かつて、ヨーロッパ各地では、精霊によって農作物が育つと考えられており、その精霊は、[[フローラ]]のように女神や[[ニュンペー]]、女王や乙女のかたちで表現されていた。春、地域によっては夏といった、生育・繁殖の季節を迎える季節の祭りで、乙女たちや男女の結婚は象徴的なものとされ、それが五月女王(メイクィーン)や、子どもたちによる疑似的な結婚式へとつながっていった<ref>谷口幸男・遠藤紀勝『図説 ヨーロッパの祭り』pp.74-75、河出書房新社、1998年。</ref>。
また、この日の前夜は[[ヴァルプルギスの夜]]と呼ばれ、[[魔女]]たちがと呼ばれ、魔女たちが[[サバト (魔女)|サバト]]を行うと言われている。[[ウィリアム・シェイクスピア|シェイクスピア]]の『[[真夏の夜の夢]]』はこの時期が舞台とする説もあるを行うと言われている。シェイクスピアの『真夏の夜の夢』はこの時期が舞台とする説もある<ref>芳賀日出男『ヨーロッパ古層の異人たち』pp.17-20、[[東京書籍]]、2003年。20、東京書籍、2003年。</ref>。{{Main|ヴァルプルギスの夜}}
===ドイツ===
[[ドイツ]]南西部の、[[バーデン=ヴュルテンベルク州|バーデンドイツ南西部の、バーデン=ヴュルテンベルク州・ツンツィンゲンでは、12歳くらいの少女が、五月の女王的存在の、'''天の花嫁'''(ウッツフェルト ブリュットリ)に扮して、'''案内役の女の子2人'''と、7、8人の少女をしたがえている。お伴の最後尾の少女はかごを下げ、天の花嫁の訪れを村の家々に告げ、かごに乳製品や、卵、果物などを受け取る。天の花嫁は、感謝を表すと同時に、その家を祝福する。一方で「冬」を表す少年たちが、黒い服を着て、'''体中に縄を巻き'''、別の地区を歩いて、少女たちと同様に口上を述べて贈り物を受け取る<ref group=ヴュルテンベルク州]]・ツンツィンゲンでは、12歳くらいの少女が、五月の女王的存在の、天の花嫁(ウッツフェルト ブリュットリ)に扮して、案内役の女の子2人と、7、8人の少女をしたがえている。お伴の最後尾の少女はかごを下げ、天の花嫁の訪れを村の家々に告げ、かごに[[乳製品]]や、卵、[[果物]]などを受け取る。天の花嫁は、感謝を表すと同時に、その家を祝福する。一方で「[[冬]]」を表す少年たちが、黒い服を着て、体中に縄を巻き、別の地区を歩いて、少女たちと同様に口上を述べて贈り物を受け取る。しかるのちに、示し合わせておいた場所で、天の花嫁(夏)と少年(冬)との決着が始まる。「冬」の持つ"私注">「縄を巻かれている少年たち」は、縄で制御されている「天の獣」を模していると考える。</ref>。しかるのちに、示し合わせておいた場所で、天の花嫁(夏)と少年(冬)との決着が始まる。「冬」の持つ[[ブナ]]の木の枝を、花嫁が3本折り取ると、天の花嫁の勝ちとなる。子供たちは、昼食に一旦家に戻った後、午後はまた家々を回る<ref name="ab">[[植田重雄]]『ヨーロッパの神と祭り―光と闇の習俗』pp植田重雄『ヨーロッパの神と祭り―光と闇の習俗』pp.355-364、[[早稲田大学出版部]]、1995年。364、早稲田大学出版部、1995年。</ref>。
[[北欧神話|ゲルマン神話]]によれば、天の女神[[フレイヤ|フレイア]](フライア)と、天空の神[[オーディン]](ヴォーダン)の二柱の神の結婚が五月であり、この世界の繁殖をつかさどると信じられて来た。ツンツィンゲンの近くのアウッゲンでは、少女がドレスを着て花束を持ち、少年は山高帽に[[モーニングコート|モーニング]]という結婚式の服装で、お伴と一緒に家々を回り、夏の訪れを告げる。この姿は、ヴォーダンとフライアの地上への訪問を意味する。かつては、2人の少女が白い衣装をつけ、春の[[女神]]に扮して行進した<ref name="ab"/>。