Nと月について:ヒエログリフ

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ヘリオポリスの位置と神々

古代エジプトには複数の創世神話があるが、ヘリオポリスの神話に注目してみたいと思う。ヘリオポリス神話は、「原始の混沌の水」の象徴であるヌンから様々な神々が生まれた、という神話である。ヌンの曾孫神にヌトという天空の女神がいるため、この2神の名前を比較してみることとする。

ヌン(Nu)について

ヌンは「原始の混沌の水」の象徴であり、そのヒエログリフは、天、さざ波、水瓶という言葉で構成されている。この場合の「さざ波」とは当然「混沌の水の波」であろうと推察される。
ヒエログリフから読み取れるこの名の意味は、「天にある混沌の水を入れた水瓶」であると思われる。では、この「天にある混沌の水を入れた水瓶」とは一体何を指すのであろうか、ということになる。
また、発音的には水瓶が示す「w」という文字は、「u」に変化し得ることが分かる。

ヌト(Nut)について

ヘリオポリス神話の中で、ヌトはヌトの曾孫神に当たり、天の女神とされている。そのヒエログリフを見ると、「半月」を示す「t」の文字以外は、ヌンとほぼ同じ構成となっていることが分かる。そこに無いのは「混沌の波」を示す文字のみである。しかし、ヌンの項で見たように、天にある「混沌の水を入れた水瓶」の中に入っているのが「混沌の水」であれば、その水瓶そのものが、内側に「混沌の水」を含んでいるものといえる。

月について

古代エジプトには、山羊頭の月の神クヌム(Khnum)がいるため、次にそのヒエログリフを見てみたい。クヌムという言葉を構成するヒエログリフは以下の通りである。
左端は、四角い長方形を描いて、「池」を意味するヒエログリフである。本来の発音はshであるが、ここではkhとも読めるようである。ここから、kh, sh, ch, hが互いに変化し得る言葉であることが分かる。

クヌム(Khnum)

クヌム(Khnum)のヒエログリフは主に以下の図1と図3があるようである。
図1は水瓶と鳥が並んでいる図で、そのまま読むと「ww」となる。そのため、ここでは、「ww」という表意文字を書いて「クヌム(Khnum)」と読んでいることが分かる。ヒエログリフの意味は、「水瓶と鳥」であるので、古代エジプトの人々が月とは「鳥あるいは(かつ)水瓶」であると考えていることが分かる。月が「鳥」の姿で現される時は翼を持つこととなるであろうし、一方「水瓶」として現される時は、「混沌の水を入れた水瓶」と考え得るのではないだろうか。
一方、図3を見ると、こちらは音を組み合わせて神を現していることが分かる。象形文字という観点からみると、「山から混沌の水の池が昇っている図」となる。すなわち、「水瓶」と「混沌の水の池」がここでは同じ意味であると分かる。山から昇った「混沌の水の池(あるいは水瓶)」こそが「月」なのである。要するに、古代エジプトの人々は「月」のことを「空飛ぶ水瓶」と考えており、その瓶の中には混沌の水が入っていると信じていたのである。
ここで話はヌンに戻るが、そのヒエログリフの意味するところは「天にある混沌の水を入れた水瓶」である。要するにこの「水瓶」とは月のことである。すなわち、天にあっては「月」、大地の下にあっては「混沌の水」と考えられていたものは「同じもの」であり、ヌン、ヌト女神、クヌムはいずれも、「月」あるいは「混沌の水」を示す神であることが分かる。
また、クヌムの発音は「ẖnmw」であるが、最後の「w」の子音はヒエログリフの上では略されている。
一方、図5はシュメールの楔形文字の前身となった絵文字における「月」とのことである。これは「山から月が昇りかけている図」と説明されるらしい。その意とするところは、クヌムのヒエログリフと共通点かあるように感じる。その読み方はユニコード表によれば「DI」である。

関連項目

参考リンク

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