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ゼウスは、義父殺しの罪を犯したイクシオンを哀れみ、彼を浄化してオリンポスに連れてきた。しかし、イクシオンはヘーラーに欲望を持つようになった。ヘーラーがこのことを夫に訴えたので、ゼウスはイクシオンを試すことにした。ゼウスはヘーラー([[ネペレー]])に似た雲を作り、その雲のヘーラーをイクシオンの寝床に寝かせた。ゼウスはヘーラーに欲情したイクシオンを、永遠に回転する車輪に縛り付けて罰した<ref>Hard 2004, [https://books.google.com/books?id=r1Y3xZWVlnIC&pg=PA554 p. 554]; Apollodorus, [http://data.perseus.org/citations/urn:cts:greekLit:tlg0548.tlg002.perseus-eng1:e.1.20 Epitome 1.20]</ref><ref group="私注">北斗の車輪のことか?</ref>。 | ゼウスは、義父殺しの罪を犯したイクシオンを哀れみ、彼を浄化してオリンポスに連れてきた。しかし、イクシオンはヘーラーに欲望を持つようになった。ヘーラーがこのことを夫に訴えたので、ゼウスはイクシオンを試すことにした。ゼウスはヘーラー([[ネペレー]])に似た雲を作り、その雲のヘーラーをイクシオンの寝床に寝かせた。ゼウスはヘーラーに欲情したイクシオンを、永遠に回転する車輪に縛り付けて罰した<ref>Hard 2004, [https://books.google.com/books?id=r1Y3xZWVlnIC&pg=PA554 p. 554]; Apollodorus, [http://data.perseus.org/citations/urn:cts:greekLit:tlg0548.tlg002.perseus-eng1:e.1.20 Epitome 1.20]</ref><ref group="私注">北斗の車輪のことか?</ref>。 | ||
− | + | あるとき、太陽神ヘリオースは、経験の浅い息子パエトーンに自分の馬車を扱わせた。パエトーンは父の馬を制御できず、戦車を高くしすぎて大地を凍らせたり、低くしすぎてすべてを焼き尽くしたりしてしまった。大地そのものがゼウスに祈り、これ以上の災いを防ぐために、ゼウスはパエトーンに雷を投げつけ、パエトーンを殺して世界を救った<ref group="私注">これは[[羿]]神話の変形であろう。</ref>。 | |
2022年12月22日 (木) 06:41時点における版
ゼウス(ΖΕΥΣ, Ζεύς, Zeus)は、ギリシア神話の主神たる全知全能の存在[1][2][3]。ローマ神話のジュピター(ユーピテル)、中国神話の天帝、キリスト教やイスラーム等の唯一神と同様な、「至上神(supreme god)(スプリームゴッド)」の典型[4]。一般的に「至上神」[5]または「最高神」[6]は、創造的能力や人格的性質を持ち、全知全能だとされている[7]。
ゼウスは宇宙や天候を支配する天空神であり、人類と神々双方の秩序を守護・支配する神々の王である。宇宙を破壊できるほど強力な雷を武器とし、多神教の中にあっても唯一神的な性格を帯びるほどに絶対的で強大な力を持つ[8]。ゼウス[9][10](Ζεύς、British English:zju:s、American English:zu:s)は、古代ギリシアの宗教における天空神・雷神で、オリンポス山に神々の王として君臨している。彼の名前は、ローマ神話に登場するユーピテルの第一元素と同義である[11]。その神話と能力は、ユーピテル、ペルクナス、ペールン、インドラ、ディヤウス、ゾイツといった印欧語の神々と、同一ではないにせよ、似ているところがある[12][13][14][15][16]。
ゼウスはクロノスとレアーの子供で、兄弟の中で最も若く生まれたが、他の兄弟はクロノスの胃から吐き出される必要があったため、長男とされることもあった。多くの伝承では、彼はヘーラーと結婚し、ヘーラーとの間にアレース、エイレイシア、ヒビ、ヘパイストスを生んだとされている[17][18]。ドドナの神託で、彼の妃はディオーネとされ[19]、『イーリアス』ではディオーネがアフロディテを生んだとされている[20][21][22]。『神統記』によれば、ゼウスの最初の妻はメーティスで、その間にアテーナーが生まれた[23]。ゼウスはまた、エロティックな逃避行で悪名高い人物であった。その結果、アポローン、アルテミス、ヘルメース、ペルセポネー、ディオニューソス、ペルセウス、ヘーラクレース、トロイのヘレン、ミノス、ミューズなど、多くの神や英雄の子孫が生まれました[17]。
彼は神々の長であり[24]、他の神々に役割を与える全能の父として尊敬されていた[25]。"彼の実子でない神々も彼を父と呼び、すべての神々が彼の前で立ち上がる "とされていた[26][27]。パウサニアスは「ゼウスが天の王であることは、すべての人に共通する表現である」と述べている[28]。ゼウスのシンボルは、雷鳴、鷲、雄牛、樫である。インド・ヨーロッパ語族の伝統を受け継ぐだけでなく、古典的な「雲を集める者」(ギリシャ語:Νεφεληγερέτα, Nephelēgereta)は、笏など古代近東の文化に由来する図像的特徴も持っている[29]。ゼウスは、立っている姿、右手に雷鳴を掲げて前進している姿、座って威厳を保っている姿の3つのポーズで描かれることが多い。ギリシャでは、左利きの人は不吉だと信じられていたため、雷は神の右手だけが持つことが非常に重要だった。
目次
- 1 概要
- 2 名前
- 3 神話
- 4 Roles and epithets
- 5 Cults of Zeus
- 6 Zeus and foreign gods
- 7 Zeus and the sun
- 8 Zeus in philosophy
- 9 Zeus in the Bible
- 10 Zeus in Gnostic literature
- 11 In modern culture
- 12 Genealogy of the Olympians
- 13 Argive genealogy
- 14 Gallery
- 15 See also
- 16 Footnotes
- 17 Notes
- 18 References
- 19 External links
- 20 系譜
- 21 全宇宙の支配まで
- 22 人物
- 23 信仰
- 24 参考文献
- 25 私的注釈
- 26 参照
概要
ゼウスはローマ神話ではユーピテル(ジュピター)にあたる。オリュムポスの神々の家族および人類の両方の守護神・支配神であり、神々と人間たちの父と考えられた。
ゼウスは天空神として、全宇宙や雲・雨・雪・雷などの気象を支配していた。キュクロープスの作った雷霆(ケラウノス)を主な武器とする。その威力はオリュンポス最強と謳われるほど強大なもので、この雷霆をゼウスが使えば世界を一撃で熔解させ、全宇宙を焼き尽くすことができる[30]。テューポーンと戦う際には、万物を切り刻む魔法の刃であるアダマスの鎌も武器としていた。雷霆の一撃をも防ぎ、更に敵を石化させるアイギスの肩当て(胸当てや楯という説も)を主な防具とするが、この防具はよく娘のアテーナーに貸し出される。この他にも、「恐怖」という甲冑をギガントマキアーにおいて着用している。
「光輝」と呼ばれる天界の輝きを纏った鎧に山羊革の胸当てをつけ、聖獣は鷲、聖木はオーク。主要な神殿は、オークの木のささやきによって神託を下したエーペイロスの聖地ドードーナ、および4年ごとに彼の栄誉を祝福してオリンピック大祭が開かれたオリュンピアにあった。
名前
主格の神名は Ζεύς (ゼウス、Zeús) である。語形は次のように変化する:声格:Ζεῦ(ゼウ)、使役格:Δία(ディア)、主格:Διός(ディオース)、呼格:Διί(ディイー)。ディオゲネス・ラエルティウスは、シロス島のフェレキデスが「Ζάς」と表記したことを引用している[31]。
ゼウスは、プロト・インド・ヨーロッパ語の昼間の空の神の名前である*Di̯ēusのギリシャ語の継続で、*Dyeus ph2tēr(「空の父」)とも呼ばれた[32][33]。この神はリグヴェーダ(ヴェーダ語のサンスクリット語Dyaus/Dyaus Pita)、ラテン語(原インド・ヨーロッパ語の語彙 *dyeu-ph2tēr に由来する Iuppiter の Jupiter と比較)、 *dyeu- (「輝く」、その多くの派生語で「空、天、神」)に由来する[34]この名前の下で知られている[32]。アルバニア語のZoj-zもゼウスの同義語である。ギリシャ語とアルバニア語では、元のクラスター*di̯が*dzに変化している[16]。ゼウスはオリンピックの神殿の中で唯一、その名前がインド・ヨーロッパ語族の語源であることが明らかな神である[35]。
ミケーネ時代のギリシャ語「𐀇𐀸, di-we」と「𐀇𐀺, di-wo」はLinear B音節文字で書かれており、その名前が最も早く確認されている[36]。
プラトンは『クラテュロス』の中で、ゼウスの称号(ゼンとディア)がギリシャ語の「生命」や「〜のため」という言葉とダブることから、「万物に常に生命を与える源」という意味の民間語源を挙げている[37]。この語源は、プラトンの語源を導き出す方法全体とともに、現代の学問では支持されていない[38][39]。シケリアのディオドロス・シクロスは、ゼウスが生命の原因(ゼン)であると人間が信じたため、ゼンとも呼ばれたと記している[40]。ラクタンティウスは、彼がゼウスやゼンと呼ばれたのは、彼が生命の与え主であるからではなく、クロノスの子供たちの中で最初に生きたからだと書いている[41]。
神話
誕生
ヘーシオドスの『神統記』(前730〜700年頃)では、父ウラヌスを去勢したクロノスが宇宙の最高支配者となり[42]、妹レアーと結婚して三女三男をもうける。ヘスティア、デーメーテール、ヘーラー、ハーデス、ポセイドーン、そして最後に6人の中で最も若い「賢者」ゼウスが生まれた[43]。クロノスは両親であるガイアとウラヌスから、自分の子供がいつか父親を倒したように自分を倒す運命にあるという予言を受け、子供が生まれるとすぐにその子供を飲み込んでしまうのだ[44][私注 1]。そのためレーアーは「絶え間ない悲しみ」に襲われ[45]、6番目の子供ゼウスを妊娠すると、両親であるガイアとウラヌスに、子供を救ってクロノスに報いを与える計画を持ちかける[46]。両親の指示に従い、レーアーはクレタ島のリクトゥスに行き、そこでゼウスを出産し[47]、生まれたばかりの子供をガイアに渡して育ててもらい、ガイアはゼウスをアイゲオン山の洞窟に連れて行く[48]。レーアーはクロノスに、子供の代わりに乳母車に包まれた石を渡した。クロノスはそれが自分の子供でないことに気づかず、すぐに飲み込んでしまった[49]。
ヘーシオドスはリクトゥスをゼウスの生誕地としているが、そうしたのは彼だけであり[50]、他の著者は異なる場所を示している。コリントの詩人エウメロス(前8世紀)は、リディア人ヨハネによれば、ゼウスはリディアで生まれたと考え[51]、アレクサンドリアの詩人カリマコス(前310頃-前240頃)は、ゼウスへの賛歌でアルカディアで生まれたと述べている[52]。シケリアのディオドロス・シクルス(紀元前1世紀頃)は、一度はイダ山を出生地としているようだが、後にディクテで生まれたとしており[53]、神話学者アポロドーロス(紀元1、2世紀)も同様にディクテの洞窟で生まれたと述べている[54]。
幼少期
『神統記』にはゼウスの生い立ちについて、すくすくと育ったということ以外何も書かれていないが[55]、他の資料にはより詳細な記述がある。
アポロドーロスによると、レーアーはディクテーの洞窟でゼウスを産んだ後、メリセウスの娘であるニンフのアドラスティアとイーダーにゼウスを託した[56]。ニンフ達はゼウスに雌山羊アマルティアの乳を飲ませ[57]、クーレテ族は洞窟を守り、盾で槍を打ち、クロノスに赤ん坊の泣き声が聞こえないようにした[58][私注 2]。シケリアのディオドロスも同様の記述をしており、出産後、レーアーはイダ山へ行き、生まれたばかりのゼウスをクーレテスに渡し[59]、その後、ニンフたち(名前はない)のところへ連れて行き、アマルティアのヤギから蜂蜜とミルクを混ぜたもので彼を育てたと述べている[60]。また、クーレテ族が「大きな鳴動」を起こし、クロノスを欺いたことに言及し[61]、クーレテ族が新生児ゼウスを運ぶ際に、トリトン川でへその緒が切れたことを語っている[62]。
ガイウス・ユリウス・ヒュギーヌスは『神話集』の中で、クロノスがポセイドーンを海に、ハーデースを冥界に投げ捨てたが、飲み込むことはしなかったという説を紹介している。ゼウスが生まれると、ヘーラー(これも飲み込んでいない)はレーアーに幼いゼウスを渡してくれるよう頼み、レーアーはクロノスに石を渡して飲み込ませる[63]。ヘーラーは彼をアマルティアに渡し、アマルティアは彼のゆりかごを木に吊るすが、そこには彼は天にも地にも海にもいない。つまり、後にクロノスがゼウスを探しに行っても、彼を見つけることはできないのである[64][私注 3]。ヒュギーヌスはまた、通常オケアヌスの子とされるイーダー、アルテア、アドラステイアを、メリセウスの娘、ゼウスの看護婦と呼ぶこともあると述べている[65]。
エピメニデスの断片によると、ニンフのヘリケとキノスーラは幼いゼウスの養母であったという。クロノスはゼウスを捜すためにクレタ島へ行き、ゼウスは自分の存在を隠すために、自分を蛇に、二人の看護婦を熊に変身させた[66]。ムサエイオスによると、ゼウスが生まれた後、レーアーはテミスにゼウスを渡したという。テミスはゼウスをアマルティアに預けるが、アマルティアは雌山羊を飼っていて、幼いゼウスを養育した[67]。
アントニウス・リベラリスは『メタモルフォーゼ』の中で、レーアーはクレタ島の神聖な洞窟でゼウスを出産し、そこには神聖な蜂がたくさんいて、その蜂が赤ん坊の乳母となった、と述べている。神も人も立ち入れないこの洞窟から、蜂蜜を盗み出そうとする盗賊団が現れる。ゼウスの産着に目をつけた彼らの青銅の鎧は「体から裂け」、モイライとテミスの介入がなければゼウスは彼らを殺すところだったが、代わりに彼は彼らを様々な種類の鳥に変身させた[68]。
権力への昇級
『テオゴニア』によれば、ゼウスが成人した後、クロノスは「ガイアの策略によって、しかしゼウスの技術と力によって」5人の子供と石を吐き出す[69]。おそらく、最初に石を吐き出し、次に5人の子供たちをそれぞれ飲み込むのと逆の順序で吐き出したと思われる。そしてゼウスは、この石をデルフォイに設置し、「以後、人間へのしるしと驚異として」機能するようにした[70]。ゼウスは次にキュクロプスを解放し、そのお礼にガイアが隠していた雷鳴をゼウスに渡す[71]。そして、ゼウス率いるオリンピアンとクロノス率いるティターンが宇宙の支配権をめぐって争う「ティタノマキアー」が始まり、ゼウスとオリンピアンはオリンポス山から、ティターンはオトリス山から戦っている[72]。戦いは10年間続き、明確な勝者は現れなかったが、ガイアの助言により、ゼウスはキュクロプス同様地中に幽閉されていたヘカトンケイルを解放する[73]。ゼウスはネクタルとアンブロシアを与えて彼らの精神を蘇らせ[74]、彼らは戦争で彼に協力することを承諾する[75][私注 4]。ゼウスはティターンに稲妻を浴びせ、へカントケイルは岩を投げて攻撃し、ティターンはついに倒され、ゼウスはティターンをタルタロスへ追放し、へカントケイルはその監視役を命じられた[76][私注 5]。
アポロドーロスも同様の説明をしており、ゼウスが大人になったとき、オセアニア人のメーティスの助けを借りて、クロノスに嘔吐物を与え、石とゼウスの5人の兄弟を吐き出させたと述べている[77]。その後、ゼウスはティターンと10年戦争を続けるが、ガイアの予言により、キュクロプスとへカントケイルをタルタロスから解放し、まず彼らの監視役であるカンペを殺害した[78]。キュクロプスは雷鳴を、ポセイドーンは三叉の矛を、ハーデースは透明な兜をゼウスに与え、ティターンを倒し、へカントケイルを護衛につけた[79]。『イーリアス』によると、ティターンとの戦いの後、ゼウスは兄弟のポセイドーンとハーデースにくじ引きで世界を分け与える。ゼウスは空を、ポセイドーンは海を、ハーデースは冥界を手に入れ、大地とオリンポスは共通の土地となった[80]。
権力への挑戦
宇宙の王となったゼウスは、すぐにその支配を脅かされることになる。ティターンはオリンポスの神々と戦い、「ギガントマキア」と呼ばれる戦いで、その力に挑戦してきた。ヘーシオドスによれば、ティターンはクロノスが父ウラヌスを去勢した際に地面に落ちた血の滴から生まれたガイアの子である[81]が、『神統記』には神々と巨人の戦いについての記述はない[82]。 『ギガントマキア』について最も完全な記述をしたのはアポロドーロスである。ガイアは、ゼウスが自分の子供である巨人を幽閉したことに怒り、ウーラヌスに巨人を産み落としたと言うのだ[83]。巨人は神々だけでは倒せず、人間の力を借りなければ倒せないという予言が神々にもたらされる。これを聞いたガイアは、巨人を倒さない特別なファルマコン(薬草)を探すが、その薬草は巨人を倒してしまうことになる。しかし、ゼウスはエーオース(夜明け)、セレネー(月)、ヘーリオス(太陽)に光を止めるように命じ、自らすべての薬草を収穫し、アテーナーにヘーラークレースを召喚させる[84][私注 6]。しかし、ゼウスはポルピュリオーンにヘーラーへの欲望を抱かせ、ポルピュリオーンはヘーラーを犯そうとしたところをゼウスに雷で打たれ、ヘーラークレースには矢で致命傷を負わされてしまう[85][私注 7]。
『神統記』では、ゼウスがティターン族を倒してタルタロスへ追放した後、彼の支配に巨大な蛇のような怪物テューポーンが挑戦し、宇宙の支配権をめぐってゼウスと争うことになる。ヘーシオドスによれば、テューポーンはガイアとタルタロスの子であり[86][私注 8]、100の蛇のような火を噴く頭を持っていると描写されている[87]。ヘーシオドスは、ゼウスがこの怪物に気づいて素早く退治してくれなければ、「人間と不死人を支配するようになっていただろう」と言っている[88]。2人は激動の戦いで出会い、ゼウスは雷で簡単に彼を倒し、怪物はタルタロスへ投げ落とされた[89]。エピメニデスは、テューポーンがゼウスの宮殿に侵入したのはゼウスが眠っているときで、ゼウスが目を覚ますと雷で怪物を殺してしまうという別の説を紹介している[90]。アエスキルスやピンダルは、ヘーシオドスと似たような説明をしている。ゼウスは、テューポーンを雷で比較的簡単に倒してしまうのだ[91]。これに対してアポロドーロスは、より複雑な物語を提供している[92]。テューポーンは、ヘーシオドス同様、ガイアとタルタロスの子供で、ゼウスが巨人を倒したときの怒りから生み出されたものである[93]。怪物は天を襲い、神々は恐怖のあまり動物に変身してエジプトに逃げ込むが、ゼウスだけは雷と鎌で怪物に襲いかかった[94]。テューポーンは傷つき、シリアのカシオス山に退却し、ゼウスは彼と格闘し、怪物に巻きつき、手足から筋を引き抜く隙を与えた[95]。傷ついたゼウスは、テューポーンによってキリキアのコリキア洞窟に連れて行かれ、そこで「女龍」デルピュネーに見張られた[96]。しかし、ヘルメースとエーギパンはゼウスの筋を盗み、鍛え直してゼウスを蘇らせ、戦いに復帰させる。ニサ山へ逃げたテューポーンを追い、そこでテューポーンはモイライから「無常の果実(ephemeral fruits)」を与えられ、力を弱められる[97]。その後、トラキアに逃れた怪物はゼウスに山を投げつけ、ゼウスはそれを雷で打ち返したが、シチリア島に逃げる途中、ゼウスはエトナ山を打ち上げて怪物にとどめを刺した[98]。古代の最も長く、最も詳細な記録を残したノヌスは、アポロドーロスと同様の物語を提示するが、代わりにカドマスとパンが、音楽でテューポーンを誘い、彼をだましてゼウスの筋を回復させるなどの相違点がある[99]。
『イーリアス』では、ヘーラー、ポセイドーン、アテーナーの3人が共謀してゼウスを圧倒し、縛り上げるという倒幕劇が描かれている。ヘカトンケイルの一人であるブリアレオスをオリンポスに呼び寄せたネレイド・テティスのおかげで、他のオリンポスの神々は(ブリアレオスを恐れて)計画を断念するのである[100]。
ゼウスの7人の妻
ゼウスは最終的にはヘーラーと永遠に結ばれるが、それまでに何度か結婚と離婚を繰り返していた。
ヘシオドスによれば、ゼウスには7人の妻がいた。最初の妻はオケアノスのメーティスで、ガイアとウラヌスの助言により、メーティスとの間にできた息子が予言通りゼウスを打倒しないように、メーティスを飲み込んだ。その後、彼らの娘アテーナーがゼウスの額から生まれた[23]。
ゼウスの次の結婚は、彼の叔母であり助言者であるテミスとのもので、彼女はホーライ(季節)とモイライ(運命)を産んだ[101]。その後、ゼウスはオーケアノスの娘のエウリュノメーと結婚し、彼女は3人のシャリテ(グレイセス)を産んだ[102]。
ゼウスの4番目の妻は姉妹のデーメーテールで、ペルセポネーを産んだ[103]。ゼウスの5番目の妻は、彼の叔母であるティターンのムネーモシュネーで、彼は人間の羊飼いの姿になって誘惑した。ゼウスとムネーモシュネーとの間には9人のミューズがいた[104]。6番目の妻はティターンのレートーで、デロス島でアポローンとアルテミスを産んだ[105]。
ゼウスの7番目の妻で最後の妻は、姉のヘーラーである[106]。
メーティス
ゼウスの最初の妻は智恵の女神メーティスであった。彼女はオーケアニデスであり、ティーターン神族の一柱であったが、ティーターノマキアーの際にはゼウスに味方していた。ガイアは「ゼウスとメーティスの間に生まれた男神は父を超える」という予言をした。これを恐れてゼウスは妊娠していたメーティスを呑み込み、子供が生まれないようにした。「どんなものにでも変身できるのなら、水に変身してみせよ」というゼウスの挑発に乗ったメーティスが水に変じたところでこれを飲み干したとも、ゼウスから逃れるために様々な動物に変身していたが、蠅に変身したところで呑み込まれたとも言われる。
あるとき、ゼウスは激しい頭痛に襲われた。そこで、ヘーパイストスに命じて頭を斧で叩き割り、直接原因を探ろうとした。すると、ゼウスの頭から武装し成人したアテーナーが飛び出してきた。その衝撃で世界は停止し、天体の運行も止まった。アテーナーがゼウスとメーティスとの子であり、女神であったために、ガイアの予言は効力を失った。こうしてゼウスは王位簒奪の大いなる運命から解放された。呑み込まれたメーティスはゼウスの智恵となり、ゼウスはメーティスの全知を手に入れた。また、メーティスはアテーナーと共に飛び出てきたという説もある。
テミス
メーティスの智恵を吸収したゼウスは、次にウーラノスとガイアの子である、掟の女神テミスと結婚した。テミスとの間に運命の三女神モイライ、季節の女神ホーラー、正義の女神アストライアーをもうけた。モイライは最初は夜の女神ニュクスの娘であったが、ゼウスは上記のように運命を超越し、モイライを自らの子として再誕生させた。結果として運命すらもゼウスに抗えなくなった[107]。
ヘーラー
ゼウスはヘーラーに目を付け、テミスと結婚中であるにもかかわらず結婚の女神ヘーラーに言い寄った。ゼウスはカッコウに化けてヘーラーに近付き犯そうとしたが、ヘーラーはそれでも尚抵抗を止めなかった。ヘーラーは交わることの条件として結婚を提示した。ヘーラーに魅了されていたゼウスは仕方なくテミスと離婚すると、ヘーラーと結婚し、彼女との間にアレース、ヘーパイストス、ヘーベーなどをもうけた。ヘーラーはゼウスの不貞に対して常に目を光らせ、愛人たちやその子供たちに苛烈な罰を与えるようになった。
ゼウスとヘーラー
ゼウスはヘーラーの弟であり、配偶者であった。パウサニアスによれば、ゼウスはヘーラーを口説くためにカッコウに変身した[108]。ヘーラーによってゼウスはアレース、ヘーベー、エイレイシア、ヘパイストスという子を得たが[18]、ヘーラーだけがこれらの子供を産んだとする説もある。また、娘としてエリス[109]、エンヨー[110]、アンゲロス[111]を挙げる者もいる。 『イリアス』の「ゼウスの欺瞞」と呼ばれる部分では、二人は親に知られることなく性的関係を始めたと描写されている[112]。
テオクリトスの『イディール』のスコリオンによると、ヘーラーが一人でトーナックス山に向かっていたとき、ゼウスがひどい嵐を起こしてカッコウの鳥に姿を変え、飛んできて彼女の膝の上に座ったということだ。ヘラはそのカッコウを見ると、哀れみを感じ、マントで覆った。そして、ゼウスは再び変身して彼女を抱きしめた。彼女が母親のために寝ることを拒んだので、ゼウスは彼女との結婚を約束したのである[113]。ヘーラーはゼウスとの結婚を拒み、洞窟に隠れて[私注 9]ゼウスを避けていたが、アキレスという地上の男に説得され、初めて性交をした、という話がある。そして、ゼウスはアキレスに、彼の名を冠した者はみな有名になると約束した[114]。
ヘーラーはエウベア島でマクリスというニンフに育てられたが、ゼウスに連れ去られ、プルタークの言葉によれば、シタエロン山が「二人に日陰を与えてくれた」という説もある。マクリスが彼女を探しに来たとき、山の神シタエロンが「ゼウスはレートーと一緒にそこで楽しんでいる」と言って追い払った[115]。
カリマコスによれば、彼らの婚礼の宴は三千年続いたという[116]。 ヘーラークレースがエウリュステウスから託されたヘスペリデスのリンゴは、ガイアが二人に贈った結婚式の贈り物だった[117]。
ゼウスは何人かのニンフと同衾し、ヘレニズム王朝の多くの神話上の死すべき子孫の父とみなされた。7人の妻のほか、ディオーネやマイアなど、不死人との関係もあった[118][119]。人間ではセメレー、イーオー、エウローパ、レーダー(詳細は後述)、そして若いガニュメーデース(彼は死を免れないがゼウスは彼に永遠の若さと不死を与えた)である。
多くの神話では、ヘーラーはゼウスの情事に嫉妬し、ゼウスの愛人やその子供たちを一貫して敵視していたことになっている。一時期、エコーという妖精がヘーラーの気をそらすために、ひっきりなしにおしゃべりをしていましたが、それを知ったヘーラーは、エコーが他人の言葉を繰り返すように呪いをかけた[120]。
シケリアのディオドロスによると、ヘーラークレースの母アルクメネーがゼウスが寝た最後の女性で、ヘーラークレースの誕生後、ゼウスは人間を生むことをやめ、それ以上子供を作らなかったとされている[121]
愛人たち
ゼウスは好色な神であり、しばしばヘーラーの目を盗んでは浮気を繰り返していた。これは、強力な神々や半神半人を生み出し、全宇宙や人間界の基盤を整えるためでもあった。また、古代ギリシアのみならず、地中海世界の王家が自らの祖先をゼウスとする家系を主張したため、ゼウスは浮気を繰り返す神話を多く持つようになった。ゼウスの愛人は数え切れないほどいるが、その中でも特に有名な愛人たちを以下に記述する。下記の他、ラミアー、アイギーナ、カリストー、エラレー、タレイア、アイトネーなど多くの愛人を持ったことで知られる。
イーオー
ゼウスはイーオーという美女と密通していた。これを見抜いたヘーラーはゼウスに詰め寄るが、ゼウスはイーオーを美しい雌牛に変え、雌牛を愛でていただけであるとした。ヘーラーは策を講じ、その雌牛をゼウスから貰うと、百眼の巨人アルゴスを見張りに付けた。この巨人は身体中に百の眼を持ち、眠る時も半分の50の眼は開いたままであったので、空間的にも時間的にも死角が存在しなかった。ゼウスはイーオー救出の任をヘルメースに命じ、ヘルメースは草笛でアルゴスの全ての眼を眠らせると、その首を剣で切り取った。
雌牛は解放されたが、ヘーラーが虻を送り込んだために雌牛は逃げ惑った。虻から逃げるように様々な地を放浪し、最終的にはエジプトに辿り着き、ここで雌牛は元の姿に戻った。ゼウスとの間にできていた子供であるエパポスをエジプトで出産した。イーオーはデーメーテールの像を立て、イーオーとデーメーテール像はエジプト人にイシスと呼ばれるようになった。
レーダー
アイトーリア王テスティオスの娘で、スパルタ王テュンダレオースの妻であったレーダーにもゼウスは恋した。ゼウスは白鳥に変じ、鷹に追われるふりをしてレーダーの腕に隠れた。レーダーは白鳥のことを想ってそれを拒まなかったが、そこで正体を現したゼウスと交わった。レーダーは二つの卵を産み、一つの卵からはヘレネーとクリュタイムネーストラーが、もう一つの卵からはカストールとポリュデウケース(二人合わせてディオスクーロイとも呼ばれた)が生まれた。ヘレネーとポリュデウケースはゼウスとの子であり、クリュタイムネーストラーとカストールがテュンダレオースとの子であった。ヘレネーは絶世の美女となり、トロイア戦争の原因となった。ポリュデウケースは不死身であった。ゼウスはヘレネーの誕生を記念し、宇宙にはくちょう座を創造した。
エウローペー
エウローペーは、テュロスのフェニキア王アゲーノールとテーレパッサの娘で、美しい姫であった。エウローペーに一目ぼれしたゼウスは誘惑するために、白い牡牛へと変身した。エウローペーは侍女と花を摘んでいる時にその牡牛を見付け、従順な様子に気を許して背にまたがった。その途端に牡牛はエウローペーを連れ去った。ゼウスはヨーロッパ中をエウローペーと共に駆け回ったため、その地域はエウローペーから名前を取って「ヨーロッパ」 (Europa) と呼ばれるようになった。最終的にクレタ島へ辿り着いたゼウスは本来の姿をあらわし、エウローペーはクレタ島で最初の妃となった。ゼウスとの息子には、ミーノースやラダマンテュス、サルペードーンがいる。その後、アステリオスが3人の息子たちの義理の父になった。ゼウスは彼女にタロースと必ず獲物をとらえる猟犬となくなる事のない投げ槍の、3つの贈り物を与えた。その後ゼウスは再び白い牡牛へと姿を変え、星空へと上がり、おうし座になった。
ガニュメーデース
ゼウスはガニュメーデースというトロイアの美少年を攫ったことでも知られている。しかし、これは愛人にするためではなく、神々の給仕係にするためであった。オリュンポスの神々に給仕するのは、もとは大神ゼウスとその正妻ヘーラーの娘、青春の女神であるヘーベーの役割であった。ゼウスの子、英雄ヘーラクレースが、死後に神々の列に加えられたとき、ヘーラクレースを憎んでいたヘーラーはようやくヘーラクレースと和解し、その娘ヘーベーが妻として彼に与えられた。このため神々の宴席に給仕するものがなくなった。ゼウスは人間たちの中でもとりわけ美しいガニュメーデースを選び、鷲の姿に変身して彼を攫い、オリュンポスの給仕とした。この仕事のためにガニュメーデースには永遠の若さと不死が与えられた。また代償としてその父に速い神馬(別伝ではヘーパイストスの作った黄金のブドウの木)が与えられた。
天上に輝くみずがめ座は、神々に神酒ネクタールを給仕するガニュメーデースの姿であり、わし座はゼウスが彼を攫うときに変身した鷲の姿である。
プロメーテウスと人間との軋轢
神々がメコネに集まり、生贄を捧げた後にどの部分を受け取るかを話し合ったとき、ティターンのプロメテウスがゼウスを騙して、人間がより良い部分を受け取れるようにしようと考えたのだ。彼は大きな牛を犠牲にして、それを二つの山に分けた。一方の山に肉と脂肪を全部入れて、牛のグロテスクな胃袋で覆い、もう一方の山には骨に脂肪を付けて装った。プロメーテウスはゼウスに選ぶように言い、ゼウスは骨の山を選んだ。これは、人間が脂肪を自分のものにし、骨を焼いて神に捧げるという生け贄の前例となった。
プロメーテウスの欺瞞に怒ったゼウスは、人間が火を使うことを禁じた。しかし、プロメーテウスはオリンポスからフェンネルの茎に入った火を盗み出し、人間に与えた[私注 10]。ゼウスはプロメーテウスを崖に縛り付け、鷲がプロメーテウスの肝臓を食べ続け、その肝臓は毎晩再生されるという罰を与えた。プロメーテウスはやがてヘラクレスによって苦難から解放された[122]。
さて、人間に怒ったゼウスは、今までの恩恵の代償として、人類に罰のための贈り物をすることにした。ゼウスはヘーパイストスに、地球から最初の女性を成形するよう命じ、その子孫は人類を苦しめることになる「美しい悪魔」であるとした。ヘーパイストスがそうした後、他の神々も彼女を作り出すことに貢献した。ヘルメースはその女性を「パンドラ」と名付けた。
パンドラはプロメーテウスの弟エピメーテウスに嫁がされた。ゼウスは彼女に、多くの悪が入った壺を与えた。パンドラは壺を開け、人類を不幸にするすべての悪を放出した。瓶の中には、希望だけが残された[123]。
オリンポス山の頂上にいたゼウスは、人間の生け贄など、人間の退廃的な兆候に愕然とした。彼は人類を絶滅させることを決意し、弟のポセイドンの力を借りて世界を水浸しにした[私注 11]。洪水の後、デウカリオーンとピューラーだけが残った[124]。この洪水の物語は、神話によく登場するモチーフである[125]。
「イーリアス」において
『イーリアス』は、ホーメロスが創作した古代ギリシャの叙事詩で、トロイ戦争とトロイの町をめぐる戦いを描いており、ゼウスが重要な役割を担っている。
- Book 2: ゼウスはアガメムノーンに夢を送り、夢の効果でアガメムノーンの決断を部分的にコントロールすることができる。
- Book 4: ゼウスはヘーラーに、戦争の終わりにトロイの街を破壊することを約束する。
- Book 7: ゼウスとポセイドーンがアカイアの砦を破壊する。
- Book 8: ゼウスは他の神々が互いに戦うことを禁じ、イーダー山に戻り、ギリシャ軍が戦争に負けるという決断を熟考することになる。
- Book 14: ゼウスはヘーラーに誘惑され、彼女がギリシャを助けている間、気が散ってしまう。
- Book 15: ゼウスは目を覚まし、実の兄であるポセイドーンがギリシャを援助していたことに気づく。同時に、トロイの街を陥落させるべく、ヘクトールとアポローンをトロイとの戦いに送り込む。
- Book 16: ゼウスは、サルペドンの命を救うことができなかったことに憤慨している。
- Book 17: ゼウスはヘクトルの運命に心を痛める。
- Book 20: ゼウスは他の神々に、それぞれの戦いに助力を与える。
- Book 24: ゼウスはアキレースにヘクトールの亡骸を丁重に葬るよう要求する。
その他の神話
ゼウスは曾孫のアルクメーネと、彼女の夫アンフィトリオンに化けて寝た。その結果、ヘーラークレースが生まれ、ヘーラークレースはゼウスの妻ヘーラーに一生苦しめられることになった。ヘーラークレースは死後、肉体を焼却され、オリンポスの神々に合流した。彼はゼウスとヘラの娘ヘーベーと結婚し、彼女との間にアレクシアレスとアニケトスの二人の息子をもうけた[128]。
ハーデースがゼウスの娘ペルセポネーとの結婚を申し込むと、ゼウスはそれを認め、母デーメーテールがハーデスとの結婚を許さないので、ペルセポネーを誘拐するようにハーデスに進言した[129]。
ゼウスはカドモスとハルモニアの娘セメレーに恋をして、彼女と関係を持つようになった。その後、セメレーが妊娠したときにヘーラーは夫の浮気を発見し、セメレーに真の姿のゼウスと寝るように説得した。ゼウスがセメレーに真の姿を見せたとき、その雷と稲妻はセメレーを焼き殺してしまった[130][私注 12]。ゼウスは胎児を自分の太ももに縫い付けて救い、胎児はディオニューソスとして生まれることになる[131]。
オルフィックの『狂詩曲』(紀元前1世紀/紀元後1世紀)では[132]、ゼウスは母レーアーと結婚することを望んでいた[132]。レアが結婚を拒んだため、ゼウスは蛇に変身して彼女を犯した。レーアーは妊娠し、ペルセポネーを産んだ。 蛇の姿をしたゼウスは娘のペルセポネーと交尾し、その結果ディオニューソスが誕生した[133]。
ゼウスは、アルクメオンの息子であるアカルナンとアンフォテラスが早く成長し、フェゲウスとその二人の息子に殺された父の仇を討てるようにというカリルローの願いを叶えた[134]。
ゼウスとポセイドーンは、ネレウスの娘であるテティスに求婚した。しかし、テミス(またはプロメテウス)が「テティスから生まれる息子は父親よりも強くなる」と予言したため、テティスは人間のペレウスに嫁がされることになった[135][136]。
ゼウスは孫のアスクレピオースが人間に復活を教えることを恐れ、アスクレピオースを雷で殺した。これに対して、アスクレピオースの父アポローンは怒り、ゼウスの雷を作ったキュクロプスを殺してしまった。これに怒ったゼウスは、アポローンをタルタロスに幽閉したのだろう。しかし、アポローンの母レートーの要請で、ゼウスは代わりにアポローンをフェライのアドメテウス王の奴隷として1年間仕えるように命じた[137] 。シケリアのディオドロスによると、ゼウスがアスクレピオースを殺したのは、アスクレピオースの復活のために冥界の人々が減っていることを心配したハーデスからの苦情が原因だという[138]。
翼のある馬ペガサスは、ゼウスの雷を運んでいた[139]。
ゼウスは、義父殺しの罪を犯したイクシオンを哀れみ、彼を浄化してオリンポスに連れてきた。しかし、イクシオンはヘーラーに欲望を持つようになった。ヘーラーがこのことを夫に訴えたので、ゼウスはイクシオンを試すことにした。ゼウスはヘーラー(ネペレー)に似た雲を作り、その雲のヘーラーをイクシオンの寝床に寝かせた。ゼウスはヘーラーに欲情したイクシオンを、永遠に回転する車輪に縛り付けて罰した[140][私注 13]。
あるとき、太陽神ヘリオースは、経験の浅い息子パエトーンに自分の馬車を扱わせた。パエトーンは父の馬を制御できず、戦車を高くしすぎて大地を凍らせたり、低くしすぎてすべてを焼き尽くしたりしてしまった。大地そのものがゼウスに祈り、これ以上の災いを防ぐために、ゼウスはパエトーンに雷を投げつけ、パエトーンを殺して世界を救った[私注 14]。
Once, Helios the sun god gave his chariot to his inexperienced son Phaethon to drive. Phaethon could not control his father's steeds so he ended up taking the chariot too high, freezing the earth, or too low, burning everything to the ground. The earth itself prayed to Zeus, and in order to prevent further disaster, Zeus hurled a thunderbolt at Phaethon, killing him and saving the world from further harm.[141] In a satirical work, Dialogues of the Gods by Lucian, Zeus berates Helios for allowing such thing to happen; he returns the damaged chariot to him and warns him that if he dares do that again, he will strike him with one of this thunderbolts.[142]
Transformation of Zeus
Love interest | Disguises |
---|---|
Aegina | an eagle or a flame of fire |
Alcmene | Amphitryon[143] |
Antiope | a satyr[144] |
Asopis | a flame of fire |
Callisto | Artemis[145] or Apollo[146] |
Cassiopeia | Phoenix |
Danaë | shower of gold[147] |
Europa | a bull[148] |
Eurymedusa | ant |
Ganymede | an eagle[149] |
Hera | a cuckoo[150] |
Lamia | a lapwing |
Leda | a swan[151] |
Mnemosyne | a shepherd |
Nemesis | a goose[152] |
Persephone | a serpent[133] |
Rhea | a serpent[133] |
Semele | a fire |
Thalia | a vulture |
Children
Offspring | Mother |
---|---|
Heracles | Alcmene[153] |
Persephone | Demeter[154] |
Charites (Aglaea, Euphrosyne, Thalia) | Eurynome[155] |
Ares, Eileithyia, Hebe | Hera[156] |
Apollo, Artemis | Leto[157] |
Hermes | Maia[158] |
Athena | Metis[159] |
Muses (Calliope, Clio, Euterpe, Erato, Melpomene, Polyhymnia, Terpsichore, Thalia, Urania) | Mnemosyne[160] |
Dionysus | Semele[161] |
Horae (Dike, Eirene, Eunomia), Moirai (Atropos, Clotho, Lachesis) | Themis[162] |
Roles and epithets
Zeus played a dominant role, presiding over the Greek Olympian pantheon. He fathered many of the heroes and was featured in many of their local cults. Though the Homeric "cloud collector" was the god of the sky and thunder like his Near-Eastern counterparts, he was also the supreme cultural artifact; in some senses, he was the embodiment of Greek religious beliefs and the archetypal Greek deity.
Aside from local epithets that simply designated the deity as doing something random at some particular place, the epithets or titles applied to Zeus emphasized different aspects of his wide-ranging authority:
- Zeus Aegiduchos or Aegiochos: Usually taken as Zeus as the bearer of the Aegis, the divine shield with the head of Medusa across it,[251] although others derive it from "goat" (テンプレート:Lang) and okhē (テンプレート:Lang) in reference to Zeus' nurse, the divine goat Amalthea.[252][253]
- Zeus Agoraeus (Αγοραιος): Zeus as patron of the marketplace (agora) and punisher of dishonest traders.
- Zeus Areius (Αρειος): either "warlike" or "the atoning one".
- Zeus Eleutherios (Ἐλευθέριος): "Zeus the freedom giver" a cult worshiped in Athens[254]
- Zeus Horkios: Zeus as keeper of oaths. Exposed liars were made to dedicate a votive statue to Zeus, often at the sanctuary at Olympia
- Zeus Olympios (Ολύμπιος): Zeus as king of the gods and patron of the Panhellenic Games at Olympia
- Zeus Panhellenios ("Zeus of All the Greeks"): worshipped at Aeacus's temple on Aegina
- Zeus Xenios (Ξένιος), Philoxenon, or Hospites: Zeus as the patron of hospitality (xenia) and guests, avenger of wrongs done to strangers
Additional names and epithets for Zeus are also:
A
- Abrettenus (Ἀβρεττηνός) or Abretanus: surname of Zeus in Mysia[255]
- Achad: one of his names in Syria.
- Acraeus (Ακραίος): his name at Smyrna. Acraea and Acraeus are also attributes given to various goddesses and gods whose temples were situated upon hills, such as Zeus, Hera, Aphrodite, Pallas, Artemis, and others
- Acrettenus: his name in Mysia.
- Adad: one of his names in Syria.
- Zeus Adados: A Hellenization of the Canaanite Hadad and Assyrian Adad, particularly his solar cult at Heliopolis[256]
- Adultus: from his being invoked by adults, on their marriage.
- Aleios (Ἄλειος), from "Helios" and perhaps connected to water as well.[257]
- Amboulios (Αμβουλιος, "Counsellor") or Latinized Ambulius[258]
- Apemius (Apemios, Απημιος): Zeus as the averter of ills
- Apomyius (Απομυιος): Zeus as one who dispels flies
- Aphesios (Αφεσιος; "Releasing (Rain)")
- Argikeravnos (ἀργικέραυνος; "of the flashing bolt").[259]
- Astrapios (ἀστραπαῖός; "Lightninger"): Zeus as a weather god
- Atabyrius (Ἀταβύριος): he was worshipped in Rhodes and took his name from the Mount Atabyrus on the island[260]
- Aithrios (Αἴθριος, "of the Clear Sky").[259]
- Aitherios (Αἰθέριος, "of Aether").[259]
B
- Basileus (Βασιλευς, "King, Chief, Ruler")
- Bottiaeus/ Bottaios (Βοττιαίος, "of the Bottiaei"): Worshipped at Antioch[261] Libanius wrote that Alexander the Great founded the temple of Zeus Bottiaios, in the place where later the city of Antioch was built.[262][263]
- Zeus Bouleus/ Boulaios (Βουλαίος, "of the Council"): Worshipped at Dodona, the earliest oracle, along with Zeus Naos
- Brontios and Brontaios (Βρονταῖος, "Thunderer"): Zeus as a weather god
C
- Cenaean (Kenaios/ Kenaius, Κηναῖος): a surname of Zeus, derived from cape Cenaeum[264][258]
- Chthonios (Χθόνιος, "of the earth or underworld")[259]
D
- Diktaios (Δικταιος): Zeus as lord of the Dikte mountain range, worshipped from Mycenaean times on Crete[265]
- Dodonian/ Dodonaios (Δωδωναῖος): meaning of Dodona[266]
- Dylsios (Δύλσιος)[267]
E
- Eilapinastes (Εἰλαπιναστής, "Feaster"). He was worshipped in Cyprus.[268][269]
- Epikarpios (ἐπικάρπιος, "of the fruits").[259]
- Eleutherios (Ἐλευθέριος, "of freedom"). At Athens after the Battle of Plataea, Athenians built the Stoa of Zeus Eleutherios.[270] Some writers said that was called "of freedom" because free men built the portico near his shrine, while others because Athenians escaped subjection to the power of Persia and they were free.[271]
- Epidôtês/ Epidotes (Επιδωτης; "Giver of Good"): an epithet of Zeus at Mantineia and Sparta
- Euênemos/ Euanemos (Ευηνεμος; "of Fair Winds", "Giver of Favourable Wind") or Latinized Evenemus/ Evanemus[258]
G
- Genethlios (Γενέθλιός; "of birth").[259]
- Zeus Georgos (Ζεὺς Γεωργός, "Zeus the Farmer"): Zeus as god of crops and the harvest, worshipped in Athens
H
- Zeus Helioupolites ("Heliopolite" or "Heliopolitan Zeus"): A Hellenization of the Canaanite Baʿal (probably Hadad) worshipped as a sun god at Heliopolis (modern Baalbek)[256] in Syria
- Herkeios (Ἑρκειος, "of the Courtyard") or Latinized Herceius
- Hecalesius, a festival named Hecalesia (Εκαλήσια) was celebrated at Athens in honour of Zeus Hecalesius and Hecale.[272]
- Hetareios (Ἑταιρεῖος, "of fellowship"): According to the Suda, Zeus was called this among the Cretans.[273]
- Hikesios (Ἱκεσιος; "of Suppliants") or Latinized Hicesius
- Homognios (ὁμόγνιος; "of kindred")[259]
- Hyetios (Ὑετιος; "of the Rain")
- Hypatos (Ὑπατος, "Supreme, Most High")[258]
- Hypsistos (Ὕψιστος, "Supreme, Most High")
I
- Idaeus or Idaios (Ἰδαῖος), of mount Ida. Either Mount Ida in Crete or Mount Ida in the ancient Troad[274]
- Ikmaios (Ικμαιος; "of Moisture") or Latinized Icmaeus
- Ithomatas (Ιθωμάτας), an annual festival celebrated at Ithome for Zeus Ithomatas.[258][275]
K
- Zeus Kasios ("Zeus of Mount Kasios" the modern Jebel Aqra) or Latinized Casius: a surname of Zeus, the name may have derived from either sources, one derived from Casion, near Pelusium in Egypt. Another derived from Mount Kasios (Casius), which is the modern Jebel Aqra, is worshipped at a site on the Syrian–Turkish border, a Hellenization of the Canaanite mountain and weather god Baal Zephon
- Kataibates (Καταιβάτης, "descending") or Latinized Cataebates, because he was sending-down thunderbolts or because he was descending to earth due to his love of women.[276]
- Katharsios (Καθάρσιος, "purifying").[259]
- Keraunios (Κεραυνιος; "of the Thunderbolt") or Latinized Ceraunius
- Klarios (Κλαριος; "of the Lots") or Latinized Clarius[258]
- Konios (Κονιος; "of the Dust") or Latinized Conius[258]
- Koryphaios (Κορυφαιος, "Chief, Leader") or Latinized Coryphaeus[258]
- Kosmêtês (Κοσμητης; "Orderer") or Latinized Cosmetes
- Ktesios (Κτησιος, "of the House, Property") or Latinized Ctesius[258]
L
- Zeus Labrandos (Λαβρανδευς; "Furious, Raging", "Zeus of Labraunda"): Worshiped at Caria, depicted with a double-edged axe (labrys), a Hellenization of the Hurrian weather god Teshub
- Laphystius ("of Laphystium"), Laphystium was a mountain in Boeotia on which there was a temple to Zeus.[277]
- Limenoskopos (Λιμενοσκοπος; "Watcher of Sea-Havens") or Latinized Limenoscopus occurs as a surname of several deities, Zeus, Artemis, Aphrodite, Priapus and Pan
- Lepsinos, there is a temple of Zeus Lepsinos at Euromus.[278]
- Leukaios (Λευκαῖος Ζεύς; "Zeus of the white poplar")[279]
M
- Maimaktês (Μαιμακτης; "Boisterous", "the Stormy") or Latinized Maemactes, a surname of Zeus, derived from the Attic calendar month name 'Maimakterion' (Μαιμακτηριών, Latinized Maemacterion) and which that month the Maimakteria was celebrated at Athens
- Zeus Meilichios/ Meilikhios (Μειλίχιος; "Zeus the Easily-Entreated")[258] There was a sanctuary south of the Ilissos river at Athens.[280]
- Mêkhaneus (Μηχανευς; "Contriver") or Latinized Mechaneus[258]
- Moiragetes (Μοιραγέτης; "Leader of the Fates", "Guide or Leade of Fate"): Pausanias wrote that this was a surname of Zeus and Apollo at Delphi, because Zeus knew the affairs of men, all that the Fates give them and all that is not destined for them.[281]
N
O
- Ombrios (Ομβριος; "of the Rain", "Rain-Giver")[258]
- Ouranios (Οὐράνιος, "Heavenly").[259]
- Ourios (Οὐριος, "of Favourable Wind"). Ancient writers wrote about a sanctuary at the opening of the Black Sea dedicated to the Zeus Ourios (ἱερὸν τοῦ Διὸς τοῦ Οὐρίου).[282] In addition, on the island of Delos a dedication to Zeus Ourios was found. The dedication was made by a citizen of Ascalon, named Damon son of Demetrius, who escaped from pirates.[283]
P
- Palaimnios (Παλαμναῖος; "of Vengeance")[259]
- Panamaros (Πανάμαρος; "of the city of Panamara"): there was an important sanctuary of Zeus Panamaros at the city of Panamara in Caria[284][285]
- Pankrates (Πανκρατής; "the almighty")[286]
- Patrios (Πάτριος; "paternal")[259]
- Phratrios (Φράτριος), as patron of a phratry[287]
- Philios (Φιλιος; "of Friendship") or Latinized Philius
- Phyxios (Φυξιος; "of Refuge") or Latinized Phyxius[258]
- Plousios (Πλουσιος; "of Wealth") or Latinized Plusius
- Polieus (Πολιεὺς; "from cities (poleis").[259]
S
- Skotitas (Σκοτιτας; "Dark, Murky") or Latinized Scotitas
- Sêmaleos (Σημαλεος; "Giver of Signs") or Latinized Semaleus:
- Sosipolis (Σωσίπολις; "City saviour"): There was a temple of Zeus Sosipolis at Magnesia on the Maeander[288]
- Splanchnotomus ("Entrails cutter"), he was worshipped in Cyprus.[268]
- Stratios (Στράτιος; "Of armies"). [259]
T
- Zeus Tallaios ("Solar Zeus"): Worshipped on Crete
- Teleios (Τελειος; "of Marriage Rites") or Latinized Teleus
- Theos Agathos (Θεος Αγαθος; "the Good God") or Latinized Theus Agathus
- Tropaioukhos/ Tropaiuchos (τροπαιοῦχος, "Guardian of Trophies"):[259] after the Battle of the 300 Champions, Othryades, dedicated the trophy to "Zeus, Guardian of Trophies" .[289]
X
Z
- Zygius (Ζυγίος): As the presider over marriage. His wife Hera had also the epithet Zygia (Ζυγία). These epithets describing them as presiding over marriage.[290]
Cults of Zeus
Panhellenic cults
The major center where all Greeks converged to pay honor to their chief god was Olympia. Their quadrennial festival featured the famous Games. There was also an altar to Zeus made not of stone, but of ash, from the accumulated remains of many centuries' worth of animals sacrificed there.
Outside of the major inter-polis sanctuaries, there were no modes of worshipping Zeus precisely shared across the Greek world. Most of the titles listed below, for instance, could be found at any number of Greek temples from Asia Minor to Sicily. Certain modes of ritual were held in common as well: sacrificing a white animal over a raised altar, for instance.
Zeus Velchanos
With one exception, Greeks were unanimous in recognizing the birthplace of Zeus as Crete. Minoan culture contributed many essentials of ancient Greek religion: "by a hundred channels the old civilization emptied itself into the new", Will Durant observed,[292] and Cretan Zeus retained his youthful Minoan features. The local child of the Great Mother, "a small and inferior deity who took the roles of son and consort",[293] whose Minoan name the Greeks Hellenized as Velchanos, was in time assumed as an epithet by Zeus, as transpired at many other sites, and he came to be venerated in Crete as Zeus Velchanos ("boy-Zeus"), often simply the Kouros.
In Crete, Zeus was worshipped at a number of caves at Knossos, Ida and Palaikastro. In the Hellenistic period a small sanctuary dedicated to Zeus Velchanos was founded at the Hagia Triada site of a long-ruined Minoan palace. Broadly contemporary coins from Phaistos show the form under which he was worshiped: a youth sits among the branches of a tree, with a cockerel on his knees.[294] On other Cretan coins Velchanos is represented as an eagle and in association with a goddess celebrating a mystic marriage.[295] Inscriptions at Gortyn and Lyttos record a Velchania festival, showing that Velchanios was still widely venerated in Hellenistic Crete.[296]
The stories of Minos and Epimenides suggest that these caves were once used for incubatory divination by kings and priests. The dramatic setting of Plato's Laws is along the pilgrimage-route to one such site, emphasizing archaic Cretan knowledge. On Crete, Zeus was represented in art as a long-haired youth rather than a mature adult and hymned as ho megas kouros, "the great youth". Ivory statuettes of the "Divine Boy" were unearthed near the Labyrinth at Knossos by Sir Arthur Evans.[297] With the Kouretes, a band of ecstatic armed dancers, he presided over the rigorous military-athletic training and secret rites of the Cretan paideia.
The myth of the death of Cretan Zeus, localised in numerous mountain sites though only mentioned in a comparatively late source, Callimachus,[298] together with the assertion of Antoninus Liberalis that a fire shone forth annually from the birth-cave the infant shared with a mythic swarm of bees, suggests that Velchanos had been an annual vegetative spirit.[299] The Hellenistic writer Euhemerus apparently proposed a theory that Zeus had actually been a great king of Crete and that posthumously, his glory had slowly turned him into a deity. The works of Euhemerus himself have not survived, but Christian patristic writers took up the suggestion.
Zeus Lykaios
The epithet Zeus Lykaios (Λύκαιος; "wolf-Zeus") is assumed by Zeus only in connection with the archaic festival of the Lykaia on the slopes of Mount Lykaion ("Wolf Mountain"), the tallest peak in rustic Arcadia; Zeus had only a formal connection[300] with the rituals and myths of this primitive rite of passage with an ancient threat of cannibalism and the possibility of a werewolf transformation for the ephebes who were the participants.[301] Near the ancient ash-heap where the sacrifices took place[302] was a forbidden precinct in which, allegedly, no shadows were ever cast.[303]
According to Plato,[304] a particular clan would gather on the mountain to make a sacrifice every nine years to Zeus Lykaios, and a single morsel of human entrails would be intermingled with the animal's. Whoever ate the human flesh was said to turn into a wolf, and could only regain human form if he did not eat again of human flesh until the next nine-year cycle had ended. There were games associated with the Lykaia, removed in the fourth century to the first urbanization of Arcadia, Megalopolis; there the major temple was dedicated to Zeus Lykaios.
There is, however, the crucial detail that Lykaios or Lykeios (epithets of Zeus and Apollo) may derive from Proto-Greek *テンプレート:Lang, "light", a noun still attested in compounds such as テンプレート:Lang, "twilight", テンプレート:Lang, "year" (lit. "light's course") etc. This, Cook argues, brings indeed much new 'light' to the matter as Achaeus, the contemporary tragedian of Sophocles, spoke of Zeus Lykaios as "starry-eyed", and this Zeus Lykaios may just be the Arcadian Zeus, son of Aether, described by Cicero. Again under this new signification may be seen Pausanias' descriptions of Lykosoura being 'the first city that ever the sun beheld', and of the altar of Zeus, at the summit of Mount Lykaion, before which stood two columns bearing gilded eagles and 'facing the sun-rise'. Further Cook sees only the tale of Zeus' sacred precinct at Mount Lykaion allowing no shadows referring to Zeus as 'god of light' (Lykaios).[305]
Additional cults of Zeus
テンプレート:More citations needed section Although etymology indicates that Zeus was originally a sky god, many Greek cities honored a local Zeus who lived underground. Athenians and Sicilians honored Zeus Meilichios (Μειλίχιος; "kindly" or "honeyed") while other cities had Zeus Chthonios ("earthy"), Zeus Katachthonios (Καταχθόνιος; "under-the-earth") and Zeus Plousios ("wealth-bringing"). These deities might be represented as snakes or in human form in visual art, or, for emphasis as both together in one image. They also received offerings of black animal victims sacrificed into sunken pits, as did chthonic deities like Persephone and Demeter, and also the heroes at their tombs. Olympian gods, by contrast, usually received white victims sacrificed upon raised altars.
In some cases, cities were not entirely sure whether the daimon to whom they sacrificed was a hero or an underground Zeus. Thus the shrine at Lebadaea in Boeotia might belong to the hero Trophonius or to Zeus Trephonius ("the nurturing"), depending on whether you believe Pausanias, or Strabo. The hero Amphiaraus was honored as Zeus Amphiaraus at Oropus outside of Thebes, and the Spartans even had a shrine to Zeus Agamemnon. Ancient Molossian kings sacrificed to Zeus Areius (Αρειος). Strabo mention that at Tralles there was the Zeus Larisaeus (Λαρισαιος).[306] In Ithome, they honored the Zeus Ithomatas, they had a sanctuary and a statue of Zeus and also held an annual festival in honour of Zeus which was called Ithomaea (ἰθώμαια).[307]
Hecatomphonia
Hecatomphonia (テンプレート:Lang-grc), meaning killing of a hundred, from ἑκατόν “a hundred” and φονεύω “to kill”. It was a custom of Messenians, at which they offered sacrifice to Zeus when any of them had killed a hundred enemies. Aristomenes have offered three times this sacrifice at the Messenian wars against Sparta.[308][309][310][311]
Non-panhellenic cults
In addition to the Panhellenic titles and conceptions listed above, local cults maintained their own idiosyncratic ideas about the king of gods and men. With the epithet Zeus Aetnaeus he was worshiped on Mount Aetna, where there was a statue of him, and a local festival called the Aetnaea in his honor.[312] Other examples are listed below. As Zeus Aeneius or Zeus Aenesius (Αινησιος), he was worshiped in the island of Cephalonia, where he had a temple on Mount Aenos.[313]
Oracles of Zeus
Although most oracle sites were usually dedicated to Apollo, the heroes, or various goddesses like Themis, a few oracular sites were dedicated to Zeus. In addition, some foreign oracles, such as Baʿal's at Heliopolis, were associated with Zeus in Greek or Jupiter in Latin.
The Oracle at Dodona
The cult of Zeus at Dodona in Epirus, where there is evidence of religious activity from the second millennium BC onward, centered on a sacred oak. When the Odyssey was composed (circa 750 BC), divination was done there by barefoot priests called Selloi, who lay on the ground and observed the rustling of the leaves and branches.[314] By the time Herodotus wrote about Dodona, female priestesses called peleiades ("doves") had replaced the male priests.
Zeus' consort at Dodona was not Hera, but the goddess Dione — whose name is a feminine form of "Zeus". Her status as a titaness suggests to some that she may have been a more powerful pre-Hellenic deity, and perhaps the original occupant of the oracle.
The Oracle at Siwa
The oracle of Ammon at the Siwa Oasis in the Western Desert of Egypt did not lie within the bounds of the Greek world before Alexander's day, but it already loomed large in the Greek mind during the archaic era: Herodotus mentions consultations with Zeus Ammon in his account of the Persian War. Zeus Ammon was especially favored at Sparta, where a temple to him existed by the time of the Peloponnesian War.[315]
After Alexander made a trek into the desert to consult the oracle at Siwa, the figure arose in the Hellenistic imagination of a Libyan Sibyl.
Zeus and foreign gods
Zeus was identified with the Roman god Jupiter and associated in the syncretic classical imagination (see interpretatio graeca) with various other deities, such as the Egyptian Ammon and the Etruscan Tinia. He, along with Dionysus, absorbed the role of the chief Phrygian god Sabazios in the syncretic deity known in Rome as Sabazius. The Seleucid ruler Antiochus IV Epiphanes erected a statue of Zeus Olympios in the Judean Temple in Jerusalem.[317] Hellenizing Jews referred to this statue as Baal Shamen (in English, Lord of Heaven).[318] Zeus is also identified with the Hindu deity Indra. Not only they are the king of gods, but their weapon - thunder is similar.[319]
Zeus and the sun
Zeus is occasionally conflated with the Hellenic sun god, Helios, who is sometimes either directly referred to as Zeus' eye,[320] or clearly implied as such. Hesiod, for instance, describes Zeus' eye as effectively the sun.[321] This perception is possibly derived from earlier Proto-Indo-European religion, in which the sun is occasionally envisioned as the eye of *Dyḗus Pḥatḗr (see Hvare-khshaeta).[322] Euripides in his now lost tragedy Mysians described Zeus as "sun-eyed", and Helios is said elsewhere to be "the brilliant eye of Zeus, giver of life".[323] In another of Euripides' tragedies, Medea, the chorus refers to Helios as "light born from Zeus."[324]
Although the connection of Helios to Zeus does not seem to have basis in early Greek cult and writings, nevertheless there are many examples of direct identification in later times.[325] The Hellenistic period gave birth to Serapis, a Greco-Egyptian deity conceived as a chthonic avatar of Zeus, whose solar nature is indicated by the sun crown and rays the Greeks depicted him with.[326] Frequent joint dedications to "Zeus-Serapis-Helios" have been found all over the Mediterranean,[326] for example, the Anastasy papyrus (now housed in the British Museum equates Helios to not just Zeus and Serapis but also Mithras,[327] and a series of inscriptions from Trachonitis give evidence of the cult of "Zeus the Unconquered Sun".[328] There is evidence of Zeus being worshipped as a solar god in the Aegean island of Amorgos, based on a lacunose inscription テンプレート:Lang ("Zeus the Sun"), meaning sun elements of Zeus' worship could be as early as the fifth century BC.[329]
The Cretan Zeus Tallaios had solar elements to his cult. "Talos" was the local equivalent of Helios.[330]
Zeus in philosophy
In Neoplatonism, Zeus' relation to the gods familiar from mythology is taught as the Demiurge or Divine Mind, specifically within Plotinus's work the Enneads[331] and the Platonic Theology of Proclus.
Zeus in the Bible
Zeus is mentioned in the New Testament twice, first in Acts 14:8–13: When the people living in Lystra saw the Apostle Paul heal a lame man, they considered Paul and his partner Barnabas to be gods, identifying Paul with Hermes and Barnabas with Zeus, even trying to offer them sacrifices with the crowd. Two ancient inscriptions discovered in 1909 near Lystra testify to the worship of these two gods in that city.[332] One of the inscriptions refers to the "priests of Zeus", and the other mentions "Hermes Most Great" and "Zeus the sun-god".[333]
The second occurrence is in Acts 28:11: the name of the ship in which the prisoner Paul set sail from the island of Malta bore the figurehead "Sons of Zeus" aka Castor and Pollux (Dioscuri).
The deuterocanonical book of 2 Maccabees 6:1, 2 talks of King Antiochus IV (Epiphanes), who in his attempt to stamp out the Jewish religion, directed that the temple at Jerusalem be profaned and rededicated to Zeus (Jupiter Olympius).[334]
Zeus in Gnostic literature
Pistis Sophia, a Gnostic text discovered in 1773 and possibly written between the 3rd and 4th centuries AD alludes to Zeus. He appears there as one of five grand rulers gathered together by a divine figure named Yew.[335]
In modern culture
Film
Zeus was portrayed by Axel Ringvall in Jupiter på jorden, the first known film adaption to feature Zeus; Niall MacGinnis in Jason and the Argonauts[336][337] and Angus MacFadyen in the 2000 remake;[338] Laurence Olivier in the original Clash of the Titans,[339] and Liam Neeson in the 2010 remake,[340] along with the 2012 sequel Wrath of the Titans;[341][342] Rip Torn in the Disney animated feature Hercules,[343] Sean Bean in Percy Jackson & the Olympians: The Lightning Thief (2010).[344] Russell Crowe portrays a character based on Zeus in Marvel Studios' Thor: Love and Thunder (2022).
TV series
Zeus was portrayed by Anthony Quinn in the 1990s TV series Hercules: The Legendary Journeys; Corey Burton in the TV series Hercules; Hakeem Kae-Kazim in Troy: Fall of a City; and Jason O'Mara in the Netflix animated series Blood of Zeus.[345]
Video games
Zeus has been portrayed by Corey Burton in God of War II, God of War III, God of War: Ascension, PlayStation All-Stars Battle Royale & Kingdom Hearts 3[346][347] and Eric Newsome in Dota 2. Zeus is also featured in the 2002 Ensemble Studios game Age of Mythology where he is one of 12 gods that can be worshipped by Greek players.[348][349]
Other
Depictions of Zeus as a bull, the form he took when abducting Europa, are found on the Greek 2-euro coin and on the United Kingdom identity card for visa holders. Mary Beard, professor of Classics at Cambridge University, has criticised this for its apparent celebration of rape.[350] A character based on the god was adapted by Marvel Comics creators Stan Lee and Jack Kirby, first appearing in 1949.
Genealogy of the Olympians
テンプレート:Chart top テンプレート:Chart/start テンプレート:Chart テンプレート:Chart テンプレート:Chart テンプレート:Chart テンプレート:Chart テンプレート:Chart テンプレート:Chart テンプレート:Chart テンプレート:Chart テンプレート:Chart テンプレート:Chart テンプレート:Chart テンプレート:Chart テンプレート:Chart テンプレート:Chart テンプレート:Chart テンプレート:Chart テンプレート:Chart テンプレート:Chart テンプレート:Chart テンプレート:Chart テンプレート:Chart テンプレート:Chart テンプレート:Chart テンプレート:Chart/end テンプレート:Chart bottom
Argive genealogy
テンプレート:Argive genealogy in Greek mythology
Gallery
- Marie Pierre Abduction of Europa.JPG
The abduction of Europa
- Calyx-krater olympian assembly MAN.jpg
Olympian assembly, from left to right: Apollo, Zeus and Hera
- Schloss Rastatt-Goldener Mann.jpg
The "Golden Man" Zeus statue
- Getty Villa - Collection (5305219094).jpg
Enthroned Zeus (Greek, c. 100 BC) - modeled after the Olympian Zeus by Pheidas (c. 430 BC)
- Zeus with Hera.jpg
Zeus and Hera
- Paris-33 (29998023800).jpg
Zeus statue
- Poseidon Zeus Marabouparken.JPG
Zeus/Poseidon statue
See also
- Family tree of the Greek gods
- Agetor
- Ambulia – Spartan epithet used for Athena, Zeus, and Castor and Pollux
- Hetairideia – Thessalian Festival to Zeus
- Temple of Zeus, Olympia
- Zanes of Olympia – Statues of Zeus
Footnotes
Notes
References
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External links
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- Greek Mythology Link, Zeus stories of Zeus in myth
- Theoi Project, Zeus summary, stories, classical art
- Theoi Project, Cult Of Zeus cult and statues
- Photo: Pagans Honor Zeus at Ancient Athens Temple from National Geographic
系譜
ティーターン神族のクロノスとレアーの末の子(長男の説もある)で、ハーデースとポセイドーンの弟。正妻は姉であるヘーラーであるが、レートーや姉のデーメーテール等の女神をはじめ、多くの人間の女性とも交わり、子をもうけたといわれる。
オリュンポス十二神の中では、メーティスとの間にアテーナー、レートーとの間にアポローンとアルテミス、マイアとの間にヘルメース、ディオーネーとの間にアプロディーテー(ホメーロスより)、ヘーラーとの間にアレース、ヘーパイストス、またテーバイの王女セメレーとの間にディオニューソス、デーメーテール(一説にはステュクス)との間にペルセポネー(あるいはコレー)をもうけた。その他、記憶の女神ムネーモシュネーとの間に9人のムーサたち、海洋の女神エウリュノメーとの間に3人のカリスたち、月の女神セレーネーとの間にパンディーア、ヘルセー、ネメアが誕生した。
また様々な人間の女性との間に、たとえばダナエーとの間にペルセウスを、アルクメーネーとの間にヘーラクレースを、レーダーとの間にディオスクーロイを、アンティオペーとの間にゼートスとアムピーオーンを、エウローペーとの間にミーノースとラダマンテュスとサルペードーンを、カリストーとの間にアルカスを、イーオーとの間にエパポスを、といったように多数の子供たちをもうけたことになっている。これらゼウスの子とされる英雄を半神(ヘロス)といい、古代ギリシアでは下級の神として広く祀られた。これらの伝説は、古代ギリシアの各王家が、自らの祖先をゼウスとするために作り出された系譜とも考えられる。ゼウスが交わったとされる人間の女の中には、もとは地元の地母神であったと考えられるものもいる。女神や人間と交わるときのゼウスはしばしば変化したとされ、ダナエーのときには黄金の雨に、レーダーのときには白鳥に、アンティオペーのときにはサテュロスに、エウローペーのときには白い牡牛に、カリストーのときにはアルテミスに、イーオーのときには雲に変身したといわれる。
全宇宙の支配まで
王位簒奪戦争
ゼウスの生誕に関する古代伝説のひとつによれば、父クロノスはわが子に支配権を奪われる不安にかられ、生まれた子供を次々に飲み込んでしまった。そこでゼウスを生んだとき、母レアーは産着で包んだ石をかわりにクロノスに飲ませることでゼウスを救った。ゼウスはクレータ島のディクテオン洞窟で雌山羊のアマルテイアの乳を飲み、ニュムペーに育てられた。
成人したゼウスは、嘔吐薬によってクロノスに女を含め兄弟たちを吐き出させ、父親に復讐をしたがっている彼らと共に、全宇宙の支配権を巡る戦争であるティーターノマキアーを勃発させた。この時、飲み込まれた順とは逆の順で吐き出されたが、これがポセイドーン等にとって第2の誕生にあたり、よって兄弟の序列が逆転されたともされている。
この大戦においてゼウスは雷霆を投げつけ、宇宙をも揺るがす衝撃波と雷火によってティーターン神族を一網打尽にした。雷光は全空間に漲り、ティーターンたちは瞬く間に目を焼かれて視力を奪われた。雷霆の威力は想像を絶し、見渡す限りの天地を逆転させ[351]、地球や全宇宙、そしてその根源のカオスをも焼き払うほどであった[30]。この猛攻撃の甲斐あってゼウスたちはクロノスなどのティーターン神族を打ち倒し、敗者であるティーターン神族は宇宙の深淵であるタルタロスに封印された。
その後ゼウスとポセイドーンとハーデースは支配地をめぐってくじ引きを行い、それぞれ天界と海界と冥界の主となった。更に、ゼウスはその功績から神々の最高権力者と認められた。しかしその一方、この時のハーデースは冥界の主となったためにオリュンポス十二神から除外されている。
巨人族との戦い
全宇宙の支配権が確立したティーターノマキアー後も、ゼウスの支配を揺るがすような出来事が起こった。ゼウスは全宇宙の支配を護る為に防衛戦を展開しなければならなかった。
その一つが巨人族ギガースとオリュンポスの神々の戦いであるギガントマキアーであり、これはタルタロスに我が子であるティーターン神族を幽閉されたことに怒ったガイアが仕向けた大戦であると言われている。ギガースは山を軽々と持ち上げるほどの腕力を持ち、神々に対しては不死身であったが、人間なら殺すことができ、ゼウスは半神半人である自らの息子ヘーラクレースをオリュンポスに招いて味方にした。
ギガースたちは島や山脈といったありとあらゆる地形を引き裂きながら大軍で攻め入ってきたが、迎撃を開始した神々とヘーラクレースによって尽く打ち倒された。ヘーラーに欲情して犯そうとしたギガース・ポルピュリオーンは、彼女を犯す前にゼウスの雷霆によって戦闘不能にされ、最後はヘーラクレースの毒矢によってとどめを刺された。ギガースたちは神々によって島や山脈を叩き付けられて封印され、ヘーラクレースの強弓によって殺戮された。ギガントマキアーはゼウスたちの圧勝に終わった[352]。
最終決戦
ギガントマキアーでゼウスたちを懲らしめられなかったガイアは、タルタロスと交わり、ギリシア神話史上最大にして最強の怪物テューポーンを生み出してオリュンポスを攻撃させた。テューポーンは頭が星々とぶつかってしまうほどの巨体を有しており、両腕を伸ばせば東西の世界の果てにも辿り着いた。神々と同じく不老不死で、肩からは百の蛇の頭が生え、炎を放つ目を持ち、腿から上は人間と同じだが、腿から下は巨大な毒蛇がとぐろを巻いた形をしていた。テューポーンは世界を大炎上させ、天空に突進して宇宙中も暴れ回った。これには神々も驚き、動物に姿を変えてエジプトの方へと逃げてしまった。しかし、ゼウスただ一人だけがその場に踏み止まり、究極の怪物にして怪物の王テューポーンとの壮絶な一騎討ちが始まった[352]。
ゼウスは雷霆とアダマスの鎌でテューポーンを猛攻撃し、テューポーンは万物を燃やし尽くす炎弾と噴流でそれを押し返した。この決戦は天上の宇宙で繰り広げられ、これによって全秩序は混沌と化し、全宇宙は焼き尽くされて崩壊した[353]。両者の実力は拮抗していたが、接近戦に持ち込んだゼウスがテューポーンの怪力に敗れ、そのとぐろによって締め上げられてしまう。テューポーンはゼウスの雷霆とアダマスの鎌を取り上げ、手足の腱を切り落とし、デルポイ近くのコーリュキオンと呼ばれる洞窟へ閉じ込めた。そしてテューポーンはゼウスの腱を熊の皮に隠し、番人として半獣の竜女デルピュネーを置き、自分は傷の治療のために母ガイアの元へ向かった。
ゼウスが囚われたことを知ったヘルメースとパーンはゼウスの救出に向かい、デルピュネーを騙して手足の腱を盗み出し、ゼウスを治療した。力を取り戻したゼウスは再びテューポーンと壮絶な戦いを繰り広げ、深手を負わせて追い詰める。テューポーンはゼウスに勝つために運命の女神モイラたちを脅し、どんな願いも叶うという「勝利の果実」を手に入れたが、その実を食べた途端、テューポーンは力を失ってしまった。実は女神たちがテューポーンに与えたのは、決して望みが叶うことはないという「無常の果実」だったのである。
敗走を続けたテューポーンは悪あがきとして全山脈をゼウスに投げつけようとしたが、雷霆によって簡単に弾き返され、逆に全山脈の下敷きになってしまう。最後はシケリア島まで追い詰められ、エトナ火山を叩き付けられ(シケリア島そのものを叩き付けたとする説もある)、その下に封印された。以来、テューポーンがエトナ山の重圧を逃れようともがくたび、噴火が起こるという。こうしてゼウスはテューポーンとの死闘に勝利し、もはや彼の王権に抗うものは現れなかった。
また、神統記によれば、ゼウスはテューポーンと全宇宙を揺るがす激闘の末に、雷霆の一撃によって世界を尽く溶解させて、そのままテューポーンをタルタロスへと放り込んだのだという。
世界の平定
ガイアがまだ権威を持っていた宇宙の原初期には、森羅万象はオリュンポスの神々に対して反抗的で、全物質が支配から逃れようと暴れ出した。ガイアは地母神と言われているが、その支配領域は大地だけではなく、天をも内包する世界そのものにまで及んでいたからだ。万物の反抗は、何もかも覆してしまうかのような大変動に繋がった。大陸はねじれて震え、山々はばらばらに引き裂かれて岩石や火砕流を吐き出した。河は流れを変え、海は隆起して全ての大陸は海中へと没した。全物質の攻撃により、世界は混沌と化した。
しかし、ゼウスは宇宙を統制し、森羅万象を押さえ込んで混沌とした世界をその意に従わせた。大地はもはや揺らがなくなり、山々も平穏になった。大陸は海中から姿を現し、もう海が暴れることもなくなった。ゼウスは世界を平定し、再び宇宙に調和が訪れた[354]。
人物
ホメーロスの記述にみるゼウスは、2つの異なる姿で描かれている。一方ではゼウスは弱者の守護神、正義と慈悲の神、悪者を罰する神としてあらわされる。しかし同時に、次々と女性に手を出しては子孫を増やし、不貞を妻に知られまいとあらゆる手段を講じる神としても描かれている。混沌を自らの力で撃退・統制し、全宇宙の秩序を創造した神でもあり、その秩序を脅かす者ならば、たとえ同族であっても排除する荒ぶる神でもある。
元来はバルカン半島の北方から来てギリシア語をもたらしたインド・ヨーロッパ語族系征服者の信仰した天空神であったと考えられ、ヘーラーとの結婚や様々な地母神由来の女神や女性との交わりは、非インド・ヨーロッパ語族系先住民族との和合と融合を象徴するものと考えられる。また自分たちの系譜を神々の父までさかのぼりたいという、古代ギリシア人の願望としても説明されることがある。
多くのインド・ヨーロッパ語族系言語を用いる民に共通して信仰された天空神に由来し、その祖形は、ローマ神話におけるユーピテルの原型であるデイオス・パテール、あるいは普通名詞「神」を表すデイオス、デウス、古層のインド神話の天空神ディヤウス、北欧神話のテュールらに垣間見ることができる。
信仰
ゼウス信仰はギリシア全域で行われ、至上最高の原理として仰がれていた。古代ギリシア人たちは一神教に近い帰依と敬虔さをゼウスに捧げ、明らかに他の神々とは一線を画していた。ゼウスは運命すらも超越し[107]、全知全能神に相応しい威厳を放っていた。
古代オリンピック
オリュンピアはゼウスの主な神域であり、そこで4年に1度開催される古代オリンピックはゼウスを讃える全ギリシア的な大祭であった。この開催期間中は、ギリシア人は全員戦争を止め、古代オリンピックに参加するためにオリュンピアへと向かった。この道中はゼウスによって守護されると考えられた。不正を決して行わないという宣誓をゼウス・ホルキオス(誓いのゼウス)に捧げ、選手たちは各種目に分かれて競い合った。古代オリンピックで優勝した者は、神々から寵愛されている者、もしくは神々の血を引く者とされ、祖国では大いに賞賛された。現在は廃墟となってしまっているが、当時はオリュンピアにあるゼウス神殿内部には12mを超える黄金と象牙で出来た巨大なゼウス像が聳え立っていたという。この巨大なゼウス像は世界の七不思議のひとつとしても有名である。
また、マケドニア王国にあるゼウスの神域・ディオンでも、オリュンピア祭が開催された。主催者はヘーラクレースの血筋を持つとされたマケドニア王家であり、これはオリュンピアの古代オリンピックに次いで盛況であった。
ドードーナの神託
エペイロスにあるドードーナには、ギリシア最古の神託所があり、ここでの神託はデルポイに次いで有名であった。ドードーナの神託所にはゼウスが祭られており、神官たちはゼウスの聖木である樫の木を用いて神託を下した。樫の木の葉のざわめきを聞き、ゼウスの神託を解釈するのである。ドードーナの神託所は山奥にあり、交通の便は悪いが、その評判を聞きつけて参拝者が後を絶たなかった。
オリュンピア=ゼウス神殿
アテーナイには、ゼウスに捧げるための巨大な神殿がローマ帝国のハドリアヌス治下で建造された。元々は紀元前550年頃にペイシストラトスが建造を開始したものであるが、彼の後を継いだヒッピアスが追放されたことで計画は中止となっていた。その後、ハドリヌスが当時の計画を復活させ、完成させた。オリュンピア=ゼウス神殿と呼ばれ、当時の神殿内部にはオリュンピアのゼウス像のコピーがあったことに由来する。古代世界で最大の神殿であり、柱はコリント式である。
ローマ神話
ゼウスはローマ神話の最高神ユーピテルと同一視された。ローマ帝国は「文化面ではギリシアに征服された」という名言が有名なように、ギリシア神話の神々をローマ神話の神々と同一視してローマ文化に取り入れたため、ギリシア神話とローマ神話の神々の権能はしばしば共通している。ユーピテルは英語読みでジュピターとも言い、木星の名前の由来となった。
ユーピテルはゼウスと同じく雷電を扱い、天空を支配する全能神である。ユーピテル・フェレトリウスという名で一騎討ちを守護する神としても知られ、一騎討ちで敵を倒した将軍は、討ち取った敵の武具を樫の木(ゼウスと同じくユーピテルの聖木)に縛り付け、ユーピテルに捧げた。
エジプト神話
ゼウスはエジプト神話の最高神アメンとも同一視された。アメンは太陽神であったが、神々の王であったことから、ヘーリオスやアポローンではなく、ゼウスのエジプトにおける名称だとギリシア中で認知されていた。エジプト西部砂漠のシワ・オアシスにあるアメン神殿にはペルセウス、ヘーラクレースが訪れ、神託を伺ったとされている。
東方遠征の際にマケドニアのアレクサンドロス大王もアメン神殿を訪れ、神託を伺った。そこで彼はアメンの息子であるという神託を得た。それはゼウスの息子であるということに等しく、アレクサンドロス大王は自らの神性を証明して満足した。
参考文献
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私的注釈
- ↑ これは「幼児供犠」の習慣を思わせる。
- ↑ これは邪気祓いの祭祀ではないだろうか。
- ↑ 「木に吊す」とはエススやオーディンに対する生贄を彷彿とさせる。
- ↑ おそらく「不老不死の薬」とは、死んだ者を生き返らせることができる、と考えられていたのではないだろうか。
- ↑ ヘカントケイルとは、中国神話の共工や相柳に相当するのではないだろうか。
- ↑ ゼウスに太陽や月の動きを統括できる能力がある、と考えられていたことが分かる。
- ↑ 射日神話的な展開といえる。
- ↑ テューポーンとは中国神話の共工、相柳に相当する神であると考える。
- ↑ 岩戸神話を彷彿とさせる。
- ↑ 朝鮮神話では火を盗むのは犬(天狗)となっている。
- ↑ いわゆる「洪水神話」である。
- ↑ タラニスの人身御供の儀式で生贄を焼き殺すことを彷彿とさせる。
- ↑ 北斗の車輪のことか?
- ↑ これは羿神話の変形であろう。
参照
- ↑ Schmitz, 2016, p705
- ↑ 里中満智子・名古屋経済大学助教授西村賀子解説 『マンガギリシア神話1 オリュンポスの神々』 中公文庫、2003年。
- ↑ 以下は、宗教文学研究者バーバラ・シュミッツの論文からの引用(Schmitz, 2016, p705)。
アリステアスの議論における基礎原理は、神格〔the deity〕の機能である。アリステアスはそれを「全ての物事の創造者にして統括者」として描いている。 … 唯一神〔God〕は、ユダヤ教とギリシャ的文脈とで同じ機能を持っている。すなわち、唯一神は全ての物事の創造者にして統括者である。ただ唯一神の呼び名だけが違う。つまりギリシャ的文脈において、唯一神は「ゼウス」と呼ばれている。(Schmitz, 2016, p705)
(原文:Fundamental for the argumentation of Aristeas is the function of the deity, which he describes as “the overseer and creator of all things” (πάντωνἐπόπτην καὶ κτίστην). ... God has the same function in the Jewish as in the Greek context: He is the creator and overseer of all things. The only difference is God’s name: In the Greek context, God is called “Zeus”.)(Schmitz, 2016, p705)
唯一神についての二つの概念〔ユダヤ系とギリシャ系〕は共に、遍在・全知・全能という特徴を持っている。(Schmitz, 2016, p712)
(原文:[B]oth concepts of God share the aspects of omnipresence, omniscience and omnipotence (Arist 132 and Arist 133).(Schmitz, 2016, p712) - ↑ Britannica Japan Co., Ltd., 2020, p「至上神」
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- ↑ Lactantius, Divine Institutes 1.11.1.
- ↑ See Gantz, pp. 10–11; Hesiod, Theogony 159–83.
- ↑ Hard 2004, p. 67; Hansen, p. 67; Tripp, s.v. Zeus, p. 605; Caldwell, p. 9, table 12; Hesiod, Theogony 453–8. So too Apollodorus, 1.1.5; Diodorus Siculus, 68.1.
- ↑ Gantz, p. 41; Hard 2004, p. 67–8; Grimal, s.v. Zeus, p. 467; Hesiod, Theogony 459–67. Compare with Apollodorus, 1.1.5, who gives a similar account, and Diodorus Siculus, 70.1–2, who doesn't mention Cronus' parents, but rather says that it was an oracle who gave the prophecy.
- ↑ Cf. Apollodorus, 1.1.6, who says that Rhea was "enraged".
- ↑ Hard 2004, p. 68; Gantz, p. 41; Smith, s.v. Zeus; Hesiod, Theogony 468–73.
- ↑ Hard 2004, p. 74; Gantz, p. 41; Hesiod, Theogony 474–9.
- ↑ Hard 2004, p. 74; Hesiod, Theogony 479–84. According to Hard 2004, the "otherwise unknown" Mount Aegaeon can "presumably ... be identified with one of the various mountains near Lyktos".
- ↑ Hansen, p. 67; Hard 2004, p. 68; Smith, s.v. Zeus; Gantz, p. 41; Hesiod, Theogony 485–91. For iconographic representations of this scene, see Louvre G 366; Clark, p. 20, figure 2.1 and Metropolitan Museum of Art 06.1021.144; LIMC 15641; Beazley Archive 214648. According to Pausanias, 9.41.6, this event occurs at Petrachus, a "crag" nearby to Chaeronea (see West 1966, p. 301 on line 485).
- ↑ West 1966, p. 291 on lines 453–506; Hard 2004, p. 75.
- ↑ Fowler 2013, pp. 35, 50; Eumelus fr. 2 West, pp. 224, 225 [= fr. 10 Fowler, p. 109 = PEG fr. 18 (Bernabé, p. 114) = Lydus, De Mensibus 4.71]. According to West 2003, p. 225 n. 3, in this version he was born "probably on Mt. Sipylos".
- ↑ Fowler 2013, p. 391; Grimal, s.v. Zeus, p. 467; Callimachus, Hymn to Zeus (1) 4–11 (pp. 36–9).
- ↑ Fowler 2013, p. 391; Diodorus Siculus, 70.2, 70.6.
- ↑ Apollodorus, 1.1.6.
- ↑ Hard 2004, p. 68; Gantz, p. 41; Hesiod, Theogony 492–3: "the strength and glorious limbs of the prince increased quickly".
- ↑ Apollodorus, 1.1.6; Gantz, p. 42; West 1983, p. 133.
- ↑ Hard 2004, p. 612 n. 53 to p. 75; Apollodorus, 1.1.7.
- ↑ Hansen, p. 216; Apollodorus, 1.1.7.
- ↑ Diodorus Siculus, 7.70.2; see also 7.65.4.
- ↑ Diodorus Siculus, 7.70.2–3.
- ↑ Diodorus Siculus, 7.70.2; see also 7.65.4.
- ↑ Diodorus Siculus, 7.70.4.
- ↑ Gantz, p. 42; Hyginus, Fabulae 139.
- ↑ Gantz, p. 42; Hard 2004, p. 75; Hyginus, Fabulae 139.
- ↑ Smith and Trzaskoma, p. 191 on line 182; West 1983, p. 133 n. 40; Hyginus, Fabulae 182 (Smith and Trzaskoma, p. 158).
- ↑ Hard 2004, p. 75–6; Gantz, p. 42; Epimenides fr. 23 Diels, p. 193 [= Scholia on Aratus, 46]. Zeus later marks the event by placing the constellations of the Dragon, the Greater Bear and the Lesser Bear in the sky.
- ↑ Gantz, p. 41; Gee, p. 131–2; Frazer, p. 120; Musaeus fr. 8 Diels, pp. 181–2 [= Eratosthenes, Catasterismi 13 (Hard 2015, p. 44; Olivieri, p. 17)]; Musaeus apud Hyginus, De Astronomica 2.13.6. According to Eratosthenes, Musaeus considers the she-goat to be a child of Helios, and to be "so terrifying to behold" that the gods ask for it to be hidden in one of the caves in Crete; hence Earth places it in the care of Amalthea, who nurses Zeus on its milk.
- ↑ Hard 2004, p. 75; Antoninus Liberalis, 19.
- ↑ Gantz, p. 44; Hard 2004, p. 68; Hesiod, Theogony 492–7.
- ↑ Hard 2004, p. 68; Hesiod, Theogony 498–500.
- ↑ Hard 2004, p. 68; Gantz, p. 44; Hesiod, Theogony 501–6. The Cyclopes presumably remained trapped below the earth since being put there by Uranus (Hard 2004, p. 68).
- ↑ Hard 2004, p. 68; Gantz, p. 45; Hesiod, Theogony 630–4.
- ↑ Hard 2004, p. 68; Hesiod, Theogony 624–9, 635–8. As Gantz, p. 45 notes, the Theogony is ambiguous as to whether the Hundred-Handers were freed before the war or only during its tenth year.
- ↑ Hesiod, Theogony 639–53.
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