クルダレゴン

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クルダレゴン(Kurdalægon[1])はオセチア神話における天の鍛冶神である。彼の通り名は「天の人」である。この神は「死人の馬」として現れ、この馬は神が冥界に渡るための乗り物とみなされている。クレダルゴンはナルト達の友である。

語源について

オセチア神話[2]のクルダレゴンは「クルド(Kurd)-アラ(Alæ)-ヴァルゴン(Wærgon)」の短縮系であり、Wærgonはクルダレゴン固有の名である。[3]全文で「アーリア人の鍛冶師ヴァルゴン」という意味になる。[4]クルドは「kur-ta-」あるいは「kur-tar-」に由来する。「kur-」は「熱する者」、「白熱する者」という行為者名詞である。オセチア語の「alæ」という言葉は「arya-」に由来し、本来は「アーリア人」を意味したが、それは後に「アラン人」となった。

「ヴァルゴン(Wærgon)」という名は、古いオセチア語で「狼(wærg、英語:wolf)」を意味する。言語学者のヴァシリー・アバーエフは、この名をローマの鍛冶神ウゥルカーヌスの名前と比較している。

私的解説

鉄器時代のこの鍛冶神は「kur-」という太陽神を示唆する名を持っており、古き時代の太陽神が鉄器時代に鍛冶神をも兼ねることになったことが分かる。個人的には「kur-dal」と分解できる子音を持つ神であって、後半部分はかつて「bar」あるいは「ver」とされていたものが「dal」に変更されたものであると感じる。その分西洋の「蛇神信仰」に伴う攻撃性や不吉性は増している神といえ、死者の馬や冥界とも関わりのある性質が強調されているようである。
メソポタミアを含む地中海沿岸地域の神の名を見ると「b」という子音が意図的に「t」や「d」の音に置き換えられている可能性を感じる。例えばヒッタイトの女神ヘバト(Hebat)の名はクババ(Kubaba)という女王の名と関連性があると言われているが、そうすると本来「b」の子音で発音されていたものが「t」の音に置き換えられていることになる。また、アッカド系の天候神アダド(あるいはハダド((H)adad) )という名の神がいるが、これもシュメールにおける太陽神バッバル(Babbar)の「b」の子音を両方とも「d」に置き換えたものといえる。
クルダレゴン(Kurdalægon)という言葉は子音に分解すると「Kur-da-læ-go-n」となる。「d」の子音が本来「b」であったとするとこの部分は「Bar-go-n」とすることができよう。「狼(wærg)」という言葉における「w」という子音は「b」という音が変化したものなので、これが意図的に「d」の音へ置き換えられているとすると、この神と「狼(wærg)」という言葉の直接の関連性はむしろ薄くなっているといえる。一方「dar-go-n」というのはウガリット神話に登場する海神のことであるので、クルダレゴンは語源的にはむしろダゴン(Dagon) と近い神なのではないだろうか。
また「g」の音は「k」の子音から変化したものであるので「dar-go-n」という子音は更に「dar-ker-n」と書き換えることができるように思う。ここから「d」の子音を外すと「ker-n」すなわち「choro-n」とすることができるように感じる。要するに「クルダレゴン」とは「クルダレ-コロン」、すなわち「クルドのコロン」という意味になるのだと思われる。
このように考えると「kur-dal」という子音をどの程度「アーリア」という言葉と結びつけることができるのか、という点については個人的には疑問に感じる。
この神の性質をみると「死者を冥界へ運ぶ馬」の姿で現されるようである。要するに神はその役目のために冥界と現世を行ったり来たりできるのであろうが、一方冥界へ運ばれた死者が戻ってくることはまず無いと思われる。タカの神であるコロン神は本来「太陽神」でもあったであろうが、このように「死神」としての性質も強い神であったと思われる。彼は時代が下ると、信仰されている氏族の尊敬を受ける鍛冶神をも兼ねることとなったと思われるが、そもそも「死神」をトーテムに持つ人々の性質とはいかなるものであるのか、ということになる。誇り高き鍛冶師カーヴェの子孫が誇り高い人々となるように、死神を祖神に持つ人々は「死神」のようになるのではないか、と思う。要するに、奪い尽くし、犯し尽くし、殺し尽くせ、ということである。人々を冥界に送り込む存在となるが、自らは死なない。それが古代における「死神信仰」の本質であり、その象徴がクルド人の鷹神コロンであったのではないかと思われるのである。
ただし、人工が増え、他民族が隣接して暮らすようになれば、殺し尽くす、奪い尽くすだけではなく、同盟を結ぶ相手も現れることもあるだろうと思う。他民族がコロン神の信仰を受け入れて、この神を自らの神ともするようになれば、それは「クルドだけ」の「コロン」とはいえなくなってしまう。要するに、他氏族、他民族にコロン神信仰が受け入れられるにつれて「クルド」という固有名詞が外れてしまったものがいわゆる「コロン」という神なのであろう。
この神が太陽神でもあったことは、古代エジプト人に導入した際に、太陽神かつ猛禽類の神として共通した性質を持つホルス神と習合したことからも明かであるように思われる。ただし、ウガリット方面では「水神」としての性質が優先されて崇められたのであろう。
このコロン(Choron)という神は、ギリシアローマ神話においてはカローン(Charon)等の名に変化し、この世と冥界の間にあると言われている川の渡し守を行う神等に変化しているように思う。またコロン(Chron)の「ch」が本来、比較的喪失しやすい音であったとするとロン(ron)という音にも変化し得ると考える。「n」という子音と「m」という子音は交通性があるため、この言葉は容易にローマ(Roma)にも変化し得るのではないだろうか。例えば、コーカサスに伝わるナルト叙事詩にはエクセルテグとエクサルという兄弟が争って殺し合うという伝承があるが、一方のローマ神話にも双子の兄弟であるロムルスレムスが殺し合うというエピソードがあり、「クルドのコロン」を擁するコーカサスと、ローマという地名を持つローマ神話の間には「コロン(Choron)」を語源とする神や地名の共通性だけでなく、それ以外の神話のモチーフにも共通点があるようである。
一方、ヨーロッパ方面に入ると、ケルヌンノス(Kernunnos)に代表されるような羊の頭を持つ神とされて、鳥神としての性質は乏しくなったようである。この神は豊穣神でもあると同時に、死に神や戦いの神としての性質も有していた。クルド人ヒツジの飼育と農業を生業とする半遊牧生活を送る人々であるとのことなので、そもそも彼らのトーテム獣のうち、鳥神としては鷹、食料等となる動物としては羊が存在し、どちらも「コロン」という神に属するものと考えられており、その羊トーテムの思想がヨーロッパ方面に強く広まったのではないかと思われる。
また、ケルトでは特にクロウ・クルワッハ(Crom Cruach)という名に変化しているように思う。この神も羊頭の蛇で現されたが、二つの名を持っている神であって、前半のクロウ(Crom)はコロン(Choron)から派生した名であると思われる。一方、後半のクルアッハ(Cruach)という言葉には「蛇」を示す子音が入っておらず、ホルス(Horus)に近い名といえる。
クロウ(Crom)という言葉は英語に直せばクロウ(crow)となって「カラス」を意味する言葉に変化するように思う。戦場において、死肉を漁るこの鳥は不吉なものとみなされていたようだが、かつては鳥神であった性質の片鱗が名の中に残されているといえる。また「dar-go-n」という言葉のうち、最後の子音である「n」を取り去れば英語で「dark(暗闇)」という意味になり、黒い色のカラスと「色」の点で共通性が生じてくるように思う。要するにケルトにおける「クロウ(Crom)」という神は、暗闇の神であり、カラスの神であり、死と戦争の神であり、羊頭蛇尾の神でもあるといえる。
その一方でホルス(Horus)という言葉がコルス(chrus)という言葉に置き換えられ、先頭の「ch」が消失したものが「rus」、すなわち「光(light)」等の言葉に変化したとすると、クロウ・クルアッハという神の名は「闇と光」という意味にもなると感じる。ケルトの古い伝承には

とある場所で、川が境界となっていて、一方の岸に白い羊、もう一方の岸に黒い羊がおり、一頭の黒い羊がメエーと鳴くと、一頭の白い羊が川を渡っていって黒い羊となり、また逆に白い羊がメエーと鳴くと黒い羊が川を渡って白い羊となる

という物語があるが、そもそもケルトの羊の神こそが、闇の世界も光の世界も自在に行き来できる神である、と考えられていたことによる伝承であると思われる。白と黒の側を行き来してその色を変える羊とは、ケルトの「コロン神」の性質でもあったようである。

関連項目

参照

  1. Digorian: Курдалæгон, Курд-Алӕ-Уӕргон
  2. オセチア神話はコーカサス地方の山岳地帯に住むオセット人の神話である。
  3. 現在のドイツ語でWagenとは「車」という意味である。
  4. 正確にはむしろ「クルド人の鍛冶師ヴァルゴン」というべきであると思う。この項の執筆者はちと強引に「アーリア」という言葉に結びつけたがる傾向があるのではないだろうか。

原文の外部リンク

外部リンク

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