失われたArk1:ヒエログリフ

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ドイツ語版wikipedia:Aker (Ägyptische Mythologie)より
k,v, 平たい器

王権の発生に伴って神々が再編されることになり、その中でいくつか失われた言葉があると感じるため、その点についての考察を試みたい。まず「地平線」を意味するアケル(Aker)のヒエログリフを再び見てみよう。このヒエログリフは、「エジプトハゲワシ」+「器」+「口」という構成となっている。
まず「k」を現す「器」の文字に注目してみたい。この言葉は「kあるいはv」で現され、「v」と発音する場合には「月」的な意味を持つのではないかと推察されるが、同じく空を飛ぶ「器状の物体」を示すとしても、丸い水瓶で示される「月」とは異なる形をしている。アケルの図像において、空に浮かんでいるのは太陽であるため、この「平たい器」を「太陽」と考えてみることとする。
このように考えてヒエログリフを見てみると「平たい器」の形で現され、複数の子音で現される言葉があるため、まずはそれを検討してみることとする。

ネクベト(Nekhbet)のヒエログリフ

ここで再び上エジプトの守護神ネクベト(nekhbet)女神のヒエログリフを見てみたい。この女神の名前を最小限に縮めたのが以下のヒエログリフである。葦のヒエログリフは「m」の子音で現され「月」や「水」の意味を持つ。そのため、おそらく同じ意味を持つ「t」とという音に変換されて発音されているのだと思われる。そう考えると「v」の子音で現される「平たい器」のヒエログリフは「nkb」という音を示すことになる。これらの子音のうち、最初にくる「n」はやはり「月」や「水」の意味を持つので、そこから更に「v」という音に変換されてヒエログリフとして使われているのであろうと思われる。しかし残りの「kb」という子音は「太陽」に属する子音であること、「アケル」のように「平たい器」は「太陽」を示すものではないのか、と思われることを併せると、このヒエログリフは本来「kb」と発音したのではないかと思われるのである。古代エジプトにおける「k」の子音は発音する際に失われやすい軽い子音であるため、このヒエログリフは「b」と発音された可能性もあると考えられる。そして、この器が「k」と発音された場合にはアケルの「k」を示すヒエログリフと同じ子音となる。更に他の発音例がないかどうか検討してみることとしよう。

セクメト(Sekhmet)のヒエログリフ

次に、獅子頭女神であるセクメト(Sekhmet)のヒエログリフをみてみたい。この女神は太陽神ラーが人々を殺すために送られた神とされているが、ビールを飲んで酔っぱらっている内に役目を忘れてしまった神と言われている。

セクメト女神の2つのヒエログリフを比較すると、「添え名」として使われていたものは、最初の3文字が「セクメト」という言葉を表すのみで、残りの3文字はウアジェト女神を示すコブラのヒエログリフが変化したものに過ぎないことが分かる。そして「平たい器」のヒエログリフは「sk」という子音を示すものとして使われている。「k」という子音が比較的消えやすくて弱いものであったと考えるとこれは容易に「sh」とも変化しうることが分かる。

「平たい器」を示すヒエログリフ

神々の名を示すヒエログリフを見ていくと、左から2番目の「取っ手のない平たい器」のヒエログリフはネクベト女神のように「nb」と読まれる例が多いことに気が付く。しかし、「n」と「b」は本来「月」と「太陽」という異なるものを示す子音であるため、「取っ手のない平たい器」は「太陽」を示すヒエログリフと仮定して調べると、これは「k」「kb」「b」「sk」「sh」という言葉で発音され得る子音であることが分かる。おそらく、本来的にはこのように「太陽」を示す様々な子音で発音され得たものが、書き言葉が固定されるにつれて「nb」という子音に使うように使用法が限定されたものと思われる。
おそらく「アケル」を構成する「k」の子音も「太陽」を意味することから同様のことがいえると感じる。例えば、このヒエログリフを「sh」と発音すれば「アケル」は「アッシュ」となり、メソポタミアと共通の発音となることになる。また、メソポタミアにおいて「地平線」を意味する「ASH」の楔形文字が「b」と発音し得るとすれば、これも「平たい器」で示されるエジプトのヒエログリフと共通の要素ということになる。要するに楔形文字の「ASH」と「平たい器」のヒエログリフは、古代エジプトとメソポタミアにまたがって、共通の意味を持ち、共通の発音をする「同じ言葉」といえるのである。

こうして考察していくと、どうやらさまざまな子音で発音されていた「太陽」を意味するヒエログリフは、時代が下るにつれて音と意味を限定させる方向に変遷しているようである。

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