「総論・男神」の版間の差分

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神話や伝承によっては、それぞれの性質が入り交じったり、分離したり、区別しがたい場合がある。また父と息子が入れ替わっていたり、別々の男性として描かれることもある。
 
神話や伝承によっては、それぞれの性質が入り交じったり、分離したり、区別しがたい場合がある。また父と息子が入れ替わっていたり、別々の男性として描かれることもある。
  
原則として、[[黄帝型神]]が[[炎帝型神]]を倒すことが多いが、稀に[[祝融型神]]が[[炎帝型神]]を倒すことがある。ミトラスなど。
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原則として、[[黄帝型神]]が[[炎帝型神]]、[[祝融型神]]を倒すことが多いが、[[祝融型神]]が[[黄帝型神]]、[[炎帝型神]]を倒すこともある。[[祝融型神]][[黄帝型神]]が習合・混在してどちらとも分からない状態になっていることが非常に多いと感じる。
 
 
[[祝融型神]][[黄帝型神]]を倒すことが多いが、その逆もある。
 
  
 
== 男神対応表 ==
 
== 男神対応表 ==
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日本神話で、[[黄帝型神]]の代表格は大国主命だと考える。記紀神話の編纂者達は、中国の神話をきちんと研究していたとみえて、中国神話と比較するとおおまかなところで、対応している部分が多い。[[黄帝]]や大国主命は「水神」としての性質を持つのだが、中国神話で暴れん坊の悪い水神といえば[[共工]]である。これは水神だから[[黄帝型神]]なのだけれど、悪神として描かれる。そして、[[祝融]]に倒されてしまう。[[共工]]に対応する、日本の悪い水神は[[八俣遠呂智]]だ。[[八俣遠呂智]]は[[須佐之男命]]に倒される。そして、[[須佐之男命]]と[[祝融]]は共に疫神である。[[共工]]に関する神話と、[[八俣遠呂智]]に関する神話には、設定に類似性があり、それぞれ神々の性質も対応する神と一致している。
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日本神話で、[[黄帝型神]]の代表格は大国主命だと考える。記紀神話の編纂者達は、中国の神話をきちんと研究していたとみえて、中国神話と比較するとおおまかなところで、対応している部分が多い。ただし、大国主命は冥界に下った後「須佐之男の代理人」として復活しており、その時点で[[祝融型神]]へと変化したといえる。
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[[黄帝]]や大国主命は「水神」としての性質を持つのだが、中国神話で暴れん坊の悪い水神といえば[[共工]]である。これは水神だから[[黄帝型神]]なのだけれど、悪神として描かれる。そして、[[祝融]]に倒されてしまう。[[共工]]に対応する、日本の悪い水神は[[八俣遠呂智]]だ。[[八俣遠呂智]]は[[須佐之男命]]に倒される。そして、[[須佐之男命]]と[[祝融]]は共に疫神である。[[共工]]に関する神話と、[[八俣遠呂智]]に関する神話には、設定に類似性があり、それぞれ神々の性質も対応する神と一致している。[[共工]]が[[黄帝]]を悪神化させたものならば、[[八俣遠呂智]]は大国主命を悪神化させたものと言えないだろうか。少なくとも、大国主命神話を民間伝承化させたと思われる群馬県の[[那波八郎]]は死後、[[共工]]、[[八俣遠呂智]]と並び立つような悪蛇に変化して自ら人身御供を求めるようになったとされている。国家の正史として体裁良くまとめられた記紀神話ではなく、民間伝承の方に本来の神話や伝承が残されているのではないだろうか。そして、[[黄帝型神]]と[[祝融型神]]は、
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非業の死 → 復活
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という過程を経て、伝承の中ではあっさりと切り替わることが多く、一つの物語で、一つの神の型として非常に分類しにくくなっている。
  
 
== 関連項目 ==
 
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2025年12月13日 (土) 18:23時点における最新版

各地の男神の神話や伝承をみるに、彼らには3つの大きな機能があるように思う。

  • 黄帝型神:(時に植物神として表される)、基本的には善神だが例外もある。
  • 炎帝型神:(時に植物神として表される)、基本的には悪神だが、そうでない場合もある。祝融型神の前世として重要。饕餮など。
  • 祝融型神:範囲の広い疫神。基本的に悪神だが、王家の始祖神話を中心に善神とされる場合も多い。おおむね、黄帝型神息子あるいは息子的に描かれる。祝融型神の中でも伏羲に関する群は、大洪水神話などで特徴的だ。

神話や伝承によっては、それぞれの性質が入り交じったり、分離したり、区別しがたい場合がある。また父と息子が入れ替わっていたり、別々の男性として描かれることもある。

原則として、黄帝型神炎帝型神祝融型神を倒すことが多いが、祝融型神黄帝型神炎帝型神を倒すこともある。祝融型神黄帝型神が習合・混在してどちらとも分からない状態になっていることが非常に多いと感じる。

男神対応表[編集]

主に中国の神話・伝承を中心に対応表を挙げる。

                                               
黄帝関連対比表
母女神(燃やされた女神父神息子妻女神息子神・疫神備考
ヒョウタン(阿父?)女媧伏羲(ときに犬形とされる[1]伏羲女媧型神話
有莘氏女嬉塗山氏女五帝神話との対比
有莘氏女嬉白馬塗山氏女五帝神話との対比
相柳共工祝融祝融神話との対比
八俣遠呂智奇稲田姫須佐之男命
西王母的妻譚華丹甘基王盤瓠風・蛙)ヤオ族の羿的神話との対比
嫦娥羿逢蒙黒耳羿神話との対比
羿干ばつ(複数の太陽)土家族神話との対比[2]
雷神壮族神話との対比[3]
盤瓠干ばつ・水難(祝融
盤瓠息子たち
養蚕の母黄帝祝融蚩尤炎帝饕餮炎黄闘争との比較
市杵嶋姫大国主命下光比売命阿遅鉏高日子根神
天甕津日女命葦原醜男阿遅鉏高日子根神
八上比売葦原醜男木俣神

日本神話で、黄帝型神の代表格は大国主命だと考える。記紀神話の編纂者達は、中国の神話をきちんと研究していたとみえて、中国神話と比較するとおおまかなところで、対応している部分が多い。ただし、大国主命は冥界に下った後「須佐之男の代理人」として復活しており、その時点で祝融型神へと変化したといえる。

黄帝や大国主命は「水神」としての性質を持つのだが、中国神話で暴れん坊の悪い水神といえば共工である。これは水神だから黄帝型神なのだけれど、悪神として描かれる。そして、祝融に倒されてしまう。共工に対応する、日本の悪い水神は八俣遠呂智だ。八俣遠呂智須佐之男命に倒される。そして、須佐之男命祝融は共に疫神である。共工に関する神話と、八俣遠呂智に関する神話には、設定に類似性があり、それぞれ神々の性質も対応する神と一致している。共工黄帝を悪神化させたものならば、八俣遠呂智は大国主命を悪神化させたものと言えないだろうか。少なくとも、大国主命神話を民間伝承化させたと思われる群馬県の那波八郎は死後、共工八俣遠呂智と並び立つような悪蛇に変化して自ら人身御供を求めるようになったとされている。国家の正史として体裁良くまとめられた記紀神話ではなく、民間伝承の方に本来の神話や伝承が残されているのではないだろうか。そして、黄帝型神祝融型神は、

非業の死 → 復活

という過程を経て、伝承の中ではあっさりと切り替わることが多く、一つの物語で、一つの神の型として非常に分類しにくくなっている。

関連項目[編集]

参照他[編集]

  • Wikipedia:各神対応項目
  • 百田弥栄子『中国の伝承曼荼羅』三弥井民俗選書、1999年、188-189頁
  • 百田弥栄子『中国の伝承曼荼羅』三弥井民俗選書、1999年、135-136頁
  • 百田弥栄子『中国の伝承曼荼羅』三弥井民俗選書、1999年、136頁