しかし、天照大御神が機屋で神に奉げる衣を織っていたとき、建速須佐之男命が機屋の屋根に穴を開けて、皮を剥いだ血まみれの馬を落とし入れたため、驚いた1人の天の服織女は梭(ひ)が陰部に刺さって死んでしまった。ここで天照大御神はついに怒り、天岩戸に引き篭った。高天原も葦原中国も闇となり、さまざまな禍(まが)が発生した<ref>戸部民夫 『日本神話』 53-54頁。</ref><ref name="寺川1997p27">寺川真知夫 「天石屋戸神話」『日本神話事典』 27頁。</ref>。
そこで、[[神 (神道)|八百万の神々]]が天の安河の川原に集まり、対応を相談した。[[オモイカネ|思金神]]の案により、さまざまな儀式をおこなった。常世の長鳴鳥([[ニワトリ|鶏]])を集めて鳴かせた。そこで、八百万の神々が天の安河の川原に集まり、対応を相談した。思金神の案により、さまざまな儀式をおこなった。常世の長鳴鳥(鶏)を集めて鳴かせた。
鍛冶師の[[天津麻羅]]を探し、[[伊斯許理度売命]]に、天の安河の川上にある岩と鉱山の鉄とで、[[八咫鏡]](やたのかがみ)を作らせた。[[玉祖命]]に八尺の勾玉の五百箇のみすまるの珠([[八尺瓊勾玉]]・やさかにのまがたま)を作らせた。鍛冶師の天津麻羅を探し、伊斯許理度売命に、天の安河の川上にある岩と鉱山の鉄とで、八咫鏡(やたのかがみ)を作らせた。玉祖命に八尺の勾玉の五百箇のみすまるの珠(八尺瓊勾玉・やさかにのまがたま)を作らせた。
[[天児屋命]]と[[布刀玉命]]を呼び、雄[[ニホンジカ|鹿]]の[[肩甲骨|肩の骨]]とははかの木で占い([[太占]])をさせた。[[サカキ|天児屋命と布刀玉命を呼び、雄鹿の肩の骨とははかの木で占い(太占)をさせた。'''賢木(さかき)]]を根ごと掘り起こし、枝に八尺瓊勾玉と八尺鏡と[[布帛]]をかけ、布刀玉命が[[御幣]]として奉げ持った。天児屋命が'''を根ごと掘り起こし、枝に八尺瓊勾玉と八尺鏡と布帛をかけ、布刀玉命が御幣として奉げ持った<ref group="私注">女神の再生に木(植物)を生贄に捧げるところはタンムーズ神話に似る。</ref>。天児屋命が[[祝詞]](のりと)を唱え、[[アメノタヂカラオ|天手力男神]]が岩戸の脇に隠れて立った。(のりと)を唱え、天手力男神が岩戸の脇に隠れて立った。
[[アメノウズメ|天宇受賣命]]が岩戸の前に[[桶]]を伏せて踏み鳴らし、神憑りして胸をさらけ出し、裳の紐を陰部までおし下げて踊った。すると、高天原が鳴り轟くように八百万の神が一斉に笑った天宇受賣命が岩戸の前に桶を伏せて踏み鳴らし、神憑りして胸をさらけ出し、裳の紐を陰部までおし下げて踊った。すると、高天原が鳴り轟くように八百万の神が一斉に笑った<ref>[[#戸部民夫 『日本神話』|戸部民夫 『日本神話』]] 54-55頁。</ref><ref name="寺川1997p27" />。
[[ファイル:Origin_of_Iwato_Kagura_Dance_Amaterasu_by_Toyokuni_III_(Kunisada)_1856.png|thumb|320px|岩戸神楽ノ起顕(三代豊国)]]
これを聞いた天照大御神は訝しんで天岩戸の扉を少し開け、「自分が岩戸に篭って闇になっているのに、なぜ、天宇受賣命は楽しそうに舞い、八百万の神は笑っているのか」と問うた。
天宇受賣命が「貴方様より貴い神が表れたので、喜んでいるのです」というと、天児屋命と布刀玉命が天照大御神に鏡を差し出した。鏡に写る自分の姿をその貴い神だと思った天照大御神が、その姿をもっとよくみようと岩戸をさらに開けると、隠れていた天手力男神がその手を取って岩戸の外へ引きずり出した。
すぐに布刀玉命が[[注連縄]]を岩戸の入口に張り、「もうこれより中に入らないで下さい」といった。こうして天照大御神が岩戸の外に出てくると、高天原も葦原中国も明るくなったすぐに布刀玉命が注連縄を岩戸の入口に張り、「もうこれより中に入らないで下さい」といった。こうして天照大御神が岩戸の外に出てくると、高天原も葦原中国も明るくなった<ref>[[#戸部民夫 『日本神話』|戸部民夫 『日本神話』]] 55-57頁。</ref><ref name="寺川1997p27" />。
八百万の神は相談し、須佐之男命に罪を償うためのたくさんの品物を科し、髭と手足の爪を切って高天原から追放した<ref>[[#戸部民夫 『日本神話』|戸部民夫 『日本神話』]] 59頁。</ref><ref name="寺川1997p27" />。
===日本書紀===
[[ファイル:Amaterasu appearing from the cave..jpg|thumb|200px|大日本名将鑑([[月岡芳年]])]]
『[[日本書紀]]』の第七段の本文では、素戔嗚尊が古事記と同様の暴挙を行う。最後には天照大神が神聖な衣を織るために清浄な機屋(はたや)にいるのを見て、[[素戔嗚尊]]が皮を剥いだ天斑駒を投げ込んだ。すると、天照大神は驚いて梭で自分を傷つけた。このため天照大神は怒って、天石窟に入り磐戸を閉じて籠ったので国中が常に暗闇となり昼夜の区別もつかなかった、とある。