差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
14,775 バイト除去 、 2022年2月20日 (日) 10:35
ノルニルに関する古ノルド語の出典元が多数残っている。ほとんどの重要な出典は、『散文エッダ』(スノッリのエッダ)と『詩のエッダ』である。前者が古い詩に加えて12世紀から13世紀にかけての族長であり学者であるスノッリ・ストゥルルソンによって改作された物語、説明、解説を含んでいる一方で、後者はノルニルが頻繁に引き合いに出される古い詩を含んでいる。
 
=== 詩のエッダ ===
『[[古エッダ|詩のエッダ]]』は、スノッリが『散文エッダ』に記載した情報の元になった詩がより古い文献の代わりとなることから、価値がある。『ギュルヴィたぶらかし』にあるように、『詩のエッダ』は3柱の主要なノルニルに加えて、より目立たない多くのノルニルが存在することに言及する。さらに、小人のノルニルは小人の娘であるなど、彼らがいくつかの血統の出身であると話されることにより、『ギュルヴィたぶらかし』と一致する。また、3柱の主要なノルニルが女巨人たち(女性の[[霜の巨人|ヨトゥン]]たち)であったことを暗示している<ref>[http://www.sacred-texts.com/neu/poe/poe03.htm ベロウズのコメンタリーを参照。]</ref>。
 
『{{仮リンク|ファーヴニルの言葉|en|Fáfnismál|label=|preserve=1}}』は、[[シグルズ]]による致命傷で死んでいくドラゴンの[[ファーヴニル]]とシグルズとの間のやりとりを含んでいる。英雄は多くの事柄についてファーヴニルに尋ね、その事柄の1つがノルニルの本質であった。ファーヴニルは彼らがたくさんいること、いくつかの血統があることを説明する。
 
{|
|
:Sigurðr kvað:
:12. "Segðu mér, Fáfnir,
:alls þik fróðan kveða
:ok vel margt vita,
:hverjar ro þær nornir,
:er nauðgönglar ro
:ok kjósa mæðr frá mögum."
:-
:Fáfnir kvað:
:13. "Sundrbornar mjök
:segi ek nornir vera,
:eigu-t þær ætt saman;
:sumar eru áskunngar,
:sumar alfkunngar,
:sumar dætr Dvalins."<ref name="norfaf">[http://www.heimskringla.no/original/edda/fafnismal.php ''Fáfnismál''] 標準化された綴りによるテキストのGuðni Jónssonの版。</ref>
|
:大意
::シグルズ「運命の女神とは誰ですか」
:-
::ファーヴニル「女神たちにはアース神族も妖精もドヴァリンの娘もおり1つの一族ではない」
|
|}
 
3柱の主要なノルニルが元来は女神ではなく女巨人([[霜の巨人|ヨトゥン]])であったことは、『[[巫女の予言]]』と『{{仮リンク|ヴァフスルーズニルの言葉|en|Vafþrúðnismál|preserve=1}}』で明らかにされている。彼女たちの到着は神々の初期の幸福な時代を終焉させたが、しかし彼女たちは人間の幸福のためにやって来たのである。
 
『巫女の予言』は、[[ヨトゥンヘイム]]から神々の元にやって来たと報告される、3人のおそろしく力強い女巨人たちを関連づける。
[[ファイル:Nornsweaving.jpg|thumb|220px|[[アーサー・ラッカム]]によるノルニル。]]
{|
|
:8. Tefldu í túni,
:teitir váru,
:var þeim vettergis
:vant ór gulli,
:uns þrjár kvámu
:þursa meyjar
:ámáttkar mjök
:ór Jötunheimum.<ref name="norvölu">[http://www.heimskringla.no/original/edda/voluspa.php ''Völuspá''] 標準化された綴りによるテキストのGuðni Jónssonの版。</ref>
|
:大意::ヨトゥンヘイムから3人の強力な娘が来るまで、神々は黄金製のものに何の不足もなかった。
|
|}
 
『ヴァフスルーズニルの言葉』は、守護霊([[ハミンギャ]])として地上の人々を守るためにやって来た乙女の巨人たちについて話す時、おそらくノルニルに言及しているだろう<ref name="nordisk"/><ref>[http://www.sacred-texts.com/neu/poe/poe05.htm ベロウズのコメンタリーを参照。]</ref>。
 
{|
|
:49. "Þríar þjóðár
:falla þorp yfir
:meyja Mögþrasis;
:hamingjur einar
:þær er í heimi eru,
:þó þær með jötnum alask."<ref>[http://www.heimskringla.no/original/edda/vafthrudnesmal.php ''Vafþrúðnismál''] 標準化された綴りによるテキストのGuðni Jónssonの版。</ref>
|
:大意
::3人がメグスラシルの娘の家を襲い、娘たちは巨人の元で育つ。家には[[ハミンギャ|守護霊]]がいた。
|
|}
 
『[[巫女の予言]]』は、『ヴァルズルーズニルの言葉』がたぶんしただろうと同様に乙女としての彼女たちを指す3柱の主要なノルニルの名前を含んでいる。
 
{|
|
:20. Þaðan koma meyjar
:margs vitandi
:þrjár ór þeim sæ,
:er und þolli stendr;
:Urð hétu eina,
:aðra Verðandi,
:- skáru á skíði, -
:Skuld ina þriðju;
:þær lög lögðu,
:þær líf kuru
:alda börnum,
:örlög seggja.<ref name="norvölu"/>
|
:大意
::3人の知恵ある娘――1人目はウルズ、2人目はヴェルザンディで2人が木片を彫った。3人目がスクルド。彼女たちが人間の運命を決める。
|
|}
 
ノルニルは、新しく生まれた子供に、彼または彼女の未来を割り当てるべく、その家を訪ねる。そして『{{仮リンク|フンディング殺しのヘルギの歌#その1|en|Helgakviða Hundingsbana I|label=フンディング殺しのヘルギの歌 その1}}』にあるように、ノルニルがその屋敷に到着すると、英雄{{仮リンク|ヘルギ|en|Helgi Hundingsbane|preserve=1}}がちょうど生まれた。
 
[[ファイル:Faroese stamps 552-553 nordic issue.jpg|thumb|300px|「……しかし多くのノルニルがいる。その人生を定めるため、生まれた子供それぞれのところへやって来る……」。フェロー諸島で2006年に発行された切手に[[アンカー・エリ・ペーターセン]]によって描かれたノルニル(画像左側)。]]
{|
|
:2. Nótt varð í bæ,
:nornir kómu,
:þær er öðlingi
:aldr of skópu;
:þann báðu fylki
:frægstan verða
:ok buðlunga
:beztan þykkja.
:-
:3. Sneru þær af afli
:örlögþáttu,
:þá er borgir braut
:í Bráluni;
:þær of greiddu
:gullin símu
:ok und mánasal
:miðjan festu.
:-
:4. Þær austr ok vestr
:enda fálu,
:þar átti lofðungr
:land á milli;
:brá nift Nera
:á norðrvega
:einni festi,
:ey bað hon halda.<ref>[http://www.heimskringla.no/original/edda/helgakvidahundingsbanaa.php ''Helgakviða Hundingsbana I''] 標準化された綴りによるテキストのGuðni Jónssonの版。</ref>
|
:大意
::運命の女神が来て王として尊敬される運命を決めた。彼女たちは金色の糸で運命の糸を撚った。ネリ(女巨人<ref>『エッダ 古代北欧歌謡集』(谷口幸男訳、新潮社)108頁の註釈による。</ref>)は1本の綱を投げた。
|
|}
 
『{{仮リンク|フンディング殺しのヘルギの歌#その2|en|Helgakviða Hundingsbana II|label=フンディング殺しのヘルギの歌 その2}}』において、{{仮リンク|ヘルギ|en|Helgi Hundingsbane|preserve=1}}は、{{仮リンク|シグルーン|en|Sigrún}}と結婚するために彼女の父: ヘグニ(''Högni'')と兄弟のブラギ(''Bragi'') を殺してしまった事実に対し、ノルニルを呪う。
{|
|
:26 "Er-at þér at öllu,
:alvitr, gefit,
:- þó kveð ek nökkvi
:nornir valda -:
:fellu í morgun
:at Frekasteini
:Bragi ok Högni,
:varð ek bani þeira.<ref>[http://www.heimskringla.no/original/edda/helgakvidahundingsbanab.php ''Völsungakviða in forna''] {{webarchive|url=http://wayback.vefsafn.is/wayback/20070508145336/http://www.heimskringla.no/original/edda/helgakvidahundingsbanab.php |date=2007年5月8日 }} 標準化された綴りによるテキストのGuðni Jónssonの版</ref>
|
:大意
::運命の女神のせいもあろうが、私(ヘルギ)が父と弟を殺した。
|
|}
 
[[ファイル:Ring50.jpg|thumb|220px|アーサー・ラッカムが楽劇『[[ニーベルングの指環]]』の挿絵に描いた3人のノルン。]]
[[ファイル:Ring51.jpg|thumb|220px|同。]]
スノッリ・ストゥルルソンが『ギュルヴィたぶらかし』の中で明示したように、人々の運命は各自のノルニルの慈悲深さや悪意に左右された。『{{仮リンク|レギンの歌|en|Reginsmál|preserve=1}}』において、水に住む小人の{{仮リンク|アンドヴァリ|en|Andvari|preserve=1}}は、自分の境遇を、おそらくは小人{{仮リンク|ドヴァリン|en|Dvalinn}}の娘の1人であった悪いノルニルのせいにした。
 
{|
|
:2. "Andvari ek heiti,
:Óinn hét minn faðir,
:margan hef ek fors of farit;
:aumlig norn
:skóp oss í árdaga,
:at ek skylda í vatni vaða."<ref>[http://www.heimskringla.no/original/edda/reginsmal.php ''Reginsmál'']{{リンク切れ|date=2017年9月 |bot=InternetArchiveBot }} 標準化された綴りによるテキストのGuðni Jónssonの版。</ref>
|
:大意
::私は昔、運命の女神から、水の中で暮らすよう運命づけられました。
|
|}
 
悪い境遇の原因となっているノルニルのもう1つの例が、『{{仮リンク|シグルズルの短い歌|en|Sigurðarkviða in skamma|preserve=1|label=シグルズの短い歌}}』にみられる。そこでは、[[ワルキューレ]]の[[ブリュンヒルド]]が、[[シグルズ]]の抱擁を求めるその長い切望のために、悪意あるノルニルを呪っている。
{|
|
:7. Orð mæltak nú,
:iðrumk eftir þess:
:kván er hans Guðrún,
:en ek Gunnars;
:ljótar nornir
:skópu oss langa þrá."<ref>[http://www.heimskringla.no/original/edda/sigurdarkvidainskamma.php ''Sigurðarkviða in skamma''] 標準化された綴りによるテキストのGuðni Jónssonの版。</ref>
|
::大意:運命の女神が、私の心にグズルーンの夫に対する憧れを生じさせた。
|
|}
 
ブリュンヒルドについては、[[ブルグント族]]の王グンナルおよびその兄弟がシグルズを殺したこと、その後、来世でシグルズと一緒になるために自殺することが説明される。彼女の兄アトリ([[アッティラ]])は、ブルグントの王を殺して彼女の死の復讐をなしたが、アトリが彼らの姉妹の{{仮リンク|グズルーン|en|Gudrun|preserve=1|label=グズルーン(Guðrún)}}と結婚していたことから、アトリは間もなく彼女によって殺された。『{{仮リンク|グズルーンの歌#その2|en|Guðrúnarkviða II|label=グズルーンの歌 その2}}』において、ノルニルは夢の中で、アトリの妻がアトリを殺すということをアトリに教えるというかたちで、積極的に一連の事件に参加してくる。夢の描写はこの節から始まる。
{|
|
:"Svá mik nýliga
:nornir vekja," -
:vílsinnis spá
:vildi, at ek réða, -
:"hugða ek þik, Guðrún
:Gjúka dóttir,
:læblöndnum hjör
:leggja mik í gögnum."<ref name="heimskringla">[http://www.heimskringla.no/original/edda/gudrunarkvidainforna.php ノルウェーの«Norrøne Tekster og Kvad»、''Guðrúnarkviða in forna''。]</ref>
|
:大意
::アトリは妻グズルーンによって剣で刺し殺される夢を見、ノルニルの予言で起こされたと妻に告げる<ref>『エッダ 古代北欧歌謡集』(谷口幸男訳、新潮社)では第38節目となっている。</ref>。
|
|}
 
彼女の夫アトリと2人の間の息子たちを殺してしまった後、グズルーンは『{{仮リンク|グズルーンの煽動|en|Guðrúnarhvöt}}』にあるように、彼女の不幸を理由にノルニルを呪う。そこではグズルーンは、自殺を試みることによってノルニルの怒りを逃れようとしてみることについて話す。
 
{|
|
:13. Gekk ek til strandar,
:gröm vark nornum,
:vilda ek hrinda
:stríð grið þeira;
:hófu mik, né drekkðu,
:hávar bárur,
:því ek land of sték,
:at lifa skyldak.<ref>[http://www.heimskringla.no/original/edda/gudrunarhvot.php ''Guðrúnarhvöt''] 標準化された綴りによるテキストのGuðni Jónssonの版。</ref>
|
:大意
::運命の女神から逃れるべく海で入水自殺を図ったが、波によって岸に戻された。
|
|}
 
『グズルーンの扇動』では、グズルーンの息子たち(父はヨーナク王)が彼らの姉妹{{仮リンク|スヴァンヒルド|en|Svanhild}}の無惨な死に復讐するよう、グズルーンが彼らをどのように扇動したかを報告している。『{{仮リンク|ハムジルの言葉|en|Hamðismál}}』において、まさにその復讐に至るまでのゴート族の王{{仮リンク|イェルムンレク|en|Ermanaric|preserve=1}}の元への彼女の息子たちの遠征は、破滅的なものであった。自分がゴート族の手で死ぬことを知って、グズルーンの息子セルリ(''Sörli'')は、ノルニルの無慈悲さを語る。
 
[[ファイル:Berlin Neues Museum vaterlaendischer Saal Nornen restored.jpg|thumb|350px|[[ベルリン]]の[[新博物館 (ベルリン)|新博物館]]にあるノルニルのフレスコ画。]]
{|
|
:29. "Ekki hygg ek okkr
:vera ulfa dæmi,
:at vit mynim sjalfir of sakask
:sem grey norna,
:þá er gráðug eru
:í auðn of alin.
:-
:30. Vel höfum vit vegit,
:stöndum á val Gotna,
:ofan eggmóðum,
:sem ernir á kvisti;
:góðs höfum tírar fengit,
:þótt skylim nú eða í gær deyja;
:kveld lifir maðr ekki
:eftir kvið norna."
:-
:31. Þar fell Sörli
:at salar gafli,
:enn Hamðir hné
:at húsbaki.<ref>[http://www.heimskringla.no/original/edda/hamdismal.php ''Hamðismál''] 標準化された綴りによるテキストのGuðni Jónssonの版。</ref>
|
:大意
::運命の女神が死の宣告を下したらもう生き続けることは誰にもできない。
|
|}
 
ノルニルが隠れて作用する究極的な権威ある存在であった上は、彼女らが魔力として言及される可能性があることは驚くべきことではない。たとえば『{{仮リンク|シグルドリーヴァの言葉|en|Sigrdrífumál|preserve=1}}』において{{仮リンク|シグルドリーヴァ|en|Sigrdrífa|preserve=1}}によって彼女たちについて言われるように。
[[ファイル:St Stephens Green german Gift.JPG|thumb|300px|[[ダブリン]]の[[:en:St Stephen's Green|セント・スティーブンス・グリーン]]にあるノルニルの像。]]
 
{|
|
:17. Á gleri ok á gulli
:ok á gumna heillum,
:í víni ok í virtri
:ok vilisessi,
:á Gugnis oddi
:ok á Grana brjósti,
:á nornar nagli
:ok á nefi uglu.<ref>[http://www.heimskringla.no/original/edda/sigrdrifumal.php ''Sigrdrífumál''] 標準化された綴りによるテキストのGuðni Jónssonの版。</ref>
|
:大意
::[[ルーン文字]]の彫られるところは、たとえばノルニルの爪の上などである。
|
|}
=== 伝説のサガ ===

案内メニュー