先祖に該当する者が赤ん坊のうちに死んでしまったら、理論的には子孫はいないはずなので、これは特定の氏族の「'''意図的な先祖隠し'''」も兼ねたもの、といえる。祖神神話を書き換えて、別のところに先祖を求めることにしたのだろう。そして、更に「人身御供」を正当化する方向へも話を変えることにしたと思われる。ただ、特に王権などの身分や地位や物質的な財産の継承の根拠は「血筋」に求められることが古代においてもほとんどだったと思うので、軽率に先祖を書き換えてしまったら、先祖の権威によって得られたはずのものも得られなくなる、ということにもなりかねない。そのため、神話を書き換えたのは、書き換えても支障がないくらいに権力を有していたものが、なにがしかの目的をもって、敢えて書き換えた、のだとも言えるのではないかと思う。高良大社には、本来高良山に高木神(=高御産巣日神、高牟礼神)が鎮座いたところ、高良玉垂命がのっとってしまったという伝承があり、重要な神社の祭神が変えられてしまった出来事と、祖神神話の書き換えには関連性があるのではないか、と推察する。
=== 菊姫物語 ===
== 参考文献 ==