三日月の下にいる竜の傍らには、1号墓の帛画では飛翔する女性が、3号墓の帛画では飛翔する上半身裸の男性が見られ、被葬者の昇仙図となっている<ref name="kexueyuan-1988-p402" /><ref name="huang-p218" />。
竜の下の天門(天上界と現世の境)には2人の役人<ref name="tsuruma-p169" >鶴間 (2004) p.169</ref>が向かい合って座り、その後ろの柱には豹がしがみついている。これは『楚辞』の「招魂」<ref>楚の地に伝わる魂呼(たまよばい)の歌で、天の九重の関門にいる虎豹が、天に昇ろうとする下界の人間を噛み殺すと歌っている。「魂よ帰り来れ。君、天に昇る無れ。虎豹、九関、下人を啄害す。」</ref>を思わせる<ref name="chen-p93">陳 (1981) p.93</ref><ref group="私注">虎や豹は「境界神」として扱われていることが分かる。</ref>。
現世界に入り、天門直下の華蓋の上には一対の鳳凰が、下には人面の奇怪な鳥が飛んでいる<ref name="chen-p93" />。その下の左右には竜が描かれ、下の方で璧を貫き交竜になっている<ref name="han-p142">韓ら (1987) p.142</ref><ref name="zhu-p194" />。その竜に挟まれる形で被葬者の出行の場面が描かれる<ref name="kexueyuan-1988-p402" />。1号墓の帛画では、曲裙の長衣を着た老婦人(被葬者)が杖をついて立ち、後ろには女性3人(腰元であろう<ref name="chen-p93" />)が従い、前に男性2人(天からの迎えの使者か<ref name="chen-p93" />)が跪いている。3号墓の帛画では、劉氏冠<ref>劉邦]]が好んで使ったとされる竹皮の冠。</ref>と朱の長衣をまとい、腰に帯剣した男性が袖に手を入れて歩み、周囲に9人の人物が従っている<ref name="kexueyuan-1988-p402" /><ref group="私注">2頭の交龍が[[女媧]]と[[伏羲]]ではないだろうか。赤い[[女媧]]と青い[[伏羲]]で「太極」を示す。</ref>。