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(わし)とは、タカ目タカ科に属する鳥のうち、オオワシ、オジロワシ、イヌワシ、ハクトウワシなど、比較的大きめのものを指す通称である。タカ科にて、比較的大きいものをワシ、小さめのものをタカ(鷹)と呼ぶが、明確な区別はなく、慣習に従って呼び分けているにすぎない。

神話の上での鷲[編集]

エジプト神話[編集]

上エジプトの守護女神ネクベトはハゲワシの姿で現される。

メオポタミア神話[編集]

ドイツの研究者パウル・クーニッチは、バビロニアやシュメールにおいてアルタイルが鷲の星とされており、わし座の起源はこの時代まで遡る、としている[1]

ギリシア神話・わし座[編集]

  • トロイアの王子ガニュメーデースがあまりに美しい少年だったため、ゼウスが神の宴の給仕をさせるために、天に連れ去るときに遣わした鷲。またはゼウスが変身した鷲。天上では、ガニュメーデースをモチーフとするみずがめ座の隣にわし座が位置しており、星図でもみずがめ座に飛び掛るように描かれている[1]
  • ゼウスが用いる雷の矢を運ぶ鷲。わし座に隣接しているや座がゼウスの雷の矢を表している[1]

象徴としての鷲[編集]

鷲はその姿から鳥の王者とされ、信仰の対象にもなった。ローマ皇帝の紋章は鷲である。のちに東ローマ帝国が双頭の鷲を紋章とし、ロシア帝国などへ受け継がれたほか、[[12世紀以前からセルビアの国旗には白い双頭の鷲が描かれている。中欧・西欧ではハプスブルク家によって神聖ローマ帝国からオーストリア帝国へ双頭の鷲が受け継がれ、プロイセン王国やドイツ帝国も鷲を紋章とした。ナチス・ドイツもそれにならい、軍服や建築物の随所に鷲の意匠を施した。現在のドイツ・オーストリア両国の国章にも鷲が使われている。また、ナポレオンやイギリス王室、ポーランドなども鷲を紋章に取り入れている。

メキシコ国旗に描かれているワシは「ウィツィロポチトリの予言鷲」と呼ばれる。「蛇をくわえた鷲がサボテンの上にとまっている場所を見つけ、そこを都とせよ」という神託に従い、現在のメキシコシティに安住の地を見つけたというアステカ族の神話にちなんだものである。

アメリカ合衆国はハクトウワシを、フィリピンはフィリピンワシを国鳥としている。

鷲の尾羽は矢羽根として最高のものとされる。陸奥国の名産として朝廷や伊勢神宮の遷宮の折などに鷲の尾羽を献上したという記録が残っている。中央ユーラシアのカザフ人やキルギス人は、イヌワシを鷹狩用に馴致する習慣がある[2]

ワシの名を冠した物事[編集]

ワシは「鳥の王者」として、力強い印象を与えることから、その名を冠した様々な物事が存在する。

  • ドイツやスペインなどでは、視力や観察眼に優れていることを慣用句で「鷲の目」と言う。ドイツ語では Adlerauge、スペイン語では ojo de águila。
  • アメリカの戦闘機であるF-15は「イーグル」の通称で知られている。また、F-15イーグルのマルチロール戦闘爆撃機版であるF-15Eは「ストライクイーグル」の通称で知られている。
  • 人類を初めて月に運んだアポロ11号の月着陸船の名前は「イーグル」である。
  • ゴルフで、規定打数のパーより2打少なくホールに入れることを「イーグル」と呼ぶ。ちなみに3打少ないとアルバトロス(アホウドリ)と呼ぶ。
  • 鼻筋が大きく突き出した鼻をワシの嘴の形から連想して「鷲鼻」と呼ぶ。
  • スポーツチームではプロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルス、アメリカンフットボールNFLのフィラデルフィア・イーグルスなどがある。
  • イーグルスはアメリカのロックバンド
  • 大正製薬社章。かつて鷲と幸せと言葉を掛けたイメージキャラクター「しあわし君」があった。
  • 石川県の県鳥は、白山連峰に生息するイヌワシである。同県警のマスコットはいぬわし君・いぬわしちゃん。同県小松基地・306飛行隊の部隊マークは、これをデザインしたものである。
  • AMCイーグルは、クロスオーバーSUVの先駆けとも言える自動車。また、現時点では最初で最後のV型8気筒エンジンを搭載したトラディショナルジープであるジープ CJ-7の上級グレード、「ゴールデンイーグル」のボンネットには大きな金色の鷲が描かれている。どちらも絶版車。
  • TOTO(当時は東洋陶器)は1962年まで鷲を社章に使用していた。

参考文献[編集]

  • Wikipedia:(最終閲覧日:22-12-12)
  • Wikipedia:わし座(最終閲覧日:22-12-12)

関連項目[編集]

女神[編集]

  • ネクベト:エジプト神話のハゲワシの女神。

参照[編集]

  1. 1.0 1.1 1.2 http://www.ianridpath.com/startales/aquila.htm, Star Tales, 2022-07-16, Ridpath Ian, イアン・リドパス
  2. 鷲使いの民族誌-モンゴル西部カザフ騎馬鷹狩文化の民族鳥類学, 2018年2月, ナカニシヤ出版, 相馬 拓也