吊された女神
アジア、ヨーロッパの神話・伝承を見ると、「(逃げ回って)吊された女神」の話をよく見かける。神話の世界では、この他に「燃やされた女神」「養母としての女神」もよく登場し、これら三女神が一体化した女神もよく見かける。これらの女神は主に米や穀物を発生させたり、人々に与えたりする。まれに酒造りを教えることもある。薬草の発生に関連するからか、医薬神とされることもある。
本項ではこのうち「(逃げ回って)吊された女神」を取り上げたい。
この女神の特徴は
- 女神が殺されて木に吊されたもの。馬頭娘など。
- ともかく「逃げる」的な要素を持つ女神。結婚に際して木の周りを回る伊邪那美命、メリュジーヌなど。
- 遷座する女神
- 「逃げる」が転じて「足」にこだわる女神。アタランター、シンデレラ系。
- 先に男神が死んで、女神がその後を追いかけて死ぬ神話。
- 近しい男性を振り回す女神。イナンナのように。
- 女神自身が何かを燃やした女神である場合。
である。
吊された女神の典型例[編集]
民話風にすると、以下のような感じになる。
「アンヌ姉さん、誰が私を殺して吊したの?」
「それはあなたの夫の青ひげよ。」
これに尽きる。
吊された女神の類例[編集]
吊された女神・複合体[編集]
民話や伝承の中では、嘘をついたり、人を騙したりして、何か悪いことを画策し、それが明らかになって罰されて殺される女性が多々登場する。天佐具売(アメノサグメ)のような女神群である。最後は焼き殺されることも多い。私は、これは
の複合体と考える。死んだ後に生き返ったりすると、そこに更に「養母としての女神」の性質が加わる。人を騙したりすることは祝融型神の特徴だし、何らかの理由で殺されるのは吊された女神・燃やされた女神の特徴だからである。民話や伝承の中では、白雪姫の継母のように、脇役として悪いことを画策したあげくに罰を受けて殺される女性は多く登場する。その神話的性質は複雑で一つに分類するよりも「吊された女神・複合体」とする方が正確だと感じる。