6.ある時、河が大反乱を起こして洪水が起きた。気の毒な天災であって、祭祀を行っても効き目はなかった。姜王子にとっては、これはクーデターを起こす好機だった。王子は父親であった姫補佐官に酒を飲ませて殺し、母親を捕らえて「天が禍を起こすのはお前の政治が悪いからだ。お前が生け贄になれ。お前は火と太陽の女神なのだから、罪がなければ焼け死ぬことはないだろう。」と言って、母親に火をつけ焼き殺した。姜女王は麻薬を飲まされて意識が朦朧としていたので抵抗できなかったのだ。姜王子は「悪い女性が王なので天が怒った。」と姉妹に述べさせた。そして、以後、中国では「婿というものはよくよく信用せずに、こき使えば良いもの」とされた。姫青年を信用せず、こき使っただけの姜王子の親族の行為はこれで正当化された。また、「'''寡婦は夫が死んだら焼き殺されねばならない。'''」と定められた。この思想は中国国内というよりは中国の外で広まり、印欧語族の'''寡婦殉死'''の制度に繋がった。また「'''年取った親は殺さねばならない。'''」とも定められたが、さすがに反対が多くて'''すぐに廃れた'''。「'''王の政治がうまくいかない場合は神の加護が得られないためで、王を殺さねばならない'''」、とも言ったが、当然自分の首を絞めかねない定めなので、中国国内ではほとんど適用されず、採用させられたのはやはり印欧語族だった。そして、殺された姫補佐官は酒宴の席で殺されたので「'''酒をふるまう神'''」として神格化され始めた。酒瓶の象徴は[[ヒョウタン]]とされた。
7.しかし、王族が両親を殺して王位を簒奪したというのは外聞が悪い。そこで、「河が反乱を起こしたので、女王と姫補佐官は河の神の怒りを収めるため、洪水を収めるために生け贄にせざるを得なかった。彼らが河と嵐の神を鎮めたのだから、今度は'''姫補佐官を河の神として祀ることとしよう'''。そして'''河の神が怒らないように人身御供を捧げよう'''。女王は太陽女神だったのだから、死後は'''月の女神'''となって人々を見守っている、と言うことにしよう。」とすることにした。最初のうちは一応姉妹の中から女王を立てて、姜王子はその補佐官である、という体裁を採ったが、すぐに「両親を生け贄にした新女王は悪者だ。」と言いがかりをつけて新女王を廃し、姜王子自身が王位に就いた。姜王子は親殺しではない。'''親殺しは姉妹の方'''で、姜王子は人々のためにやむなく両親を犠牲にされた可哀想な王、ということになった。少なくとも表向きは。「'''女みたいな悪者を王位に就けてはいけない。'''」という屁理屈ができた。そして、以後家というものは「男が次ぐ。女は財産を持ってはならない。」と定めた。そうすれば、自分が即位したり、母親や姉妹の命や財産を奪ったことを正当化することができると考えたのだ。財産とは悪い女が持っていてはならないものなのだから。姜王子が「自分は火の神・祝融の化身で、太陽神である。父補佐官と母女王の代理でもある。」と述べて'''人身御供を行う古い祭祀を復活させた'''りしたので、中国ではまた人を食べるようになった。いやだ、なんて言ったら姜王子に殺されてしまう、と誰もが知っていた。姜王子は'''酒と麻薬'''で親を殺す恐ろしい男だ、とみな考えていた。で親を殺した恐ろしい男だ、とみな考えていた。
8.ともかく親の姫補佐官が「'''食人は禁止。祭祀における人身御供は禁止。'''」としたので、人身御供や食人を行うにはそれなりの理由が必要だと説明せねばならない。一つには、食人と祭祀を切り離して、祭祀の方は「'''殺すだけで食べないのだから、禁止事項には当たらない。'''」という方便が考え出された。「土神(姫補佐官)に捧げた人身御供は稲や作物を生やさせるためのものである。'''死体から生えた食物を食べるのだから食人ではない。土神(姫補佐官)に人身御供を捧げて食物や桑が生まれるのだから、'''人身御供は食物となる'''植物や蚕の親'''である。」とされた。この頃はまだ「太陽女神」の思想が残っていたので、「女性が天(円)、補佐官が地(方)」という考え方が強かったのだ。姫補佐官は'''水神'''と'''土神'''とされた。食人は祭祀を離れ特別な日のごちそうとされるようになった。