野福男「[https://doi.org/10.4157/grj.14.93 五家荘の燒畑耕作]」『地理学評論』1938年 14巻 2号 pp.93-120, {{doi|10.4157/grj.14.93}}</ref>。
[[ファイル:Leiden University Library - Seikei Zusetsu vol. 22, page 006 - 早芋, 芋苗英 - Colocasia esculenta (L.) Schott - 芋魁, 衣被芋 - idem, 1804.jpg|サムネイル|『[[成形図説]]』より]]
{{デフォルトソート:さといも}}
[[Category:植物]]
[[Category:ハイヌウェレ]]