エインガナは「トゥーン」と呼ばれる腱で造られた紐の端を掴んでいる。この紐のもう一方の端は全ての生き物のかかとの上の腱に結び付けられている。生き物が死ぬ時にはじめて、エインガナはこの紐を手放す。生命の霊である「マリクンゴル」は、虹蛇ボロングの道に従う。マリクンゴルはその種族が産まれた国へと帰っていく<ref name= Eingana/>。
== 私的解説 ==
=== 母神殺しの神話 ===
バビロニア神話に、マルドゥクという神が母であるティアマトを倒して、その死体から世界を創造したという話がある。その古い形式の神話が、「母なる蛇女神が万物を生み出す」というもので、彼女には膣がないので、出産のためにその体を切り開かねばならない、というやや不可解な設定であることが分かる。
台湾原住民の伝承では、「膣が非常に小さい女性がいて、結婚しても夫婦生活が不可能なため、夫が切り裂いて夫婦となった<ref>神々の物語、台湾原住民文学選5、神村徹編、草風館、2006年8月1日出版、p290</ref>。」という話があり、これが台湾原住民の伝承では一番近い類話となろう。実際に衛生状態の悪い状況、悪い時代にむやみにこのようなことを行っても良い結果になるとは思えない。出産などの生殖の話に結びつけられているが、本来の話は
* 息子あるいは夫が母あるいは妻を刺し殺した
というものであろう。エインガナの話では、バルライヤ及びカンダグンとエインガナの家族関係は語られていない。しかし、バルライヤの名は中国神話の[[伏羲]]、カンダグンの名は中国プーラン族の神・[[グミヤー]]に類する名と考えるので、二人揃って「[[太昊型神]]」であり、前世と後世を持っている神である。また、伏羲と女媧はかなり古い時代から枝分かれして存在していたことが分かる。
台湾原住民の伝承の場合は「前世優先型」で「夫」という立場になり、バビロニア神話では「後世優先型」で「息子」となっていると考える。この状況から、エインガナは「[[燃やされた女神]]」と考えられる。一番古い神話の形では、彼女は
* 死後、蛇型の神となり、天候神となった。また万物を生み出す母となった。
という設定だったと考える。それが「死体が世界となった」とまで拡張されたのがバビロニア神話だったのではないだろうか。しかし、アジア圏では「万物(特に'''穀物''')の母となった」にとどまる設定が多く、長江中流域の稲作地帯では祖神を兼ねる「穀霊」と扱われることが多いように感じる。
蛇女神である点は、中国神話の女媧との関連をうかがわせる。[[ミャオ族]]の伝承ではメイパンメイリュウという蝶神(おそらくアゲハチョウ)で表される。
エインガナの名は「'''[[若]]'''」から派生していると考える。カンダグンも同様である。
== 参考文献 ==