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==人間による利用==
 
==人間による利用==
豚肉や脂肪を食用とする他、[[皮革]]などを利用するために多くの国で飼育されている。
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豚肉や脂肪を食用とする他、皮革などを利用するために多くの国で飼育されている。
  
 
; 食材
 
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; 肥料
 
; 肥料
:豚の排泄物を豚糞(豚ぷん)と呼び、豚ぷん堆肥に使用される。日本において、仏教の影響で肉食禁止であったことから江戸時代ごろまで畜産の歴史はなかったが、江戸時代の医者[[橘南谿]]の残した紀行文『東西遊記』のなかで薩摩藩(鹿児島県)で肥料のために飼育していることが書かれている。
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:豚の排泄物を豚糞(豚ぷん)と呼び、豚ぷん堆肥に使用される。日本において、仏教の影響で肉食禁止であったことから江戸時代ごろまで畜産の歴史はなかったが、江戸時代の医者橘南谿の残した紀行文『東西遊記』のなかで薩摩藩(鹿児島県)で肥料のために飼育していることが書かれている。
  
 
; 嗅覚の利用
 
; 嗅覚の利用
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:アメリカの砂漠地帯では蛇除けのためにブタを飼っている家もある。
 
:アメリカの砂漠地帯では蛇除けのためにブタを飼っている家もある。
 
:オセアニアではブタの牙を切らずに飼っている例が多い。牙が伸び、湾曲して円形になったものは、アクセサリーや貨幣として用いられることもある。
 
:オセアニアではブタの牙を切らずに飼っている例が多い。牙が伸び、湾曲して円形になったものは、アクセサリーや貨幣として用いられることもある。
:ブタが動物の排泄物を食べることから、人間用トイレの下にブタを飼う[[豚便所]]も使用された。
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:ブタが動物の排泄物を食べることから、人間用トイレの下にブタを飼う豚便所も使用された。
 
 
 
 
  
 
=== 新生子豚-肥育豚 ===
 
=== 新生子豚-肥育豚 ===
 
*雄豚の去勢
 
*雄豚の去勢
:去勢は食肉とされた時の雄独特の[[豚の雄臭|雄臭]]を防ぐ目的と、闘争を減少させ怪我を防止するために行われる。去勢は通常生後1週間以内に実施され、鋭利なカミソリでふぐり(陰嚢)を切開し睾丸を取り出し、引き抜き、切り取る、という方法で行われる<ref>{{Cite journal|和書 | author = 中根崇大 | author2 = 山口倫子 | author3 = 木下智秀 | author4 = 沼尾真人 | year = 2012 | title = 雄豚における免疫学的去勢製剤の効果と精巣機能 | journal = All about swine | issue = 41 | pages = 12-29 | publisher = 日本SPF豚研究会 | url = https://jp-spf-swine.org/All_about_SWINE/AAS/41/41_12-29.pdf | ref = harv }}</ref>。処置中だけでなく処置後も痛みが継続する。音の分析では、麻酔なしで去勢した場合、通常の悲鳴よりもはるかに強い<ref>{{Cite web |url=https://www.pigprogress.net/the-industrymarkets/market-trends-analysis-the-industrymarkets-2/why-is-it-relevant-to-analyse-pig-vocalisations/#:~:text=Recognising%20pig%20vocalisations%20help%20in,therefore%20also%20about%20their%20welfare. |title=Why is it relevant to analyse pig vocalisations? |access-date=20220514}}</ref>。1985年にWemelsfelder と Puttenによって、去勢したブタと、去勢していないブタの鳴き声の比較研究が行われた。{{Quote|(子豚に)単に手を触れている間に起こる悲鳴の周波数は3500[[ヘルツ]]だったが、最初の切開後には4500ヘルツになり、2度目の切開後には4857ヘルツに達した。音声に発生する周波数と周波数領域に渡る音声分布の変化の大部分は、去勢後により高くなった。去勢直後の子豚は動きも少なく、ふるえたり足がぐらついたり滑ったり尾を激しく動かしたり、嘔吐する豚も見られたが、初めは皆横に寝そべったりはしないで、臀部の痛みが収まり始めてから横たわる。2~3日間これらの行動の変化のいくつかが引き続き見られることにより、痛みの持続期間を指し示した。|3=集約的に飼育された豚の福祉 < EC 獣医学委員会報告書>|4=<ref name="Swine2002">{{Cite journal|和書 | translator = サンエスブリーディング 名越仁宣 | year = 2002 | title = 集約的に飼育された豚の福祉 < EC 獣医学委員会報告書>  | journal = All About Swine | issue = 21 | pages = 28-48 | publisher = 日本SPF豚研究会 | url= https://jp-spf-swine.org/All_about_SWINE/AAS/21/21_28-48.pdf | ref = harv }}</ref><ref group="注">()内は編集者による加筆。</ref>}} そのため無麻酔の去勢は福祉的に貧困であるといえる。臭いは、雄豚が成熟した時に発現する。そのためブタが成熟してそういったものが発現する前に屠殺するのであれば必要はない。また、痛みを伴わないよう、{{行内引用|外科的去勢は、十分な長時間持続性鎮痛剤を使用するという条件ならば行われるべきである}}<ref name="Swine2002" />。
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:去勢は食肉とされた時の雄独特の[[豚の雄臭|雄臭]]を防ぐ目的と、闘争を減少させ怪我を防止するために行われる。去勢は通常生後1週間以内に実施され、鋭利なカミソリでふぐり(陰嚢)を切開し睾丸を取り出し、引き抜き、切り取る、という方法で行われる<ref>中根崇大、山口倫子、木下智秀、沼尾真人, 2012, 雄豚における免疫学的去勢製剤の効果と精巣機能, All about swine,  issue41, p12-29, 日本SPF豚研究会, https://jp-spf-swine.org/All_about_SWINE/AAS/41/41_12-29.pdf</ref>。処置中だけでなく処置後も痛みが継続する。音の分析では、麻酔なしで去勢した場合、通常の悲鳴よりもはるかに強い<ref>https://www.pigprogress.net/the-industrymarkets/market-trends-analysis-the-industrymarkets-2/why-is-it-relevant-to-analyse-pig-vocalisations/#:~:text=Recognising%20pig%20vocalisations%20help%20in,therefore%20also%20about%20their%20welfare., Why is it relevant to analyse pig vocalisations?, 20220514</ref>。
:日本国内での法規制はなく<ref name=":2" />、ほぼ100%の雄豚に無麻酔で去勢が実施されている<ref>{{Cite report|author=日本養豚協会(JPPA)|title=養豚農業実態調査報告書( 全 国 集 計 結 果 )平成28年度|date=2019-03|url=https://jppa.biz/zius/wp-content/uploads/2019/10/20170622_01.pdf|ref=harv}}</ref>。
 
:一方で、外科的去勢を規制する国も出てきている。欧州連合(EU)では、2018年からは、自主的に外科的去勢を「原則」終了することとした<ref>[http://www.globalmeatnews.com/Industry-Markets/EC-to-consider-additional-laws-on-animal-welfare EC to consider additional laws on animal welfare](2014-2、Grobal Meat)</ref>。スイスは2009年に、デンマークは2019年に、無麻酔去勢を禁止した<ref>{{Cite web |url=https://www.pigprogress.net/the-industrymarkets/market-trends-analysis-the-industrymarkets-2/jrp-2022-trade-disruption-microbiota-and-boar-taint/ |title=JRP 2022: Trade disruption, microbiota and boar taint |accessdate=20220309}}</ref>。カナダでは2016年以降麻酔なしでの豚の去勢は禁止<ref>[http://www.thepigsite.com/swinenews/36621/researchers-examine-pig-behaviour-to-assess-pain/ Researchers Examine Pig Behaviour to Assess Pain], The Pig Site, 19 May 2014.</ref>、ドイツでは2019年1月から国内外の子豚の無麻酔去勢が禁止される<ref>雑誌「養豚情報」2017年7月号参照</ref>。2022年1月1日からフランスでも無麻酔去勢の禁止が決定した<ref>{{Cite web|url=https://www.pigprogress.net/Piglets/Articles/2021/9/SPACE-Castration-headache-for-French-pig-farmers-796030E/|title=SPACE: Castration headache for French pig farmers|accessdate=20210924|publisher=Pig Progress}}</ref>。 また去勢をほとんど行っていない国もある(去勢率:イギリス2%、ポルトガル12.5%、スペイン15%、オランダ20%<ref>[https://lin.alic.go.jp/alic/month/domefore/2017/aug/wrepo02.htm EUの養豚・豚肉産業~多様な産地と経営体~]『畜産の情報』2017年8月号</ref>)。オーストラリアでは性成熟を迎えて臭いが出てしまう前の[[屠殺]]や、インプロバックなどの製剤による免疫学的去勢(ワクチンを2回接種することで、精巣機能を阻害する抗体を産生させ、性成熟を遅らせることができる)が一般的であり、動物福祉の観点から外科的去勢はほとんど行われていない<ref>{{Cite web|url=https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_001871.html|title=2021年12月号 豪州養豚産業の概要と近年の取り組み|accessdate=20211202}}</ref>。
 
 
 
  
 
=== 中東 ===
 
=== 中東 ===
イノシシの家畜化は、8000年以上前{{要出典|date=2016年8月}}から[[ユーラシア大陸]]の東西で行われ、各地で独立に家畜のブタが誕生したと考えられている。今はイスラム圏となった[[古代オリエント]]や[[古代エジプト]]でも豚を食用としていた。[[古代エジプト]]ではブタを飼う民は[[賤民]]とされていたことが、エジプトを脱出した古代[[イスラエル人]]と、その宗教を受け継いだ[[ユダヤ人]]の[[ユダヤ教]][[カシュルート]]、およびユダヤ教の影響を受けて誕生した[[イスラム教]]においては、[[豚肉]]の[[肉食]]が[[食のタブー]]となった原因とする説がある。実用上の理由としては、過去に生の豚肉を食べて食中毒になる人が多かったからという説がある。宗教上の理由としては、[[旧約聖書|ユダヤ語聖書]]『[[レビ記]]』では、「四足の獣のうち、反芻しないもの」の肉を食べることが禁じられ、イスラム教の聖典『[[クルアーン]]』(コーラン)ではブタは[[不浄な生き物|不浄な動物]]であるとされているからである。補給の都合上、イスラエル軍やイスラム国家の軍でも糧食として用いられる例があるが{{要出典|date=2015年8月}}、豚肉のみの専門の食器を使い、食後は全て破棄している。
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イノシシの家畜化は、8000年以上前(要出典)からユーラシア大陸の東西で行われ、各地で独立に家畜のブタが誕生したと考えられている。今はイスラム圏となった古代オリエントや古代エジプトでも豚を食用としていた。古代エジプトでは'''ブタを飼う民は賤民'''とされていたことが、エジプトを脱出した古代イスラエル人と、その宗教を受け継いだユダヤ人のユダヤ教カシュルート、およびユダヤ教の影響を受けて誕生したイスラム教においては、豚肉の肉食が食のタブーとなった原因とする説がある。実用上の理由としては、過去に生の豚肉を食べて食中毒になる人が多かったからという説がある。宗教上の理由としては、ユダヤ語聖書『レビ記』では、「四足の獣のうち、反芻しないもの」の肉を食べることが禁じられ、イスラム教の聖典『クルアーン』(コーラン)ではブタは不浄な動物であるとされているからである。補給の都合上、イスラエル軍やイスラム国家の軍でも糧食として用いられる例があるが(要出典)、豚肉のみの専門の食器を使い、食後は全て破棄している。
  
 
=== ヨーロッパ ===
 
=== ヨーロッパ ===
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=== アジア ===
 
=== アジア ===
[[東アジア]]では[[中国]]の[[新石器時代]]からブタは[[家畜]]化されていた。[[中国]]南部を発祥地とする[[オーストロネシア語族]]は[[南太平洋]]にまでブタを連れて行った。[[満州民族]]の先祖である[[挹婁]]人、[[勿吉]]人、[[靺鞨]]人は寒冷な[[満州]]の森林地帯に住んでいるので、ブタを盛んに飼育し、極寒時にはブタの脂肪を体に塗って寒さを防いでいた。
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東アジアでは中国の新石器時代からブタは家畜化されていた。中国南部を発祥地とするオーストロネシア語族は南太平洋にまでブタを連れて行った。満州民族の先祖である挹婁人、勿吉人、靺鞨人は寒冷な満州の森林地帯に住んでいるので、ブタを盛んに飼育し、極寒時にはブタの脂肪を体に塗って寒さを防いでいた。
  
豚は現代[[中華人民共和国|中国]]や[[台湾]]でもよく食べられ、[[中華料理]]で重要な食材となっている。[[中国語]]で単に「肉」といえば[[豚肉]]を指すほどで、飼育量も世界最大である。これに対して、中国で[[牛肉]]は農耕用に使われた廃牛や[[スイギュウ|水牛]]を利用する程度で、食用としては硬すぎたり筋張ったりし、それほど好まれなかった。
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豚は現代中国や台湾でもよく食べられ、中華料理で重要な食材となっている。中国語で単に'''「肉」といえば豚肉を指す'''ほどで、飼育量も世界最大である。これに対して、中国で牛肉は農耕用に使われた廃牛や水牛を利用する程度で、食用としては硬すぎたり筋張ったりし、それほど好まれなかった。
  
[[朝鮮半島]](特に[[大韓民国|韓国]])では、縁起の良い動物とされている。漢字の「{{lang|ko|豚}}」を[[朝鮮語]]読みした「トン({{lang|ko|돈}}、[[文化観光部2000年式|2000年式ローマ字転写]]:{{lang|ko-latn|don}}、[[マッキューン=ライシャワー式|MR式ローマ字転写]]:{{lang|ko-latn|ton}})」が、「お金」を意味する朝鮮語(固有語)と綴りが同じためである。ブタ型の貯金箱に人気があり、「ブタの夢を見るとお金が貯まる」と言われ、[[宝くじ]]を買ったりする。なお、朝鮮語の固有語では「豚」は「テジ({{lang|ko|돼지}}、{{lang|ko-latn|dwaeji / twaeji}})」といい、イノシシは「メッテジ({{lang|ko|멧돼지}}、{{lang|ko-latn|metdwaeji / mettwaeji}})」という。
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朝鮮半島(特に韓国)では、縁起の良い動物とされている。漢字の「豚」を朝鮮語読みした「トン(돈、2000年式ローマ字転写:don、MR式ローマ字転写:ton)」が、「お金」を意味する朝鮮語(固有語)と綴りが同じためである。ブタ型の貯金箱に人気があり、「ブタの夢を見るとお金が貯まる」と言われ、宝くじを買ったりする。なお、朝鮮語の固有語では「豚」は「'''テジ'''(돼지、dwaeji / twaeji)」といい、イノシシは「メッテジ(멧돼지、metdwaeji / mettwaeji)」という。
  
[[ベトナム料理]]でも祝い事や[[廟]]への供物などに子豚の丸焼きを用意したり、ティット・コー(豚の[[角煮]]、{{lang|vi|thịt kho}})や、[[チャーシュー|焼豚]]を載せた[[ライスヌードル]]であるブン・ティット・ヌオン ({{lang|vi|Bún thịt nướng}}) が日常的に食べられたりするなど、中国文化を受けてブタは食材として重要である。中国語同様、ベトナム語でも単に「肉({{lang|vi|thịt}})」といえば豚肉({{lang|vi|thịt heo}})を指す。
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ベトナム料理でも祝い事や廟への供物などに子豚の丸焼きを用意したり、ティット・コー(豚の角煮、thịt kho)や、焼豚を載せたライスヌードルであるブン・ティット・ヌオン (Bún thịt nướng) が日常的に食べられたりするなど、中国文化を受けてブタは食材として重要である。中国語同様、ベトナム語でも単に「肉(thịt)」といえば豚肉(thịt heo)を指す。
  
 
=== オセアニア ===
 
=== オセアニア ===
南太平洋諸島の文化において、ブタは唯一の大型食用家畜として重要視された。元々これらの島々にはブタは生息していなかったが、[[紀元前10世紀]]頃から始まった[[オーストロネシア語族]]の拡散にともなってブタも海を渡り、[[メラネシア]]や[[ポリネシア]]の多くの島々で重要な家畜となった。一方で、[[オーストラリア]]や[[ニュージーランド]]、[[イースター島]]や[[トゥアモトゥ諸島]]などのようにブタが持ち込まれなかった島々も存在する。また、[[ミクロネシア]]の一部諸島のように、いったん持ち込まれたブタが何らかの理由によって絶滅したところも存在する<ref>「オセアニアを知る事典」平凡社 p250 1990年8月21日初版第1刷 </ref>。ブタの飼育された島々においてブタは[[儀式]]の際などに屠られる特別な食料となり、また[[バヌアツ]]などにおいてはブタの[[牙]]が富の象徴とされた。この際、ブタの牙はできるだけ長く伸びているものほど珍重され、高い価値を持った。長く伸び円弧を描いたブタの牙は、富の象徴として[[バヌアツの国旗]]にも描かれている。
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南太平洋諸島の文化において、ブタは唯一の大型食用家畜として重要視された。元々これらの島々にはブタは生息していなかったが、紀元前10世紀頃から始まったオーストロネシア語族の拡散にともなってブタも海を渡り、メラネシアやポリネシアの多くの島々で重要な家畜となった。一方で、オーストラリアやニュージーランド、イースター島やトゥアモトゥ諸島などのようにブタが持ち込まれなかった島々も存在する。また、ミクロネシアの一部諸島のように、いったん持ち込まれたブタが何らかの理由によって絶滅したところも存在する<ref>「オセアニアを知る事典」平凡社 p250 1990年8月21日初版第1刷 </ref>。ブタの飼育された島々においてブタは儀式の際などに屠られる特別な食料となり、またバヌアツなどにおいてはブタの牙が富の象徴とされた。この際、ブタの牙はできるだけ長く伸びているものほど珍重され、高い価値を持った。長く伸び円弧を描いたブタの牙は、富の象徴としてバヌアツの国旗にも描かれている。
  
 
=== 日本列島 ===
 
=== 日本列島 ===
{{see|日本の獣肉食の歴史}}
 
 
 
==== 縄文・弥生時代のブタ ====
 
==== 縄文・弥生時代のブタ ====
 
[[日本列島]]では[[縄文時代]]、主に[[シカ]]やイノシシを対象とする[[狩猟]]が行われていた。縄文時代の遺跡から出土するイノシシ骨では[[飼養]]段階の家畜利用を示す家畜化現象の骨が出土していることが指摘され、日本列島における家畜化の可能性も考えられている。一方で、イノシシ飼養はいずれも限定的なもので疑問視する見解も見られる。
 
[[日本列島]]では[[縄文時代]]、主に[[シカ]]やイノシシを対象とする[[狩猟]]が行われていた。縄文時代の遺跡から出土するイノシシ骨では[[飼養]]段階の家畜利用を示す家畜化現象の骨が出土していることが指摘され、日本列島における家畜化の可能性も考えられている。一方で、イノシシ飼養はいずれも限定的なもので疑問視する見解も見られる。

2026年1月24日 (土) 11:55時点における最新版

ブタ、学名:Sus scrofa domesticus、pig)は、哺乳綱鯨偶蹄目イノシシ科の動物で、イノシシ(猪、Sus scrofa)を家畜化したものである。主に食用(豚肉)とされる。

文字について[編集]

象形文字から来た漢字では「豕」だけで豚を意味した。豕部として漢字の部首として使用される。家という字にも変形して用いられるが、これは人間の家が豚小屋と一体で使用されていた背景(豚便所など)から来ている[1]

上代中国語で「豚」を表す言葉は「豕(シー、si)」や「豚(tun)」などが考えられる。『詩経』などでは「豕」が一般的で、現代中国語の「猪(zhū)」の原形となっている。「豕(si)」は、もともとイノシシ(亥)の形に肉(月)がついた字で、「豚」の原字である。現代中国語では「猪(ヂュー、zhū)」が一般的である。

中国語でも「豚(tún)」という言葉は存在し、子豚や(広く)豚を意味する文語的な表現である。

西遊記に登場する猪八戒はブタに天蓬元帥の魂が宿った神仙で、「猪(豬)」は「朱」(zhū、中国ではよくある姓)と音が通じるために姓は「朱」にされていた。しかし明代に皇帝の姓が「朱」であったため、これを憚ってもとの意の通り「猪(豬)」を用い、猪八戒となった。

生物学的特徴[編集]

豚は雑食であり、入手可能なものに合わせて食餌を調整する。

味覚と嗅覚は高度に発達しており、ブタの味蕾は人間の約3-4倍である。また、嗅覚を感知するための非常に洗練されたシステムを持ち、人間を含む他の種よりも多様な匂いを区別できる。ブタは機能的な嗅覚受容体遺伝子の数が犬よりも多い[2]

食物探索の多くは鼻で地面を掘ることによって行うが、地面の上や低木の植物を探索することもある。ブタにとって採餌のための探索は、本能的に強く動機づけられており、市販の飼料を満腹に与えたとしても、家畜豚は囲いの中で6-8時間かけて餌を探すことが指摘されている[3]

野生のイノシシと同様、土中の虫や植物の根・球根を掘り返して食べるため、他の家畜と違って硬い鼻先と強大な背筋を備えている。木製の柵では横木を鼻先で押し上げて壊してしまう。オスの牙は強い背筋を生かせるよう上向きに生えており、人間のような丈の高い動物を敵と認識すると、突進して鼻先を股ぐらに突っ込み、頭部を持ち上げながら強くひねる。野生時代の名残ともいえるこの行動を「しゃくり」といい、まともにしゃくり上げられると大人でも数メートル飛ばされたり、牙で深く傷つけられたりする。太ももの内側を走る大腿動脈が傷つけられると、失血死するほどの大量出血を招くこともあり、日本で小規模養豚が多かった時代には、年に数人は、しゃくり上げによる死者が出ていた。

ヘビ毒の影響を受けないようニコチン性アセチルコリン受容体を突然変異させた知られうる4種の哺乳類の内の一つ[4]

ガツガツと食事を取る人物を指して「ブタのように食べる」、散らかっていて汚い部屋を「豚小屋」などと形容することがあるが、野生ブタの体脂肪率は13%ほど食用豚でも14 - 18%[5]にすぎない。また、清潔を好む生物であり、排泄をする場所は餌場や寝床から離れた決まった一か所に決める習性がある[6]

知能が高く、類人猿、イルカ、ゾウ、カササギ、ヨウムに加えてブタも鏡の存在を認知できる「鏡映認知」が確認された数少ない動物である[7]

ブタはヒトと同じように様々な感情を経験し、ポジティブな状況とネガティブな状況によって発声に明らかな違いを示す。ブタには音楽の好みがあり[8]、2022年に発表された研究によると、ブタが複数の種類の音楽に対して異なる方法で反応し、さまざまな感情に精通する[9][10]。ペットとして飼われていたブタが、心臓発作を起こした飼い主のために、道路に出て横たわり助けを求めた事例がある[11]

ブタの鳴き声は、日本語では「ブー」「ブヒッ」などと表現されるが、英語では「oink(オインク)」と表記され、中国語での漢字では「嗷(アオ、áo)」などが使われる。

人間による利用[編集]

豚肉や脂肪を食用とする他、皮革などを利用するために多くの国で飼育されている。

食材
豚肉料理が発達している日本の沖縄県では「鳴き声以外は全部食べる」と言われる[12]ほど、豚の利用箇所は多い。ただし、イスラム教圏においては豚肉食だけでなく、豚由来成分を含むものも忌避される[13]
豚乳は、搾乳時期の雌豚は人が近くにいると怒り、搾乳自体も嫌がり、取れても少量なので商業生産はほとんどない。
豚の血は、沖縄のチーイリチー、欧州のブラッドソーセージなど多くの料理に使用される。
  • 豚テール(Pork tail)(ポークテール、豚尻尾)
  • 豚の耳(Pig's ear)
  • 豚の皮 - ポーク・スクラッチング
皮革
豚革はピッグスキンとして衣類や靴に利用されている[14]。ブタの皮革の特徴は体毛が3本ずつまとまって真皮にまで貫通している構造となっていることで、通気性に優れ、表面に独特の凹凸がみられる[14]。薄くて耐久性があるが部位による組織密度の差が大きい(背部は特に高密度といわれている)[14]
肥料
豚の排泄物を豚糞(豚ぷん)と呼び、豚ぷん堆肥に使用される。日本において、仏教の影響で肉食禁止であったことから江戸時代ごろまで畜産の歴史はなかったが、江戸時代の医者橘南谿の残した紀行文『東西遊記』のなかで薩摩藩(鹿児島県)で肥料のために飼育していることが書かれている。
嗅覚の利用
高級食材で知られるトリュフを掘り起こすのに、かつてはメスブタが使われていた。トリュフにはオスブタの持つフェロモンと同じ成分が含まれており、トリュフの匂いを嗅ぎつけ興奮したメスブタが掘り返すのである。訓練いらずで使役できる利点があるが、雑食性のブタはトリュフを食べてしまうことも多いため、食べないイヌを訓練して用いるようになってきた。
アメリカなどで犬より長い20年を生き、犬より飼うのに費用がかからず優れた嗅覚と知能をもつことから警察犬や麻薬探知犬の代わりに使われることがある[15]
その他の利用
アメリカの砂漠地帯では蛇除けのためにブタを飼っている家もある。
オセアニアではブタの牙を切らずに飼っている例が多い。牙が伸び、湾曲して円形になったものは、アクセサリーや貨幣として用いられることもある。
ブタが動物の排泄物を食べることから、人間用トイレの下にブタを飼う豚便所も使用された。

新生子豚-肥育豚[編集]

  • 雄豚の去勢
去勢は食肉とされた時の雄独特の雄臭を防ぐ目的と、闘争を減少させ怪我を防止するために行われる。去勢は通常生後1週間以内に実施され、鋭利なカミソリでふぐり(陰嚢)を切開し睾丸を取り出し、引き抜き、切り取る、という方法で行われる[16]。処置中だけでなく処置後も痛みが継続する。音の分析では、麻酔なしで去勢した場合、通常の悲鳴よりもはるかに強い[17]

中東[編集]

イノシシの家畜化は、8000年以上前(要出典)からユーラシア大陸の東西で行われ、各地で独立に家畜のブタが誕生したと考えられている。今はイスラム圏となった古代オリエントや古代エジプトでも豚を食用としていた。古代エジプトではブタを飼う民は賤民とされていたことが、エジプトを脱出した古代イスラエル人と、その宗教を受け継いだユダヤ人のユダヤ教カシュルート、およびユダヤ教の影響を受けて誕生したイスラム教においては、豚肉の肉食が食のタブーとなった原因とする説がある。実用上の理由としては、過去に生の豚肉を食べて食中毒になる人が多かったからという説がある。宗教上の理由としては、ユダヤ語聖書『レビ記』では、「四足の獣のうち、反芻しないもの」の肉を食べることが禁じられ、イスラム教の聖典『クルアーン』(コーラン)ではブタは不浄な動物であるとされているからである。補給の都合上、イスラエル軍やイスラム国家の軍でも糧食として用いられる例があるが(要出典)、豚肉のみの専門の食器を使い、食後は全て破棄している。

ヨーロッパ[編集]

古代ローマ人も豚を食べなかった訳ではないが、ブタの飼育が発達したのは北方森林地帯のゲルマン人ケルト人の食文化においてだった。
日照時間が短く寒冷で、土壌のやせたヨーロッパでは、穀物の生産性が低い。このため、秋になるとナラオーク)の森にブタを放してドングリを食べさせて太らせ、それを屠畜して食塩硝石で処理して主要な保存食にしたのである。
後にアメリカ大陸からジャガイモトウモロコシがもたらされると、土地の面積当たりの収穫量が多いそれらがブタの飼料として利用されることになる。
ドイツスペインイタリアなどのハムベーコンソーセージはこういった伝統を受け継ぐ。
また、時代が進むと、軍用の食料として、しばしば生きたまま軍艦や潜水艦などに積載された。

アジア[編集]

東アジアでは中国の新石器時代からブタは家畜化されていた。中国南部を発祥地とするオーストロネシア語族は南太平洋にまでブタを連れて行った。満州民族の先祖である挹婁人、勿吉人、靺鞨人は寒冷な満州の森林地帯に住んでいるので、ブタを盛んに飼育し、極寒時にはブタの脂肪を体に塗って寒さを防いでいた。

豚は現代中国や台湾でもよく食べられ、中華料理で重要な食材となっている。中国語で単に「肉」といえば豚肉を指すほどで、飼育量も世界最大である。これに対して、中国で牛肉は農耕用に使われた廃牛や水牛を利用する程度で、食用としては硬すぎたり筋張ったりし、それほど好まれなかった。

朝鮮半島(特に韓国)では、縁起の良い動物とされている。漢字の「豚」を朝鮮語読みした「トン(돈、2000年式ローマ字転写:don、MR式ローマ字転写:ton)」が、「お金」を意味する朝鮮語(固有語)と綴りが同じためである。ブタ型の貯金箱に人気があり、「ブタの夢を見るとお金が貯まる」と言われ、宝くじを買ったりする。なお、朝鮮語の固有語では「豚」は「テジ(돼지、dwaeji / twaeji)」といい、イノシシは「メッテジ(멧돼지、metdwaeji / mettwaeji)」という。

ベトナム料理でも祝い事や廟への供物などに子豚の丸焼きを用意したり、ティット・コー(豚の角煮、thịt kho)や、焼豚を載せたライスヌードルであるブン・ティット・ヌオン (Bún thịt nướng) が日常的に食べられたりするなど、中国文化を受けてブタは食材として重要である。中国語同様、ベトナム語でも単に「肉(thịt)」といえば豚肉(thịt heo)を指す。

オセアニア[編集]

南太平洋諸島の文化において、ブタは唯一の大型食用家畜として重要視された。元々これらの島々にはブタは生息していなかったが、紀元前10世紀頃から始まったオーストロネシア語族の拡散にともなってブタも海を渡り、メラネシアやポリネシアの多くの島々で重要な家畜となった。一方で、オーストラリアやニュージーランド、イースター島やトゥアモトゥ諸島などのようにブタが持ち込まれなかった島々も存在する。また、ミクロネシアの一部諸島のように、いったん持ち込まれたブタが何らかの理由によって絶滅したところも存在する[18]。ブタの飼育された島々においてブタは儀式の際などに屠られる特別な食料となり、またバヌアツなどにおいてはブタの牙が富の象徴とされた。この際、ブタの牙はできるだけ長く伸びているものほど珍重され、高い価値を持った。長く伸び円弧を描いたブタの牙は、富の象徴としてバヌアツの国旗にも描かれている。

日本列島[編集]

縄文・弥生時代のブタ[編集]

日本列島では縄文時代、主にシカやイノシシを対象とする狩猟が行われていた。縄文時代の遺跡から出土するイノシシ骨では飼養段階の家畜利用を示す家畜化現象の骨が出土していることが指摘され、日本列島における家畜化の可能性も考えられている。一方で、イノシシ飼養はいずれも限定的なもので疑問視する見解も見られる。

弥生時代には日本列島においても本格的な稲作農耕が開始される。中国大陸では農耕はブタやウマウシなど家畜が伴うものであるのに対し、日本列島における弥生期の遺跡からは長らく家畜の痕跡が見られないことから、家畜利用を欠いた「欠畜農耕」であると理解されていた[19]

1988年 - 1989年には大分県大分市下郡桑苗遺跡において弥生時代の完形のイノシシ類頭蓋骨3点とブタ頭蓋骨が出土し、さらに九州や本州の遺跡においてブタやニワトリの出土事例が相次いだ[20]

また、縄文時代の本州においてはシカとイノシシの出土比率がほぼ1:1であるのに対し、弥生時代には「イノシシ」の比率が増加し、また成獣よりも若獣が多く出土している傾向が指摘されていた[20]。この弥生時代の「イノシシ」に関しては、西本豊弘が下郡桑苗遺跡出土のイノシシ類骨に骨の家畜化現象が認められることから、野生のイノシシではなく家畜としての「ブタ」であるとした[21]。その後、弥生ブタの発見事例が相次ぎ、1999年時点で10か所以上からの弥生遺跡において弥生ブタが確認されている[22]。弥生時代の遺跡において「イノシシ」の出土比率が高く、中でも若獣が多い点は「イノシシ」の骨の中に家畜化されたブタが混在している可能性が指摘された[23]

弥生ブタに関しては縄文時代からイノシシが家畜化されてブタになったのではなく、中国大陸から家畜としてのブタが持ち込まれたとする説があり、1991年と1993年に西本豊弘により指摘された[24][25]。これは、縄文時代に過渡的な段階のイノシシが見られず弥生時代に突如として家畜化されたブタが出現している点や、日本列島のイノシシの個体サイズが地域的に差があるが弥生ブタはこれとかけ離れたサイズである点などが理由とされる[26]

2000年には小澤智生が、中国産ブタとニホンイノシシは255塩基対のうち塩基座502により区別が可能であるとし、現生の中国と日本のイノシシ、ブタに関してミトコンドリアDNAの分析を行い、日本国内の弥生ブタとされる資料12点のうち11点がニホンイノシシと同タイプの塩基配列を持ち、弥生ブタはニホンイノシシそのものであるとした[27][28]

これに対して、2003年には石黒直隆らが、塩基座502によるイノシシとブタの区別自体に疑義を唱え、新たに255塩基対を含む574塩基対による系統解析を行い、10資料のうち6資料が現生イノシシと同じグループに、4資料は東アジア系家畜ブタと同じグループに含まれ、大陸から持ち込まれた家畜豚は九州・四国の西日本西部地域に限られている点を指摘した[29]

古墳時代・古代のブタ[編集]

続く古墳時代の遺跡からもブタの骨は出土している。『日本書紀』『万葉集』『古事記』にみられる「猪飼」「猪甘」「猪養」などの言葉の「猪」はブタの意味であり[注 1]、ブタが飼われていたことがわかる。

天武天皇675年に、ウシとウマ、イヌニホンザルニワトリ肉食の禁止を定めた。だが、これは正確に言えば、肉食の全面禁止を目的としたのではなく、稲作を促進し安定した税収を確保する観点から出された、稲作に役立つ動物の保護を目的として出された命令であり、禁止期間は稲作が行われる4 - 9月に限定されていた。しかも、当時の肉食の中心であったイノシシやシカをはじめとして、この勅令で指定されなかった動物の肉を食べることは一年を通して禁止されておらず、豚肉を食べることは禁止されてはいない。しかし、律令体制の確立の上で、米を税の中心()とする観点から、米の神聖さが強調されるようになった。当初は、稲作に役に立つウシやウマの肉を食べることが稲作の妨げになると考えられたが、時代が経つにつれて、ウシやウマに限らず、肉食そのものが稲作に害をもたらす穢れと見なされるようになり、ブタの飼育も途絶えてしまった。イノシシが採れる山間部では猪肉がぼたん鍋と称してわずかに食べられることもあった。

中世・近世のブタ[編集]

中世に琉球王国に属した沖縄県鹿児島県奄美地方では、古来からブタの飼育や食用が行われており、沖縄料理は「豚に始まり豚に終わる」ともいわれる。1385年に渡来したという黒豚のアグー(島豚=テンプレート:Lang)が有名で、現在の沖縄料理では最も重要な食材となっている。17世紀以前は牛肉も同様の座を占めていたが、羽地朝秀の改革によりウシの食用が禁止された。その後は中国からの冊封使節団を接待するため王府によりブタの大量生産が奨励されたことなども相まって、牛肉に代わる存在となっていった。しかし、昔は肉食はそれほど容易ではなく、「ハレの日」の料理として扱われていた。琉球王朝時代、豚は「ふーる」と呼ばれる所で飼育されていた。第二次世界大戦前の沖縄では、豚肉料理が食べられるのはせいぜい年に数回であり、普段はラードが豚肉の代用としてよく使われていたという。戦後、沖縄がアメリカ合衆国に統治されると、米兵が多く食べていたポーク・ランチョンミート缶詰が広く利用されるようになり、現代の沖縄家庭料理に欠かせない素材となった。

奄美地方を支配した薩摩藩でもブタを飼って食べており、佐藤信淵著『経済要録』(1827年)には、薩摩の江戸藩邸で豚を飼って豚肉を売っていたと記録されている。西郷隆盛も豚肉が大好物であったと伝わっている。江戸幕府最後の征夷大将軍徳川慶喜は父徳川斉昭島津斉彬から豚肉を送られていた(1845年5月2日〈6月6日〉の書簡)ためか、豚肉を好んで食べたので豚一様(好きの橋様)と呼ばれた。新選組西本願寺駐屯時に松本良順のすすめで神戸から子豚を持ち込み養豚していた。解体は木屋町の医者南部精一の弟子に頼んでいた。

長崎においても、鎖国中で数少ない外交窓口であったことから、駐在する中国人の食用として豚が飼育されていた。卓袱料理にも取り入れられて、一部は日本人の食用としても供給され、司馬江漢がこれを食べた記録がある。多くの日本人にとっては忌み嫌われ、中国人の豚好きを揶揄した「楊貴妃は きれいな顔で 豚を食い」という川柳がある。

近現代のブタ[編集]

明治維新以後、肉食は一般化していった。まず普及したのは牛鍋(すき焼き)にみられるように牛が圧倒的であり、豚肉の需要はすぐには伸びなかった。豚の飼育は増えたものの、これは東京近郊の農家が肥料を得るためで、食用が主目的ではなかった。しかし、日本政府が富国強兵策として1900年より養豚事業を開始し、1904年日露戦争開戦により兵士に支給される食肉が増加、それに伴う牛肉の不足からの豚肉食の奨励が行われた[30]。また大正元年(1912年)にコレラの流行が起きると、警視庁がコレラの流行を食い止めるためにの生食を制限し、火を通すことが前提である肉食を奨励した。この際、上述のように豚が多く飼育されていた東京や関東地方において安価であった豚肉が注目された。これによって、それまで牛肉が主であったカツレツが豚に置き換えられて豚カツが誕生するなど豚肉料理がこの時期に多く誕生し[31]、豚肉の需要が急増して、ブタも日本各地で再び飼われるようになった。特に関東大震災後に関東地方で養豚ブームが起き、供給量が増えて安価になった。琉球の島豚は1902年にバークシャー種、ハンプシャー種が入り純粋種はなくなったが名護市奄美大島などで復元されている。

文化[編集]

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食のタブー
イスラム教(ハラール)・ユダヤ教(レビ記11章7節)・仏教(五戒の不殺生戒)などで豚を食べる事がタブーとされている。この理由として寄生虫説があるが、寄生されてから症状が出るまで長い期間があり、豚肉と寄生虫との因果関係が科学者によって解明されたのは1859年のことなので、古代でタブーの理由とするのは難しいだろう[32]。そのほかに、動物の腐肉・排泄物を食べることから汚いとされた説、人間の食料と競合する餌を食べることから砂漠や放牧の文化がない食料枯渇地域では飼育そのものが難しくもともと当該地域で飼育していなかった説[33]などがある。



ブタを含むことわざ・慣用句・隠語
  • 「豚に真珠」 - 価値のわからない者に貴重なものを与えても意味がない、という意味。聖書マタイによる福音書7章6が言葉の由来。同義に日本独自の言葉として「猫に小判」「馬の耳に念仏」。
  • 「豚は太らせてから食え」 - 文字通り。転じて、他者や団体から利権や金品を普通に巻き上げるのではなく、それらへ投資援助するなどして潤わせ且つ油断させた所で、恩や強制でそれらをより多く搾り上げたり奪うこと。
  • 「豚を盗んで骨を施す」 - 大きな悪事の償いに小さな善行をすること。
  • 豚もおだてりゃ木に登る」 - おだてられて調子にのっている人間を揶揄する言葉。福島県会津地方の慣用句だったのが、アニメ『ヤッターマン』放映をきっかけに全国で使われるようになった。
  • 「豚児(とんじ)」- 自分の息子をへりくだって言う言葉で、愚息と同意語。「荊妻(けいさい)豚児」は、愚妻と愚息。
  • 「遼東の豕(いのこ)」 - 世間ではありふれていることを知らずに自分一人で得意になること。「井の中の蛙」と同じ。遼東では白頭の豚が珍しかったことから。
  • 「三豕渉河(さんししょうか)」 - 漢字を見間違えたり、書き写し間違えること。孔子の弟子である子夏で、『史記』の「己亥(きがい)渉河」という部分を、くずし書きされているためか「三豕渉河」と読み誤った人がいたため、指摘をしたという『呂氏春秋』に見える故事による。「亥豕之譌(がいしのか)」「魯魚亥豕(ろぎょがいし)」も同様に、似た漢字を読み間違えることを表す。
  • 「豕交獣畜(しこうじゅうちく)」 - 豚同様に交わり、獣のように飼育する。人間を獣扱いする。
  • 「封豕長蛇(ほうしちょうだ)」 - 大きなブタ(猪)と長い蛇。貪欲で残忍な人や国のたとえ。『春秋左氏伝』による成語。
  • 「メスブタ」- 性的にふしだらな女を罵る言葉。マゾヒズムの女が自称する場合もある。
  • 「猪(しし)食った報い」 - 悪いことをした報い。中世日本で禁忌とされた肉食を悪事になぞらえている。
  • 「それぞれの豚にサン・マルティンの日が来る」 - スペイン聖マルティヌスの日には豚を解体したことから、どんな者にもツケが廻ってくるとの意[34]
  • その他「太っている人」「私利私欲を肥やす人」の比喩としてブタが用いられる。肥満者への蔑称として使われることが多い。ただし実際の豚の体脂肪率は平均的な成人男性より低い。
  • テンプレート:Ill2 - ドイツ語を直訳すると「豚を飼う」の意で、多産で貪欲に食べることから飼う人は裕福で多産な人間とされ、豚は幸福な人間の象徴とされた。



参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

参照[編集]

  1. 本来の字義。現代中国語でも同じである。
  1. 「家」の中の「豕」表す動物は? サイト:産経国際書会 著:髙橋照弘 更新日:2015年11月15日
  2. https://www.earlyfeednutrition.com/news/applying-the-piglets-senses-to-improve-feed-intake/, SECTOR SWINE Applying the piglet’s senses to improve feed intake, 20221019
  3. https://www.efsa.europa.eu/sites/default/files/2022-08/EFS2-7421.pdf, Welfare of pigs on farm EFSA Panel on Animal Health and Welfare (AHAW), 20220827
  4. Bracke M.B.M., 2011, Review of wallowing in pigs: Description of the behaviour and its motivational basis, Applied Animal Behaviour Science, volume132, issue1, p1-13, doi:10.1016/j.applanim.2011.01.002
  5. ダイエットに関する最新レポートをmicrodiet.netにて公開 『「豚みたい」は褒め言葉!?動物の体脂肪率ランキング』 2019.12.10
  6. https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/chikusan/pigq3.html, 豚はきれい好きって本当なの?, 20221019
  7. 豚にも自己意識がある?:鏡像を理解できることが判明 WIRED.jp 2009年10月8日掲載
  8. https://www.pigprogress.net/health-nutrition/health/rock-or-pop-what-gets-a-pigs-tail-wagging/, Rock or pop – what gets a pig’s tail wagging?, 20220812
  9. https://www.nature.com/articles/s41598-022-07300-6#Sec9, Music modulates emotional responses in growing pigs |access-date=20220523}}
  10. https://plantbasednews.org/news/science/pigs-react-to-music-just-like-humans/, Pigs React Emotionally To Music Just Like Humans, Study Finds |access-date=20220523
  11. スー・ドナルドソン、ウィル・キムリッカ, 人と動物の政治共同体, 2016, 尚学社, p170
  12. 鳴き声以外全部食べる!豚1頭を食べ尽くす沖縄の「豚正月」って?ソーキ汁、とんかつ、中味汁 うるま市で体験会『琉球新報』2018年1月25日(2018年4月16日閲覧)。
  13. ハラル(ハラール)について一般社団法人・日本ハラル協会(2018年4月16日閲覧)。
  14. 14.0 14.1 14.2 宮坂敦子著、竹内健監修, 2019, 増補改訂 レザークラフトの便利帳, 誠文堂新光社, p27
  15. POT BELLIED PIGS (アメリカ合衆国司法省司法計画室(Office of Justice Programs))
  16. 中根崇大、山口倫子、木下智秀、沼尾真人, 2012, 雄豚における免疫学的去勢製剤の効果と精巣機能, All about swine, issue41, p12-29, 日本SPF豚研究会, https://jp-spf-swine.org/All_about_SWINE/AAS/41/41_12-29.pdf
  17. https://www.pigprogress.net/the-industrymarkets/market-trends-analysis-the-industrymarkets-2/why-is-it-relevant-to-analyse-pig-vocalisations/#:~:text=Recognising%20pig%20vocalisations%20help%20in,therefore%20also%20about%20their%20welfare., Why is it relevant to analyse pig vocalisations?, 20220514
  18. 「オセアニアを知る事典」平凡社 p250 1990年8月21日初版第1刷
  19. 新美(2009)、p.95
  20. 20.0 20.1 新美(2009)、p.96
  21. テンプレート:Cite journal
  22. 西本「可能性が高まった縄文ブタの飼育」『最新縄文学の世界』1999年
  23. 新美(2009)、p.98
  24. テンプレート:Cite journal
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  26. 新美(2009)、p.97 - 98
  27. テンプレート:Cite journal
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  29. 渡部琢磨・石黒直隆・中野益男・松井章・本郷一美・西本豊弘「弥生時代の遺跡から出土したイノシシの遺伝学的解析-Ancient DNA解析に基づく考察-」『動物考古学 20』
  30. 食の研究所豚汁がまだ「おふくろの味」ではなかった時代 2014.03.14 澁川 祐子
  31. 野瀬泰申、『天ぷらにソースをかけますか? ニッポン食文化の境界線』pp174-176、2009年3月30日、新潮文庫
  32. Mark Essig: Lesser Beasts. Kapitel 4: Of Their Flesh Shall Ye not Eat, Ebook-Position 763.
  33. 食と文化の謎 著:マーヴィン・ハリス
  34. 21世紀研究会編『食の世界地図』文藝春秋・P254