イナンナ/イシュタルの最も有名な神話は、姉のエレシュキガルが支配する古代メソポタミアの冥界への降臨とそこからの帰還を描いた物語である。エレシュキガルの玉座に着いた彼女は、冥界の7人の審判によって有罪とされ、死に追いやられる。3日後、ニンシュブルはすべての神々にイナンナを連れ戻すように懇願する。エンキだけは、イナンナを救うために、性のない2人の人間を送り込んだ<ref group="私注">アッティスのように去勢したもの、あるいは異性の扮装をした者を連想させる。</ref>。彼らはイナンナを冥界から追い出すが、冥界の守護者であるガラは彼女の夫ドゥムジをイナンナの代わりとして冥界に引きずり下ろす。やがてドゥムジは1年の半分を天に帰ることを許され、姉妹のゲシュティアンナは残りの半分を冥界にとどまり、季節が循環することになる。
== 私的解説 ==
イナンナは冥界に下っているほか、冥界の食物を食したという神話もあるので、「養母としての女神」の性質が強いけれども「吊された女神」でもあり、複合的な女神と考える。純粋に「養母としての女神」といえるのはむしろ、イナンナの帰還に力を尽くしたニンシュブルのほうであろう。
== 呼称 ==
* [http://oracc.museum.upenn.edu/amgg/listofdeities/inanaitar/ Ancient Mesopotamian Gods and Goddesses: Inana/Ištar (goddess)]
* [https://www.washington.edu/news/2015/05/05/documents-that-changed-the-world-the-exaltation-of-inanna-2300-bce/ "Documents that Changed the World: The Exaltation of Inanna, 2300 BCE"], University of Washington News, 5 May 2015
== 私的解説 ==
イナンナが時に裸体で描かれることは、「黄泉の国での姿」を暗示しているといえようか。(正常とは逆の姿、ということで)
また、イナンナとは、元は「'''熊の女神'''」であり、広く「天の女神」であると考える。熊の獰猛さが軍神としてのイナンナに通じるとはいえないだろうか。「金星」とは、「死と再生を自律的に繰り返す」というイナンナの性質の一部を特に強調した姿と思う。
== 関連項目 ==
[[Category:養母としての女神]]
[[Category:鳥神]]
[[Category:豊穣神吊された女神]]