=== エペソスのアルテミス崇拝 ===
[[File:Artemis of Ephesus.jpeg|thumb|300px|エペソスの女神<ref group="注">この女神像の胸部には多数の乳房があるように見えるが、乳首がない。しかし一般に「多数の乳房を持つ像」と表現される。</ref>]]
小アジアの古代の商業都市エペソスは、アルテミス女神崇拝の一大中心地で、この地にあったアルテミス神殿はその壮麗さで古代においては著名であった。また、この神殿は現在遺跡が残るのみであるが、近くの市庁舎に祀られていた女神の神像は現存している。この像は胸部に多数の卵形の装飾を付けた外衣をまとっており、あたかも「多数の乳房を持つ」ように見える。この像は一般に「多数の乳房を持つ豊穣の女神」として知られ紹介されるが、異説として女神への生け贄とされた牡牛の睾丸をつけられているともされる<ref>大和岩雄『魔女はなぜ人を喰うか』大和書房。</ref><ref group="私注">北東アジアでは「卵」は鳥女神や太陽女神に関連するアイテムである。北東アジアでは「卵」は鳥女神や太陽女神に関連するアイテムである。すなわち「卵」は「'''火'''」の暗喩である可能性があるように思う。</ref>。
小アジアにおける[[キュベレー]]などの大地母神信仰と混交して、独特なアルテミス崇拝が存在していたと想定されている。それは植物の豊穣や多産を管掌する地母神としてのアルテミス崇拝であった。この信仰は、古代ギリシアの森や山野の処女神アルテミスのイメージ・原像とは異なっている。また、出産の女神でもあったアルテミスの原像ともかなり異なっている。