M神列伝1:ヒエログリフ

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本項では、「フクロウ」のヒエログリフを中心として、神に関して「m」で発音される他のヒエログリフとの関連性を考察してみることとする。

ケンメト(Kenmeto)のヒエログリフ

ケンメトは古王国時代に既に存在していた死者の神である。この神についての情報は乏しく、主にピラミッド・テキストの中にわずかにその名が見える程度である。この神はどうやら、ヒヒの神と対立するヒョウの神であったようである。そのヒエログリフは以下の通りとなる。

2つのヒエログリフを見比べると、「フクロウ」+「葦」と「ハゲワシ」のヒエログリフが「m」の音を割り当てられて、同じ意味で使われていることが分かる。葦はエジプトにおける天国である「アアルの野(葦の原野)」の象徴である。ケンメトが死者の神であるということは、「来世における運命を定める月神」という意味合いが当初はその名にあったのではないかと思われる。

ネクベト(Nekhbet)のヒエログリフ

コム・オンボ神殿(紀元前332-32年)のネクベト女神像
テシュブとヘバト(紀元前19世紀)

古代エジプトにおいて、「ハゲワシ」のヒエログリフで有名なのはネクベト女神とムト女神であるので、それぞれのヒエログリフも挙げておくこととする。
ネクベト女神は上エジプトの守護女神であり、時代が下ると王権の保護者とされた。ネクベト女神のヒエログリフは以下の通りである。興味深いのは、発音しないヒエログリフの中に葦かあるいは類似の植物を思わせる「m」のヒエログリフが挿入されている点である。しかも、その植物は最も短く省略されたヒエログリフにも使用されており、女神の性質として重要視されていた「象徴」であろうと思われる。ハゲワシは砂漠において、死体を食べる存在でもあるため、冥界を象徴するものでもあったのではないだろうか。とすると、その植物は冥界の植物の象徴とも考えられる。管理人がそれを「葦」と考える理由の一つはそこにある。もっとも省略された形のヒエログリフにおいては、女神の名を発音するヒエログリフは登場せず、その変わりに「水を入れた器」とこの「植物」が描かれる。冥界、すなわちエジプト的に「アアルの野」における「水」とは、「人の運命を定める冥界の月蛇神」の水、すなわち「混沌の水」と考えられる。冥界の象徴である「水」+「植物」が描かれることからも、ネクベト女神もまた「月の蛇女神」の一形態であることが分かる。
また、ネクベト女神のフルネームを示した名から、「t」以外の「月」を示すヒエログリフを外すと、「kh-b-t」となる。すなわち、ヒッタイトの太陽女神「he-ba-to」と子音的に非常に近い名となる。本来ネクベト女神は、太陽を意味する「鳥神」であったものが、「月」を意味するヒエログリフを付加することで、「月の蛇女神」と習合することとなった神なのではないだろうか。一方、ヒッタイトの太陽女神「ヘバト(Hebato)」の語尾には「月」を意味する「t」の子音が残されている。ヘバト女神はその先が蛇のように曲がった杖を持つが、その蛇型杖はおそらくこの「t」という子音に由来する「月の蛇女神」の性質が部分的に投影されたものなのであろう。

ムト(Mut)のヒエログリフ

ムト女神

ムト女神はテーベで重要視された女神である。そのヒエログリフは「ハゲワシ」で現される。その読み方は「母」を意味するとのことである。ムトを意味するヒエログリフは以下の通りである。「月」を意味する「t」のヒエログリフが付いて、「Mu-t」と読む。ネクベト女神の場合には「M」と発音する子音がその名に含まれていないため、「mu」と読むのはいわゆる「当て字」的読み方であると思う。「m」と読む「ハゲワシ」のヒエログリフは「フクロウ」の「m」と同じ意味を持つため、名前そのものが「月」であり「母」でもある女神といえる。英語で「母」に相当する言葉が「mother」であることを考えると、この言葉も「月の母」という意味から出た一般名詞なのではないだろうか。

まとめ

本項より、「フクロウ」あるいは「セネト・ゲーム」のヒエログリフで示される「m」は、冥界の葦の「m」、「月のハゲワシ」の「m」、「母親」としての「m」と同じ意味を持つ言葉であることが明かとなった。

関連項目

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