差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
10,039 バイト追加 、 2024年11月20日 (水) 19:10
編集の要約なし
'''娑蘇夫人'''(しゃそふじん、さそふじん、사소부인)は、新羅の始祖である[[赫居世居西干]]とその妃である[[閼英夫人]]の生母である<ref name="国語国文学資料辞書">国語国文学資料辞書</ref>。娑蘇夫人は、中国の王室の娘であり<ref name="野村伸一">野村伸一, 2001, p3</ref><ref>延恩株, 2011, p94</ref><ref>韓国民族文化大百科事典</ref><ref>이상희</ref>、中国から辰韓に移住して暮らしていた<ref name="野村伸一"/><ref name="国語国文学資料辞書"/>。『三国遺事』巻一「新羅始祖赫居世王」条と『三国遺事』巻五「感通第七」条と『三国史記』「新羅本紀敬順王条」に具体的な記述がある<ref>延恩株, 2011, p92</ref>。'''娑蘇神母'''、'''仙桃聖母'''、'''仙桃山聖母'''、'''西述山聖母'''とも呼ばれる<ref group="私注">名前からすると、娑蘇夫人は西王母に類する女神のように思える。</ref>。

== 概要 ==
『三国史記』新羅本紀によれば、辰韓の今の慶州一帯には古朝鮮<ref>古朝鮮([[檀君神話|檀君朝鮮]]、箕子朝鮮、衛氏朝鮮)のどれを指すかは未詳であるが、自国を朝鮮と呼称するのは13世紀からと見られ、箕子朝鮮を指すものと考えられている。(→井上訳注1980、p.31.)</ref> の遺民が山合に住んでおり、楊山村(後の梁部もしくは及梁部)・高墟村(後の沙梁部)・珍支村(後の本彼部)・大樹村(後の漸梁部もしくは牟梁部)・加利村(後の漢祇部)・高耶村(後の習比部)という6つの村を作っていた。この六つの村を新羅六部と呼ぶ。

楊山の麓の蘿井(慶州市塔里に比定される)の林で、'''馬'''が跪いて嘶いていることに気がついた高墟村の長の蘇伐都利(ソボルトリ)がその場所に行くと、'''馬が消えてあとには大きい卵があった'''。その卵を割ると中から男の子が出てきた<ref>このため閼智(あっち)とよばれた。</ref> ので、村長たちはこれを育てた。10歳を過ぎるころには人となりが優れていたので、出生が神がかりでもあったために6村の長は彼を推戴して王とした。このとき赫居世は13歳であり、前漢の五鳳元年(前57年)のことという。即位するとともに居西干と名乗り、国号を徐那伐(ソナボル)といった。王となって5年、閼英井の傍に現れた'''龍([[娑蘇夫人]])の左脇(『三国史記』では右脇)から'''幼女が生まれた。[[娑蘇夫人]]がこれを神異に感じて、育て上げて井戸の名にちなんで閼英と名づけた。成長して人徳を備え、容姿も優れていたので、赫居世は彼女を王妃に迎え入れた。閼英夫人は行いが正しく、よく内助の功に努めたので、人々は赫居世と閼英夫人とを二聖と称した。

朝鮮の正史である『三国史記』を著した金富軾が中国・宋に使臣として行った時、祐神館に参拝すると女仙の像が安置してあり、館伴学士が「これは貴国の神だがご存知か」と言い、「昔中国の帝室の娘が辰韓に辿り着き、子を生んで海東の始祖となった。娘は地仙となり長らく仙桃山にいた。これがその像だ」と説明した<ref name="北島由紀子104"/>。正史における辰韓、海東の始祖、つまり新羅(の前身)ということは、海東の始祖とは[[赫居世居西干]]である<ref name="北島由紀子104">北島由紀子, 2016, 朝鮮神話に見る女神の原像, 九州大学, https://doi.org/10.15017/1807134, page104</ref>。

また、中国・宋の使臣である王襄が高麗に来た時に作った「東神聖母を祭る文」の中に、'''賢女が国を初めて建てた'''という句があり、つまり、娑蘇が国をはじめて建てたという句を残している<ref>延恩株, 2011, p93</ref>。

慶州国立公園内に「聖母祠遺墟碑」という遺跡があり、「娑蘇が辰韓に来て[[赫居世居西干]]と閼英を生み、東国初の王となった」と記録されている<ref>김성호, 2000-03-16, 씨성으로 본 한일민족의 기원, 푸른숲, ISBN:8971842709, page239</ref>。

== 史書における娑蘇 ==
『三国遺事』巻五「感通第七」条には以下の記述がある<ref>金思燁, 1997-11-15, 完訳 三国遺事, 明石書店, ISBN:978-4750309927, page386</ref>。

<blockquote>神母本中國帝室之女。名娑蘇。早得神仙之術。歸止海東。久而不還。父皇寄書繫足云。隨鳶所止為家。蘇得書放鳶。飛到此山而止。遂來宅為地仙。故名西鳶山。神母久據茲山。鎮祐邦國。靈異甚多。</blockquote>

<blockquote>神母の名は娑蘇とよばれ、彼女は中国の帝室の娘である。神仙の術を得て、海東(朝鮮)に来て住みついて長く帰らなかった。父の皇帝が'''鳶'''の足に手紙をむすびつけて「鳶が止まるところに家を作って住みなさい」と伝えた<ref group="私注">この鳶は日本で言うところの「金鵄」と関連するのではなかろうか。</ref>。娑蘇が手紙を読んでから鳶を放ったところ、仙桃山(慶州の西岳)に飛んでいってそこに止まったので、娑蘇はそこに住み地仙となった。その山は西鳶山と名づけられ、娑蘇神母は久しくこの山を根拠地として国を鎮護し、霊異が非常に多かった。(三国遺事、巻五、感通第七条)<ref group="私注">娑蘇夫人が鳥に導かれて地上に降り立ち住まった点は、岩見の伝承である[[乙子狭姫]]と類似しているように思える。</ref></blockquote>

『三国遺事』巻五「感通第七」条には以下の記述がある<ref>金思燁, 1997-11-15, 完訳 三国遺事, 明石書店, ISBN:978-4750309927, pages385-386</ref>。

<blockquote>其始到辰韓也。生聖子為東國始君。蓋赫居閼英二聖之所自也。故稱雞龍雞林白馬等。雞屬西故也。嘗使諸天仙織羅。緋染作朝衣。贈其夫。國人因此始知神驗。</blockquote>

<blockquote>(娑蘇は)はじめ辰韓にきて、聖子を生み、東国の最初の王となった。たぶん、[[赫居世居西干|赫居世]]と閼英の二聖を生んだことであろう。それで鶏竜・鶏林・白馬(など)の称があるが、(これは)鶏が西がわ(西方)に属するからである。あるとき(娑蘇が)諸天の仙女たちに、羅うすものを織らせ、緋色に染めて朝服を作り、彼女の夫に贈った。国の人がこのことによってはじめてその神験を知った。(三国遺事、巻五、感通第七条)</blockquote>

== 私的考察 ==
娑蘇夫人が住まう場所を求める際に、鵄を放つ場面は、日本神話・神武東征の際の金鵄を思わせる。娑蘇夫人自身が太陽女神であることを示しているように思う。ただし、文献的には名前を見るに、西王母を強く意識した女神と考える。

娑蘇夫人が鶏で表されるのは、鶏雷(黄帝)の妻女神でもあることを示唆していると考える。

ともかく、[[赫居世居西干]]の神話は誰かが誰かを食べたりしない形で、とても美しくまとまっており、「'''神話とはかくありたい'''」というお手本のような神話で素晴らしいと思う。これはおそらく、「聖母マリア」とか「マグダラのマリア」という概念が入ってきた後に、平和的なものに書き換えられた神話だと考える。(日本神話の[[乙子狭姫]]にも似たような印象を受ける。)日本の賀茂系の母神である龍蛇女神はことごとく'''死んでいる'''ので、うらやましい神話だと個人的は思う。

== 家系 ==
* 子:[[赫居世居西干]]
* 子:[[閼英夫人]]
** 孫:南解次次雄

== 参考文献 ==
* Wikipedia:[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A8%91%E8%98%87%E5%A4%AB%E4%BA%BA 娑蘇夫人](最終閲覧日:22-09-12)
** 野村伸一, 2001-04, 東シナ海周辺の女神信仰という視点<!--titleはciniiより引用-->, 慶応義塾大学日吉紀要 言語・文化・コミュニケーション, issue26, 慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会, http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN10032394-20010430-0001, naid:120000805871, ncidAN10032394
** 延恩株, 2011-03, 新羅の始祖神話と日神信仰の考察 : 三氏(朴・昔・金)の始祖説話と娑蘇神母説話を中心に, 桜美林論考. 言語文化研究, volume2, 桜美林大学, http://id.nii.ac.jp/1598/00000737/, pages83-100, issn:2185-0674
** 사소 娑蘇, 韓国民族文化大百科事典, http://encykorea.aks.ac.kr/Contents/Item/E0025743
** ネイバー知識検索 사소 娑蘇, 国語国文学資料辞書, http://terms.naver.com/entry.nhn?docId=695730&cid=41708&categoryId=41711
** 이상희|date=2004-03-10, 꽃으로 보는 한국문화 3, 넥서스, https://terms.naver.com/entry.naver?docId=1837225&cid=42924&categoryId=42924, isbn:8957970258
* Wikipedia:[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B5%AB%E5%B1%85%E4%B8%96%E5%B1%85%E8%A5%BF%E5%B9%B2 赫居世居西干](最終閲覧日:22-09-12)

== 関連項目 ==
* [[赫居世居西干]]
* [[閼英夫人]]
* [[織女]]:娑蘇夫人は殺されることのない[[織女]]である。

== 私的注釈 ==
<references group="私注"/>

== 脚注 ==
<references />

{{デフォルトソート:しやそふしん}}
[[Category:朝鮮神話]]
[[Category:龍蛇神]]
[[Category:鶏]]
[[Category:馬]]
[[Category:金鵄]]
[[Category:織姫]]
[[Category:燃やされた女神]]

案内メニュー