「テーバイ攻めの七将」の版間の差分

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(ページの作成:「『'''テーバイ攻めの七将'''』(テーバイぜめのしちしょう<ref>https://ci.nii.ac.jp/ncid/BN01999815, テーバイ攻めの七将, 2024-07-05, CiNii</r…」)
 
 
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という三部作として上演された。このときのサテュロス劇は『スピンクス』であり、上演記録(デイダスカリア)は、アイスキュロスの勝利を伝えている。これらのうち現存するのは本作『テーバイ攻めの七将』のみである。この三部作は、古くから成立していたとされる叙事詩『テーバイス』(Thebaïs)及び『オイディポデイアー』(Oidipodeia)から題材をとっている。テーバイに関わる神話に基づき、ギリシア悲劇詩人たちは多くの作品を書いたが、これらのなかで本作は現存するもっとも古いものである。
 
という三部作として上演された。このときのサテュロス劇は『スピンクス』であり、上演記録(デイダスカリア)は、アイスキュロスの勝利を伝えている。これらのうち現存するのは本作『テーバイ攻めの七将』のみである。この三部作は、古くから成立していたとされる叙事詩『テーバイス』(Thebaïs)及び『オイディポデイアー』(Oidipodeia)から題材をとっている。テーバイに関わる神話に基づき、ギリシア悲劇詩人たちは多くの作品を書いたが、これらのなかで本作は現存するもっとも古いものである。
  
『テーバイ攻めの七将』以降では、[[ソポクレース]]の『[[オイディプス王]]』(紀元前427年ごろ)、『[[アンティゴネー]]』(紀元前441年ごろ)、『[[コロノスのオイディプス]]』(紀元前401年ごろ)、[[エウリーピデース]]の『[[救いを求める女たち]]』(紀元前420-415年ごろ)、『[[フェニキアの女たち]]』(紀元前409年)が現存する同系列の作品であり、物語の背景や登場人物が共通している。なかでもエウリーピデースの『フェニキアの女たち』は本作と同じ戦いを描いている。
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『テーバイ攻めの七将』以降では、ソポクレースの『オイディプス王』(紀元前427年ごろ)、『アンティゴネー』(紀元前441年ごろ)、『コロノスのオイディプス』(紀元前401年ごろ)、エウリーピデースの『救いを求める女たち』(紀元前420-415年ごろ)、『フェニキアの女たち』(紀元前409年)が現存する同系列の作品であり、物語の背景や登場人物が共通している。なかでもエウリーピデースの『フェニキアの女たち』は本作と同じ戦いを描いている。
  
『テーバイ攻めの七将』は戦いを扱いながら、舞台で示されるのはテーバイ城内の[[エテオクレース]]とその周辺のみに限られ、戦闘そのものについては直接語られない。また、相争う兄弟のうち[[エテオクレース]]は主人公であり優れた人物として描かれるが、一方の[[ポリュネイケース]]は災いを引き起こす厭うべき存在とされている。こうした大胆な省略、対比の強調はアイスキュロスの悲劇に特徴的に見られるもので、この手法によって、エテオクレースの英雄性が端的に表出されている。
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『テーバイ攻めの七将』は戦いを扱いながら、舞台で示されるのはテーバイ城内のエテオクレースとその周辺のみに限られ、戦闘そのものについては直接語られない。また、相争う兄弟のうち'''エテオクレース'''は主人公であり優れた人物として描かれるが、一方の'''ポリュネイケース'''は災いを引き起こす厭うべき存在とされている。こうした大胆な省略、対比の強調はアイスキュロスの悲劇に特徴的に見られるもので、この手法によって、エテオクレースの英雄性が端的に表出されている。
  
編成は[[俳優]]2人と合唱隊([[コロス]])により、ギリシア悲劇としては古い形式を採る。
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編成は俳優2人と合唱隊(コロス)により、ギリシア悲劇としては古い形式を採る。
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== 私的解説 ==
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ともかく、ギリシア悲劇だけあって、「炎黄が並び立つ」などとは全く言っていない。根本はあくまでも「'''アスラとデーヴァの戦い'''」である。同じ神が何度も出てきて、複合的になり複雑な神話となっている。ときどき「不老不死の薬」とかどこかで聞いた話が出てくる。根本的な神話のモチーフは残っているけれども、文芸的な作品である。
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そして、「'''アスラとデーヴァの戦い'''」だけれども、テーバイという町の名がそもそも「デーヴァ」と同じ子音で「デーヴァの町」と言っているも同じと思うので、デーヴァの方が勝利する。そういう点ではインド的な神話内容なのかもしれない。パーンダヴァ五王子(オイディプスと同じ子音)とカウラヴァ百王子(ポリュネイケースと似た子音)(盲目の王ドゥリタラーシュトラ(テューデウスと似た子音の名)の息子たち。特に嫉妬深いドゥルヨーダナ(こちらもテューデウス)が五王子を憎む。)が従兄弟同士で王位を争う。しかもパーンダヴァ五王子は5人で1人の妻を持つという、結婚に関するタブーにかなり引っかかる結婚をしている。という内容の「マハーバーラタ」の類話ではないかと思う。イオカステーとドラウパティーも'''元は「同じ名」'''だったのではないだろうか。
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=== オイディプス ===
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「BT」の子音を持つオイディプスは、壮族の[[布洛陀]]、日本の布津主と同じ子音を持つ。いずれも[[祝融型神]]であり、軍神としての性質の方が、文化英雄的な性質よりも強い。近親結婚の禁忌に苦しむ所は[[ダロン]]や[[チャンヤン]]と一致する。父親を殺すところは、[[逢蒙]]が「父親のような」[[羿]]を殺す点と一致する。
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赤ん坊の時に「捨てられた」という点は朝鮮の[[朱蒙]](Jumong)、イラン神話のザール(Zal)を思わせる。両者、特に朱蒙の名は「'''姜央'''」(Jangx Vangb、[[チャンヤン]])に近いのではないだろうか。オイディプスや布洛陀がチャンヤンに近い性質の神々あるいは「人間の英雄」であったことが示唆される。
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炎黄といえるエテオクレースとポリュネイケースと対立する点は、中国神話の[[蚩尤]]と同じである。オイディプス王は蚩尤のように殺されはしないが、国を追放されてしまう。兄妹婚の末に追放されてしまうところは、日本の須佐之男を思わせる(日本の場合は姉弟婚)。
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いずれにせよ、オイディプス王の性質より、中国神話の[[逢蒙]]、[[チャンヤン]]、[[蚩尤]]は類似性の高い神々の群であることが推察される。
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=== エテオクレースとポリュネイケース ===
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子音から見てこの名前は、エテオクレース=デーヴァ、ポリュネイケース=ヴァルナと考える。すなわちエテオクレース=炎帝、ポリュネイケース=黄帝である。両者は7人の勇者を従えて戦う。この7人というのは[[チャンヤン]]神話に登場する「'''7人の牛刀を管理する男達'''」のことと考える。いわゆる「軍隊」の始め、というべきものである。
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中国神話では、「'''オイディプス=ダロンあるいはチャンヤン'''」は、洪水神話で雷神よりも若い世代とされるが、ギリシア神話ではデーヴァとヴァルナの方が「子供」とされている。また、中国の炎黄神話と異なって、本物語ではエテオクレースとポリュネイケースは相打ちで死んでしまう。
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==== ポリュネイケースの窃盗 ====
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ポリュネイケースは5代前の祖母・ハルモニアーの遺産を盗み出しており、「祝融型神・窃盗型」の性質を有している。彼はこれをアルゴスの王女に送り、アルゴスを味方にするのに利用する。彼が「祖母の遺産を盗み出す」というのは、神話的には洪水の後、誰が「'''母女神の遺産を手にする(その後を継ぐ)'''か」という重要なモチーフの崩れと考える。盗み出されたものは「'''テーバイの王権そのもの'''」を暗示しているともいえる。広く'''「男性の神」が、上位の女神の「権威」や「権力」に関わるものを盗み出す'''、という神話があったと考える。この点ではポリュネイケースは中国神話の'''[[天狗(中国)|天狗]]'''に相当する。ハルモニアーの名は、ヒッタイトのハンナハンナ、ヴェマーレのハイヌウェレ、ミャオ族のバロンに通じる名と考える。この女神群は太母かあるいは「下位の殺される女神」に2分されてしまう傾向があるように感じる。ただし、イナンナのように太母でありながら冥界に下る(殺される)例もある。ハルモニアーは、「権利を盗み出される」という点では「燃やされた女神」にも「吊された女神」にもなり得ると考える。盗み出したのがポリュネイケースであること、ハルモニアーが太母的な地位にあることから、本物語では「燃やされた女神」とすることが妥当かもしれない。でも、「遺産を残す」という形式は「吊された女神」の要素のようにも感じるので、性質は混合しているといえる。
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=== アンティゴネー ===
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兄を葬って亡くなるアンティゴネーは、妹がいる点と併せて「吊された女神」といえる。「'''禁忌を破って'''」殺される点は、兄弟始祖婚の名残を思わせる。彼女の名は子音が「イナンナ」や「アナト」に近いといえる。彼女の死は「イナンナの冥界下り」をも連想させる。妹と各地を逡巡する所にも「吊された女神」のうち「逃走型」の性質と考える。
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余談だが、追放された父王を支えて、娘達がさまよう姿は、リア王のコーデリアを連想させる。
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=== エリピューレー ===
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「エリ(神)」+「B」で表される女神の名は、中国語で「白」のことと思われ、彼女が元は「太陽女神」だったことが示唆される。男性達が争った際に最終的な判断の決定権を持つ点は、その機嫌が古く「'''母系の最高神であった太陽女神'''」の姿を彷彿とさせる。その言動が神々の動向を決定づける、という点はウガリットの太陽女神[[シャプシュ]]とも類似するように思う。他人のものとされているが、彼女が「太陽女神の象徴」であったとも思われる「ハルモニアーの首飾り」を手に入れるのは、物語の筋書きというよりは、彼女の性質から見て妥当といえる。「'''[[養母としての女神]]'''」といえるのだが、後に彼女は息子に殺されてしまう。その点は「'''[[燃やされた女神]]'''」といえる。
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=== テューデウス ===
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[[画像:Hangzhou.jpeg|thumb|300px|猪紋黒陶鉢<br />新石器時代(河姆渡文化)、1977年浙江省余姚河姆渡文化遺跡出、陶器、高さ11.7cm、口径21.7cm、底径17.5cm、浙江省博物館所蔵。体内に葉を持つ猪である。饕餮の原型と考える。<ref>[http://abc0120.net/words/abc2007070901.html 猪紋黒陶鉢。]、考古用語辞典、07-07-09</ref>]]
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[[画像:nikuduki.png|thumb|300px|甲骨文字の成り立ち]]
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名前の通り「[[饕餮]]」に由来する名と考える。本物語ではポリュネイケースとは、血縁ではないけれども、妻を通して近い人物とされている。彼の特徴は「'''人肉食を行うこと'''」と「アテーナー女神に見放されて'''不死性を手に入れ損なったこと'''。」といえる。
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[[饕餮]]とは中国神話で「何でも食べてしまう怪物」とされているので、人肉を食べてもおかしくはない。また猿の脳みそを食べる習慣は[[河姆渡文化]]あたりから発生しているとみられる。[[河姆渡文化]]では嬰児を食べていた痕跡もあり、「'''人肉を食べる饕餮」'''とはこのあたりから発達した神なのではないだろうか。
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饕餮は蚩尤でもある、と言われており、蚩尤は死して楓の樹に変化したと言われている。ということは、植物、特に樹木は蚩尤のような神が死して変化したものと考えられる。また、後に饕餮紋と呼ばれる紋様は奇怪な獣面で表されることが多い。ということは、河姆渡文化では、この神はイノシシと植物を組み合わせた姿と考えられていたのではないだろうか。そして、天体としては「月」と考えられていたかもしれない、と思う。中国では「肉」といえば「豚」のことであり、「月」と「肉」という文字は、同じ甲骨文字から発生している。「月」は「肉」であり「豚」なのだ。豚はミャオ族にとって犠牲獣としても重要だったと思われる。
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しかし、ミャオ族は、次第に豚よりも大きな水牛を犠牲獣として採用していったように思う。現在、蚩尤が牛の姿をしていると考えられるのは、犠牲獣の水牛を示しているのであって、'''豚が犠牲獣の主流だった時代には、蚩尤(饕餮)は豚の姿をしていたのではないだろうか'''。
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ともかく、この「人肉を食べる月神」は、その性質ゆえにアテーナーに見捨てられてしまう。この物語で、「もう一人の蚩尤(饕餮)」ともいえるオイディプスは国を追放されているので、月神はいずれも「不幸な最後」を遂げた、といえる。
  
 
== 登場人物 ==
 
== 登場人物 ==
 
合唱隊を除く登場人物は、2人の俳優が担当する。
 
合唱隊を除く登場人物は、2人の俳優が担当する。
* '''[[エテオクレース]]''' - テーバイ王、[[オイディプース]]の子
+
* '''エテオクレース''' - テーバイ王、オイディプースの子
 
* '''使者'''
 
* '''使者'''
 
* '''合唱隊''' - テーバイの乙女たち
 
* '''合唱隊''' - テーバイの乙女たち
* '''[[アンティゴネー]]''' - オイディプースの娘
+
* '''アンティゴネー''' - オイディプースの娘、エテオクレースの妹。
* '''イスメーネー''' - オイディプースの娘
+
* '''イスメーネー''' - オイディプースの娘、姉と共に父と諸国を放浪した。
 
* '''布告使'''(後代の加筆による)
 
* '''布告使'''(後代の加筆による)
  
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ここで述べるのは、本作の「前編」に当たり、合わせて三部作をなす『ラーイオス』、『オイディプース』(いずれも亡失)で描かれたと考えられるあらすじである。
 
ここで述べるのは、本作の「前編」に当たり、合わせて三部作をなす『ラーイオス』、『オイディプース』(いずれも亡失)で描かれたと考えられるあらすじである。
  
[[テーバイ]]王[[ラーイオス]]は「子をなすな。その子の手にかかって死ぬであろう」という[[アポローン]]の[[神託]]を受けながら、妃[[イオカステー]]との間に子をもうける。ラーイオスは神託を恐れて子供を山中に棄てさせるが、子供は拾われて[[オイディプース]]と名付けられ、[[コリントス]]で王の養子として育てられる。
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テーバイ王ラーイオスは「子をなすな。その子の手にかかって死ぬであろう」というアポローンの神託を受けながら、妃イオカステーとの間に子をもうける。ラーイオスは神託を恐れて子供を'''山中に棄てさせる'''が、子供は拾われて'''オイディプース'''と名付けられ、コリントスで王の養子として育てられる。
  
オイディプースは成人すると、父とは知らずにラーイオスを殺し、テーバイの民を脅かしていた[[スピンクス]]を退治する。オイディプースは母とは知らずイオカステーと結婚してテーバイ王となり、2人の間にエテオクレース、ポリュネイケース、アンティゴネー、イスメーネーが生まれる。彼はやがて自分の素性を知ることとなり、テーバイから追放される<ref>この部分は[[ソポクレース]]作『[[オイディプス王]]』の題材となった。</ref>。オイディプースは、このとき父親を助けようとしなかったエテオクレースとポリュネイケースの兄弟に呪いをかけて去った<ref>オイディプースの末路はソポクレース作『[[コロノスのオイディプス]]』に描かれている。</ref>。
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オイディプースは成人すると、父とは知らずにラーイオスを殺し、テーバイの民を脅かしていたスピンクスを退治する。オイディプースは母とは知らずイオカステーと結婚してテーバイ王となり、2人の間に'''エテオクレース'''、'''ポリュネイケース'''、'''アンティゴネー'''、イスメーネーが生まれる。彼はやがて自分の素性を知ることとなり、テーバイから追放される<ref>この部分はソポクレース作『オイディプス王』の題材となった。</ref>。オイディプースは、このとき父親を助けようとしなかったエテオクレースとポリュネイケースの兄弟に呪いをかけて去った<ref>オイディプースの末路はソポクレース作『コロノスのオイディプス』に描かれている。</ref>。
  
エテオクレースとポリュネイケースはテーバイの王位継承をめぐって争いを起こす。その結果、追放されたポリュネイケースは[[アルゴス (地名)|アルゴス]]王[[アドラーストス]]を頼み、アルゴスの軍勢を率いてテーバイに攻め寄せる。
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エテオクレースとポリュネイケースはテーバイの王位継承をめぐって争いを起こす。その結果、追放されたポリュネイケースはアルゴス王アドラーストスを頼み、アルゴスの軍勢を率いてテーバイに攻め寄せる。
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オイディプースはアテナイでテーセウスに庇護を受け、最後を迎えた、という説がある。
  
 
=== 本作のあらすじ ===
 
=== 本作のあらすじ ===
[[Image:Eteocles and Polynices - Project Gutenberg eText 14994.png|thumbnail|right|320px|運び出される[[エテオクレース]]と[[ポリュネイケース]]の遺骸。アルフレッド・チャーチ編の「Stories from the Greek Tragedians」の挿絵]]
+
アルゴス勢に囲まれたテーバイの城内、エテオクレースは騒然とする民衆を励まし、恐れおののく乙女たちを叱咤する。そこへ使者が登場し、アルゴス勢の布陣を告げる。エテオクレースは、城の7つの門に攻めかかろうとするアルゴスの将の名前を聞き、それぞれテーバイ勢から守りの将を選んで配置する。最後に、第7の門にポリュネイケースが挑むと聞き、エテオクレースは憤怒する。乙女たちはエテオクレースに運命を避けて第7の門に行かぬよう懇願するが、エテオクレースはオイディプースの呪いの成就が間近に迫っていることを知りつつ、あえて第7の門へ向かう。
アルゴス勢に囲まれたテーバイの城内、エテオクレースは騒然とする民衆を励まし、恐れおののく乙女たちを叱咤する。そこへ使者が登場し、アルゴス勢の布陣を告げる。エテオクレースは、城の7つの門に攻めかかろうとするアルゴスの将の名前を聞き、それぞれテーバイ勢から守りの将を選んで配置する。最後に、第7の門にポリュネイケースが挑むと聞き、エテオクレースは憤怒する。乙女たちはエテオクレースに運命を避けて第7の門に行かぬよう懇願するが、エテオクレースはオイディプースの呪いの成就が間近に迫っていることを知りつつ、あえて第7の門へ向かう。
 
  
再び使者が登場、テーバイの町が守られたこと、しかしエテオクレースとポリュネイケースは相討ちになって死んだことを告げる。2人の亡骸が運ばれてくる。アンティゴネーとイスメーネーの姉妹は2人へのたむけとして交互に哀悼の歌を詠い捧げる。
+
再び使者が登場、テーバイの町が守られたこと、しかしエテオクレースとポリュネイケースは相討ちになって死んだことを告げる。2人の亡骸が運ばれてくる。アンティゴネーとイスメーネーの姉妹は2人へのたむけとして交互に哀悼の歌を詠い捧げる。
  
そこへ別の使者が登場し、国を護ったエテオクレースの亡骸は丁重に葬り、国に攻め入ったポリュネイケースの亡骸は場外に棄て置くこととする評議会の見解と評決を2人に伝える。しかしアンティゴネーはたとえ自分独りであっても、危険を冒してでも兄ポリュネイケースの墓をつくり埋葬することをやり遂げると、その使者に宣言をする。
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そこへ別の使者が登場し、国を護ったエテオクレースの亡骸は丁重に葬り、国に攻め入ったポリュネイケースの亡骸は場外に棄て置くこととする評議会の見解と評決を2人に伝える。しかしアンティゴネーはたとえ自分独りであっても、危険を冒してでも兄ポリュネイケースの墓をつくり埋葬することをやり遂げると、その使者に宣言をする。
 
 
=== 本作の正統性への疑義 ===
 
全体の約5分の1にあたる861行以降の218行についてその正統性に疑義が生じている。
 
 
 
* 861~874行
 
** この14行は後代に付加されたと考えられている。861行でアンティゴネーとイスメーネーが登場していながら960行まで全く沈黙しており<ref>人文『全集』では861行~960行までコロスとアンティゴネとイスメネの三者が交互に哀悼の歌を詠っている。</ref>、それが「非アイスキュロス的沈黙」とされているからである。
 
 
 
なお、861行での姉妹の登場に関しては日本語訳において以下の差異がある。
 
* 人文『全集』 861行〔報せをきいて、2人の王の妹たち右方より急いで登場してくる。〕
 
* 鼎 『全集』 861行〔この時、柩の後よりアンティゴネーとイズメーネーの姉妹入り来るを認めて。〕
 
* 筑摩『文庫』 861行に姉妹に関する記述はなく、864行でコロスが2人の姿を認めることを詠っている。
 
* 岩波『全集』 861行に姉妹に関する記述はなく、864行でコロスが2人の姿を認めることを詠っている。
 
* 岩波『文庫』 861行に姉妹に関する記述はなく、864行でコロスが2人の姿を認めることを詠っている。
 
* 生活『悲壯劇』 861行〔此の時、棺の後よりアンティゴネーとイズメーネーの姉妹入り来るを認めて。〕<ref>人文『全集』、鼎『全集』、生活『悲壯劇』のいずれも864行において2人の姿を認めていることをコロスが詠っている。</ref>
 
* 875行~960行
 
** この86行は正統性を支持する意見が多数である。しかし、写本間で話者指定が混乱している。
 
 
 
なお、話者指定に関して日本語訳において以下の差異がある。
 
* 人文『全集』 861行~960行までコロス、アンティゴネー、そしてイズメーネーが交互に哀悼の歌を詠っている。
 
* 鼎  『全集』 コロスが哀悼の歌を詠っている。
 
* 筑摩『文庫』 コロスが哀悼の歌を詠っている。
 
* 岩波『全集』 コロスが二手に分かれて交互に哀悼の歌を詠っている。
 
* 岩波『文庫』 コロスが哀悼の歌を詠っている。
 
* 生活『悲壯劇』 コロスが哀悼の歌を詠っている。
 
* 961行~1004行
 
** この44行は正統性を否定して削除する意見があるが、正統性が認められている。しかし、話者指定において混乱があり、コロスに指定する意見とアンティゴネーとイスメーネーに指定する意見とがある。
 
 
 
なお、話者指定に関して日本語訳はいずれも「時折コロスの詠を交えてアンティゴネー、イズメーネーが交互に哀悼の歌を詠う」ようになっている。但し、筑摩『文庫』、岩波『全集』、岩波『文庫』は話者指定の混乱についての注記がある。
 
 
 
* 1005行~1078行
 
** この74行は正統性を支持する意見もあるが、[[ソポクレス]]の[[アンティゴネー]]競演後<ref>[[エウリピデス]]の[[フェニキアの女たち]]の競演の後とする説もある。そうするとさらに後の時代ということになる。</ref> にそれを基にして付加されたとの意見が大勢を占めている<ref>人文『全集』は疑義があるとする立場を採っていない。</ref>。
 
 
 
なお、この最終場面が後代の付加と考えられている主な理由は以下の通りである。
 
* 「テーバイを攻める七将」が競演された当時、ギリシア悲劇は2人の俳優しか登場できなかったはずであるのに、ここでは3人の俳優が登場している<ref>イズメーネーの科白が無いことから、イズメーネー役を「黙役」(科白の無い役を演じる俳優のこと。正規の俳優の数には含まれない。)が代わりに務め、本来のイズメーネー役の俳優が布告使役になれば辻褄が合うように思えるが、イズメーネーから布告使に舞台上で早変わりをし、同時に「黙役」と咄嗟のうちに入れ替わらなければならない為無理がある。</ref>。
 
* カドモスの都の評議会のアナクロニズム。
 
* アンティゴネーの言う兄ポリュネイケースの弔いの仕方が[[ソポクレス]]の[[アンティゴネー]]に酷似している。
 
などである。
 
  
 
== 七将たち ==
 
== 七将たち ==
本作で使者が告げるアルゴス勢の七将は登場順に次のとおり<ref>[[ソポクレース]]作『[[コロノスのオイディプス]]』でポリュネイケースの台詞で語られる七将も同じである(戦いの前であるため門の配置はない)。</ref>。
+
本作で使者が告げるアルゴス勢の七将は登場順に次のとおり<ref>ソポクレース作『コロノスのオイディプス』でポリュネイケースの台詞で語られる七将も同じである(戦いの前であるため門の配置はない)。</ref>。
* [[テューデウス]](プロイティデス門)、対する守備の将はアスタコスの子メラニッポス([[スパルトイ]]の後裔)
+
* '''テューデウス'''(プロイティデス門)(アルゴス王の婿、ポリュネイケースとは相婿。義兄弟の関係といえる。)、対する守備の将はアスタコスの子メラニッポス(スパルトイの後裔)
* [[カパネウス]](エレクトライ門)、対する守備の将はポリュポンテース
+
* カパネウス(エレクトライ門)、対する守備の将はポリュポンテース
* [[エテオクロス]](ネイスタイ門)、対する守備の将は[[クレオーン]]の子メガレウス(スパルトイの後裔)
+
* エテオクロス(ネイスタイ門)、対する守備の将はクレオーンの子メガレウス(スパルトイの後裔)
* [[ヒッポメドーン]](オンカ・アテーナー門)、対する守備の将はオイノプスの子ヒュペルビオス
+
* ヒッポメドーン(オンカ・アテーナー門)、対する守備の将はオイノプスの子ヒュペルビオス
* [[パルテノパイオス]](北の門、[[アムピーオーン]]の墳墓に近いとされる)、対する守備の将はオイニプスの子アクトール(ヒュペルビオスの兄弟)
+
* パルテノパイオス(北の門、アムピーオーンの墳墓に近いとされる)、対する守備の将はオイニプスの子アクトール(ヒュペルビオスの兄弟)
* [[アムピアラーオス]](ホモイロイデス門)、対する守備の将はラステネス
+
* アムピアラーオス(ホモイロイデス門)、対する守備の将はラステネス
 
* ポリュネイケース(第7の門)、対する守備の将はエテオクレース
 
* ポリュネイケース(第7の門)、対する守備の将はエテオクレース
  
 
=== 異説 ===
 
=== 異説 ===
七将については異説がある。[[エウリーピデース]]の『[[フェニキアの女たち]]』では、上記のうちエテオクロスの代わりにアドラーストスが配置され、攻める門の名前もカパネウス以外は一致しない。
+
七将については異説がある。エウリーピデースの『フェニキアの女たち』では、上記のうちエテオクロスの代わりにアドラーストスが配置され、攻める門の名前もカパネウス以外は一致しない。
  
[[アポロドーロス]]ではエウリーピデースの七将を記載するが、さらに異説として、アルゴス人ではないポリュネイケースとテューデウスを外して[[イーピス]]の子[[エテオクロス]]と[[メーキステウス]]を挙げる。七将が攻める門はエウリーピデースとはまた異なっている。これによると以下のようになる。
+
アポロドーロスではエウリーピデースの七将を記載するが、さらに異説として、アルゴス人ではないポリュネイケースとテューデウスを外してイーピスの子エテオクロスとメーキステウスを挙げる。七将が攻める門はエウリーピデースとはまた異なっている。これによると以下のようになる。
* [[タラオス]]の子アドラーストス(ホモローダイ門)
+
* タラオスの子アドラーストス(ホモローダイ門)
* [[オイクレース]]の子アムピアラーオス(プロイティダイ門)
+
* オイクレースの子アムピアラーオス(プロイティダイ門)
 
* ヒッポノオスの子カパネウス(オーギュギアイ門)
 
* ヒッポノオスの子カパネウス(オーギュギアイ門)
* [[アリストマコス]]の子ヒッポメドーン(オンカイダイ門)
+
* アリストマコスの子ヒッポメドーン(オンカイダイ門)
 
* オイディプースの子ポリュネイケースまたはイーピスの子エテオクロス(ヒュプシスタイ門)
 
* オイディプースの子ポリュネイケースまたはイーピスの子エテオクロス(ヒュプシスタイ門)
* [[オイネウス]]の子テューデウスまたはイーピスの子メーキステウス(クレーニダイ門)
+
* オイネウスの子テューデウスまたはイーピスの子メーキステウス(クレーニダイ門)
 
* メラニオーンの子パルテノパイオス(エーレクトライ門)
 
* メラニオーンの子パルテノパイオス(エーレクトライ門)
  
 
== 神話 ==
 
== 神話 ==
[[アイスキュロス]]の悲劇は、当時伝えられていた神話を題材としつつ独立した作品として完成させたものであり、独自の解釈や脚色が施されている。ここでは悲劇で語られていない関係や異同も含めて、題材にとられた神話についてアポロドーロスを基本に述べる。
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アイスキュロスの悲劇は、当時伝えられていた神話を題材としつつ独立した作品として完成させたものであり、独自の解釈や脚色が施されている。ここでは悲劇で語られていない関係や異同も含めて、題材にとられた神話についてアポロドーロスを基本に述べる。
  
 
=== 獅子と猪 ===
 
=== 獅子と猪 ===
[[エテオクレース]]と[[ポリュネイケース]]は[[テーバイ]]の王権について協議し、1年おきに2人が交互に治めることを決めた。初めの1年目はポリュネイケースが治め、エテオクレースは2年目だった、あるいは1年目がエテオクレースだったともいうが、いずれにしても、エテオクレースは1年が経過しても王権を渡そうとせず、ポリュネイケースを追放した。ポリュネイケースは[[ハルモニアー]]の[[ネックレス|首飾り]]と婚礼衣装を携えて[[アルゴス]]へ亡命した。
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エテオクレースとポリュネイケースはテーバイの王権について協議し、'''1年おきに2人が交互に治めることを決めた'''。初めの1年目はポリュネイケースが治め、エテオクレースは2年目だった、あるいは1年目がエテオクレースだったともいうが、いずれにしても、エテオクレースは1年が経過しても王権を渡そうとせず、ポリュネイケースを追放した。ポリュネイケースは'''ハルモニアーの首飾りと婚礼衣装'''を携えてアルゴスへ亡命した。ハルモニアーは系図の上ではポリュネイケースの5代前の先祖である。夫のカドモスとともにテーバイの最初の王と王妃となった、とされる。ハルモニアーとカドモスの結婚式には神々が参列し、アプロディーテーは、ハルモニアーに黄金の首飾りを贈ったという。アテーナーは黄金の上衣と一組の笛を贈った。ヘルメースは竪琴を贈った。アプロディーテーの首飾りはヘーパイストスが作ったもので、もともとゼウスがエウローペーに贈ったものだが、これを身につける者は、見る者が悩ましくなるほどの美しさが得られたという。アテーナーの上衣もまた、身につける者に神々しい気品を与えたという。
  
アルゴス王[[アドラーストス]]は、ある夜彼の王宮で戦う2人の男を見て驚いた。このときポリュネイケースは盾にテーバイの紋章である獅子の絵柄を、[[テューデウス]]は盾に[[カリュドーン]]を示す猪の絵柄を付けて戦っていたという。アドラーストスはかつて[[デルポイ]]の神託により「娘たちを獅子と猪に嫁がせよ」と告げられたことを思い出し、ポリュネイケースに娘の[[アルゲイアー]]を、テューデウスに娘の[[デーイピュレー]]を娶せ、2人をそれぞれの祖国に戻すと約束した。まずポリュネイケースとの約束を果たすため、アドラーストスはアルゴス近隣にテーバイ攻めのための召集をかけた<ref>アポロドーロス、[[s:el:Βιβλιοθήκη/Γ#Γ_6,1|3巻6・1]]。</ref>。
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アルゴス王アドラーストスは、ある夜彼の王宮で戦う2人の男を見て驚いた。このときポリュネイケースは盾にテーバイの紋章である獅子の絵柄を、テューデウスは盾にカリュドーンを示す'''猪'''の絵柄を付けて戦っていたという。アドラーストスはかつてデルポイの神託により「娘たちを獅子と猪に嫁がせよ」と告げられたことを思い出し、ポリュネイケースに娘のアルゲイアーを、テューデウスに娘のデーイピュレーを娶せ、2人をそれぞれの祖国に戻すと約束した。まずポリュネイケースとの約束を果たすため、アドラーストスはアルゴス近隣にテーバイ攻めのための召集をかけた<ref>アポロドーロス、(Βιβλιοθήκη/Γ#Γ_6,1, 3巻6・1)。</ref>。
  
 
=== ハルモニアーの首飾り ===
 
=== ハルモニアーの首飾り ===
アドラーストスの妹[[エリピューレー]]の夫[[アムピアラーオス]]は予言者で、テーバイ攻略はアドラーストスを除き、みな死すべき運命にあることを予見した。このため彼は召集に応じようとせず、他の者が参加するのも阻止しようとした。このときアムピアラーオスは姿を隠したともいう。そこでポリュネイケースはエリピューレーにハルモニアーの首飾りを贈って口添えを頼んだ。首飾りは、[[カドモス]]とハルモニアーの結婚式のために[[ヘーパイストス]]が作った魔法の品で、[[アプロディーテー]]が贈ったものである。贈り物の案をポリュネイケースに授けたのはテューデウスともイーピスともいわれる。
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アドラーストスの妹エリピューレー(アルゴスの王女)の夫アムピアラーオスは予言者で、テーバイ攻略はアドラーストスを除き、みな死すべき運命にあることを予見した。このため彼は召集に応じようとせず、他の者が参加するのも阻止しようとした。このときアムピアラーオスは姿を隠したともいう。そこでポリュネイケースはエリピューレーにハルモニアーの首飾りを贈って口添えを頼んだ。首飾りは、カドモスとハルモニアーの結婚式のためにヘーパイストスが作った魔法の品で、'''アプロディーテーが贈ったもの'''である。贈り物の案をポリュネイケースに授けたのはテューデウスともイーピスともいわれる。
  
かつてアドラーストスとアムピアラーオスに不和が生じたとき、今後2人が争うことがあれば、エリピューレーの裁断に従うことを2人は誓っていた。アムピアラーオスはエリピューレーに贈り物を受け取らないように申しつけていたが、エリピューレーは魔法の首飾りを受け取り、アムピアラーオスにアドラーストスとともに遠征するよう説得した。アムピアラーオスはやむなく出発し、その際、息子の[[アルクマイオーン]](と[[アムピロコス]])に、成人したら母を殺してテーバイを攻めるよう命じた<ref>アポロドーロス、[[s:el:Βιβλιοθήκη/Γ#Γ_6,2|3巻6・2]]。</ref>。
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かつてアドラーストスとアムピアラーオスに不和が生じたとき、今後2人が争うことがあれば、エリピューレーの裁断に従うことを2人は誓っていた。アムピアラーオスはエリピューレーに贈り物を受け取らないように申しつけていたが、'''エリピューレーは魔法の首飾りを受け取り'''、アムピアラーオスにアドラーストスとともに遠征するよう説得した。アムピアラーオスはやむなく出発し、その際、息子のアルクマイオーン(とアムピロコス)に、成人したら母を殺してテーバイを攻めるよう命じた<ref>アポロドーロス、Βιβλιοθήκη/Γ#Γ_6,2, 3巻6・2。</ref>。
  
 
=== ネメアー競技祭 ===
 
=== ネメアー競技祭 ===
アルゴス勢は[[リュクールゴス]]王の治める[[ネメアー]]に至り、水を求めた。リュクールゴス王の子オペルテースはまだ幼児で[[ヒュプシピュレー]]が乳母として養育していたが、ヒュプシピュレーが七将たちを泉へ案内している間に、残されたオペルテースは大蛇に殺されてしまった。アムピアラーオスは、これは未来を告げる不吉な徴だと指摘し、殺された幼児をアルケモロス(「非運を始めた者」の意)と呼んだ。
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アルゴス勢はリュクールゴス王の治めるネメアーに至り、水を求めた。リュクールゴス王の子オペルテースはまだ幼児でヒュプシピュレーが乳母として養育していたが、ヒュプシピュレーが七将たちを泉へ案内している間に、残されたオペルテースは大蛇に殺されてしまった。アムピアラーオスは、これは未来を告げる不吉な徴だと指摘し、殺された幼児をアルケモロス(「非運を始めた者」の意)と呼んだ。
  
アルゴスの将たちはオペルテースに弔意を示すために[[ネメアー祭]]の競技会を開いた。この競技会で、アドラーストスが[[競馬]]、エテオクロスが[[競走]]、テュ-デウスが[[古代ギリシアのボクシング|拳闘]]、アムピアラーオスが跳躍と[[円盤投|円盤投げ]]、[[ラーオドコス]]が[[やり投|槍投げ]]、ポリュネイケースが相撲、パルテノパイオスが弓術でそれぞれ勝利した。
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アルゴスの将たちはオペルテースに弔意を示すためにネメアー祭の競技会を開いた。この競技会で、アドラーストスが競馬、エテオクロスが競走、テュ-デウスが拳闘、アムピアラーオスが跳躍と円盤投げ、ラーオドコスが槍投げ、ポリュネイケースが相撲、パルテノパイオスが弓術でそれぞれ勝利した。
  
 
=== 戦闘前の折衝 ===
 
=== 戦闘前の折衝 ===
キタイローンに到着したアルゴス勢は、テューデウスを使者に立て、協約どおりポリュネイケースをテーバイの王位につけるよう要求したが、エテオクレースはこれをはねつけた。テーバイ城中でテューデウスはテーバイ人を試そうと[[一騎討ち]]を挑み、闘いにすべて勝った。テーバイ側は50人の武装兵を待ち伏せさせたが、テューデウスはこれも打ち破って帰還し、テーバイ側で生きて戻ったのはマイオーンただひとりだったという。
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キタイローンに到着したアルゴス勢は、テューデウスを使者に立て、協約どおりポリュネイケースをテーバイの王位につけるよう要求したが、エテオクレースはこれをはねつけた。テーバイ城中でテューデウスはテーバイ人を試そうと一騎討ちを挑み、闘いにすべて勝った。テーバイ側は50人の武装兵を待ち伏せさせたが、テューデウスはこれも打ち破って帰還し、テーバイ側で生きて戻ったのはマイオーンただひとりだったという。
  
エテオクレースは予言者[[テイレシアース]]を召し出し、敵に勝つ方法の予言を求めた。テイレシアースを召し出したのは[[クレオーン]]だったともいう。テイレシアースは、クレオーンの子メノイケウスを[[アレース]]への犠牲として捧げるならば、勝利を得るだろうといった。これを聞いてメノイケウスは城門の前で自害した。
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エテオクレースは予言者テイレシアースを召し出し、敵に勝つ方法の予言を求めた。テイレシアースを召し出したのは'''クレオーン'''(イオカステーの弟、エテオクレースの大叔父。王妃イオカステーの後を継いでテーバイの王をしていたが、エテオクレース兄弟に王権を譲った。)だったともいう。テイレシアースは、クレオーンの子メノイケウスをアレースへの犠牲として捧げるならば、勝利を得るだろうといった。これを聞いてメノイケウスは城門の前で自害した。
  
 
=== 戦闘 ===
 
=== 戦闘 ===
城から撃って出たテーバイ勢はたちまち城壁に追いつめられた。カパネウスが攻城梯子をつかんで城壁を乗り越えようとしたところ、[[ゼウス]]が雷霆でこれを撃ち、カパネウスは死んで城壁から転がり落ちた。アルゴス勢は恐れをなして退却し、両軍の決議によって、エテオクレースとポリュネイケースが王座を賭けて一騎討ちすることになった。2人は相討ちとなって死んだ<ref>[[オイディプース]]の息子たちの一騎討ちは戦いの最後であったとする説もある。</ref>。
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城から撃って出たテーバイ勢はたちまち城壁に追いつめられた。カパネウスが攻城梯子をつかんで城壁を乗り越えようとしたところ、ゼウスが雷霆でこれを撃ち、カパネウスは死んで城壁から転がり落ちた。アルゴス勢は恐れをなして退却し、両軍の決議によって、エテオクレースとポリュネイケースが王座を賭けて一騎討ちすることになった。2人は相討ちとなって死んだ<ref>オイディプースの息子たちの一騎討ちは戦いの最後であったとする説もある。</ref>。
  
再び激しい戦いとなり、アスタコスの息子たちがめざましい勲をうち立てた。というのは、[[イスマロス (ギリシア神話)|イスマロス]]がヒッポメドーンを、レアデースがエテオクロスを、アムピディコスがパルテノパイオスをそれぞれ斃したからである<ref>[[エウリーピデース]]によれば、パルテノパイオスを討ったのは[[ポセイドーン]]の子ペリュクリュメノスともいう。</ref>。
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再び激しい戦いとなり、アスタコスの息子たちがめざましい勲をうち立てた。というのは、イスマロスがヒッポメドーンを、レアデースがエテオクロスを、アムピディコスがパルテノパイオスをそれぞれ斃したからである<ref>エウリーピデースによれば、パルテノパイオスを討ったのはポセイドーンの子ペリュクリュメノスともいう。</ref>。
  
さらに、アスタコスのもうひとりの子メラニッポスは、テューデウスの腹部を傷つけた。メラニッポス自身はテューデウスあるいはアムピアラーオスに討たれたという。半死となって倒れたテューデウスを、[[アテーナー]]はゼウスに霊薬を乞い、不死の身体にしようとした。しかし、これを見てとったアムピアラーオスは、彼の意見に反してテューデウスがアルゴス人たちにテーバイ攻めを説いてまわり、戦いの先頭に立ったことを憎んでおり、メラニッポスの首を切り取ってテューデウスに投げ与えた。テューデウスはメラニッポスの頭蓋を割ってその脳をすすり喰らった。アテーナーは顔を背けて霊薬を地面にぶちまけ、テューデウスは死んだ。
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さらに、アスタコスのもうひとりの子メラニッポスは、テューデウスの腹部を傷つけた。メラニッポス自身はテューデウスあるいはアムピアラーオスに討たれたという。半死となって倒れたテューデウスを、アテーナーは'''ゼウスに霊薬を乞い'''、不死の身体にしようとした。しかし、これを見てとったアムピアラーオスは、彼の意見に反してテューデウスがアルゴス人たちにテーバイ攻めを説いてまわり、戦いの先頭に立ったことを憎んでおり、メラニッポスの首を切り取ってテューデウスに投げ与えた。'''テューデウスはメラニッポスの頭蓋を割ってその脳をすすり喰らった。'''アテーナーは顔を背けて霊薬を地面にぶちまけ、テューデウスは死んだ。
  
アルゴス勢は総崩れとなり、テーバイ勢は追撃に転じた。ペリュクリュメノスがアムピアラーオスを追ってその背中を撃とうとしたとき、ゼウスは再び雷霆を投じ、これによってできた大地の裂け目にアムピアラーオスは戦車と御者ごと呑み込まれて消えた。[[冥府]]に入ったアムピアラーオスをゼウスは不死にしたという。七将のなかで生還できたのはアドラーストスただ一人であった。彼の馬は[[デーメーテール]]がポセイドーンと交わって生んだ[[アレイオーン]]で、だれもこれに追いつくことができなかったのである。
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アルゴス勢は総崩れとなり、テーバイ勢は追撃に転じた。ペリュクリュメノスがアムピアラーオスを追ってその背中を撃とうとしたとき、ゼウスは再び雷霆を投じ、これによってできた大地の裂け目にアムピアラーオスは戦車と御者ごと呑み込まれて消えた。冥府に入ったアムピアラーオスをゼウスは不死にしたという。七将のなかで生還できたのはアドラーストスただ一人であった。彼の馬はデーメーテールがポセイドーンと交わって生んだアレイオーンで、だれもこれに追いつくことができなかったのである。
  
 
=== アルゴス勢の埋葬 ===
 
=== アルゴス勢の埋葬 ===
[[オイディプース]]の息子たちの死によりテーバイの王権を継承したクレオーンは、アルゴス勢で斃れた者、とりわけポリュネイケースの死骸を埋葬することを禁じた。しかし、[[アンティゴネー]]は兄弟であるポリュネイケースの遺骸を密かに埋葬した。クレオーンはこれを発見し、アンティゴネーは墓の中に生きながら埋められた<ref>この部分はソポクレース作『[[アンティゴネー]]』の題材となった。</ref>
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オイディプースの息子たちの死によりテーバイの王権を継承したクレオーンは、アルゴス勢で斃れた者、とりわけポリュネイケースの死骸を埋葬することを禁じた。しかし、アンティゴネーは兄弟であるポリュネイケースの遺骸を密かに埋葬した。クレオーンはこれを発見し、アンティゴネーは墓の中に生きながら埋められた<ref>この部分はソポクレース作『アンティゴネー』の題材となった。</ref>。アンティゴネーは墓の中で首を吊って死に、婚約者だったクレオーンの息子ハイモーンも後を追って自殺してしまう。
  
逃げ延びたアドラーストスは[[アテーナイ]]の[[テーセウス]]に死者たちの埋葬を訴えた。テーセウスはこれに応えて軍勢を出し、テーバイ勢を打ち破ってアルゴス人たちの死骸を引き取り、血族の者に与えた。カパネウスの火葬のとき、カパネウスの妻で[[イーピス]]の娘[[エウアドネー]]は燃えさかる火葬壇に身を投げて夫とともに焼かれた<ref>この部分はエウリーピデース作『[[救いを求める女たち]]』の題材となった。</ref>。
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逃げ延びたアドラーストスはアテーナイのテーセウスに死者たちの埋葬を訴えた。テーセウスはこれに応えて軍勢を出し、テーバイ勢を打ち破ってアルゴス人たちの死骸を引き取り、血族の者に与えた。カパネウスの火葬のとき、カパネウスの妻でイーピスの娘エウアドネーは燃えさかる火葬壇に身を投げて夫とともに焼かれた<ref>この部分はエウリーピデース作『救いを求める女たち』の題材となった。</ref>。
  
 
== 舞台 ==
 
== 舞台 ==
[[File:TUGTI-11-1970-c.jpg|thumb|東京大学ギリシア悲劇研究会上演「テーバイ攻めの七将」]]
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1970年10月 東京大学ギリシア悲劇研究会 第11回公演  於:千代田区公会堂
1970年10月 [[東京大学ギリシア悲劇研究会]] 第11回公演  於:千代田区公会堂
 
 
* 演出:大沼信之  台本:手島兼輔・東京大学ギリシア悲劇研究会
 
* 演出:大沼信之  台本:手島兼輔・東京大学ギリシア悲劇研究会
  
 
== 日本語訳 ==
 
== 日本語訳 ==
 
*『悲壯劇 アイスキュロス編』「テーバイを攻むる七將」 生活社、1927年
 
*『悲壯劇 アイスキュロス編』「テーバイを攻むる七將」 生活社、1927年
*『ギリシア悲劇全集1』「テーバイに向かう七将」 [[人文書院]]、1960年
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*『ギリシア悲劇全集1』「テーバイに向かう七将」 人文書院、1960年
 
*『ギリシャ悲劇全集1』「テーバイを攻むる七将」<ref>帯では「テーバイを攻める七将」となっている。</ref> 鼎出版会、1979年
 
*『ギリシャ悲劇全集1』「テーバイを攻むる七将」<ref>帯では「テーバイを攻める七将」となっている。</ref> 鼎出版会、1979年
*『ギリシア悲劇1』「テーバイ攻めの七将」 [[ちくま文庫]]、1985年 - 元版「[[世界古典文学全集]]8」[[筑摩書房]]
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*『ギリシア悲劇1』「テーバイ攻めの七将」 ちくま文庫、1985年 - 元版[世界古典文学全集8」筑摩書房
**別版 『テーバイ攻めの七将』 [[岩波文庫]]、1973年。[[高津春繁]]訳
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**別版 『テーバイ攻めの七将』 岩波文庫、1973年。高津春繁訳
*『ギリシア悲劇全集2 アイスキュロス II』「テーバイを攻める七人の将軍」 池田黎太郎訳、[[岩波書店]]、1991年
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*『ギリシア悲劇全集2 アイスキュロス II』「テーバイを攻める七人の将軍」 池田黎太郎訳、岩波書店、1991年
  
 
== 参考書籍 ==
 
== 参考書籍 ==
* 『ギリシア悲劇 I アイスキュロス』([[高津春繁]]ほか訳、[[ちくま文庫]]) (ISBN 4-480-02011-X)
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* 『ギリシア悲劇 I アイスキュロス』(高津春繁ほか訳、ちくま文庫) (ISBN 4-480-02011-X)
* 『ギリシア悲劇 II ソポクレス』([[呉茂一]]ほか訳、ちくま文庫) (ISBN 4-480-02012-8)
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* 『ギリシア悲劇 II ソポクレス』(呉茂一ほか訳、ちくま文庫) (ISBN 4-480-02012-8)
* 『ギリシア悲劇 III エウリピデス(上)』([[松平千秋]]ほか訳、ちくま文庫) (ISBN 4-480-02013-6)
+
* 『ギリシア悲劇 III エウリピデス(上)』(松平千秋ほか訳、ちくま文庫) (ISBN 4-480-02013-6)
* 『ギリシア悲劇 IV エウリピデス(下)』([[岡道男]]ほか訳、ちくま文庫) (ISBN 4-480-02014-4)
+
* 『ギリシア悲劇 IV エウリピデス(下)』(岡道男ほか訳、ちくま文庫) (ISBN 4-480-02014-4)
* 『ギリシア悲劇全集 1 アイスキュロス篇 I』([[呉茂一]]ほか訳、[[人文書院]])
+
* 『ギリシア悲劇全集 1 アイスキュロス篇 I』(呉茂一ほか訳、人文書院)
* 『ギリシャ悲劇全集 1 アイスキュロス編 I』([[内山敬二郎]]訳、鼎出版会)
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* 『ギリシャ悲劇全集 1 アイスキュロス編 I』(内山敬二郎訳、鼎出版会)
* 『ギリシア悲劇全集 2 アイスキュロス II 』([[岡道男]]ほか訳、[[岩波書店]])
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* 『ギリシア悲劇全集 2 アイスキュロス II 』(岡道男ほか訳、岩波書店)
* 『悲壯劇 アイスキュロス編』([[田中秀央]]、[[内山敬二郎]]共訳<ref>翻訳作業は内山敬二郎が一人で行い、田中秀央はその補訳を行った。</ref>、生活社)
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* 『悲壯劇 アイスキュロス編』(田中秀央、内山敬二郎共訳<ref>翻訳作業は内山敬二郎が一人で行い、田中秀央はその補訳を行った。</ref>、生活社)
* [[アポロドーロス]]『ギリシア神話』(高津春繁訳、[[岩波文庫]])
+
* アポロドーロス『ギリシア神話』(高津春繁訳、岩波文庫)
* [[アイスキュロス]]『テーバイ攻めの七将』(高津春繁訳、岩波文庫)
+
* アイスキュロス『テーバイ攻めの七将』(高津春繁訳、岩波文庫)
* [[ロバート・グレーヴス]]『ギリシア神話』([[高杉一郎]]訳、[[紀伊國屋書店]](上・下)、のち新版・全1巻)
+
* ロバート・グレーヴス『ギリシア神話』(高杉一郎訳、紀伊國屋書店(上・下)、のち新版・全1巻)
* [[カール・ケレーニイ]]『ギリシアの神話 神々の時代』、『― 英雄の時代』<br> ([[高橋英夫 (評論家)|高橋英夫]]・[[植田兼義]]訳、[[中央公論新社|中央公論社]]/[[植田兼義]]訳(単独改訳)、[[中公文庫]])
+
* カール・ケレーニイ『ギリシアの神話 神々の時代』、『― 英雄の時代』<br> (高橋英夫・植田兼義訳、中央公論社/植田兼義訳(単独改訳)、中公文庫)
 
* R・L・グリーン『ギリシア神話 テーバイ物語』(眞方陽子訳、ちくま文庫) (ISBN 4-480-02592-8)
 
* R・L・グリーン『ギリシア神話 テーバイ物語』(眞方陽子訳、ちくま文庫) (ISBN 4-480-02592-8)
 
 
  
 
== 関連項目 ==
 
== 関連項目 ==
* [[エピゴノイ]] -『テーバイ攻めの七将』の10年後の戦いが語られている。
+
* エピゴノイ -『テーバイ攻めの七将』の10年後の戦いが語られている。
  
 
== 外部リンク ==
 
== 外部リンク ==
* {{Wayback|url=http://www.geocities.co.jp/WallStreet/1025/ |title=ギリシャ・テーバイ紀行 |date=20040518204205}} 現代のテーバイに伝説の七つの門を訪ねる旅
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* http://www.geocities.co.jp/WallStreet/1025/, ギリシャ・テーバイ紀行, 20040518204205 現代のテーバイに伝説の七つの門を訪ねる旅
  
 
== 脚注 ==
 
== 脚注 ==
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[[Category:ギリシア神話]]
 
[[Category:ギリシア神話]]
 
[[Category:北斗信仰]]
 
[[Category:北斗信仰]]
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[[Category:物部]]
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[[Category:兄弟始祖婚]]

2026年1月7日 (水) 23:12時点における最新版

テーバイ攻めの七将』(テーバイぜめのしちしょう[1]、Ἑπτὰ ἐπὶ Θήβας、Heptà epì Thḗbas、ヘプタ・エピ・テーバース、Septem contra Thebas)は、古代アテーナイの詩人アイスキュロスによるギリシア悲劇。ギリシア神話で古代都市テーバイの王権をめぐる戦いの物語に基づく。

紀元前467年の春、アテナイの大ディオニューシア祭にて、

  • 『ラーイオス』
  • 『オイディプース』
  • 『テーバイ攻めの七将』

という三部作として上演された。このときのサテュロス劇は『スピンクス』であり、上演記録(デイダスカリア)は、アイスキュロスの勝利を伝えている。これらのうち現存するのは本作『テーバイ攻めの七将』のみである。この三部作は、古くから成立していたとされる叙事詩『テーバイス』(Thebaïs)及び『オイディポデイアー』(Oidipodeia)から題材をとっている。テーバイに関わる神話に基づき、ギリシア悲劇詩人たちは多くの作品を書いたが、これらのなかで本作は現存するもっとも古いものである。

『テーバイ攻めの七将』以降では、ソポクレースの『オイディプス王』(紀元前427年ごろ)、『アンティゴネー』(紀元前441年ごろ)、『コロノスのオイディプス』(紀元前401年ごろ)、エウリーピデースの『救いを求める女たち』(紀元前420-415年ごろ)、『フェニキアの女たち』(紀元前409年)が現存する同系列の作品であり、物語の背景や登場人物が共通している。なかでもエウリーピデースの『フェニキアの女たち』は本作と同じ戦いを描いている。

『テーバイ攻めの七将』は戦いを扱いながら、舞台で示されるのはテーバイ城内のエテオクレースとその周辺のみに限られ、戦闘そのものについては直接語られない。また、相争う兄弟のうちエテオクレースは主人公であり優れた人物として描かれるが、一方のポリュネイケースは災いを引き起こす厭うべき存在とされている。こうした大胆な省略、対比の強調はアイスキュロスの悲劇に特徴的に見られるもので、この手法によって、エテオクレースの英雄性が端的に表出されている。

編成は俳優2人と合唱隊(コロス)により、ギリシア悲劇としては古い形式を採る。

私的解説[編集]

ともかく、ギリシア悲劇だけあって、「炎黄が並び立つ」などとは全く言っていない。根本はあくまでも「アスラとデーヴァの戦い」である。同じ神が何度も出てきて、複合的になり複雑な神話となっている。ときどき「不老不死の薬」とかどこかで聞いた話が出てくる。根本的な神話のモチーフは残っているけれども、文芸的な作品である。

そして、「アスラとデーヴァの戦い」だけれども、テーバイという町の名がそもそも「デーヴァ」と同じ子音で「デーヴァの町」と言っているも同じと思うので、デーヴァの方が勝利する。そういう点ではインド的な神話内容なのかもしれない。パーンダヴァ五王子(オイディプスと同じ子音)とカウラヴァ百王子(ポリュネイケースと似た子音)(盲目の王ドゥリタラーシュトラ(テューデウスと似た子音の名)の息子たち。特に嫉妬深いドゥルヨーダナ(こちらもテューデウス)が五王子を憎む。)が従兄弟同士で王位を争う。しかもパーンダヴァ五王子は5人で1人の妻を持つという、結婚に関するタブーにかなり引っかかる結婚をしている。という内容の「マハーバーラタ」の類話ではないかと思う。イオカステーとドラウパティーも元は「同じ名」だったのではないだろうか。

オイディプス[編集]

「BT」の子音を持つオイディプスは、壮族の布洛陀、日本の布津主と同じ子音を持つ。いずれも祝融型神であり、軍神としての性質の方が、文化英雄的な性質よりも強い。近親結婚の禁忌に苦しむ所はダロンチャンヤンと一致する。父親を殺すところは、逢蒙が「父親のような」羿を殺す点と一致する。

赤ん坊の時に「捨てられた」という点は朝鮮の朱蒙(Jumong)、イラン神話のザール(Zal)を思わせる。両者、特に朱蒙の名は「姜央」(Jangx Vangb、チャンヤン)に近いのではないだろうか。オイディプスや布洛陀がチャンヤンに近い性質の神々あるいは「人間の英雄」であったことが示唆される。

炎黄といえるエテオクレースとポリュネイケースと対立する点は、中国神話の蚩尤と同じである。オイディプス王は蚩尤のように殺されはしないが、国を追放されてしまう。兄妹婚の末に追放されてしまうところは、日本の須佐之男を思わせる(日本の場合は姉弟婚)。

いずれにせよ、オイディプス王の性質より、中国神話の逢蒙チャンヤン蚩尤は類似性の高い神々の群であることが推察される。

エテオクレースとポリュネイケース[編集]

子音から見てこの名前は、エテオクレース=デーヴァ、ポリュネイケース=ヴァルナと考える。すなわちエテオクレース=炎帝、ポリュネイケース=黄帝である。両者は7人の勇者を従えて戦う。この7人というのはチャンヤン神話に登場する「7人の牛刀を管理する男達」のことと考える。いわゆる「軍隊」の始め、というべきものである。

中国神話では、「オイディプス=ダロンあるいはチャンヤン」は、洪水神話で雷神よりも若い世代とされるが、ギリシア神話ではデーヴァとヴァルナの方が「子供」とされている。また、中国の炎黄神話と異なって、本物語ではエテオクレースとポリュネイケースは相打ちで死んでしまう。

ポリュネイケースの窃盗[編集]

ポリュネイケースは5代前の祖母・ハルモニアーの遺産を盗み出しており、「祝融型神・窃盗型」の性質を有している。彼はこれをアルゴスの王女に送り、アルゴスを味方にするのに利用する。彼が「祖母の遺産を盗み出す」というのは、神話的には洪水の後、誰が「母女神の遺産を手にする(その後を継ぐ)か」という重要なモチーフの崩れと考える。盗み出されたものは「テーバイの王権そのもの」を暗示しているともいえる。広く「男性の神」が、上位の女神の「権威」や「権力」に関わるものを盗み出す、という神話があったと考える。この点ではポリュネイケースは中国神話の天狗に相当する。ハルモニアーの名は、ヒッタイトのハンナハンナ、ヴェマーレのハイヌウェレ、ミャオ族のバロンに通じる名と考える。この女神群は太母かあるいは「下位の殺される女神」に2分されてしまう傾向があるように感じる。ただし、イナンナのように太母でありながら冥界に下る(殺される)例もある。ハルモニアーは、「権利を盗み出される」という点では「燃やされた女神」にも「吊された女神」にもなり得ると考える。盗み出したのがポリュネイケースであること、ハルモニアーが太母的な地位にあることから、本物語では「燃やされた女神」とすることが妥当かもしれない。でも、「遺産を残す」という形式は「吊された女神」の要素のようにも感じるので、性質は混合しているといえる。

アンティゴネー[編集]

兄を葬って亡くなるアンティゴネーは、妹がいる点と併せて「吊された女神」といえる。「禁忌を破って」殺される点は、兄弟始祖婚の名残を思わせる。彼女の名は子音が「イナンナ」や「アナト」に近いといえる。彼女の死は「イナンナの冥界下り」をも連想させる。妹と各地を逡巡する所にも「吊された女神」のうち「逃走型」の性質と考える。

余談だが、追放された父王を支えて、娘達がさまよう姿は、リア王のコーデリアを連想させる。

エリピューレー[編集]

「エリ(神)」+「B」で表される女神の名は、中国語で「白」のことと思われ、彼女が元は「太陽女神」だったことが示唆される。男性達が争った際に最終的な判断の決定権を持つ点は、その機嫌が古く「母系の最高神であった太陽女神」の姿を彷彿とさせる。その言動が神々の動向を決定づける、という点はウガリットの太陽女神シャプシュとも類似するように思う。他人のものとされているが、彼女が「太陽女神の象徴」であったとも思われる「ハルモニアーの首飾り」を手に入れるのは、物語の筋書きというよりは、彼女の性質から見て妥当といえる。「養母としての女神」といえるのだが、後に彼女は息子に殺されてしまう。その点は「燃やされた女神」といえる。

テューデウス[編集]

 
猪紋黒陶鉢
新石器時代(河姆渡文化)、1977年浙江省余姚河姆渡文化遺跡出、陶器、高さ11.7cm、口径21.7cm、底径17.5cm、浙江省博物館所蔵。体内に葉を持つ猪である。饕餮の原型と考える。[2]
 
甲骨文字の成り立ち

名前の通り「饕餮」に由来する名と考える。本物語ではポリュネイケースとは、血縁ではないけれども、妻を通して近い人物とされている。彼の特徴は「人肉食を行うこと」と「アテーナー女神に見放されて不死性を手に入れ損なったこと。」といえる。

饕餮とは中国神話で「何でも食べてしまう怪物」とされているので、人肉を食べてもおかしくはない。また猿の脳みそを食べる習慣は河姆渡文化あたりから発生しているとみられる。河姆渡文化では嬰児を食べていた痕跡もあり、「人肉を食べる饕餮」とはこのあたりから発達した神なのではないだろうか。

饕餮は蚩尤でもある、と言われており、蚩尤は死して楓の樹に変化したと言われている。ということは、植物、特に樹木は蚩尤のような神が死して変化したものと考えられる。また、後に饕餮紋と呼ばれる紋様は奇怪な獣面で表されることが多い。ということは、河姆渡文化では、この神はイノシシと植物を組み合わせた姿と考えられていたのではないだろうか。そして、天体としては「月」と考えられていたかもしれない、と思う。中国では「肉」といえば「豚」のことであり、「月」と「肉」という文字は、同じ甲骨文字から発生している。「月」は「肉」であり「豚」なのだ。豚はミャオ族にとって犠牲獣としても重要だったと思われる。

しかし、ミャオ族は、次第に豚よりも大きな水牛を犠牲獣として採用していったように思う。現在、蚩尤が牛の姿をしていると考えられるのは、犠牲獣の水牛を示しているのであって、豚が犠牲獣の主流だった時代には、蚩尤(饕餮)は豚の姿をしていたのではないだろうか

ともかく、この「人肉を食べる月神」は、その性質ゆえにアテーナーに見捨てられてしまう。この物語で、「もう一人の蚩尤(饕餮)」ともいえるオイディプスは国を追放されているので、月神はいずれも「不幸な最後」を遂げた、といえる。

登場人物[編集]

合唱隊を除く登場人物は、2人の俳優が担当する。

  • エテオクレース - テーバイ王、オイディプースの子
  • 使者
  • 合唱隊 - テーバイの乙女たち
  • アンティゴネー - オイディプースの娘、エテオクレースの妹。
  • イスメーネー - オイディプースの娘、姉と共に父と諸国を放浪した。
  • 布告使(後代の加筆による)

あらすじ[編集]

本作までの経過[編集]

ここで述べるのは、本作の「前編」に当たり、合わせて三部作をなす『ラーイオス』、『オイディプース』(いずれも亡失)で描かれたと考えられるあらすじである。

テーバイ王ラーイオスは「子をなすな。その子の手にかかって死ぬであろう」というアポローンの神託を受けながら、妃イオカステーとの間に子をもうける。ラーイオスは神託を恐れて子供を山中に棄てさせるが、子供は拾われてオイディプースと名付けられ、コリントスで王の養子として育てられる。

オイディプースは成人すると、父とは知らずにラーイオスを殺し、テーバイの民を脅かしていたスピンクスを退治する。オイディプースは母とは知らずイオカステーと結婚してテーバイ王となり、2人の間にエテオクレースポリュネイケースアンティゴネー、イスメーネーが生まれる。彼はやがて自分の素性を知ることとなり、テーバイから追放される[3]。オイディプースは、このとき父親を助けようとしなかったエテオクレースとポリュネイケースの兄弟に呪いをかけて去った[4]

エテオクレースとポリュネイケースはテーバイの王位継承をめぐって争いを起こす。その結果、追放されたポリュネイケースはアルゴス王アドラーストスを頼み、アルゴスの軍勢を率いてテーバイに攻め寄せる。

オイディプースはアテナイでテーセウスに庇護を受け、最後を迎えた、という説がある。

本作のあらすじ[編集]

アルゴス勢に囲まれたテーバイの城内、エテオクレースは騒然とする民衆を励まし、恐れおののく乙女たちを叱咤する。そこへ使者が登場し、アルゴス勢の布陣を告げる。エテオクレースは、城の7つの門に攻めかかろうとするアルゴスの将の名前を聞き、それぞれテーバイ勢から守りの将を選んで配置する。最後に、第7の門にポリュネイケースが挑むと聞き、エテオクレースは憤怒する。乙女たちはエテオクレースに運命を避けて第7の門に行かぬよう懇願するが、エテオクレースはオイディプースの呪いの成就が間近に迫っていることを知りつつ、あえて第7の門へ向かう。

再び使者が登場、テーバイの町が守られたこと、しかしエテオクレースとポリュネイケースは相討ちになって死んだことを告げる。2人の亡骸が運ばれてくる。アンティゴネーとイスメーネーの姉妹は2人へのたむけとして交互に哀悼の歌を詠い捧げる。

そこへ別の使者が登場し、国を護ったエテオクレースの亡骸は丁重に葬り、国に攻め入ったポリュネイケースの亡骸は場外に棄て置くこととする評議会の見解と評決を2人に伝える。しかしアンティゴネーはたとえ自分独りであっても、危険を冒してでも兄ポリュネイケースの墓をつくり埋葬することをやり遂げると、その使者に宣言をする。

七将たち[編集]

本作で使者が告げるアルゴス勢の七将は登場順に次のとおり[5]

  • テューデウス(プロイティデス門)(アルゴス王の婿、ポリュネイケースとは相婿。義兄弟の関係といえる。)、対する守備の将はアスタコスの子メラニッポス(スパルトイの後裔)
  • カパネウス(エレクトライ門)、対する守備の将はポリュポンテース
  • エテオクロス(ネイスタイ門)、対する守備の将はクレオーンの子メガレウス(スパルトイの後裔)
  • ヒッポメドーン(オンカ・アテーナー門)、対する守備の将はオイノプスの子ヒュペルビオス
  • パルテノパイオス(北の門、アムピーオーンの墳墓に近いとされる)、対する守備の将はオイニプスの子アクトール(ヒュペルビオスの兄弟)
  • アムピアラーオス(ホモイロイデス門)、対する守備の将はラステネス
  • ポリュネイケース(第7の門)、対する守備の将はエテオクレース

異説[編集]

七将については異説がある。エウリーピデースの『フェニキアの女たち』では、上記のうちエテオクロスの代わりにアドラーストスが配置され、攻める門の名前もカパネウス以外は一致しない。

アポロドーロスではエウリーピデースの七将を記載するが、さらに異説として、アルゴス人ではないポリュネイケースとテューデウスを外してイーピスの子エテオクロスとメーキステウスを挙げる。七将が攻める門はエウリーピデースとはまた異なっている。これによると以下のようになる。

  • タラオスの子アドラーストス(ホモローダイ門)
  • オイクレースの子アムピアラーオス(プロイティダイ門)
  • ヒッポノオスの子カパネウス(オーギュギアイ門)
  • アリストマコスの子ヒッポメドーン(オンカイダイ門)
  • オイディプースの子ポリュネイケースまたはイーピスの子エテオクロス(ヒュプシスタイ門)
  • オイネウスの子テューデウスまたはイーピスの子メーキステウス(クレーニダイ門)
  • メラニオーンの子パルテノパイオス(エーレクトライ門)

神話[編集]

アイスキュロスの悲劇は、当時伝えられていた神話を題材としつつ独立した作品として完成させたものであり、独自の解釈や脚色が施されている。ここでは悲劇で語られていない関係や異同も含めて、題材にとられた神話についてアポロドーロスを基本に述べる。

獅子と猪[編集]

エテオクレースとポリュネイケースはテーバイの王権について協議し、1年おきに2人が交互に治めることを決めた。初めの1年目はポリュネイケースが治め、エテオクレースは2年目だった、あるいは1年目がエテオクレースだったともいうが、いずれにしても、エテオクレースは1年が経過しても王権を渡そうとせず、ポリュネイケースを追放した。ポリュネイケースはハルモニアーの首飾りと婚礼衣装を携えてアルゴスへ亡命した。ハルモニアーは系図の上ではポリュネイケースの5代前の先祖である。夫のカドモスとともにテーバイの最初の王と王妃となった、とされる。ハルモニアーとカドモスの結婚式には神々が参列し、アプロディーテーは、ハルモニアーに黄金の首飾りを贈ったという。アテーナーは黄金の上衣と一組の笛を贈った。ヘルメースは竪琴を贈った。アプロディーテーの首飾りはヘーパイストスが作ったもので、もともとゼウスがエウローペーに贈ったものだが、これを身につける者は、見る者が悩ましくなるほどの美しさが得られたという。アテーナーの上衣もまた、身につける者に神々しい気品を与えたという。

アルゴス王アドラーストスは、ある夜彼の王宮で戦う2人の男を見て驚いた。このときポリュネイケースは盾にテーバイの紋章である獅子の絵柄を、テューデウスは盾にカリュドーンを示すの絵柄を付けて戦っていたという。アドラーストスはかつてデルポイの神託により「娘たちを獅子と猪に嫁がせよ」と告げられたことを思い出し、ポリュネイケースに娘のアルゲイアーを、テューデウスに娘のデーイピュレーを娶せ、2人をそれぞれの祖国に戻すと約束した。まずポリュネイケースとの約束を果たすため、アドラーストスはアルゴス近隣にテーバイ攻めのための召集をかけた[6]

ハルモニアーの首飾り[編集]

アドラーストスの妹エリピューレー(アルゴスの王女)の夫アムピアラーオスは予言者で、テーバイ攻略はアドラーストスを除き、みな死すべき運命にあることを予見した。このため彼は召集に応じようとせず、他の者が参加するのも阻止しようとした。このときアムピアラーオスは姿を隠したともいう。そこでポリュネイケースはエリピューレーにハルモニアーの首飾りを贈って口添えを頼んだ。首飾りは、カドモスとハルモニアーの結婚式のためにヘーパイストスが作った魔法の品で、アプロディーテーが贈ったものである。贈り物の案をポリュネイケースに授けたのはテューデウスともイーピスともいわれる。

かつてアドラーストスとアムピアラーオスに不和が生じたとき、今後2人が争うことがあれば、エリピューレーの裁断に従うことを2人は誓っていた。アムピアラーオスはエリピューレーに贈り物を受け取らないように申しつけていたが、エリピューレーは魔法の首飾りを受け取り、アムピアラーオスにアドラーストスとともに遠征するよう説得した。アムピアラーオスはやむなく出発し、その際、息子のアルクマイオーン(とアムピロコス)に、成人したら母を殺してテーバイを攻めるよう命じた[7]

ネメアー競技祭[編集]

アルゴス勢はリュクールゴス王の治めるネメアーに至り、水を求めた。リュクールゴス王の子オペルテースはまだ幼児でヒュプシピュレーが乳母として養育していたが、ヒュプシピュレーが七将たちを泉へ案内している間に、残されたオペルテースは大蛇に殺されてしまった。アムピアラーオスは、これは未来を告げる不吉な徴だと指摘し、殺された幼児をアルケモロス(「非運を始めた者」の意)と呼んだ。

アルゴスの将たちはオペルテースに弔意を示すためにネメアー祭の競技会を開いた。この競技会で、アドラーストスが競馬、エテオクロスが競走、テュ-デウスが拳闘、アムピアラーオスが跳躍と円盤投げ、ラーオドコスが槍投げ、ポリュネイケースが相撲、パルテノパイオスが弓術でそれぞれ勝利した。

戦闘前の折衝[編集]

キタイローンに到着したアルゴス勢は、テューデウスを使者に立て、協約どおりポリュネイケースをテーバイの王位につけるよう要求したが、エテオクレースはこれをはねつけた。テーバイ城中でテューデウスはテーバイ人を試そうと一騎討ちを挑み、闘いにすべて勝った。テーバイ側は50人の武装兵を待ち伏せさせたが、テューデウスはこれも打ち破って帰還し、テーバイ側で生きて戻ったのはマイオーンただひとりだったという。

エテオクレースは予言者テイレシアースを召し出し、敵に勝つ方法の予言を求めた。テイレシアースを召し出したのはクレオーン(イオカステーの弟、エテオクレースの大叔父。王妃イオカステーの後を継いでテーバイの王をしていたが、エテオクレース兄弟に王権を譲った。)だったともいう。テイレシアースは、クレオーンの子メノイケウスをアレースへの犠牲として捧げるならば、勝利を得るだろうといった。これを聞いてメノイケウスは城門の前で自害した。

戦闘[編集]

城から撃って出たテーバイ勢はたちまち城壁に追いつめられた。カパネウスが攻城梯子をつかんで城壁を乗り越えようとしたところ、ゼウスが雷霆でこれを撃ち、カパネウスは死んで城壁から転がり落ちた。アルゴス勢は恐れをなして退却し、両軍の決議によって、エテオクレースとポリュネイケースが王座を賭けて一騎討ちすることになった。2人は相討ちとなって死んだ[8]

再び激しい戦いとなり、アスタコスの息子たちがめざましい勲をうち立てた。というのは、イスマロスがヒッポメドーンを、レアデースがエテオクロスを、アムピディコスがパルテノパイオスをそれぞれ斃したからである[9]

さらに、アスタコスのもうひとりの子メラニッポスは、テューデウスの腹部を傷つけた。メラニッポス自身はテューデウスあるいはアムピアラーオスに討たれたという。半死となって倒れたテューデウスを、アテーナーはゼウスに霊薬を乞い、不死の身体にしようとした。しかし、これを見てとったアムピアラーオスは、彼の意見に反してテューデウスがアルゴス人たちにテーバイ攻めを説いてまわり、戦いの先頭に立ったことを憎んでおり、メラニッポスの首を切り取ってテューデウスに投げ与えた。テューデウスはメラニッポスの頭蓋を割ってその脳をすすり喰らった。アテーナーは顔を背けて霊薬を地面にぶちまけ、テューデウスは死んだ。

アルゴス勢は総崩れとなり、テーバイ勢は追撃に転じた。ペリュクリュメノスがアムピアラーオスを追ってその背中を撃とうとしたとき、ゼウスは再び雷霆を投じ、これによってできた大地の裂け目にアムピアラーオスは戦車と御者ごと呑み込まれて消えた。冥府に入ったアムピアラーオスをゼウスは不死にしたという。七将のなかで生還できたのはアドラーストスただ一人であった。彼の馬はデーメーテールがポセイドーンと交わって生んだアレイオーンで、だれもこれに追いつくことができなかったのである。

アルゴス勢の埋葬[編集]

オイディプースの息子たちの死によりテーバイの王権を継承したクレオーンは、アルゴス勢で斃れた者、とりわけポリュネイケースの死骸を埋葬することを禁じた。しかし、アンティゴネーは兄弟であるポリュネイケースの遺骸を密かに埋葬した。クレオーンはこれを発見し、アンティゴネーは墓の中に生きながら埋められた[10]。アンティゴネーは墓の中で首を吊って死に、婚約者だったクレオーンの息子ハイモーンも後を追って自殺してしまう。

逃げ延びたアドラーストスはアテーナイのテーセウスに死者たちの埋葬を訴えた。テーセウスはこれに応えて軍勢を出し、テーバイ勢を打ち破ってアルゴス人たちの死骸を引き取り、血族の者に与えた。カパネウスの火葬のとき、カパネウスの妻でイーピスの娘エウアドネーは燃えさかる火葬壇に身を投げて夫とともに焼かれた[11]

舞台[編集]

1970年10月 東京大学ギリシア悲劇研究会 第11回公演  於:千代田区公会堂

  • 演出:大沼信之  台本:手島兼輔・東京大学ギリシア悲劇研究会

日本語訳[編集]

  • 『悲壯劇 アイスキュロス編』「テーバイを攻むる七將」 生活社、1927年
  • 『ギリシア悲劇全集1』「テーバイに向かう七将」 人文書院、1960年
  • 『ギリシャ悲劇全集1』「テーバイを攻むる七将」[12] 鼎出版会、1979年
  • 『ギリシア悲劇1』「テーバイ攻めの七将」 ちくま文庫、1985年 - 元版[世界古典文学全集8」筑摩書房
    • 別版 『テーバイ攻めの七将』 岩波文庫、1973年。高津春繁訳
  • 『ギリシア悲劇全集2 アイスキュロス II』「テーバイを攻める七人の将軍」 池田黎太郎訳、岩波書店、1991年

参考書籍[編集]

  • 『ギリシア悲劇 I アイスキュロス』(高津春繁ほか訳、ちくま文庫) (ISBN 4-480-02011-X)
  • 『ギリシア悲劇 II ソポクレス』(呉茂一ほか訳、ちくま文庫) (ISBN 4-480-02012-8)
  • 『ギリシア悲劇 III エウリピデス(上)』(松平千秋ほか訳、ちくま文庫) (ISBN 4-480-02013-6)
  • 『ギリシア悲劇 IV エウリピデス(下)』(岡道男ほか訳、ちくま文庫) (ISBN 4-480-02014-4)
  • 『ギリシア悲劇全集 1 アイスキュロス篇 I』(呉茂一ほか訳、人文書院)
  • 『ギリシャ悲劇全集 1 アイスキュロス編 I』(内山敬二郎訳、鼎出版会)
  • 『ギリシア悲劇全集 2 アイスキュロス II 』(岡道男ほか訳、岩波書店)
  • 『悲壯劇 アイスキュロス編』(田中秀央、内山敬二郎共訳[13]、生活社)
  • アポロドーロス『ギリシア神話』(高津春繁訳、岩波文庫)
  • アイスキュロス『テーバイ攻めの七将』(高津春繁訳、岩波文庫)
  • ロバート・グレーヴス『ギリシア神話』(高杉一郎訳、紀伊國屋書店(上・下)、のち新版・全1巻)
  • カール・ケレーニイ『ギリシアの神話 神々の時代』、『― 英雄の時代』
     (高橋英夫・植田兼義訳、中央公論社/植田兼義訳(単独改訳)、中公文庫)
  • R・L・グリーン『ギリシア神話 テーバイ物語』(眞方陽子訳、ちくま文庫) (ISBN 4-480-02592-8)

関連項目[編集]

  • エピゴノイ -『テーバイ攻めの七将』の10年後の戦いが語られている。

外部リンク[編集]

脚注[編集]

  1. https://ci.nii.ac.jp/ncid/BN01999815, テーバイ攻めの七将, 2024-07-05, CiNii
  2. 猪紋黒陶鉢。、考古用語辞典、07-07-09
  3. この部分はソポクレース作『オイディプス王』の題材となった。
  4. オイディプースの末路はソポクレース作『コロノスのオイディプス』に描かれている。
  5. ソポクレース作『コロノスのオイディプス』でポリュネイケースの台詞で語られる七将も同じである(戦いの前であるため門の配置はない)。
  6. アポロドーロス、(Βιβλιοθήκη/Γ#Γ_6,1, 3巻6・1)。
  7. アポロドーロス、Βιβλιοθήκη/Γ#Γ_6,2, 3巻6・2。
  8. オイディプースの息子たちの一騎討ちは戦いの最後であったとする説もある。
  9. エウリーピデースによれば、パルテノパイオスを討ったのはポセイドーンの子ペリュクリュメノスともいう。
  10. この部分はソポクレース作『アンティゴネー』の題材となった。
  11. この部分はエウリーピデース作『救いを求める女たち』の題材となった。
  12. 帯では「テーバイを攻める七将」となっている。
  13. 翻訳作業は内山敬二郎が一人で行い、田中秀央はその補訳を行った。