省略されるw:ヒエログリフ

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本項ではヘリオポリス神話の内、テフヌト(Tefnut)について考察してみることとする。

テフヌト(Tefnut)について

テフヌトは獅子頭の女神で、「湿気の女神」と言われている。そのヒエログリフを見ると、古王国時代のものには、「混沌の水」を現す「n」が、また新王国時代のものには、「月」を現す「水瓶」の「w」が使用されている。いずれも「月」を示すヒエログリフであるので、意味が一致するという点で使われていることが推察される。この2つのヒエログリフは同じ意味なため、いずれかを使用すれば用が足り、かつ「読み方」に関しても相互に変換可能であるのであろう。テフヌトの場合は、いずれも「nw(nu)」と読んで、同じように扱っている。
また、「f」という音を表現するのに「蛇」のヒエログリフが使用され、この女神が「獅子頭かつ蛇神かつ月神」であるとも読み取れる。すると、テフヌトは本質的にはメヒト女神と同じ神といえる。
テフヌトの中王国時代の通称はジェト(Djet)といった。そのヒエログリフは「月の蛇」を意味すると思われる。ヒエログリフN-18(u13200)は、同じ角丸長方形の中に「混沌の水」または「月の象徴」と思われるものを含むパターンが存在するため、「月」を意味すると考えられるからである。それに加えて「dj」と現されるコブラのヒエログリフは、下エジプトの守護神であるウアジェトという蛇女神を意味する。すなわち、テフヌトとはウアジェトであり、月神であることが示唆される。ということは、ウアジェトが月神でもあり、混沌の水でもあるということになる。

ネジテフ(Nedjitef)について

ネジテフは古代エジプト神話の古い神で、天の神から死者の神へ変化した神である、とされているようである。
また、この神はどうやらホルス神がセトを倒した際の姿と習合しているようで、軍神としての性質も合わせ持っているらしい。ネジテフ神のヒエログリフを見ていくと、「混沌の波」、「コブラ」、「パピルス草」、「葦の穂」、「クロス」、「ライオン」となる。古い王国時代のヒエログリフが、新王国時代になると「コブラ」が加わった形で表現されるようになり、この神が「月の蛇神」であったことが分かる。また、ヘレニズム時代に入ると、「月」を意味する「混沌の波」と「コブラ」のヒエログリフが「パピルス草」に置き換わり、そこに「クロス」と「ライオン」が加えられている。「クロス」と「ライオン」は太陽の象徴である。すなわち、ネジテフ神も「獅子頭かつ蛇神かつ太陽神であるところの月神」といえる。 「月」を意味する「混沌の波」と「コブラ」が「パピルス草」で示されるということは、「パピルス草」のヒエログリフは、「月」、「蛇神」を示すということになる。

ウアジェト(Wadjet)について

下エジプトの守護神にして、パピルス草で表象されるコブラの女神をウアジェトという。パピルス草が「月」を表象するのであれば、この女神も「月神」といえる。
この女神を現す、コブラはパピルス草は本来「dj」という音を示す文字であるため、「w」に当たる文字が表記の上からは省略されていると思われる。「w」の文字は「天の水瓶」=「月」を示す言葉であるが、コブラやパピルス草が同じ意味を兼ねるため、表記では省略されて、発音する際の音にだけ残されたのではないだろうか。このように考えると、ウアジェトとは、「天の水瓶の蛇かつパピルス草の女神」といえそうである。同じ意味の言葉が2つ重なる場合には、一方を省略して記載する場合があることは、テフヌト女神の項でも述べている。
古代エジプトには、パピルス草を4本重ねて柱として象形した「ジェド柱」というものが存在する。「ジェド柱」はオシリスという神の「背骨」と言われている。オシリス神は古代エジプトの植物の豊穣をもたらす神と考えられていたようだが、「死して再生した」という伝承を持つことから、「冥界の王」とも考えられるようになった神である。「冥界の王」であることから、「永遠性」や「永続性」の象徴とも考えられ、その性質を支える「背骨」であるということから、ジェド柱がオシリスの「永遠性」や「永続性」を象徴するものと考えられているといえる。
そのため、この柱は王権の更新(新王の即位や、定期的な王権維持のための祭祀)に際に立てられたとされている。また、オシリスが「冥界の王」であることから、新王国時代の貴族の墓に「永遠性」を象徴しても立てられていた。この柱の原型は「パピルス草」であるため、「蛇」の永遠性をも現していると考えられる。[1]その読み方も「dj」が重なった「dd」すなわち「ジェド」である。

参照

  1. 蛇は脱皮することから、「永遠性」を象徴する動物であると考えられていた。

参考リンク

Wikipedia

Wikipedia以外

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