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1,721 バイト追加 、 2022年7月21日 (木) 21:33
 ハイヌウェレの物語のうち、第一段階の<span style="color:brown">'''アメタが狩ることで豚からココヤシが発生する物語'''</span>では、アメタは<span style="color:red">'''狩人'''</span>であり、豚を手に入れることのできる<span style="color:red">'''獣の王'''</span>であり、獲物を祖神であるムルア・サテネに捧げて獲物以外の豊穣(ココヤシ)を得る<span style="color:red">'''シャーマン'''</span>でもある。この段階でのアメタは、人々の中でも、特に神の世界に近い存在、といえるかもしれないが、独立して「神」とする要素までが強いとは言えないように思う。日本人であれば、例えば新嘗祭のように、収穫の一部を神に捧げて、感謝の気持ちを示すと共に、その代わりに人々の安泰やその後の豊穣を願う、という考え方は理解しやすいのではないだろうか。その他にも、神に瓜類を捧げて雨乞いをする、等がある。捧げるものが動物であれば動物の命は失われるかもしれないが、例えば豚は食物でもあるのだから、特に家畜の場合は、いずれその生命は人間のために消費される運命であるので、動物を生贄にしても非日常な「命の消費」とまでは言えない、と考える。神に瓜を捧げるのも、豚を捧げるのも、意味としては同じで、「食料を捧げて見返りを求める」のである。
 
 
 第二段階の<span style="color:brown">'''アメタの血を媒介としてハイヌウェレが発生する物語'''</span>では、アメタの体液(血)とココヤシの花が結合して、普通のココヤシの実ではなく、乙女ハイヌウェレが誕生する物語である。これは一種の「神婚」であって、男女の結合の末に子供が生まれることを意識した神話だといえる。ただココヤシの花が咲くだけではココヤシの実しかならないが、アメタと結合することで、「人間」が生まれる。植物と結合して、特殊な子供を得る能力があることを「'''特別'''」とするのであれば、アメタはやや「'''特別な存在'''」となり、「'''神'''」に一歩近づいた、ともいえる。おそらく、第一段階と第二段階の物語の橋渡しとして、<span style="color:brown">'''アメタの体液と供物を結合させたものを女神に奉納し、そこから新たな豊穣を得る。'''</span>という神話が存在したのではないか、と思う。これを仮に<span style="color:brown">'''前第二段階'''</span>と呼ぶ。神と人間が交わる、という神話は世界の各地を見ても、さほど珍しい概念ではない。ギリシア神話では女神も男神も人間の愛人を持つ。日本の神話では各氏族の先祖は神とされることが多いから、神は代が下るうちに人間と交わって、人間に近くなっていく存在である。ヴェマーレ族も祖神的存在であるムルア・サテネは限りなく神に近い存在だが、その子孫の一般の人々は人間である。
 
 

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