「ニムロド」の版間の差分

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およびニネベとカラとの間にある大いなる町レセンを建てた。
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およびニネベとカラとの間にある大いなる町レセンを建てた<ref>[https://ja.wikisource.org/wiki/%E5%89%B5%E4%B8%96%E8%A8%98(%E5%8F%A3%E8%AA%9E%E8%A8%B3) 創世記(口語訳)]、WIKISSOURCE(最終閲覧日:22-10-28)</ref>。
  
== 『創世記』におけるニムロド ==
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=== 反逆者としてのニムロド ===
同時代の登場人物たちは概ね民族の代表者(族長)として記録されており、その名前はそれぞれの民族名をも兼ねているのだが、ニムロドの場合、民族的な背景は触れられずに単なる個人名(原義は反逆する者という意味)として記されている。単独で紹介された人物としては相対的に情報量が少ないが、同時代人の言葉により、彼が有能な狩人であったことが知られる。
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「ニムロド」とはヘブライ語で「我等は反逆する」を意味している。狩人としての彼の行為もまた、凶暴かつ残虐的に描写されている。バベルの塔の建造においてはその企画発案者と見なされている。彼は巨大な塔を建て、唯一の神ではなく、偶像崇拝を始めるようになる。
  
創世記 10章9節  彼は主の前に力ある狩人であった。それゆえ、「主の前に力ある狩人ニムロデのように」と言われるようになった。(口語訳)
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ユダヤ人社会では比較的ポピュラーな個人名として通用している。
  
また、彼の王権が[[バビロン|バベル]]、[[ウルク (メソポタミア)|ウルク]]、[[アッカド]]、カルネ(その所在はいまだに特定されていない)といった古代都市を含む[[シンアル]]の地、及び[[ニネヴェ (メソポタミア)|ニネヴェ]]、[[ニムルド|カラ]]、レセン、レホボット・イール(この都市の所在も不明である)のある[[アッシリア]]地方にまで広がっていたことが『創世記』(10章)では述べられている。また、『[[ミカ書]]』(5章)ではアッシリアについて預言する際、同地を「ニムロドの地」として言及している。
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=== ニムロドとアブラム ===
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アブラム(Abram)という若者が真の神を信仰しようとしたが、バビロンの王ニムロデ<ref>ペルシアの回教徒の伝承ではニムロドはカルデア(Chaldea)の王とのこと。</ref>はアブラムに火を拝むように求めた。アブラムがこれを拒否すると、ニムロデは「お前の神に助けてもらえ!」と言って、アブラムを燃えさかる火の中に投げ込んだがアブラムは焼け死ぬことなく火の中から出てきたという<ref>バビロニア、アッシリア、パレスチナの神話伝説、1928、世界神話伝説大系5,名著普及会、p172-178</ref>。
  
== ミドラーシュにおけるニムロド ==
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=== 聖書学におけるニムロド ===
一方、[[ミドラーシュ]]ではよりネガティブな人物として想定されている。それは彼の名前が即、神に対する反逆を表明しているからである。つまり「ニムロド」とはヘブライ語で「我等は反逆する」を意味している。狩人としての彼の行為もまた、凶暴かつ残虐的に描写されている。なかんずく[[バベルの塔]]の建造においてはその企画発案者と見なされている。彼は巨大な塔を建て、唯一の神ではなく、偶像崇拝を始めるようになる。
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ニムロドの誕生日は12月25日の日曜日とされ、それはバビロニアの大安息日でもある。したがって、クリスマスはイエスではなく、'''ニムロドの生誕を祝う日とされる'''。「Merry Xmas」の『X』という十字に似た文字は、二ムロドのシンボルとされ、merry Xmas は『Magical or Merriment Communion with Nimrod』とされる<ref>[http://www.docstoc.com/docs/55523432/Witchcraft-and-the-Illuminati Witchcraft and the Illuminati]、10-12ページ、ジョン・トッド</ref>。
  
[[ユダヤ人]]社会では比較的ポピュラーな個人名として通用している。
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また、カトリック教会や、この教派で行なわれるマリア崇敬の起源を、ニムロドと[[セミラミス]]に求める多くの論が存在する<ref>マイケル・バーカン『現代アメリカの陰謀論 黙示録・秘密結社・ユダヤ人・異星人』三交社</ref>。ニムロドが立てた国の一つであるバベル(バビロン、バビロニア)の宗教が後にカトリック教会となり、セミラミスを神として信仰する女神崇拝がマリア崇敬とされている<ref group="私注">クリスマスはサートゥルヌス([[炎帝型神]])の祭礼ではなかっただろうか。ニムロドをティターンのような巨人としてみたり、サートゥルヌスに近い存在に寄せようとした形跡はあるかもしれないが、と思う。</ref>。
  
== 推定される歴史上の人物 ==
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== ギリシアでのニムロド ==
古来、伝説上[[ニネヴェ (メソポタミア)|ニネヴェ]]を建設したとされる[[ニノス]]とニムロドを同一視する説があるが、最新の研究では、アッカドの狩猟農耕の神と讃えられた[[ニヌルタ]]、あるいは、王名にその名を冠した[[トゥクルティ・ニヌルタ2世|トゥクルティ・ニヌルタ]]、あるいは、『[[シュメール王名表]]』にウルクの初代王として記録されている[[エンメルカル]]などがニムロドと見立てられている。
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ニムロドは恐ろしい性質の巨人、神々を蔑視したものとして描かれているとのこと<ref>バビロニア、アッシリア、パレスチナの神話伝説、1928、世界神話伝説大系5,名著普及会、p170</ref>。
  
== 芸術作品におけるニムロド ==
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== ニムロドの矢 ==
* [[ダンテ・アリギエーリ|ダンテ]]の『[[神曲]]』では、ニムロドは巨人の姿で登場し、[[地獄]]の第九圏において裁かれている。彼に下された罰は、他人には理解できない無駄話を永遠にしゃべり続けながら、彼には理解できない他人の無駄話を永遠に聞き続けるというものであった。これはバベルの塔における言語の混乱という故事になぞらえてのことである。
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民間説話によれば、ニムロドは神に目がけて天上に矢を射た。その矢は神の手で地上に投げ返されて、ニムロドの胸を貫いた<ref>[http://tbbird.asablo.jp/blog/2011/07/10/5948654 【再整理】ロンギヌスの槍とニムロッドの矢] 、WonderLand、T.Fujimoto、11-07-10(最終閲覧日:22-10-28)</ref>。
* [[ラディーノ語]]の民謡『ニムロド王の時代』、及び『祖父アブラハム』では、ニムロドとアブラハムの闘争について描かれている。アブラハムの誕生を占う吉兆の星を見たニムロドは、生まれてくる男児のすべてを惨殺するよう全土に布告する。しかしアブラハムの母は荒野へ逃亡し、そこで出産を果たす。アブラハムは成長するに至って一神教に対する信仰を宣言し、神の実在をニムロドに証明する。ニムロドは命じてアブラハムをかがり火の中に投下するのだが、彼は傷ひとつ負うことなく火の中から出てくるのであった。
 
* 彫刻家の[[イツハク・ダンツィゲル]]は彫像「ニムロド」を制作し、土壌に根ざして生きる人間の崇高性を提唱する[[カナン]]主義の理想を具現化している。
 
* [[アメリカ英語]]の[[スラング]]では、愚かな人間を嘲る際の蔑称として用いられることがある。その由来は「[[バッグス・バニー]]」の短編映画にて、敵方の愚鈍な猟師を「ニムロド」と呼んでからかっていたことにあるのだが、旧約聖書におけるニムロドが優秀な猟師であったことにかけた皮肉である。
 
  
== 聖書学におけるニムロド ==
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別の伝承では、ニムロドが天に矢を射た時、それが血に染まった状態で帰ってきた。傲慢であったニムロドは矢に付いていた血を見て神を射殺したと思ったが、彼が射たのはただの鳥であったという<ref>[https://kakuyomu.jp/works/16816452218860370642/episodes/16816452218860434106 第25話  ニムロド王 神に反逆する者] 、ホピ族の神話、創世記、日本神話、ギリシャ神話、ウガリットの神話~~などを比較しながら科学で語るわ・・・ (´ε`●)?、進化した、デブにゃーちゃん VTuber(最終閲覧日:22-10-28)</ref><ref group="私注">「ニムロドの矢」の項目の伝承は出典が明らかではありません。引用元のみ記載。</ref>。
ニムロドの誕生日は12月25日の日曜日とされ、それは[[バビロニア]]の大安息日でもある。したがって、[[クリスマス]]はイエスではなく、ニムロドの生誕を祝う日とされる。「Merry Xmas」の『X』という十字に似た文字は、二ムロドのシンボルとされ、merry Xmas は『Magical or Merriment Communion with Nimrod』とされる<ref>[http://www.docstoc.com/docs/55523432/Witchcraft-and-the-Illuminati Witchcraft and the Illuminati]、10-12ページ、[[ジョン・トッド]]</ref>。
 
  
また、[[カトリック教会]]や、この教派で行なわれる[[聖母マリア|マリア崇敬]]の起源を、ニムロドと[[セミラミス]]に求める多くの論が存在する<ref>マイケル・バーカン『現代アメリカの陰謀論 黙示録・秘密結社・ユダヤ人・異星人』三交社</ref>。ニムロドが立てた国の一つであるバベル(バビロン、バビロニア)の宗教が後にカトリック教会となり、セミラミスを神として信仰する女神崇拝が[[聖母マリア|マリア]]崇敬とされている。
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== その他 ==
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天に向かって矢を放つ英雄譚は、中央アジアから中東にかけて拡がり、柔然族、オグズ族、モンゴル族、ヤクート族、トルコなどでみられる。雷に対して矢を射ることもあるし、「'''生命の樹'''」を的にしていた場合も多い<ref>世界神話大辞典、イヴ・ボンヌフォワ編、2001、大修館書店、p1202</ref><ref group="私注">「生命の樹」とは「[[不老不死の薬]]」の源である。</ref>。
  
日本でも[[高木慶太]]と芦田拓也が著書の中で、女大祭司であるニムロデの妻が[[タンムーズ|タンムズ]]という息子を奇跡的に妊娠したと主張し、人々に彼を救世主と説き、これが息子を抱く[[天の女王]]崇拝の原型となったとし、「天の女王」を世界各地の女神信仰と結び付け、さらに後代の[[マリア崇敬]]につながったとしている<ref>高木慶太、芦田拓也『これからの世界情勢と聖書の預言 改訂新版』いのちのことば社</ref>。
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古代日本では、矢は射ないが、魔除けに弓の弦を鳴らす習慣があった。
[[マイケル・バーカン]]によれば、こうした説の起源は、スコットランドの神学者にして[[フリーメイソン]]であるとされる、[[アレクサンダー・ヒスロップ]][[:en:Alexander Hislop|Alexander Hislop]])による、反カトリック冊子『ふたつのバビロン 教皇崇拝はニムロデ夫妻崇拝である』([[:en:The Two Babylons|The Two Babylons]])に求められる。
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== 私的解説 ==
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ニムロドが「天に矢を射る」という点は中国神話の[[羿]]と一致する性質と考える。羿は人々のためにこれを行ったのだが、結局その行為は非難されて、神籍を剥奪されてしまう。「非難される」という点もニムロドと一致している。この点でニムロドは[[羿型神]]といえる。
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ニムロドが巨人のように語られる点は、[[盤古]]のようでもあり、[[炎帝型神|炎帝型]]の神々と共通した性質であるように思う。
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ニムロドが火の神を崇拝し、人を焼き殺そうとする点は中国神話の[[]]や火の神である[[祝融]]を彷彿とさせる。ゾロアスター教よりも前の中東の「火信仰」は管理人にはよく分からないのだが、人を火に焼くような習慣はインドの[[サティ]]を思わせ、アグニに対する信仰、といった方が近いのではないか、と推察する。アグニ的な火の神が広く信仰されていたので、「gn」や「gm」というアグニと語源を同じくする神々が各地に存在するのではないのだろうか。(ただし、ニムロドの名前は「gm」系の子音構成ではないが。)
  
 
== 参考文献 ==
 
== 参考文献 ==
 
* [https://ja.wikisource.org/wiki/%E5%89%B5%E4%B8%96%E8%A8%98(%E5%8F%A3%E8%AA%9E%E8%A8%B3) 創世記(口語訳)]、WIKISSOURCE(最終閲覧日:22-10-28)
 
* [https://ja.wikisource.org/wiki/%E5%89%B5%E4%B8%96%E8%A8%98(%E5%8F%A3%E8%AA%9E%E8%A8%B3) 創世記(口語訳)]、WIKISSOURCE(最終閲覧日:22-10-28)
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* 世界神話大辞典、イヴ・ボンヌフォワ編、2001、大修館書店、p1202
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* バビロニア、アッシリア、パレスチナの神話伝説、1928、世界神話伝説大系5,名著普及会、p170、p172-178
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* [http://tbbird.asablo.jp/blog/2011/07/10/5948654 【再整理】ロンギヌスの槍とニムロッドの矢] 、WonderLand、T.Fujimoto、11-07-10(最終閲覧日:22-10-28)
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* [https://kakuyomu.jp/works/16816452218860370642/episodes/16816452218860434106 第25話  ニムロド王 神に反逆する者] 、ホピ族の神話、創世記、日本神話、ギリシャ神話、ウガリットの神話~~などを比較しながら科学で語るわ・・・ (´ε`●)?、進化した、デブにゃーちゃん VTuber(最終閲覧日:22-10-28)
  
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== 関連項目 ==
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* [[ニノス]]:ニムロドと同一視される伝説上の人物。ニムロドを[[羿]]寄りの人とみれば、[[ニノス]]は文字どおり[[黄帝]]よりの人物といえる。
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* [[天若日子]]:ニムロド説話の類型<!-- 次田真幸 『古事記(上)全訳注』 p.154. -->
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* [[羿]]:天に向かって矢を放ち、それが必ずしも歓迎されなかった点がニムロドと一致している。
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** [[黄帝]]:羿と同一人物であると管理人が考える人物。
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** [[グミヤー]]:[[黄帝]]と[[啓]]([[祝融]])の性質が入り交じった神。
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** [[桂男]]:中国神話で「生命の樹」と永遠に戦う男である。
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** [[不老不死の薬]]:ときに「生命の樹」から作られるものとされている。
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* [[エンキドゥ]]:神の意に逆らって殺された人物。
  
== 関連項目 ==
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=== 日本の祭祀 ===
* [[天若日子]] - ニムロド説話の類型<!-- 次田真幸 『古事記(上)全訳注』 p.154. -->
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* [[鳴弦の儀]]
* 羿:天に向かって矢を放ち、それが必ずしも歓迎されなかった点がニムロドと一致している。
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* [[寄絃]]
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[[Category:狩人]]
 
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2022年11月1日 (火) 08:48時点における最新版

ニムロドニムロデ、ニムロッドとも。נמרוד、Nimrôd)は、「偉大なる狩人」として中央アジアから中東にかけて伝承に登場する人物。天に向かって矢を放ち、それが自らに返ってきた、という伝承を伴うことがあるようである。この名前は旧約聖書にも登場する。

旧約聖書におけるニムロド[編集]

旧約聖書では、『創世記』第10章において、クシュの息子として紹介されている。

6 ハムの子孫はクシ、ミツライム、プテ、カナンであった。

7 クシの子孫はセバ、ハビラ、サブタ、ラアマ、サブテカであり、ラアマの子孫はシバとデダンであった。

8 クシの子はニムロデであって、このニムロデは世の権力者となった最初の人である。

9 彼は主の前に力ある狩猟者であった。これから「主の前に力ある狩猟者ニムロデのごとし」ということわざが起った。

10 彼の国は最初シナルの地にあるバベル、エレク、アカデ、カルネであった。

11 彼はその地からアッスリヤに出て、ニネベ、レホボテイリ、カラ、

12 およびニネベとカラとの間にある大いなる町レセンを建てた[1]

反逆者としてのニムロド[編集]

「ニムロド」とはヘブライ語で「我等は反逆する」を意味している。狩人としての彼の行為もまた、凶暴かつ残虐的に描写されている。バベルの塔の建造においてはその企画発案者と見なされている。彼は巨大な塔を建て、唯一の神ではなく、偶像崇拝を始めるようになる。

ユダヤ人社会では比較的ポピュラーな個人名として通用している。

ニムロドとアブラム[編集]

アブラム(Abram)という若者が真の神を信仰しようとしたが、バビロンの王ニムロデ[2]はアブラムに火を拝むように求めた。アブラムがこれを拒否すると、ニムロデは「お前の神に助けてもらえ!」と言って、アブラムを燃えさかる火の中に投げ込んだがアブラムは焼け死ぬことなく火の中から出てきたという[3]

聖書学におけるニムロド[編集]

ニムロドの誕生日は12月25日の日曜日とされ、それはバビロニアの大安息日でもある。したがって、クリスマスはイエスではなく、ニムロドの生誕を祝う日とされる。「Merry Xmas」の『X』という十字に似た文字は、二ムロドのシンボルとされ、merry Xmas は『Magical or Merriment Communion with Nimrod』とされる[4]

また、カトリック教会や、この教派で行なわれるマリア崇敬の起源を、ニムロドとセミラミスに求める多くの論が存在する[5]。ニムロドが立てた国の一つであるバベル(バビロン、バビロニア)の宗教が後にカトリック教会となり、セミラミスを神として信仰する女神崇拝がマリア崇敬とされている[私注 1]

ギリシアでのニムロド[編集]

ニムロドは恐ろしい性質の巨人、神々を蔑視したものとして描かれているとのこと[6]

ニムロドの矢[編集]

民間説話によれば、ニムロドは神に目がけて天上に矢を射た。その矢は神の手で地上に投げ返されて、ニムロドの胸を貫いた[7]

別の伝承では、ニムロドが天に矢を射た時、それが血に染まった状態で帰ってきた。傲慢であったニムロドは矢に付いていた血を見て神を射殺したと思ったが、彼が射たのはただの鳥であったという[8][私注 2]

その他[編集]

天に向かって矢を放つ英雄譚は、中央アジアから中東にかけて拡がり、柔然族、オグズ族、モンゴル族、ヤクート族、トルコなどでみられる。雷に対して矢を射ることもあるし、「生命の樹」を的にしていた場合も多い[9][私注 3]

古代日本では、矢は射ないが、魔除けに弓の弦を鳴らす習慣があった。

私的解説[編集]

ニムロドが「天に矢を射る」という点は中国神話の羿と一致する性質と考える。羿は人々のためにこれを行ったのだが、結局その行為は非難されて、神籍を剥奪されてしまう。「非難される」という点もニムロドと一致している。この点でニムロドは羿型神といえる。

ニムロドが巨人のように語られる点は、盤古のようでもあり、炎帝型の神々と共通した性質であるように思う。

ニムロドが火の神を崇拝し、人を焼き殺そうとする点は中国神話のや火の神である祝融を彷彿とさせる。ゾロアスター教よりも前の中東の「火信仰」は管理人にはよく分からないのだが、人を火に焼くような習慣はインドのサティを思わせ、アグニに対する信仰、といった方が近いのではないか、と推察する。アグニ的な火の神が広く信仰されていたので、「gn」や「gm」というアグニと語源を同じくする神々が各地に存在するのではないのだろうか。(ただし、ニムロドの名前は「gm」系の子音構成ではないが。)

参考文献[編集]

  • 創世記(口語訳)、WIKISSOURCE(最終閲覧日:22-10-28)
  • 世界神話大辞典、イヴ・ボンヌフォワ編、2001、大修館書店、p1202
  • バビロニア、アッシリア、パレスチナの神話伝説、1928、世界神話伝説大系5,名著普及会、p170、p172-178
  • 【再整理】ロンギヌスの槍とニムロッドの矢 、WonderLand、T.Fujimoto、11-07-10(最終閲覧日:22-10-28)
  • 第25話  ニムロド王 神に反逆する者 、ホピ族の神話、創世記、日本神話、ギリシャ神話、ウガリットの神話~~などを比較しながら科学で語るわ・・・ (´ε`●)?、進化した、デブにゃーちゃん VTuber(最終閲覧日:22-10-28)

関連項目[編集]

  • ニノス:ニムロドと同一視される伝説上の人物。ニムロドを羿寄りの人とみれば、ニノスは文字どおり黄帝よりの人物といえる。
  • 天若日子:ニムロド説話の類型
  • 羿:天に向かって矢を放ち、それが必ずしも歓迎されなかった点がニムロドと一致している。
    • 黄帝:羿と同一人物であると管理人が考える人物。
    • グミヤー黄帝祝融)の性質が入り交じった神。
    • 桂男:中国神話で「生命の樹」と永遠に戦う男である。
    • 不老不死の薬:ときに「生命の樹」から作られるものとされている。
  • エンキドゥ:神の意に逆らって殺された人物。

日本の祭祀[編集]

私的注釈[編集]

  1. クリスマスはサートゥルヌス(炎帝型神)の祭礼ではなかっただろうか。ニムロドをティターンのような巨人としてみたり、サートゥルヌスに近い存在に寄せようとした形跡はあるかもしれないが、と思う。
  2. 「ニムロドの矢」の項目の伝承は出典が明らかではありません。引用元のみ記載。
  3. 「生命の樹」とは「不老不死の薬」の源である。

参照[編集]

  1. 創世記(口語訳)、WIKISSOURCE(最終閲覧日:22-10-28)
  2. ペルシアの回教徒の伝承ではニムロドはカルデア(Chaldea)の王とのこと。
  3. バビロニア、アッシリア、パレスチナの神話伝説、1928、世界神話伝説大系5,名著普及会、p172-178
  4. Witchcraft and the Illuminati、10-12ページ、ジョン・トッド
  5. マイケル・バーカン『現代アメリカの陰謀論 黙示録・秘密結社・ユダヤ人・異星人』三交社
  6. バビロニア、アッシリア、パレスチナの神話伝説、1928、世界神話伝説大系5,名著普及会、p170
  7. 【再整理】ロンギヌスの槍とニムロッドの矢 、WonderLand、T.Fujimoto、11-07-10(最終閲覧日:22-10-28)
  8. 第25話  ニムロド王 神に反逆する者 、ホピ族の神話、創世記、日本神話、ギリシャ神話、ウガリットの神話~~などを比較しながら科学で語るわ・・・ (´ε`●)?、進化した、デブにゃーちゃん VTuber(最終閲覧日:22-10-28)
  9. 世界神話大辞典、イヴ・ボンヌフォワ編、2001、大修館書店、p1202