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時が過ぎ八岐大蛇が現れた。頭と尾はそれぞれ八つずつあり、眼は赤い鬼灯のようであった。松や柏が背中に生えていて、八つの丘、八つの谷の間に延びていた。大蛇は酒を飲もうとして、頭を各1つの樽に入れて飲み、酔って眠ってしまった。そこで素戔嗚尊は十握剣(とつかのつるぎ)を拔いて、ずたずたに八岐大蛇を斬った。尾を斬った時、剣の刃が少し欠けた。そこでその尾を割り裂いて見ると、中にひとふりの剣があった。これがいわゆる「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」である<ref group="注・草薙">元の名は天叢雲剣で日本武尊に至って名を草薙剣に改めたという(学研, 1992, p138)。</ref>。素戔嗚尊はこの剣を天神(あまつかみ)に献上する。
そうした後に、湯津爪櫛になった奇稲田姫<ref groupname="注・櫛" />とともに結婚の地を探して、出雲の淸地(すが)を訪れ、宮を建てた。そして「八雲たつ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣作る その八重垣を」と詠んだ。
'''第八段一書(二)'''では、素戔嗚尊は安藝國(あきのくに)の可愛(え)の川上に下り到った。そこに神がいて、名を脚摩手摩(あしなづてなづ・脚摩乳)と言い、その妻の名を稲田宮主簀狭之八箇耳(いなだのみやぬしすさのやつみみ・手摩乳)と言う。この神は身籠っていたが、夫婦ともに悲しんでいて、素戔嗚尊(すさのおのみこと)に告げて「我が生みし子は多しけれども、生む毎(ごと)に輙(すなわ)ち八岐大蛇有りて来たりて呑む。ひとりも存(あ)るを得ず。今、我産まんとす。恐らくはまた呑まれなん。是を以ちて哀傷(かなし)む」と告げた。素戔嗚尊(すさのおのみこと)は教えて「汝、衆(あまた)の菓(このみ)を以ちて、酒、八甕(やはち)を釀(か)むべし。我まさに汝が為に八岐大蛇を殺さん」と言った。二神、教えの隨(に酒を設〈ま〉く〈用意した〉)、とある。

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