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、 2024年11月5日 (火)
[[File:大圣遗音琴面.jpg|thumb|唐の名琴『大聖遺音』、[[紫禁城#故宮博物院|故宮]]]]
'''古琴'''(こきん、クーチン、{{ピン音|gǔqín}})は、[[中国]]の古い[[伝統]][[楽器]]。'''七弦琴'''(しちげんきん)、'''瑶琴'''(ようきん)とも呼ぶ。3000年の歴史がある[[撥弦楽器]]で、[[八音]]の「糸」に属し、7本の弦を持つ。[[箏]]などと違い、琴柱(ことじ)はなく'''徽'''(き)と呼ばれる印が13あり、これに従い、左指で弦を押さえて右指で弾く。古琴演奏技は、2003年、[[国際連合教育科学文化機関|ユネスコ]]の無形文化遺産保護条約に基づく「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に掲載され、2009年9月に[[無形文化遺産]]として正式登録された<ref>{{citation|url=http://www.unesco.org/culture/ich/en/RL/guqin-and-its-music-00061|title=Intangible Heritage: Guqin and its music|publisher=UNESCO}}</ref>。
古琴は中国の文人が嗜むべきとされた“[[琴棋書画]]”の一番目である。[[孔子]]、[[諸葛亮|諸葛孔明]]、[[竹林の七賢]]の[[嵆康]]、[[陶淵明]]、[[白居易]]など、歴史上著名な多くの文人によって演奏された。日本でも[[菅原道真]]、[[重明親王]]が学んだことが知られる。「君子左琴」「右書左琴」「伯牙絶弦」「知音」など、琴にまつわる故事成語も多い。
[[ボイジャー計画|宇宙探査機ボイジャー]]に積載された[[ボイジャーのゴールデンレコード|ゴールデンレコード]]には[[管平湖]]による古琴の演奏が収められている。
== 構造 ==
古琴の胴体は全長130cm前後で、伝統的に[[アオギリ]]製とされるが<ref name="cidian"/>、それ以外の木材も使われ、雲杉([[トウヒ属]])製も人気が高い<ref>{{citation|和書|url=http://www.nfgqw.com/qsview.asp?id=32|title=梧桐、泡桐、杉木哪種作琴材最好|publisher=南風琴社|date=2010-09-29}}</ref>。7本の弦を有し、演奏者から見て遠い方から順に第1弦、第2弦、…、第7弦と数える。[[調弦]]方法にはさまざまなものがあるが、もっとも基本的な正調では第1弦から順に C D F G A c d であり、[[開放弦]]で[[五音音階]]を奏でることができる<ref name="cidian">{{cite book|和書|title=中国音楽詞典|publisher=人民音楽出版社|year=1985|pages=305-306}}</ref>。右手の小指以外の4本の指を使って弾く。複数の弦を同時に弾くこともあり、音程としては八度・五度などが使われる。
[[File:Zheng diao.ogg|thumb|right|散音]]
[[File:Fanyin.ogg|thumb|right|泛音]]
[[File:PL clip.ogg|thumb|right|按音]]
[[ギター]]の[[フレット]]や琴柱のようなものは存在しない。左手も小指以外の4本の指を使うが、左指の使い方には散・泛・按の3通りがある<ref name="cidian"/>。
* 散 - 左指を使わない(開放弦)
* 泛 - 左指で軽く弦に触れて倍音を出す([[フラジオレット]])
* 按 - 左指で弦を押さえて音の高さを変える。弾きながら指を動かして音高を変化させる技法([[ポルタメント]])が多用される。
[[File:Zhang Ziqian.jpg|thumb|古琴を弾いている[[張子謙]]]]
左指で押さえる場所を示す13個のしるしを「徽」と呼び、演奏者から見て右から左へ第一徽・第二徽……と呼ぶ。徽は開放弦に対する弦長比が単純な[[分数]]になるように定められており([[純正律]]を参照)、徽同士の間隔は一定しない。開放弦が C の場合、徽と音の関係は以下のようになる<ref>{{cite book|和書|title=中国音楽詞典|publisher=人民音楽出版社|year=1985|pages=307}}</ref>。
{|class="wikitable"
! 徽
| 13 || 12 || 11 || 10 || 9 || 8 || 7 || 6 || 5 || 4 || 3 || 2 || 1
|-
! 弦長比
| {{分数|7|8}}
| {{分数|5|6}}
| {{分数|4|5}}
| {{分数|3|4}}
| {{分数|2|3}}
| {{分数|3|5}}
| {{分数|1|2}}
| {{分数|2|5}}
| {{分数|1|3}}
| {{分数|1|4}}
| {{分数|1|5}}
| {{分数|1|6}}
| {{分数|1|8}}
|-
! 按
| D<ref>純正律のDより若干高い。</ref> || E{{flat}}<ref>純正律の音程。ピタゴラス音律の音程より若干高い。</ref> || E<ref name="#1">純正律の音程。ピタゴラス音律の音程より若干低い。</ref> || F || G || A<ref name="#1"/> || c || e || g || c<sup>1</sup> || e<sup>1</sup> || g<sup>1</sup> || c<sup>2</sup>
|-
! 泛
| c<sup>2</sup> || g<sup>1</sup> || e<sup>1</sup> || c<sup>1</sup> || g || e || c
| e || g || c<sup>1</sup> || e<sup>1</sup> || g<sup>1</sup> || c<sup>2</sup>
|}
按音の場合は、徽の位置ちょうどを押さえるだけでなく、徽と徽の間の位置を押さえる場合もある。その位置を示す場合は、第八徽と第九徽のちょうど中間を「八徽半」と呼んだり、徽と徽の間を10等分して「分」を用いる、すなわち例えば第七徽と第八徽の間を10等分した6番目の位置を「七徽六分」、第六徽と第七徽の間を10等分した2番目の位置を「六徽二分」という風に<ref>減字譜にはそれぞれ「七六」「六二」のように示される。</ref>、いわば[[小数]]のように呼ぶ。
以下に散音をCとしたときの[[ピタゴラス音律]]による押さえる位置を示す。
{|class="wikitable"
|-
!按音
!徽
|-
| C||散音<ref>減字譜には「艹」で示される。</ref>
|-
| D{{flat}}||十三徽六分<ref>この位置は実際の音楽ではほとんど使われない。</ref>
|-
| D||十三徽一分<ref>この位置には特に「徽外」という名称があり、減字譜には「卜」で示される。</ref>
|-
| E{{flat}}||十二徽二分<ref>十二徽ちょうどではないが、減字譜には「十二」と示されることが多い。</ref>
|-
| E||十徽八分
|-
| F||十徽
|-
| F{{sharp}}||九徽四分
|-
| G||九徽
|-
| A{{flat}}||八徽半
|-
| A||七徽九分
|-
| B{{flat}}||七徽六分
|-
| B||七徽三分
|-
| c||七徽
|-
| d{{flat}}||六徽七分
|-
| d||六徽四分
|-
| e{{flat}}||六徽二分
|-
| e||六徽
|-
| f||五徽六分
|-
| f{{sharp}}||五徽三分
|-
| g||五徽
|-
| a{{flat}}||四徽八分
|-
| a||四徽六分
|-
| b{{flat}}||四徽四分
|-
| b||四徽二分
|-
| c<sup>1</sup>||四徽
|-
| d{{flat}}<sup>1</sup>||三徽八分
|-
| d<sup>1</sup>||三徽四分
|-
| e{{flat}}<sup>1</sup>||三徽二分
|-
| e<sup>1</sup>||三徽
|-
| f<sup>1</sup>||二徽六分
|-
| f{{sharp}}<sup>1</sup>||二徽三分
|-
| g<sup>1</sup>||二徽
|-
| a{{flat}}<sup>1</sup>||一徽八分
|-
| a<sup>1</sup>||一徽六分
|-
| b{{flat}}<sup>1</sup>||一徽四分
|-
| b<sup>1</sup>||一徽二分
|-
| c<sup>2</sup>||一徽
|-
|}
== 歴史 ==
[[File:Songhuizong8.jpg|thumb|150px|right|[[宋徽宗]]の『聴琴図』]]
古琴の発明は、[[伏羲]]、[[神農]]、[[黄帝]]、[[堯]]、[[舜]]など、様々の伝説的な人物と関係づけられている。<ref name="中国音楽史略">
{{cite book
|和書
|author = 呉釗、劉東升
|date = |year = 1993
|title = 中国音楽史略
||publisher = 人民音楽出版社
|location = 北京
|isbn = 978-7-103-01173-7
|language =簡体中文
}}
</ref>{{rp|65}}<ref name="古琴第1章">
{{cite book
|和書
|author = 章華英
|year = 2005
|title = 古琴
|pages =第1章
|publisher = 浙江人民出版社
|location = 杭州
|isbn = 9787213029554
|language = 簡体中文
}}
</ref> 琴の最古の文献上の記録は『[[詩経]]』である<ref name="中国音楽史略"/>{{rp|66}}<ref>《詩経》:“琴瑟友之;琴瑟撃鼓,以御田祖”</ref>。考古学的には、[[曾侯乙墓]]から琴と似た[[筑]]と[[十弦琴]]が出土している<ref name="中国音楽史略"/>{{rp|66}}。七弦の琴は[[郭店一号楚墓]]から出土した[[戦国時代 (中国)|戦国時代]]の琴と、[[馬王堆漢墓]]から出土した[[前漢]]の琴があるが、どちらも全長80cmあまりのもので、現在の古琴よりも小さい<ref>{{citation|和書|url=http://www.guanglingguqin.com/201111415332748/ProsDetail.asp?ProId=201112116103192|title=湖北荊門郭店戦国中期七絃琴|publisher=広陵古琴网}}</ref><ref>{{citation|和書|url=http://www.guanglingguqin.com/201111415332748/ProsDetail.asp?ProId=201112515264421|title=湖南長沙馬王堆西漢七絃琴|publisher=広陵古琴网}}</ref>。
[[南北朝時代 (中国)|南北朝]]以降になると現在と同様の120cmほどの古琴が出現する<ref>[[大通 (梁)|大通]]元年(527年)と記された古琴: {{citation|和書|url=http://www.guanglingguqin.com/201111415332748/ProsDetail.asp?ProId=20111251537067|title=万壑松風--仲尼式|publisher=広陵古琴网}}</ref>。[[台湾]]の[[国立故宮博物院]]には[[唐]]の時代に作られた「春雷」という琴を蔵するが、この琴は天下第一の琴と呼ばれた<ref>{{citation|和書|url=http://www.npm.gov.tw/ja/Article.aspx?sNo=04001029|title=春雷琴|publisher=国立故宮博物院コレクション}}</ref>。「九霄環佩」というやはり唐の[[至徳 (唐)|至徳]]元載(756年)に作られた琴は、[[北京]]の故宮博物院ほかに4面が現存し、いずれもほぼ同じである<ref>{{citation|和書|url=http://culture.china.com.cn/zhenbao/2010-06/23/content_20324774.htm|title=古琴"九霄環佩"背後的故事|publisher=[[中国網]]|date=2010-06-23}}</ref>。
古琴の構造は時代を通じてほとんど変化がない。[[宋 (王朝)|宋]]の[[太宗 (宋)|太宗]]が9弦琴とそのための曲を作ったが<ref>[[s:zh:宋史/卷126|『宋史』巻126・楽志一]]「太宗嘗謂舜作五絃之琴以歌南風、後王因之、復加文武二絃。至道元年、乃増作九絃琴・五絃阮。別造新譜三十七巻。」</ref>、普及しなかった。
古琴の弦は伝統的には[[絹|絹糸]]であるが、現在は主に[[鋼|スチール弦]]やスチール芯の[[ナイロン|ナイロン弦]]が用いられる。本来の絹製の弦とは響きが異なるため、近年本来の絹製の弦を使った復元演奏も試みられている<ref>{{citation|和書|url=http://www.zhejiangmuseum.com/appreciate.do|title=琴音欣賞|publisher=浙江省博物館}}</ref>。
古琴の専門書として、古くは[[揚雄]]『琴清英』、[[蔡邕]]『琴操』、[[嵆康]]『琴賦』などがある。[[明]]の蒋克謙『琴書大全』(1590、全22巻)には琴に関する古来の多くの論著を集めている。[[朱権]]の『[[神奇秘譜]]』は最初に印刷された古琴譜である<ref name="神奇秘谱乐诠">
{{cite book
|author = 呉文光
|year=2008|month=11|title = 神奇秘谱乐诠
|publisher = 上海音乐出版社
|location = 上海
|isbn = 9787807512516
|language = zh-hans
}}
</ref>。[[楊宗稷]]『琴学叢書』(1911-1931、全43巻)は琴の理論や琴曲32曲を含む総合的な書物である。
元々の名称は単に「琴」であったが、後に「[[胡琴]]」や「[[洋琴]]」など、琴の字の頭に別の名をつけた弦楽器と区別するために、200年以上前から「七弦琴」と呼ばれるようになった。「古琴」の呼称が用いられるようになったのは20世紀後半からである。
===現代===
戦争が原因で、[[清]]末から古琴家の人数が少なくなった 。1937年に[[上海]]の今虞琴社が行った調査によると、全中国の古琴家はただ112人<ref name="史學網">{{Cite web |url= http://www.zgyysxw.com/templates/zgyy/second.aspx?nodeid=53&page=ContentPage&contentid=271&contentpagenum=1|title=从今虞琴社的创立和早期活动透视中国近代古琴文化的转型|accessdate=2014-07-12|work= |publisher=中國音樂史學網|date=2010-07-27}}</ref>。1950年代から1960年代、[[査阜西]]は古琴家を取材し、『存見古琴曲譜輯覧』<ref name="存见古琴曲谱辑览">
{{cite book
|author = 査阜西
|date = 2007-03-01
|title = 存见古琴曲谱辑览
|publisher = 中国音乐家协会
|location = 北京
|isbn = 9787503931765
|language = zh-hans
}}
</ref>と『琴曲集成』<ref name="琴曲集成">
{{cite book
|author = 中国艺术研究院音乐研究所和北京古琴研究会编; 査阜西、呉釗整理
|date = 2010-06-21
|title = 琴曲集成
|publisher = 中华书局
|location = 北京
|isbn = 9787101073836
|language = zh-hant
}}
</ref>を編纂し、これにより古琴の再興が始まった<ref name="触摸琴史">
{{cite book
|author = 林晨
|year=2012|month=2|title = 触摸琴史
|publisher = 文化艺术出版社
|location = 北京
|isbn = 9787503951763
|language = zh-hans
}}
</ref>。そして、古琴は次第に現代の教育体系に至った。[[管平湖]]・査阜西・[[呉景略]]・顧梅羹・[[張子謙]]・衛仲楽などは[[北京]]・上海で古琴の研究と伝授が始まった。<ref name="现代琴人传">
{{cite book
|author = 凌瑞蘭
|year=2009|month=5|title = 现代琴人传
|publisher = 上海音乐学院出版社
|location = 上海
|isbn = 9787806924372
|language = zh-hans
}}
</ref>
1977年、[[ボイジャーのゴールデンレコード]]には管平湖を演奏した『流水』が収められた。
2003年11月7日、「古琴芸術」は[[ユネスコ]]の無形文化遺産保護条約に基づく「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に掲載され<ref>{{cite web |url=http://www.unesco.org/culture/ich/index.php?lg=zh&pg=11&inscription=2&type=2 |title=UNESCO Culture Sector - Intangible Heritage - 2003 Convention |accessdate=2013-05-04 |publisher=UNESCO |date=2004-07-15 |archive-url=https://web.archive.org/web/20131205221339/http://www.unesco.org/culture/ich/index.php?lg=zh&pg=11&inscription=2&type=2 |archive-date=2013-12-05 |dead-url=no }}</ref>、2006年5月20日中国最初の「国家級非物質文化遺産」として正式登録された<ref name="国务院关于公布第一批国家级非物质文化遗产名录的通知">
{{cite web|url =http://www.ihchina.cn/inc/detail.jsp?info_id=203|accessdate =2013-06-23|title =国务院关于公布第一批国家级非物质文化遗产名录的通知|author =国务院|publisher =国务院|language =zh-hans|deadurl =yes|archiveurl =https://web.archive.org/web/20131103172006/http://www.ihchina.cn/inc/detail.jsp?info_id=203|archivedate =2013-11-03}}</ref>。
=== 日本 ===
日本には遣唐使の時代に譜とともに大陸から伝来、箏や[[和琴]]など他の[[琴|こと]]と区別して「琴(きん)」または「琴(きん)のこと」と称した。『[[懐風藻]]』には「琴」にまつわる詩が数多く詠まれている。また『[[うつほ物語]]』の清原俊蔭、『[[源氏物語]]』の光源氏など、物語の主人公が携行し奏でる場面が重要な物語要素となっている。[[平安時代]]中期頃まで演奏されていた記録が『[[日本三代実録]]』『[[吏部王記]](りほうおうき)』『[[御堂関白記]]』『御遊抄』『[[枕草子]]』に残るが、奏法が難しくまた音量の小さい楽器であったためか、結局、[[雅楽]]の編成にも加えられることなく一度断絶する。その後[[江戸時代]]に至り、[[東皐心越]]によって再び日本に伝わり、[[熊沢蕃山]]、[[荻生徂徠]]、[[浦上玉堂]]らの[[文人]]たちに愛好されたが、一般に広まることはなく再び衰微した。現代の琴学はオランダ公使の[[ロバート・ファン・ヒューリック|ファン・フーリック]](1910-1967)が[[岸辺成雄]]に教授したことから始まるものである。
古代の琴で日本に現存する代表的な琴に、唐琴として[[正倉院]]宝物の「金銀平文琴(きんぎんひょうもんのきん)」、[[法隆寺献納宝物]]の「開元琴」([[東京国立博物館]]所蔵、国宝)がある。他に、[[厳島神社]]蔵の伝[[平重衡]]所用の法花([[重要文化財]])、尾張・[[徳川義直]]の老龍吟、紀伊徳川家伝来の北宋琴・冠古(別銘「梅花断」(2019年9月北京大学王風教授による鑑定)、『集古十種』所載)、谷響、幽蘭(寛政年間)、天明三年無銘琴(4張ともに[[国立歴史民俗博物館]]蔵)などがある。
== 楽譜 ==
[[File:Shenqi_Mipu_vol_3_pg_1.jpg|thumb|[[朱権]]『神奇秘譜』の減字譜]]
古琴の楽譜には、文字譜と中唐時代に開発された減字譜(げんじふ)がある。文字譜は弧本として、漢代、[[蔡邕]](133-192)が書いた『琴操』に[[孔子]]が作曲したと伝える『[[碣石調幽蘭第五]]』(けっせきちょうゆうらんだいご)([[東京国立博物館]]所蔵、[[国宝]])が現存する。彦根井伊家、徳川田安家には、[[荻生徂徠]]の楽書『幽蘭譜抄』が伝わる。
減字譜は文字譜の字画を省略して(減らして)開発したのでこの名がある。その例を挙げれば、「挑」→「乚」、「抹」→「木」、「勾」→「勹」、「名」→「夕」などといった具合である。
減字譜は多数伝わり、[[朱権]]編『[[神奇秘譜]]』明・洪熙乙巳年(1425年)が代表的な琴譜である。減字譜は見た目が非常に変わっており、『[[紅楼夢]]』86回には、林黛玉が読んでいる琴譜を賈宝玉が見て「天書」だと思うシーンがある。
代表的な琴曲に「広陵散」「陽関三畳」「秋風辞」「酒狂」「昭君引」「大胡笳」「梅花三弄」「平沙落雁」「幽蘭」などがある。
[[中華人民共和国]]では1960年から琴譜の[[叢書 (漢籍)|叢書]]である『琴曲集成』の出版を開始し、2010年に全30巻・142種の琴譜の出版を完了した<ref>{{citation|和書|url=https://web.archive.org/web/20140715012557/http://culture.people.com.cn/GB/87423/12492267.html|title=横跨一千年 磨砺半世紀 《琴曲集成》出版|publisher=[[人民網]]|date=2010-08-20}}</ref>。
減字譜は現在のところ[[Unicode]]には未収録であるが、[[追加多言語面]]への追加が提案されている<ref>[https://unicode.org/wg2/docs/n5041-Jianzi.pdf]</ref>。
== 伝説 ==
古琴に関する伝説は非常に多い。[[孔子]]が師襄子に琴を習ったときの話([[史記]]孔子世家)、伯牙と鍾子期の「知音」の故事(『[[列子]]』湯問)、[[司馬相如]]の琴と卓文君の話(『史記』司馬相如列伝)、[[蔡文姫]]が切れた弦の種類を聞き分けた話(『[[芸文類聚]]』の引く『蔡琰別伝』)、[[嵆康]]が刑死するときに「広陵散」を演奏した話(『[[世説新語]]』雅量)などが有名である。
== 大衆文化==
古琴は中国の映画とテレビのバックグラウンドミュージックによく用いられる楽器で、『秦頌』(李祥霆)<ref name="李祥霆复活中国古琴艺术">{{cite web
|url = http://www.china.com.cn/chinese/zhuanti/309289.htm
|title = 李祥霆复活中国古琴艺术
|author = 北京日报
|publisher =
|year = 2003
|language = zh-hans
|archiveurl = https://web.archive.org/web/20130204194545/http://www.china.com.cn/chinese/zhuanti/309289.htm
|archivedate = 2013-02-04|
accessdate=2013年2月4日|dead-url = no
}}</ref>、『[[山水情]]』(龔一)<ref name="龚一古琴独奏音乐会">
{{cite web|url =http://www.bj.xinhuanet.com/bjpd-wq/2010-12/27/content_21726816.htm|title =千古绝响——龚一古琴独奏音乐会|author =国家大剧院|publisher =新华网|year =2010|language =zh-hans|deadurl =yes|archiveurl =https://web.archive.org/web/20131103104343/http://www.bj.xinhuanet.com/bjpd-wq/2010-12/27/content_21726816.htm|archivedate =2013-11-03|accessdate=2014-02-04}}
</ref>、『[[レッドクリフ]]』(趙家珍)などが有名である。<ref name="金城武弹古琴像搓背">{{cite web
|url = http://ent.sina.com.cn/m/c/2008-07-16/10572102776.shtml
|title = 中央音乐学院教授:金城武弾古琴像搓背
|author = 成都晚报
|publisher = 四川新闻网
|date= 2008-07-16
|language = zh-hans
|archive-url = https://web.archive.org/web/20131104073321/http://ent.sina.com.cn/m/c/2008-07-16/10572102776.shtml
|archivedate = 2013-11-04
|dead-url = no
|accessdate=2014-02-04}}</ref>
しかし、古琴の使い方が間違っている作品も多く、『[[カンフーハッスル]]』に登場する「古琴」は本当の古琴ではなく、それに付随する音楽も[[古筝]]によるものであった<ref name=泠泠>{{cite web
|url =http://www.cctv.com/program/dajia/20060602/103110.shtml
|accessdate =2019-12-22
|title =
冷冷七弦一世情:古琴演奏家李祥霆
|publisher =央視國際
|date=
2006-06-02|language = zh-hans}}</ref>。『[[宮廷の諍い女]]』でも古筝による音楽が使われ、さらに出演女優は古琴を逆さに置いて弾いている<ref name="甄嬛傳">{{cite web|url =http://news.sohu.com/20120407/n339990653.shtml|title =专家指《甄嬛传》低级错误 古琴弹出古筝曲(图)|author =崔晓旭、吴晓平|date =2012-04-07|publisher =東南新聞網|accessdate =2014-12-29|archive-url =https://web.archive.org/web/20141229194156/http://news.sohu.com/20120407/n339990653.shtml|archivedate =2014-12-29|dead-url =no}}</ref>。
== 参考文献 ==
*[[山田孝雄]]『源氏物語之音楽』宝文館 1934年
*三谷陽子『東アジア琴箏の研究』全音楽譜出版社 1980年6月25日
*[[上原作和]]『光源氏物語の思想史的変貌 《琴》のゆくへ』有精堂出版、1994年12月20日 ISBN 978-4640310552
*岸邊成雄『江戸時代の琴士物語』有隣堂印刷株式会社出版部 1999年9月20日
*[[吉川良和]]『中国音楽と芸能 非文字文化の探究』(中国学芸叢書)[[創文社]] 2003年12月30日 ISBN 978-4423194270
*上原作和『光源氏物語學藝史 右書左琴の思想』翰林書房、2006年5月20日 ISBN 978-4877372293
*中 純子『詩人と音楽 - 記録された唐代の音』[[知泉書館]] 2008年11月15日 ISBN 978-4862850454
*上原作和編『《琴》の文化史 東アジアの音風景』「アジア遊学」126号 [[勉誠出版]]、2009年9月30日 ISBN 978-4585104230
*''Tsar Teh-yun (1905-2007) maitre du'' qin (2 cd-set+54 pages booklet in English/French), AIMP-VDE Gallo, VDE CD 1432/1433, 2014
* ''The Heart of Qin in Hong Kong'', Director: Mayram Goormathtigh, 52', 2010 documentary, Hong Kong China (Language: Cantonese, Subtitle: Chinese and English)
== 関連項目 ==
*[[黄帝]]
== 外部リンク ==
*[http://guqin.jp/ 一般社団法人日本古琴振興会]
== 脚注 ==
{{DEFAULTSORT:こきん}}
[[Category:民族他]]