グミヤー
グミヤーは、中国の少数民族のプーラン族(布朗族)の神話に出てくる神。
目次
世界を創造する話(創造神話)[編集]
グミヤーは、「リ」という名の巨大な獣(サイに似ている)を見つけると、殺して、まず皮をはいで天を創った。続いて肉で大地を、また「リ」の各部を使って万物の物を創り出した。最後に脳を使って人間を創った。このままでは世界は不安定なので、「リ」の4本の脚を東西南北に立てて、天を支える柱にした。
グミヤーは、大きな亀を捕らえて大地を支えさせようとした。ところが亀が嫌がって逃げようとするので、その動きによって大地が揺れた。そのため金鶏を亀の見張りにつけた。亀が逃げようとすると金鶏が眼をつついて止めるのだ。ところが金鶏が眠くなると、その隙に亀が動くので地震が発生する。人々は米粒を蒔いて金鶏を起こさなければいけない。
太陽を射落とす話(射日神話)[編集]
グミヤーが創った世界を滅ぼそうと、元々グミヤーと仲の悪かった太陽9姉妹と月10兄弟が一斉に現れた。大地は乾いてひび割れ、植物は枯れ果て、岩石まで溶け出した。この時に焼き落とされたのが、蟹の頭、魚の舌、蛇の脚、鮭の尾であったという。
グミヤーは地上で最も高い山へ登り、弓矢で太陽と月を射落としていった。最後に1つずつ太陽と月が残った。月は、グミヤーの矢が体を掠めた恐怖のあまり、体が冷たくなった。それまでの月は太陽のように熱を発していたが、このことが原因で熱を出さなくなったのだ。
最後の太陽と月は洞窟に逃げ込んで地上に出てこなくなった。そのため地上が暗く冷たくなった。グミヤーとたくさんの獣と鳥が、太陽と月の隠れた洞窟に行って説得したが、太陽も月も出てこなかった。すると雄鶏が美しい声で語りかけると、ようやく太陽たちが返事をしたが、出てこなかった。そこで雄鶏は、自分が呼んだときだけ出てくれば大丈夫だと約束した。また、太陽と月が交互に出るように頼んだ。太陽が出てくると、地上がふたたび明るく暖かくなったという。
プーラン族[編集]
プーラン族(中国語:布朗族)は中華人民共和国雲南省に住む少数民族。人口は約9.2万人(2000年)。
居住地は穏やかな気候と豊富な降水量に恵まれ、11月の乾季にプーアル茶を栽培している。森林には原生林やサクラ、アブラギリ、クルミのほか、高品質の木、薬草もある。家は木と竹で造られ、床や家具は竹で造られる。
生活様式[編集]
主食のトウモロコシ、小麦、大豆の穀物のほか、茶や米や肉、エビや魚、定期的に昆虫も捕食する。漬物や蒸し料理も食べる。
禁忌とする習慣として、他人を足で越えてはいけない、寺では靴を脱がなければならない、妊娠中の女性が結婚式、葬儀、祭りに参加してはならないなどがある。
私的解説[編集]
揚子江流域の神話である。炎帝型河川神が犀で現されるところは、李氷の治水神話を彷彿とさせる。
グミヤーは中国神話の黄帝と羿に相当する。この2つが本来一つのもので、「射落とされた太陽」とは「炎帝」のことであることが分かる。炎黄闘争の神話がそれだけに留まらず、「創造神話」にまで発展したものと考える。「創造神話」は女媧の創造神話と類似している。グミヤーの偉大さを現すために、女媧型女神の創造神話をグミヤーの事績として置き換えたものと思われる。啓思想6型の変換である。グミヤーの名前には「gm」の子音が入るため、彼らは印欧語族ではないのだけれども、グミヤーの名前には「炎」という意味が含まれ、グミヤーは羿(黄帝)と啓(祝融)の合成神である可能性があると思う。女媧型女神の創造神話までもがグミヤーの事績とされている点は、グミヤーの神格を高めるために、色々な神の事績を「グミヤーのもの」として置き換えたからではないか、と思う。同様に羿(黄帝)と啓(祝融)を合成させた神に中東のニムロドという神がいるように思う。
太陽が女神、月が男神で現されることが特徴である。陰陽でいえば、女性が「陽」、男性が「陰」となる。グミヤーが誰か(特に女性)の助けを借りて射日や天地創造を行った、との記載はなく、その点は省かれていると考える。
関連項目[編集]
創造神話[編集]
射日神話[編集]
- 羿:10個の太陽を射落とすことが類似している。
倒す神(黄帝型神)である点[編集]
参考文献[編集]
- Wikipedia:グミヤー(最終閲覧日:22-10-11)
- 吉田敦彦監修「世界の神話がわかる」日本文芸社、1997年、177-180頁
- Wikipedia:プーラン族(最終閲覧日:22-10-11)