篠ノ井有旅には'''犬石'''という地名があり、その名の由来となった犬石が存在する。由来は以下の通り。
<blockquote>むかし長者窪に住んでいた長者の家に旅の僧が宿を求めた。長者は僧の持つ大金に目がくらみ殺して奪った。長者の家はそのせいで滅びてしまった。残された長者の犬は猛り狂い人々に害をなした。そこで産土神さまがあらわれ犬を諭された為、犬は改心して石と化し集落を護るようになったという。なおその過程で産土神さまは犬に追われ里芋で滑りゴマで目を突いたそうで、当地では近年まで犬を飼わず里芋やゴマを作らない戒めがあったそうだ。犬石のある平地を長者窪と呼んでいる。むかし長者窪に住んでいた長者の家に旅の僧が宿を求めた。長者は僧の持つ大金に目がくらみ殺して奪った。長者の家はそのせいで滅びてしまった。残された長者の犬は猛り狂い人々に害をなした。そこで産土神さまがあらわれ犬を諭された為、犬は改心して石と化し集落を護るようになったという。一説に旅の僧は平氏の落ち武者であったと言われている。</blockquote> 別の話として <blockquote>産土神さまは犬に追われ里芋で滑りゴマで目を突いたそうで、当地では近年まで犬を飼わず里芋やゴマを作らない戒めがあったそうだ。<ref>[http://oinuwolf.blog.fc2.com/blog-entry-810.html 長野県長野市篠ノ井有旅の犬石]、狼やご神獣の、お姿を見たり聞いたり民話の舞台を探したりの訪問記 -主においぬ様信仰ー(最終閲覧日:24-11-26)</ref><ref>長野市立博物館だより、第12号、1988-10-1</ref></blockquote>
== 犬石地区の雨乞いのやり方 ==
* 蓑笠を身に着けて聖(ひじり)池にいき、その水を濁す。
* 戸隠の九頭龍(くずりゅう)権現へ行って祈願する<ref>[https://adeac.jp/nagano-city/text-list/d100100/ht002810 焼ける大地]、長野市/長野市デジタルミュージアム ながの好奇心の森(最終閲覧日:24-11-26)</ref>。
== 犬石の虫送り ==
<blockquote>犬石の虫送り行事は、毎年七月三十一日の夜行われる。稲藁や麦藁(むぎわら)で円い樽(たる)形を作り、その底に棒を二本並べ通したミコシを一丁作る。子供たちも簡単なものを数丁作ってこのミコシに袋に入れた害虫を乗せる。夕食後、区民がみな集まり、青年と子供はミコシをかつぐ者、'''鉦(かね)や太鼓をたたく'''者、警護をする者、松明(たいまつ)をかかげる者とそれぞれ分担して、「'''菜ア虫送れ、乞食虫送れ'''」と大声で唱えながら村中をまわる。行列が村境の馬捨場へ来たところでこのミコシを'''焼き捨てる'''。[http://bunkazai-nagano.jp/modules/dbsearch/page1127.html 犬石の虫送り行事]、長野市の文化財データベース(最終閲覧日:24-11-26)</blockquote>
== その他よもやま ==
有旅は山布施の南にある地区。こちらの犬神は暴れて産土神を追いかける犬で、「犬の皮をかぶった神」と言おうか。これは「疫病神」系のお犬様と考える。長者とは'''[[羿]]'''([[黄帝]])のこと、僧は[[炎帝神農|炎帝]]のこと、犬神は'''[[伏羲]]'''、産土神は'''[[女媧]]'''といえる。里芋やゴマが禁忌なのは、本来それが女神から発生したものだからではないだろうか。こちらの犬石の首は、石材として使ってしまってないそうである。元は、もっと違った伝承があったのかもしれないが、ともかく「'''首を取った'''」ことにしたかったので、こういう話を当てはめた傾向もあるのではないか、と思う。誰の首を取りたかったのかは、まあ「ご愛嬌」ということで。
犬石に伝わる2つの犬神の伝承は、元々別系統のものだったと考える。産土神が犬を説得する話は、中国の「西王母と[[黒耳]]」に近い話に思える。その一方、産土神が犬神に追い回される話は、もっとハイヌウェレ的な印象を受け、南から里芋耕作の伝播と共に来たもので、縄文系の人々の神話と考える。
そして、一番怖いと思ったのは、雨乞いで井戸に縛った仏を投げ込む、というもの。おそらく古代において、雨乞いで人身御供を用いていた名残なのではないだろうか。人身御供は水神に捧げる、というよりは、本来の意味としては「'''水神に見立てた人身御供を疫病神に捧げて慰撫する'''」というものだったはずなのだが、その点の概念はもう混乱しているように思う。当地での大国主命は「'''犬神'''」としては敬われる傾向が強いのに、人間の「'''長者'''」になると悪い神の傾向が強くなるように思う。長楽寺の井戸が「長者の井戸」と呼ばれるのは、この長者がかつては'''水神'''だった名残なのではないか、と思う。
== 参考文献 ==
* [http://jobibouroku.blogspot.com/2018/08/blog-post_72.html 布施八龍大権現@長野市篠ノ井山布施]、じょっ、信濃備忘録。(最終閲覧日:24-11-26)
== 関連項目 ==
* [[小泉小太郎伝説]]
* [[意岐萩神]]:荒ぶる犬神では、と思われる神
* [[荒船山]]:犬神伝承の類話と思われる赤城山伝承の紹介
== 脚注 ==