ウシは'''反芻動物'''である。反芻動物とは'''反芻'''(はんすう)する動物のことであるが、そもそも「反芻」とは、一度呑み下して消化器系に送り込んだ食物を口の中に戻して咀嚼し直し、再び呑み込むことをいう。このような食物摂取の方法を取ることで栄養の吸収効率を格段に上げる方向へ進化し、その有利性から生態系の中で大成功を収めて世界中に拡散した動物群が、反芻動物であった。多様に見えて、その実、単系統群である。そのような反芻動物の中でも、ウシが属するウシ科はとりわけ進化の度合いが深まった分類群(タクソン)の一つであり、ウシの仲間(※少し範囲を広げてウシ族と言ってもよい)は勢力的にも代表格と言える。彼らは、ヒトに飼われて殖えたのも確かではあるが、もともと自然の状態で生態上(種数と生物量の両面で)の大勢力であった。反芻動物の進化がウシ科のレベルまで深まる以前に勢力を誇っていたのはウマに代表される奇蹄類であり、ウシ科は栄養吸収効率の大きな差を活かして奇蹄類を隅に押しやり分布を広めた。そのことは地質学的知見で証明可能である。家畜としても比較されることの多いウシとウマであるが、同じ質と量の餌を与えた場合、栄養面で報いが大きいのは間違いなくウシであるということもできる。
反芻動物の具える[[胃]]を「反芻動物の具える胃を「'''反芻胃'''(はんすうい)」といい、[[マメジカ]]のような原始的な種を除き、ウシを含むほとんどの反芻動物が4つの胃を具える。ただし実際には、[[胃液]]を分泌する本来の意味での胃は第4胃の「のような原始的な種を除き、ウシを含むほとんどの反芻動物が4つの胃を具える。ただし実際には、胃液を分泌する本来の意味での胃は第4胃の「'''皺胃'''(しゅうい)・ギアラ」のみであり<ref name="kb_ウシ_Nipp">{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/ウシ |title=, ウシ |publisher=, コトバンク |author=小学館『[[日本大百科全書]](ニッポニカ)』 |accessdate=, 小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』, 2019-08-04 }}</ref>、それより口腔に近い「[[前胃]](ぜんい)」と総称される消化器系、第1胃「、それより口腔に近い「前胃(ぜんい)」と総称される消化器系、第1胃「'''瘤胃'''(りゅうい)・ミノ」・第2胃「'''蜂巣胃'''(ほうそうい)・ハチノス」・第3胃「'''重弁胃'''(じゅうべんい)・センマイ」は{{r|kb_ウシ_Nipp}}[[食道]]が変化したものである。ここを[[共生]][[微生物]]の住まう[[植物]][[繊維]][[発酵]]槽に変えることで、反芻は極めて効果的な消化吸収システムになった。ウシの場合、この前胃に、[[草本|草]]の繊維([[セルロース]]など)を分解([[化学分解]])する[[細菌]]類(バクテリア)および[[繊毛虫]]類(インフゾリア)を始めとする微生物を大量に常在させ{{r|kb_ウシ_Nipp}}、繊維を吸収可能な状態に変えさせ{{r|kb_ウシ_Nipp}}、収穫するようにそれを吸収するという方法で草を(じゅうべんい)・センマイ」は食道が変化したものである。ここを共生微生物の住まう植物繊維発酵槽に変えることで、反芻は極めて効果的な消化吸収システムになった。ウシの場合、この前胃に、草の繊維(セルロースなど)を分解(化学分解)する細菌類(バクテリア)および繊毛虫類(インフゾリア)を始めとする微生物を大量に常在させ、繊維を吸収可能な状態に変えさせ、収穫するようにそれを吸収するという方法で草を"食べている"{{r|kb_ウシ_Nipp}}。前胃の微生物を総じて胃内常在[[微生物叢]]などというが、ウシはこれら微生物の殖えすぎた分も動物性[[タンパク質|蛋白質]]として消化・吸収し、栄養に変えている{{r|kb_ウシ_Nipp}}。。前胃の微生物を総じて胃内常在微生物叢などというが、ウシはこれら微生物の殖えすぎた分も動物性蛋白質として消化・吸収し、栄養に変えている。
ウシの[[味蕾]]は25,000個で味蕾が5000個のヒトの5倍を有する。ウシは[[毒物]]で反芻胃の微生物が死なないように[[味覚]]で食べる草をより分けている<ref>齋藤忠夫「チーズの科学」p180、Blue Backs、2016年11月15日 {{ISBN2|978-4-06-257993-3}}</ref>。