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2023年1月5日 (木) 09:55時点における最新版
下光比売命(したてるひめのみこと/したでるひめのみこと)は、日本神話に登場する神道の女神である。
概要[編集]
『古事記』では本名を高比売命(たかひめのみこと)、亦の名を下光比売命・下照比売命(したてるひめのみこと)、『日本書紀』では下照姫・下照媛、亦の名は高姫、稚国玉(わかくにたま)、『先代旧事本紀』地神本紀では下照姫命と記述される。三輪氏族の系図では阿陀加夜怒志多伎吉比売命(あだかやぬしたききひめのみこと)の別名を伝える。
『古事記』および『日本書紀』正伝によれば、葦原中国平定のために高天原から遣わされた天若日子が、大国主神に取り入ってあわよくば葦原中国を自分のものにしようと目論み、その娘である高比売命と結婚した。天若日子が高天原からの返し矢に当たって死んだとき、高比売命の泣く声が天(『古事記』では高天原)まで届き、その声を聞いた天若日子の父の天津国玉神や天若日子の妻子らは葦原中国に降臨し、天若日子の喪屋を建て殯を行った。そこに阿遅鉏高日子根神が訪れたが、その姿が天若日子にそっくりであったため、天津国玉神や妻子らは天若日子が生き返ったと喜んだ。阿遅鉏高日子根神は穢わしい死人と間違えられたことに怒り、喪屋を大量で斬り倒し、蹴り飛ばして去って行った。高比売命は、阿遅鉏高日子根神の名を明かす歌を詠んだ。この歌は「夷振(ひなぶり)」と呼ばれる(夷振を詠んだという記述は『日本書紀』正伝にはない)。『日本書紀』の第一の一書では、天稚彦の妻の名は記されておらず、夷振を詠んだ者の名としてのみ下照媛の名が登場し、味耜高彦根神の妹であるとしている。
天若日子の項より[編集]
しかし、天若日子は大国主神の娘下照比売(シタテルヒメ)と結婚し、葦原中国を得ようと企んで8年たっても高天原に戻らなかった。そこで天照大御神と高御産巣日神(タカミムスビ)は雉の鳴女(ナキメ)を遣して戻ってこない理由を尋ねさせた。すると、その声を聴いた天佐具売(アメノサグメ)が、不吉な鳥だから射殺すようにと天若日子に勧め、彼は遣わされた時に高皇産霊神から与えられた弓矢(天羽々矢と天之麻迦古弓)で雉を射抜いた。
その矢は高天原まで飛んで行った。その矢を手にした高皇産霊神は、「天若日子に邪心があるならばこの矢に当たるように」と誓約をして下界に落とす。すると、その矢は寝所で寝ていた天若日子の胸に刺さり、彼は死んでしまった。
天若日子の死を嘆く下照姫の泣き声が天まで届くと、天若日子の父の天津国玉神は下界に降りて葬儀のため喪屋を建て八日八夜の殯をした。下照姫の兄の阿遅鉏高日子根神(アヂスキタカヒコネ)も弔いに訪れたが、彼が天若日子に大変よく似ていたため、天若日子の父と妻が「天若日子は生きていた」と言って抱きついた。すると阿遅鉏高日子根神は「穢らわしい死人と見間違えるな」と怒り、大量を抜いて喪屋を切り倒し、蹴り飛ばしてしまった。喪屋が飛ばされた先は美濃の藍見の喪山だという。
系譜[編集]
『古事記』では大国主神(『日本書紀』では顕国玉)と多紀理毘売命の娘で、阿遅鉏高日子根神の妹としており、『先代旧事本紀』地神本紀でも『古事記』同様に大己貴神と田心姫命の娘で、味耜高彦根神の同母妹とする。
祀る神社[編集]
- 比賣神社(富山県南砺市高宮):主祭神 下照比賣命、雉が下照比賣命の神使とされている。
- 玉津岡神社(京都府綴喜郡井手町):主祭神 下照比賣命
- 大穴持御子玉江神社(乙見社とも。出雲大社荒垣外摂末社):主祭神 下照比賣命
- 比売許曽神社(難波 大阪市東成区東小橋)[1]:主祭神 下照比賣命(江戸時代までは牛頭天王)
- 『延喜式神名帳]』では下照比売社が比売許曽神社であると記す。なお、比売碁曾社の主祭神は明治以降は牛頭天王から下照比売命に代わっている。
- 売豆紀神社:主祭神 下照比賣命
- 売布神社:主祭神 下照姫神
- 倭文神社(鳥取県)
- 現在は建葉槌命が主祭神となっているが、社伝にはシタテルヒメに関するものが多く、大正時代まではシタテルヒメが主祭神であると考えられていた。倭文神社内の塚がシタテルヒメの墓であると考えられていたが、発掘により経塚であると判明した。
- 高野宮(内神社)(島根県松江市):主祭神 下照姫命
関連項目[編集]
- 天照大御神:下光比売命と同一の女神。
- 鳴女:雉の女神。下光比売命のトーテムといえる。
- 泣沢女神
- 天稚彦草子
- 雉も鳴かずば撃たれまい
- ルンペルシュティルツヒェン:名前に関連する物語