「私は出産で力を使い果たし、このままでは生きていかれません。川の底の我が家で休まなければなりません。どうかこの子を預かって育ててください。」
そう言うと、大蛇は老人に赤子と龍の赤い玉を預けて、犀川に入って行ってしまった。老人は赤ん坊に小太郎と名付け、妻と一緒に大切に育てた。そう言うと、大蛇は老人に赤子と龍の赤い玉を預けて、犀川に入って行ってしまった。老人は赤ん坊に小太郎と名付け、妻と一緒に大切に育てた。身長は小さいものの、たくましい体に成長した小太郎だったが、食べては遊んでばかりで仕事をしたことがない。14、5歳になった頃、養母から仕事を手伝うよう促された小太郎は、小泉山へ薪を取りに出かけることにした。母親からもらった龍の玉を使うと仕事は簡単に済んだ。小太郎は萩の束を2つほど持ち帰った。これは山じゅうの萩を束ねたものだから、使うときは1本ずつ抜き取るようにして、決して結びを解いてはいけない、と小太郎は養母に伝えたが、たった1日でそのようなことができるはずがないと思った養母は結びを解いてしまった。すると、束がたちまち膨れあがり、養母はその下敷きになって動けなくなってしまった。 「お母さん、僕の言うことを信用しないから、罰を受けたんですよ。次から気をつけてください。」 小太郎はそう言いながら、萩をのけて養母を助け出した。小太郎のとってきた萩の薪はとても良く燃えて怖いくらいだった。 薪取りで失敗したので、小太郎は今度は養父の畑仕事を手伝うことにした。石ころだらけの山坂を開墾する厳しい仕事だ。農地は少ないし、仕事は大変だし、小太郎は嫌気がさした。 「こんなに山が険しくては田畑も少ししか作れない。せめて犀川の周囲がもっと平らだったら村のみんなも仕事が楽になるのになあ。」 と小太郎は思った。そこで、小太郎はなんとかならないものかと、母親の大蛇に会いに行くことにした。実は母親の大蛇は犀川の女神の犀竜だったのだ。母親は尾入沢というところに住んでいて、近頃ではすっかり具合も良くなり、天気の良い日には陸に上がってきて、尾だけを水につけて日向ぼっこしながら昼寝をしている、と噂で聞いたのだ。