日本では古来、櫛は別れを招く呪力を持っているとされ、現代の日本人でも櫛を贈答品にしたり、気軽に貸し借りしたりするのを嫌がる人は少なくない。一方で、'''魂の宿る頭に飾るもの'''であることから、自らの分身として旅立つ人に手渡しもした。
*『古事記』には、[[イザナギ|伊邪那岐命]]が、妻の[[イザナミ|伊邪那美命]]が差し向けた追っ手([[黄泉醜女]])から逃れるために、櫛の歯を後ろに投げ捨てたところ筍に変わり、黄泉醜女がそれを食べている間に逃げることができたという記述がある<ref name="yamagata" />。
*『古事記』で[[八岐遠呂智八俣遠呂智]]を退治しに出向く[[スサノオ|須佐之男命]]は[[櫛名田比売]]を櫛に変えて自分の髪に挿した。
*天皇は[[斎宮]]として都を旅立つ皇族の少女を見送る儀式で、「別れの櫛」を手ずから髪に挿し、別れの言葉をかけた。彼女たちは身内か天皇に不幸があるまで都に帰ることはできず、巫女であるため任務を解かれるまで恋愛もできない。櫛を挿す儀式には俗縁を断つという意味があるとされる<ref name="yamagata" />。逆に成人式に当たる「髪上げの儀」では、大人社会への仲間入りの象徴として櫛が少女の髪に挿される。この儀式の直後に婚礼を済ませることもあった。
*ドイツ童話の中には『[[白雪姫]]』のように、櫛が女性の生命活動を一時的に停止できる([[失神|気絶]]させたり、[[金縛り]]にしたりする)[[黒魔術|黒魔法]]の道具として登場することもある。