1957年(昭和32年)発行の『信濃の民話』(未來社『日本の民話』シリーズ)には、長野県の各地(南安曇郡・北安曇郡・東筑摩郡・小県郡)に伝わる小泉小太郎および泉小太郎の民話を一つの物語にまとめた「'''小泉小太郎'''」が収録されている<ref name="shinano" />。前半部分は概ね先に示した小泉小太郎のあらすじに沿った内容であるが、小太郎の母は山の向こうの湖の中で生きており、後半で成長した小太郎が母をたずねて旅立ち、再会した二人が力を合わせて湖を切り開くという内容である<ref name="shinano" />。同様の物語は1973年(昭和48年)発行の『民衆の英雄』(角川書店『日本の民話』シリーズ)にも「'''小泉小太郎と母竜'''」(瀬川拓男による再話)の題で収録されているが、本作では小太郎の父親が開拓者集団の長(おさ)という設定であり、松本盆地のみならず、同じく湖であった上田盆地についても、三頭山から虚空蔵山を結ぶ半過の崖を小太郎と母竜が突き崩し、排水したとするなど<ref>『日本の民話 4 民衆の英雄』6 - 15ページ。</ref><ref>かつて湖だった上田盆地を排水したという内容の民話は、ほかにも大ネズミが食い破ったという話(『日本伝説叢書 信濃の巻』[NDLDC:953569/106 157- [NDLDC:953569/107 159ページ)や、[[ダイダラボッチ]]が突き崩したという話(『佐久口碑伝説集 北佐久編』105ページ)が伝えられている。</ref>、『小県郡史 余篇』や『信濃の民話』のものとは異なる点もある。この「'''小太郎と母龍'''」の物語はテレビアニメ『まんが日本昔ばなし』で放送され、同作のDVD第5巻に収録されている<ref name="dvd">「小太郎と母龍」『まんが日本昔ばなし DVD第5巻』 (EAN:4988104066459) より。</ref>。演出は樋口雅一、文芸は沖島勲、美術は小関俊一、作画は高橋信也が担当した<ref name="dvd" />。
『信濃の民話』の編集委員の一人であった松谷みよ子は、「水との闘いの民話」の多くが陰惨な内容であるなか、小泉小太郎を明るく雄大な物語として捉えた<ref>『講談社現代新書 370 民話の世界』36 - 39ページ。</ref>。忘れられつつあった小泉小太郎を復活させ、[[秋田県]]の民話や自身の体験、また子供たちとの関わりなどをもとに、松谷が[[1959年]](昭和34年)度に創作したのが『[[龍の子太郎]]』である。忘れられつつあった小泉小太郎を復活させ、秋田県の民話や自身の体験、また子供たちとの関わりなどをもとに、松谷が1959年(昭和34年)度に創作したのが『龍の子太郎』である<ref>『松谷みよ子全集 9 龍の子太郎』170 - 171ページ。</ref><ref>『講談社現代新書 370 民話の世界』39 - 40、57 - 65ページ。</ref>。
== 参考文献 ==