[[エジプト九柱の神々]]の一柱に数えられる'''シュー'''は、エジプト神話の天地創造に関わる大気の神であり、創造神[[アトゥム]]によって湿気の女神[[テフヌト]]と共に創り出された、性別を有する最初の神である。シュー神の名はもともと「空虚」もしくは「立ち上がる者」を意する語[ Pre-Old Egyptian language: šw|šw(=''emptiness''、空虚)][ Pre-Old Egyptian language: šw(=''He who rises up''.、立ち上がる者)]であったが、中王国時代以降「光][ Middle Egyptian language]]: šw(=''light''、光) ]を意味する日常語に変化を遂げ、シュー自らも「光る大気」[ Middle Egyptian language: šwt-rê(=''bright air''、光る大気) ]という神性を帯びるようになった。光る大気としてのシュー神は、天と地の間にあって「四つの風」と共に循環する存在と捉えられており、嵐神としての[[#セト|セト]]とは対照的な穏やかな性格で、'''荒れ狂うことなく生命を育む者'''である<ref group="私注">メソポタミア神話のニンリルに相当すると思われる。</ref>。
そしてまた、天空におけるそしてまた、天空における太陽の通り道を創るため、己の娘である天空の女神[[太陽ヌト]]の通り道を創るため、己の娘であるを彼女と抱き合っていた夫(※シューの息子でもある)の大地神[[天空神|天空のゲブ]]女神から無理やり引き離して高く押し上げる役割を果たすようになり、これによってシューは「太陽の船の守護者」となった。横たわったゲブの上にシューが立ち、[[ヌト]]を彼女と抱き合っていた夫(※シューの息子でもある)の{{仮リンク|大地神|en|Earth god}}[[ゲブ天の川]]から無理やり引き離して高く押し上げる役割を果たすようになり、これによってシューは「太陽の船の守護者」となった。横たわったゲブの上にシューが立ち、の星々を身に纏うヌトを支える図は広く知られている<ref group="私注">この点は中国神話の[[天の川顓頊]]の星々を身に纏うヌトを支える図は広く知られている({{small|■右側に画像あり}})。に相当すると考える。</ref>。
==== セト ====
エジプト九柱の神々の一柱に数えられる'''セト'''は、エジプト神話に登場する[[保護]]と恵みと[[破壊]]と[[渾沌]]の神である。多岐に亘る[[悪神]]としての性格を帯びているが、粗暴さが外敵に向けられる際は[[軍神|戦さ神]](武勇神)・[[英雄]]神として崇め奉られ、[[軍]]と[[兵士|兵]]の[[守護神]]となる。は、エジプト神話に登場する保護と恵みと破壊と渾沌の神である。多岐に亘る悪神としての性格を帯びているが、粗暴さが外敵に向けられる際は戦さ神(武勇神)・英雄神として崇め奉られ、軍と兵の守護神となる。[[火神]]、[[砂漠]]の神、[[変装]]の神、[[羨望]]の神でもあるが、砂漠を行く[[キャラバン|隊商]]にとっては守護神であると同時に[[砂嵐]]を起こす怖ろしい神でもあり、すなわち、この点においてセトは風神の性格を帯びている。[[外国|異邦]]の神とも呼ばれ、[[古代エジプト]]が、砂漠の神、変装の神、羨望の神でもあるが、砂漠を行く隊商にとっては守護神であると同時に砂嵐を起こす怖ろしい神でもあり、すなわち、この点においてセトは風神の性格を帯びている。異邦の神とも呼ばれ、古代エジプトが[[ヒクソス]]の支配を受けた[[エジプト第15王朝|第15]]・[[エジプト第16王朝|16王朝]]時代には、[[メソポタミア]]の嵐神の支配を受けた第15・16王朝時代には、メソポタミアの嵐神[[#バアル|バアル]]と同一視された。また、と同一視された。また、ギリシア神話では[[ギリシア神話#テューポーン|テューポーン]]ではと、キリスト教では[[#テューポーン|テューポーンレヴィアタン]]と、(リヴァイアサン)と同一視された<ref group="私注">中国神話の[[キリスト教祝融]]ではと[[レヴィアタン共工]](リヴァイアサン)と同一視された。に相当する神と考える。</ref>。
==== アメン ====
{{Main|アメン}}
[[ファイル:Amun.svg|thumb|100px|{{center|アメン}}]]
エジプト神話に登場する[[太陽神]]'''アメン'''がその地位を得たのは、[[エジプト中王国|中王国]]時代[[エジプト第11王朝|第11王朝]]の[[メンチュヘテプ2世]]が[[テーベ]](現・[[ルクソール]])を首都と定めてエジプトを再統一した際に[[ラー]]神と一体化して「'''アメン=ラー'''」となったことに始まり、以来、永きに亘ってエジプト文明史の中心に位置する「エジプトの神々の主」とされ、歴代[[ファラオ]]の権威の象徴とされ続けたわけであるが、アメン=ラーとなる以前には、テーベ地方の大気の[[守護神]]にして豊饒神([[農業神]])であった。
=== ギリシアの風神 ===
==== テューポーン ====
{{Main|テューポーン}}
[[ファイル:Typhon Foot Element, about 500-480 BC, Etruscan, bronze - Cleveland Museum of Art - DSC08246.JPG|thumb|left|150px|{{center|テューポーン}}]]
[[ギリシア神話]]に登場する太古の[[巨人]]神'''テューポーン'''は、この神話体系における最大最強の[[怪物]]である。直接の語源は「[[塵旋風|旋風]]」を意味する "{{lang|grc|τύφων}} (typhon)" であるが、[[語源学]]的・[[比較言語学]]的に遡れば[[逆成]]の[[インド・ヨーロッパ祖語]]で「[[埃]](ほこり)…」「[[靄]](もや)…」「[[煙]]…」などを意する[[接頭辞]] "{{lang|pie|dʰewh₂-}}" に行き着く。間接的ではあっても英語 "[[wikt:typhoon|typhoon]]([[タイフーン]])" の語源の一つとされてもいる。
==== アネモイ ====
{{Main|アネモイ}}
[[ファイル:Apeliotes, the east wind; brings a gradual gentle rain, and is a great friend to Vegetation - Stuart James & Revett Nicholas - 1762.jpg|thumb|200px|{{center|アネモイ}}]]
ギリシア神話における風の神たちを'''アネモイ'''といい、上位に4柱、下位に4柱がある。上位のアネモイは、[[アネモイ#北風ボレアース|ボレアース]]が[[北風]]を、[[アネモイ#西風ゼピュロス|ゼピュロス]](ゼフュロス)が[[西風]]を、[[アネモイ#南風ノトス|ノトス]]が[[南風]]を、[[アネモイ#東風エウロス|エウロス]]が[[東風]]を司り、それぞれが[[季節]]や天候に関連している。下位のアネモイはもともとは怪物[[#テューポーン|テューポーン]]によって生み出された邪悪で粗暴な嵐の精霊アネモイ・テュエライであったが、時代を経るに連れて上位のアネモイと混同されていき、[[習合]]していった。