編成は俳優2人と合唱隊(コロス)により、ギリシア悲劇としては古い形式を採る。
== 私的解説 ==
ともかく、ギリシア悲劇だけあって、「炎黄が並び立つ」などとは全く言っていない。根本はあくまでも「'''アスラとデーヴァの戦い'''」である。同じ神が何度も出てきて、複合的になり複雑な神話となっている。ときどき「不老不死の薬」とかどこかで聞いた話が出てくる。根本的な神話のモチーフは残っているけれども、文芸的な作品である。
そして、「'''アスラとデーヴァの戦い'''」だけれども、テーバイという町の名がそもそも「デーヴァ」と同じ子音で「デーヴァの町」と言っているも同じと思うので、デーヴァの方が勝利する。そういう点ではインド的な神話内容なのかもしれない。パーンダヴァ五王子(オイディプスと同じ子音)とカウラヴァ百王子(ポリュネイケースと似た子音)(盲目の王ドゥリタラーシュトラ(テューデウスと似た子音の名)の息子たち。特に嫉妬深いドゥルヨーダナ(こちらもテューデウス)が五王子を憎む。)が従兄弟同士で王位を争う。しかもパーンダヴァ五王子は5人で1人の妻を持つという、結婚に関するタブーにかなり引っかかる結婚をしている。という内容の「マハーバーラタ」の類話ではないかと思う。イオカステーとドラウパティーも'''元は「同じ名」'''だったのではないだろうか。
=== オイディプス ===
「BT」の子音を持つオイディプスは、壮族の[[布洛陀]]、日本の布津主と同じ子音を持つ。いずれも[[祝融型神]]であり、軍神としての性質の方が、文化英雄的な性質よりも強い。近親結婚の禁忌に苦しむ所は[[ダロン]]や[[チャンヤン]]と一致する。父親を殺すところは、[[逢蒙]]が「父親のような」[[羿]]を殺す点と一致する。
赤ん坊の時に「捨てられた」という点は朝鮮の[[朱蒙]](Jumong)、イラン神話のザール(Zal)を思わせる。両者、特に朱蒙の名は「'''姜央'''」(Jangx Vangb、[[チャンヤン]])に近いのではないだろうか。オイディプスや布洛陀がチャンヤンに近い性質の神々あるいは「人間の英雄」であったことが示唆される。
炎黄といえるエテオクレースとポリュネイケースと対立する点は、中国神話の[[蚩尤]]と同じである。オイディプス王は蚩尤のように殺されはしないが、国を追放されてしまう。兄妹婚の末に追放されてしまうところは、日本の須佐之男を思わせる(日本の場合は姉弟婚)。
いずれにせよ、オイディプス王の性質より、中国神話の[[逢蒙]]、[[チャンヤン]]、[[蚩尤]]は類似性の高い神々の群であることが推察される。
=== エテオクレースとポリュネイケース ===
子音から見てこの名前は、エテオクレース=デーヴァ、ポリュネイケース=ヴァルナと考える。すなわちエテオクレース=炎帝、ポリュネイケース=黄帝である。両者は7人の勇者を従えて戦う。この7人というのは[[チャンヤン]]神話に登場する「'''7人の牛刀を管理する男達'''」のことと考える。いわゆる「軍隊」の始め、というべきものである。
中国神話では、「'''オイディプス=ダロンあるいはチャンヤン'''」は、洪水神話で雷神よりも若い世代とされるが、ギリシア神話ではデーヴァとヴァルナの方が「子供」とされている。また、中国の炎黄神話と異なって、本物語ではエテオクレースとポリュネイケースは相打ちで死んでしまう。
==== ポリュネイケースの窃盗 ====
ポリュネイケースは5代前の祖母・ハルモニアーの遺産を盗み出しており、「祝融型神・窃盗型」の性質を有している。彼はこれをアルゴスの王女に送り、アルゴスを味方にするのに利用する。彼が「祖母の遺産を盗み出す」というのは、神話的には洪水の後、誰が「'''母女神の遺産を手にする(その後を継ぐ)'''か」という重要なモチーフの崩れと考える。盗み出されたものは「'''テーバイの王権そのもの'''」を暗示しているともいえる。広く'''「男性の神」が、上位の女神の「権威」や「権力」に関わるものを盗み出す'''、という神話があったと考える。この点ではポリュネイケースは中国神話の'''[[天狗(中国)|天狗]]'''に相当する。ハルモニアーの名は、ヒッタイトのハンナハンナ、ヴェマーレのハイヌウェレ、ミャオ族のバロンに通じる名と考える。この女神群は太母かあるいは「下位の殺される女神」に2分されてしまう傾向があるように感じる。ただし、イナンナのように太母でありながら冥界に下る(殺される)例もある。ハルモニアーは、「権利を盗み出される」という点では「燃やされた女神」にも「吊された女神」にもなり得ると考える。盗み出したのがポリュネイケースであること、ハルモニアーが太母的な地位にあることから、本物語では「燃やされた女神」とすることが妥当かもしれない。でも、「遺産を残す」という形式は「吊された女神」の要素のようにも感じるので、性質は混合しているといえる。
=== アンティゴネー ===
兄を葬って亡くなるアンティゴネーは、妹がいる点と併せて「吊された女神」といえる。「'''禁忌を破って'''」殺される点は、兄弟始祖婚の名残を思わせる。彼女の名は子音が「イナンナ」や「アナト」に近いといえる。彼女の死は「イナンナの冥界下り」をも連想させる。妹と各地を逡巡する所にも「吊された女神」のうち「逃走型」の性質と考える。
余談だが、追放された父王を支えて、娘達がさまよう姿は、リア王のコーデリアを連想させる。
=== エリピューレー ===
「エリ(神)」+「B」で表される女神の名は、中国語で「白」のことと思われ、彼女が元は「太陽女神」だったことが示唆される。男性達が争った際に最終的な判断の決定権を持つ点は、その機嫌が古く「'''母系の最高神であった太陽女神'''」の姿を彷彿とさせる。その言動が神々の動向を決定づける、という点はウガリットの太陽女神[[シャプシュ]]とも類似するように思う。他人のものとされているが、彼女が「太陽女神の象徴」であったとも思われる「ハルモニアーの首飾り」を手に入れるのは、物語の筋書きというよりは、彼女の性質から見て妥当といえる。「'''[[養母としての女神]]'''」といえるのだが、後に彼女は息子に殺されてしまう。その点は「'''[[燃やされた女神]]'''」といえる。
=== テューデウス ===
[[画像:Hangzhou.jpeg|thumb|300px|猪紋黒陶鉢<br />新石器時代(河姆渡文化)、1977年浙江省余姚河姆渡文化遺跡出、陶器、高さ11.7cm、口径21.7cm、底径17.5cm、浙江省博物館所蔵。体内に葉を持つ猪である。饕餮の原型と考える。<ref>[http://abc0120.net/words/abc2007070901.html 猪紋黒陶鉢。]、考古用語辞典、07-07-09</ref>]]
[[画像:nikuduki.png|thumb|300px|甲骨文字の成り立ち]]
名前の通り「[[饕餮]]」に由来する名と考える。本物語ではポリュネイケースとは、血縁ではないけれども、妻を通して近い人物とされている。彼の特徴は「'''人肉食を行うこと'''」と「アテーナー女神に見放されて'''不死性を手に入れ損なったこと'''。」といえる。
[[饕餮]]とは中国神話で「何でも食べてしまう怪物」とされているので、人肉を食べてもおかしくはない。また猿の脳みそを食べる習慣は[[河姆渡文化]]あたりから発生しているとみられる。[[河姆渡文化]]では嬰児を食べていた痕跡もあり、「'''人肉を食べる饕餮」'''とはこのあたりから発達した神なのではないだろうか。
饕餮は蚩尤でもある、と言われており、蚩尤は死して楓の樹に変化したと言われている。ということは、植物、特に樹木は蚩尤のような神が死して変化したものと考えられる。また、後に饕餮紋と呼ばれる紋様は奇怪な獣面で表されることが多い。ということは、河姆渡文化では、この神はイノシシと植物を組み合わせた姿と考えられていたのではないだろうか。そして、天体としては「月」と考えられていたかもしれない、と思う。中国では「肉」といえば「豚」のことであり、「月」と「肉」という文字は、同じ甲骨文字から発生している。「月」は「肉」であり「豚」なのだ。豚はミャオ族にとって犠牲獣としても重要だったと思われる。
しかし、ミャオ族は、次第に豚よりも大きな水牛を犠牲獣として採用していったように思う。現在、蚩尤が牛の姿をしていると考えられるのは、犠牲獣の水牛を示しているのであって、'''豚が犠牲獣の主流だった時代には、蚩尤(饕餮)は豚の姿をしていたのではないだろうか'''。
ともかく、この「人肉を食べる月神」は、その性質ゆえにアテーナーに見捨てられてしまう。この物語で、「もう一人の蚩尤(饕餮)」ともいえるオイディプスは国を追放されているので、月神はいずれも「不幸な最後」を遂げた、といえる。
== 登場人物 ==
エテオクレースとポリュネイケースはテーバイの王位継承をめぐって争いを起こす。その結果、追放されたポリュネイケースはアルゴス王アドラーストスを頼み、アルゴスの軍勢を率いてテーバイに攻め寄せる。
オイディプースはアテナイでテーセウスに庇護を受け、最後を迎えた、という説がある。
=== 本作のあらすじ ===
== 七将たち ==
本作で使者が告げるアルゴス勢の七将は登場順に次のとおり<ref>ソポクレース作『コロノスのオイディプス』でポリュネイケースの台詞で語られる七将も同じである(戦いの前であるため門の配置はない)。</ref>。
* テューデウス(プロイティデス門)、対する守備の将はアスタコスの子メラニッポス(スパルトイの後裔)'''テューデウス'''(プロイティデス門)(アルゴス王の婿、ポリュネイケースとは相婿。義兄弟の関係といえる。)、対する守備の将はアスタコスの子メラニッポス(スパルトイの後裔)
* カパネウス(エレクトライ門)、対する守備の将はポリュポンテース
* エテオクロス(ネイスタイ門)、対する守備の将はクレオーンの子メガレウス(スパルトイの後裔)
=== 獅子と猪 ===
エテオクレースとポリュネイケースはテーバイの王権について協議し、'''1年おきに2人が交互に治めることを決めた'''。初めの1年目はポリュネイケースが治め、エテオクレースは2年目だった、あるいは1年目がエテオクレースだったともいうが、いずれにしても、エテオクレースは1年が経過しても王権を渡そうとせず、ポリュネイケースを追放した。ポリュネイケースは'''ハルモニアーの首飾りと婚礼衣装'''を携えてアルゴスへ亡命した。を携えてアルゴスへ亡命した。ハルモニアーは系図の上ではポリュネイケースの5代前の先祖である。夫のカドモスとともにテーバイの最初の王と王妃となった、とされる。ハルモニアーとカドモスの結婚式には神々が参列し、アプロディーテーは、ハルモニアーに黄金の首飾りを贈ったという。アテーナーは黄金の上衣と一組の笛を贈った。ヘルメースは竪琴を贈った。アプロディーテーの首飾りはヘーパイストスが作ったもので、もともとゼウスがエウローペーに贈ったものだが、これを身につける者は、見る者が悩ましくなるほどの美しさが得られたという。アテーナーの上衣もまた、身につける者に神々しい気品を与えたという。
アルゴス王アドラーストスは、ある夜彼の王宮で戦う2人の男を見て驚いた。このときポリュネイケースは盾にテーバイの紋章である獅子の絵柄を、テューデウスは盾にカリュドーンを示す'''猪'''の絵柄を付けて戦っていたという。アドラーストスはかつてデルポイの神託により「娘たちを獅子と猪に嫁がせよ」と告げられたことを思い出し、ポリュネイケースに娘のアルゲイアーを、テューデウスに娘のデーイピュレーを娶せ、2人をそれぞれの祖国に戻すと約束した。まずポリュネイケースとの約束を果たすため、アドラーストスはアルゴス近隣にテーバイ攻めのための召集をかけた<ref>アポロドーロス、(Βιβλιοθήκη/Γ#Γ_6,1, 3巻6・1)。</ref>。
=== アルゴス勢の埋葬 ===
オイディプースの息子たちの死によりテーバイの王権を継承したクレオーンは、アルゴス勢で斃れた者、とりわけポリュネイケースの死骸を埋葬することを禁じた。しかし、アンティゴネーは兄弟であるポリュネイケースの遺骸を密かに埋葬した。クレオーンはこれを発見し、アンティゴネーは墓の中に生きながら埋められた<ref>この部分はソポクレース作『アンティゴネー』の題材となった。</ref>。。アンティゴネーは墓の中で首を吊って死に、婚約者だったクレオーンの息子ハイモーンも後を追って自殺してしまう。
逃げ延びたアドラーストスはアテーナイのテーセウスに死者たちの埋葬を訴えた。テーセウスはこれに応えて軍勢を出し、テーバイ勢を打ち破ってアルゴス人たちの死骸を引き取り、血族の者に与えた。カパネウスの火葬のとき、カパネウスの妻でイーピスの娘エウアドネーは燃えさかる火葬壇に身を投げて夫とともに焼かれた<ref>この部分はエウリーピデース作『救いを求める女たち』の題材となった。</ref>。
[[Category:北斗信仰]]
[[Category:物部]]
[[Category:兄弟始祖婚]]