ラプンツェル

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ラプンツェル」(Rapunzel)は、『グリム童話』(De|Kinder- und Hausmärchen) に収録されている作品(および主人公の名前)[1]。原話はイタリアの『ペンタメローネ(五日物語)』収録の『ペトロシネッラ(Petrosinella)』。

ラプンツェルと呼ばれる野菜はオミナエシ科のノヂシャ、キキョウ科の Campanula rapunculus など複数存在する。栄養価の高いことで知られ、妊婦が食べるのによいとされる植物である。

あらすじ

あるところに農夫とおかみさんの夫婦がいた。長年子供がいなかった二人だが、ある時やっと子供を授かる。妊娠したおかみさんは隣に住む魔法使いの庭の畑のラプンツェルを食べたくてたまらなくなり、盗んで食べる。それを見つけた魔法使い(魔女)は、好きなだけラプンツェルを摘んでもいいが、子供が生まれたら自分に渡せと約束させる。

おかみさんが生んだ女の子は即座に連れて行かれ、ラプンツェルと名付けられて、森の中に築かれた入り口のない高い塔に閉じ込められた。塔の中で美しい少女に成長したラプンツェルは、魔法使いが「ラプンツェル、ラプンツェル、おまえの髪を下ろしておくれ!」と言うと、金を紡いだような見事な長い髪を窓から垂らし、それをはしご代わりに塔へ出入りさせていた。ある日、森の中を歩いていた王子が美しい歌声に引かれ、塔の中のラプンツェルを発見。昼間は魔法使いが来るため、夜に同じ方法を使って塔に登る。はじめて男性との性交渉を知ったラプンツェルは驚くが、やがて愛し合い、夜ごと王子を部屋に招き入れて性交を行う。その結果ラプンツェルは妊娠する。

魔法使いに妊娠がばれ、怒った魔法使いはラプンツェルの髪を掴んで切り落とし、荒野に放逐した。一方、何も知らない王子がラプンツェルを訪ねに来ると、魔法使いは切り取ったラプンツェルの髪を下ろして塔に入れてやる。恐ろしい顔をした魔法使いに「あの子はもういないよ」と聞かされた王子は、絶望のあまり塔から身を投げ、命は助かるが茨が両目に突き刺さって失明した。

七年後、盲目のまま木の実やベリーを食べて森をさまよっていた王子は、ラプンツェルが追放された荒野へたどり着き、男女の双子の母となっていたラプンツェルとめぐり会う。うれし泣きするラプンツェルの涙が王子の両目に落ち、王子は視力を回復する。王子はラプンツェルと子供たちを伴って国に帰り、皆で幸せに暮らす。

解説

ラプンツェルは燃やされたわけではないのだが「燃やされた女神」である。彼女が燃やされるのは、この物語の更に未来、双子の男の子の企みによるものと推察される。

これは元は

「太陽女神」が隠れて、王子に救出され、その際に怪我をした彼を医薬神である太陽女神が助けて二人は結婚した。

という話だったと考える。彼女が「ちしゃ」という名前で植物として表される点は、やや彼女が「死者」として暗喩されているように思う。また、彼女が「髪を切られて荒野に放逐される」という点も、彼女の死を暗喩しているように思う。この二点のみ「吊された女神」の要素である。

怪我をした王子をラプンツェルが助ける、という点は、アリアドネが迷宮でテーセウスを助ける、というギリシア神話と相関する。テーセウスが潜った迷宮も目が見えなくなるような暗闇だったのかもしれない。

「荒野への放逐」は、太陽女神が殺されて月女神あるいは荒野(冥界)の女神に変化したことを思わせるが、物語の中では変化ははっきりとは現されない。

王子がラプンツェルのところに通う場面は、母系社会の「通い婚」を思わせる。母系社会であった頃からの伝承で起源的にはとても古いものと考える。

ギリシア神話に類話があるが、ローマ的には、塔にマールスが通って、その結果双子の息子を産んだレア・シルウィアも類話といえよう。彼女は子供を産む前に荒野に放逐されるのではなく、子供を産んだ後に牢屋に入れられて苦しむ。神話よりも、ラプンツェルの伝承の方が母系の色彩が強いと感じる。

外部リンク

脚注