ここで述べるのは、本作の「前編」に当たり、合わせて三部作をなす『ラーイオス』、『オイディプース』(いずれも亡失)で描かれたと考えられるあらすじである。
[[テーバイ]]王[[ラーイオス]]は「子をなすな。その子の手にかかって死ぬであろう」という[[アポローン]]の[[神託]]を受けながら、妃[[イオカステー]]との間に子をもうける。ラーイオスは神託を恐れて子供を山中に棄てさせるが、子供は拾われて[[テーバイ王ラーイオスは「子をなすな。その子の手にかかって死ぬであろう」というアポローンの神託を受けながら、妃イオカステーとの間に子をもうける。ラーイオスは神託を恐れて子供を'''山中に棄てさせる'''が、子供は拾われて'''オイディプース]]と名付けられ、[[コリントス]]で王の養子として育てられる。'''と名付けられ、コリントスで王の養子として育てられる。
オイディプースは成人すると、父とは知らずにラーイオスを殺し、テーバイの民を脅かしていた[[スピンクス]]を退治する。オイディプースは母とは知らずイオカステーと結婚してテーバイ王となり、2人の間にエテオクレース、ポリュネイケース、アンティゴネー、イスメーネーが生まれる。彼はやがて自分の素性を知ることとなり、テーバイから追放されるオイディプースは成人すると、父とは知らずにラーイオスを殺し、テーバイの民を脅かしていたスピンクスを退治する。オイディプースは母とは知らずイオカステーと結婚してテーバイ王となり、2人の間にエテオクレース、ポリュネイケース、アンティゴネー、イスメーネーが生まれる。彼はやがて自分の素性を知ることとなり、テーバイから追放される<ref>この部分は[[ソポクレース]]作『[[オイディプス王]]』の題材となった。この部分はソポクレース作『オイディプス王』の題材となった。</ref>。オイディプースは、このとき父親を助けようとしなかったエテオクレースとポリュネイケースの兄弟に呪いをかけて去った<ref>オイディプースの末路はソポクレース作『[[コロノスのオイディプス]]』に描かれている。オイディプースの末路はソポクレース作『コロノスのオイディプス』に描かれている。</ref>。
エテオクレースとポリュネイケースはテーバイの王位継承をめぐって争いを起こす。その結果、追放されたポリュネイケースは[[アルゴス (地名)|アルゴス]]王[[アドラーストス]]を頼み、アルゴスの軍勢を率いてテーバイに攻め寄せる。エテオクレースとポリュネイケースはテーバイの王位継承をめぐって争いを起こす。その結果、追放されたポリュネイケースはアルゴス王アドラーストスを頼み、アルゴスの軍勢を率いてテーバイに攻め寄せる。
=== 本作のあらすじ ===
アルゴス勢に囲まれたテーバイの城内、エテオクレースは騒然とする民衆を励まし、恐れおののく乙女たちを叱咤する。そこへ使者が登場し、アルゴス勢の布陣を告げる。エテオクレースは、城の7つの門に攻めかかろうとするアルゴスの将の名前を聞き、それぞれテーバイ勢から守りの将を選んで配置する。最後に、第7の門にポリュネイケースが挑むと聞き、エテオクレースは憤怒する。乙女たちはエテオクレースに運命を避けて第7の門に行かぬよう懇願するが、エテオクレースはオイディプースの呪いの成就が間近に迫っていることを知りつつ、あえて第7の門へ向かう。アルゴス勢に囲まれたテーバイの城内、エテオクレースは騒然とする民衆を励まし、恐れおののく乙女たちを叱咤する。そこへ使者が登場し、アルゴス勢の布陣を告げる。エテオクレースは、城の7つの門に攻めかかろうとするアルゴスの将の名前を聞き、それぞれテーバイ勢から守りの将を選んで配置する。最後に、第7の門にポリュネイケースが挑むと聞き、エテオクレースは憤怒する。乙女たちはエテオクレースに運命を避けて第7の門に行かぬよう懇願するが、エテオクレースはオイディプースの呪いの成就が間近に迫っていることを知りつつ、あえて第7の門へ向かう。
再び使者が登場、テーバイの町が守られたこと、しかしエテオクレースとポリュネイケースは相討ちになって死んだことを告げる。2人の亡骸が運ばれてくる。アンティゴネーとイスメーネーの姉妹は2人へのたむけとして交互に哀悼の歌を詠い捧げる。再び使者が登場、テーバイの町が守られたこと、しかしエテオクレースとポリュネイケースは相討ちになって死んだことを告げる。2人の亡骸が運ばれてくる。アンティゴネーとイスメーネーの姉妹は2人へのたむけとして交互に哀悼の歌を詠い捧げる。
そこへ別の使者が登場し、国を護ったエテオクレースの亡骸は丁重に葬り、国に攻め入ったポリュネイケースの亡骸は場外に棄て置くこととする評議会の見解と評決を2人に伝える。しかしアンティゴネーはたとえ自分独りであっても、危険を冒してでも兄ポリュネイケースの墓をつくり埋葬することをやり遂げると、その使者に宣言をする。 === 本作の正統性への疑義 ===全体の約5分の1にあたる861行以降の218行についてその正統性に疑義が生じている。 * 861~874行** この14行は後代に付加されたと考えられている。861行でアンティゴネーとイスメーネーが登場していながら960行まで全く沈黙しており<ref>人文『全集』では861行~960行までコロスとアンティゴネとイスメネの三者が交互に哀悼の歌を詠っている。</ref>、それが「非アイスキュロス的沈黙」とされているからである。 なお、861行での姉妹の登場に関しては日本語訳において以下の差異がある。* 人文『全集』 861行〔報せをきいて、2人の王の妹たち右方より急いで登場してくる。〕* 鼎 『全集』 861行〔この時、柩の後よりアンティゴネーとイズメーネーの姉妹入り来るを認めて。〕* 筑摩『文庫』 861行に姉妹に関する記述はなく、864行でコロスが2人の姿を認めることを詠っている。* 岩波『全集』 861行に姉妹に関する記述はなく、864行でコロスが2人の姿を認めることを詠っている。* 岩波『文庫』 861行に姉妹に関する記述はなく、864行でコロスが2人の姿を認めることを詠っている。* 生活『悲壯劇』 861行〔此の時、棺の後よりアンティゴネーとイズメーネーの姉妹入り来るを認めて。〕<ref>人文『全集』、鼎『全集』、生活『悲壯劇』のいずれも864行において2人の姿を認めていることをコロスが詠っている。</ref>* 875行~960行** この86行は正統性を支持する意見が多数である。しかし、写本間で話者指定が混乱している。 なお、話者指定に関して日本語訳において以下の差異がある。* 人文『全集』 861行~960行までコロス、アンティゴネー、そしてイズメーネーが交互に哀悼の歌を詠っている。* 鼎 『全集』 コロスが哀悼の歌を詠っている。* 筑摩『文庫』 コロスが哀悼の歌を詠っている。* 岩波『全集』 コロスが二手に分かれて交互に哀悼の歌を詠っている。* 岩波『文庫』 コロスが哀悼の歌を詠っている。* 生活『悲壯劇』 コロスが哀悼の歌を詠っている。* 961行~1004行** この44行は正統性を否定して削除する意見があるが、正統性が認められている。しかし、話者指定において混乱があり、コロスに指定する意見とアンティゴネーとイスメーネーに指定する意見とがある。 なお、話者指定に関して日本語訳はいずれも「時折コロスの詠を交えてアンティゴネー、イズメーネーが交互に哀悼の歌を詠う」ようになっている。但し、筑摩『文庫』、岩波『全集』、岩波『文庫』は話者指定の混乱についての注記がある。 * 1005行~1078行** この74行は正統性を支持する意見もあるが、[[ソポクレス]]の[[アンティゴネー]]競演後<ref>[[エウリピデス]]の[[フェニキアの女たち]]の競演の後とする説もある。そうするとさらに後の時代ということになる。</ref> にそれを基にして付加されたとの意見が大勢を占めている<ref>人文『全集』は疑義があるとする立場を採っていない。</ref>。 なお、この最終場面が後代の付加と考えられている主な理由は以下の通りである。* 「テーバイを攻める七将」が競演された当時、ギリシア悲劇は2人の俳優しか登場できなかったはずであるのに、ここでは3人の俳優が登場している<ref>イズメーネーの科白が無いことから、イズメーネー役を「黙役」(科白の無い役を演じる俳優のこと。正規の俳優の数には含まれない。)が代わりに務め、本来のイズメーネー役の俳優が布告使役になれば辻褄が合うように思えるが、イズメーネーから布告使に舞台上で早変わりをし、同時に「黙役」と咄嗟のうちに入れ替わらなければならない為無理がある。</ref>。* カドモスの都の評議会のアナクロニズム。* アンティゴネーの言う兄ポリュネイケースの弔いの仕方が[[ソポクレス]]の[[アンティゴネー]]に酷似している。などである。そこへ別の使者が登場し、国を護ったエテオクレースの亡骸は丁重に葬り、国に攻め入ったポリュネイケースの亡骸は場外に棄て置くこととする評議会の見解と評決を2人に伝える。しかしアンティゴネーはたとえ自分独りであっても、危険を冒してでも兄ポリュネイケースの墓をつくり埋葬することをやり遂げると、その使者に宣言をする。
== 七将たち ==
本作で使者が告げるアルゴス勢の七将は登場順に次のとおり<ref>[[ソポクレース]]作『[[コロノスのオイディプス]]』でポリュネイケースの台詞で語られる七将も同じである(戦いの前であるため門の配置はない)。ソポクレース作『コロノスのオイディプス』でポリュネイケースの台詞で語られる七将も同じである(戦いの前であるため門の配置はない)。</ref>。* [[テューデウス]](プロイティデス門)、対する守備の将はアスタコスの子メラニッポス([[スパルトイ]]の後裔)テューデウス(プロイティデス門)、対する守備の将はアスタコスの子メラニッポス(スパルトイの後裔)* [[カパネウス]](エレクトライ門)、対する守備の将はポリュポンテースカパネウス(エレクトライ門)、対する守備の将はポリュポンテース* [[エテオクロス]](ネイスタイ門)、対する守備の将は[[クレオーン]]の子メガレウス(スパルトイの後裔)エテオクロス(ネイスタイ門)、対する守備の将はクレオーンの子メガレウス(スパルトイの後裔)* [[ヒッポメドーン]](オンカ・アテーナー門)、対する守備の将はオイノプスの子ヒュペルビオスヒッポメドーン(オンカ・アテーナー門)、対する守備の将はオイノプスの子ヒュペルビオス* [[パルテノパイオス]](北の門、パルテノパイオス(北の門、[[アムピーオーン]]の墳墓に近いとされる)、対する守備の将はオイニプスの子アクトール(ヒュペルビオスの兄弟)* [[アムピアラーオス]](ホモイロイデス門)、対する守備の将はラステネスアムピアラーオス(ホモイロイデス門)、対する守備の将はラステネス
* ポリュネイケース(第7の門)、対する守備の将はエテオクレース
== 舞台 ==
[[File:TUGTI-11-1970-c.jpg|thumb|東京大学ギリシア悲劇研究会上演「テーバイ攻めの七将」]]
1970年10月 [[東京大学ギリシア悲劇研究会]] 第11回公演 於:千代田区公会堂
* 演出:大沼信之 台本:手島兼輔・東京大学ギリシア悲劇研究会